グラベル3連戦ラストは、
柳澤宏至が福島の敵を洞爺で討つ

開催日時:6月29日(金)〜7月1日(日)
開催場所:北海道虻田郡洞爺湖町周辺
スペシャルステージ本数:15本
スペシャルステージ総距離:64.66km
ラリー総距離:2デイ5セクション 377.93km
SS路面:グラベル(未舗装路)
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.5

ラリー概要

今年は9戦が組まれている全日本ラリー選手権。その前半戦を締めくくる第4戦が、北海道洞爺湖周辺を舞台に開催された。

昨年、ホストタウンを洞爺湖周辺に移したこのラリーは、今年も当初の予定ではレイアウトを昨年と大きく変えることなく準備を進めていたが、5月のゴールデンウィーク期間中に北海道を襲った大雨の影響により、最長SSのFRUITS TRAVERSE(昨年は19.37km)が崩落などの損壊により通行不可となってしまった。そのため、急遽レイアウトを変更せざるを得なくなり、SS総距離を64.66kmに短縮。SSの本数は昨年と同じく15本を用意し、3~5kmのショートステージが連続するスプリント勝負となった。

ステージはすべて豊浦町に置かれ、デイ1はグラベルとターマックがミックスしたSCALLOP(4.53km)、昨年も使用したSTRAWBERRY(5.97km)とCHERRY(2.36km)の3本のSSを3回ループする設定だ。デイ2は、ステージ内に川渡りがあるSEA TANGLE(6.77km)、PLUM(3.21km)、PORK(3.06km)の3本のSSを2回ループする。いずれのSSもコース上には細かな砂利が敷き詰められ、火山灰を多く含んだ土質は、2ループ目、3ループ目には深い轍が刻まれることが予想される。

ちなみに昨年は、各ステージにこの地域を代表する特産品のフルーツの名が冠せらていたが、今年はSCALLOP(ホタテ)、SEA TANGLE(昆布)、PORK(豚肉)の新ルートが追加された。さながら、昨年がフルーツ盛り合わせのデザートとすれば、今年はメインディッシュが加わったディナーが用意されたことになる。そのネーミングが表すように、オープンクラスを含め52台が出場した今回のラリーには、勝田範彦、奴田原文雄、柳澤宏至ら今年の全日本レギュラー陣に加え、炭山裕矢、鎌田卓麻、そして0カーに新井敏弘、JN3クラスにはアフリカチャンピオンの三好秀昌など、国内外を問わず日本を代表するトップドライバーが一堂に集まった豪華なディナーショーとなった。

JN4クラス

デイ1のファーストループを制したのが、2週間後のアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)マレーシア戦の最終テストを兼ねて出場してきた炭山裕矢/加勢直毅組(三菱ランサーエボリューションX)だ。チームメイトの柳澤宏至/中原祥雅組(スバル・インプレッサWRX)を1.0秒差の2番手に抑えてのトップだが、炭山自身が「出走順がタイムに影響したと思う。自分が走る時は(10番目)、かなり路面が掃けていた」と語るように、ゼッケン1の勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサWRX)がトップから9.7秒差の5番手、ゼッケン2の奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)が17.4秒差の8番手と、これまで全日本の舞台で激戦を繰り返してきた2台が下位に沈むという、波乱の幕開けとなった。

路面に轍が刻まれた2ループ目以降は、2番手に付けていた柳澤が一気にスパートし、SS7は勝田にベストタイムを奪われたものの、6本中5本のSSでベストタイムを連発し、デイ1をトップで折り返した。2番手には、柳澤から13.4秒遅れで炭山が、3番手には炭山から1.2秒差でベテランの石田正史/草加浩平組が浮上。その石田から3.7秒差で勝田が4番手というオーダーだ。一方、奴田原は勝田から16.7秒差の5番手と、この時点でデイ2でのトップ奪還はかなり厳しい状況となった。

また、スタートからエンジンが本調子ではなかったものの、SS6までは柳澤と8.1秒差の2番手と健闘していた鎌田卓麻/竹下紀子組(スバル・インプレッサWRX)は、SS7でエンジンが息の根を止めてしまい、第3戦福島と同様に速さを見せながらも無念のリタイアとなってしまった。

デイ2に入ると、先頭ゼッケンとなった柳澤のタイムが伸びず、4番手スタートの勝田がSS10、11を連続で制し、柳澤との差を一気に詰めてきた。SS12を終えた時点で、トップの柳澤に8.6秒差の2番手に浮上。デイ1の不調がなんだったのかという走りの勝田だが、コ・ドライバーの足立さやかが「デイ1も決してノリ(勝田)さんの調子が悪かったわけじゃない。でも、タイムが悪かった」と言うように、砂利掻きによるタイムダウンの影響が、かなり大きかったようだ。

どの走行順が有利なのか、まるでWRCのグラベルラリーのような展開となった第4戦だが、残りのSSの距離を考えると、デイ1の18.3秒差はタイム差が大きすぎた。2ループ目に入り、SS13、14を制しタイム差を5.3秒にまで詰めてきた勝田だが、最終SSで逆転するためにSSの距離が短すぎた。最終的には柳澤がデイ1のマージンを生かし切り、第3戦福島とはまったく逆の展開で今季初優勝を飾った。

JN3クラス

JN3クラスの序盤戦は、ダイハツ・ブーンX4を駆る村田康介/平山真理組と、ホンダ・インテグラを駆る宇田圭佑/石川恭啓組の4WD VS FF対決となった。SS1で村田に18.8秒を付け先行した宇田だったが、その後、村田が追い上げを開始。SS4を終えて両者の差は0.8秒差にまで縮まった。だが続くSS5では、村田がスタート500m地点でバースト。そのままの状態で約5.5kmを走りきり、一気にクラス5位までポジションを下げてしまう。これで山口清司/島津雅彦組(トヨタ・レビン)が2位に浮上するが、宇田とのタイム差は29.4秒。序盤で大量マージンを築き上げ、学生時代をこの地で過ごした宇田にとってはホームコースともいえるこのラリーで全日本初優勝を狙うが、今度はその宇田にトラブルが襲いかかる。

山口との差を32.8秒差にまで広げて迎えたSS8、宇田のマシンは突然クラッチが切れなくなってしまい、ギヤがスタックした状態でストップ。トップを独走しながらもここで戦線離脱となってしまったのだ。原因はクラッチのオーバーヒート。「トラブルを防ぐために、ミッションをオーバーホールしてきたのに……」と嘆く宇田。これまでも優勝争いの一角につけながらもアクシデントやトラブルで結果を残すことができない宇田は、ここでも悔し涙を飲む結果となった。

宇田のデイ離脱により、なんとトヨタ86の三好秀昌/保井隆宏組がデイ1のトップに立った。
「2ループ目以降、轍をうまく使ってコーナリングスピードを上げることができた。トヨタ86の走破性の良さがタイムに結びついたと思う」と三好。2番手には3.4秒差で山口が、3番手には全日本初挑戦となる地元の松倉拓郎/猿川仁組(三菱ミラージュ)がつける健闘をみせた。

デイ2に入ると、一時は5番手に落ち、その後挽回してトップとの差を14.0秒にまで挽回してきた村田が、一気に勝負に出た。デイ2オープニングのSS10では三好を捕らえ、いきなりトップに浮上。その後もベストタイムを連発し、第2戦に続き今季2勝目を奪った。また、このSSで松倉がコースアウトし脱落したことにより、2位争いは三好と山口のFR VS FF対決となった。一時は三好との差を0.9秒に詰めてきた山口だが、轍ができた2ループ目には、デイ1と同様に三好が好タイムを連発。最終的には3位の山口との差を9.6秒に広げ、三好のトヨタ86が全日本初の表彰台となる2位を獲得した。

JN2クラス

過去最多となる14台がエントリーしたJN2クラスは、序盤から上原淳/漆戸あゆみ組(マツダ・デミオ)と天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツ)がベストタイムを奪い合い、SS5を終了した時点で天野が2番手の上原に1.7秒差のトップに立つ。だが、続くSS6で天野のヴィッツにサスペンショントラブルが発生。リヤの中間ビームを折ってしまい、ここで走行不能となりリタイアとなってしまった。「轍の壁に当てながら走り続けていたのは確かだが、まさか折れるとは思わなかった」と天野。痛恨のノーポイントでラリーを終えることとなった。

これで上原のチームメイトの大桃大意/露木明浩組(マツダ・デミオ)が2番手に浮上したが、SS8でドライブシャフトを破損してしまいリタイア。デイ1はトップが上原組、20.4秒差の2番手が高橋悟志/箕作裕子組(トヨタ・ヴィッツ)、さらに9.0秒遅れて川名賢/安東貞敏組(トヨタ・ヴィッツ)が3番手というオーダーで折り返した。

「グラベル仕様のデミオに乗るのは、実は今回が初めてなんです」という上原だが、デイ2もまったく隙を見せることなくゴール。2輪駆動部門時代には二度の優勝経験がある上原だが、2輪駆動部門と4輪駆動部門が統合されてからは初となる優勝を飾った。

また、デイ1を終えた時点ではトップとの差が29.4秒あった川名組が、デイ2で一気に追い上げ高橋を逆転。トップと9.4秒差の2位に入賞するとともに、シリーズポイントではトップに浮上する結果となった。実は川名は、デイ1の途中でエンジンが吹け上がらなくなるトラブルが発生し、タイムが伸びないだけではなく、それが原因でTCに1分遅着(10秒)のペナルティを受けていた。ラリーに“タラレバ”は禁物だが、10秒ペナルティがなければ数字的には逆転優勝も可能という見事な追い上げだった。

JN1クラス

JN1クラスは、ダイハツ・ストーリアX4を駆る山口貴利/山田真記子組と松岡竜也/縄田幸裕組が序盤から終盤まで、1秒を争うデットヒートを展開した。

デイ1終了時点では、山口組が5.8秒差でトップを死守。デイ2も終盤までトップの座を守りきったが、最終SSで松岡が3.1秒あったビハインドをはね除け逆転に成功。わずか0.4秒差で松岡が全日本初優勝を奪った。

また、シリーズチャンピオンを狙う葛西一省/安田弘美組(ダイハツ・ストーリア)が3位に入賞。シリーズポイント、トップの座を守りきった。

総合結果

出走51台/完走38台

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN4-1 柳澤宏至/中原祥雅 CUSCO ADVAN IMPREZA 52:13.2
2 JN4-2 勝田範彦/足立さやか ラック名スバルSTI DLインプレッサ 52:19.5
3 JN4-3 石田正史/草加浩平 DL TEIN MARCHEランサー 52:42.3
4 JN4-4 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 52:50.1
5 JN4-5 炭山裕矢/加勢直穀 CUSCO ADVAN LANCER 53:01.8
6 JN4-6 福永修/奥村久継 ハセプロCL☆DLインプレッサSTI 53:14.3
15 JN3-1 村田康介/平山真理 EXEDY☆DL☆BOOBOWブーンX4 57:48.9
21 JN2-1 上原 淳/漆戸あゆみ DLシャフト埼玉マツダ川越救急CLデミオ 58:58.3
31 JN1-1 松岡竜也/縄田幸裕 KEY-BEAUTY リマインド ストーリア 1:02:14.7

注)JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両(過給器つき車両は排気量×1.7で換算)

参考総合結果表: 2012_rd04(Excel) 2012_rd04(PDF)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

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