奴田原文雄が0.7秒差で逃げ切り今季3勝目
タイトル争いは最終決戦・新城ラリーへ持ち越し

開催日時:10月12日(金)~14日(日)
開催場所:岐阜県高山市周辺
スペシャルステージ本数:8本
スペシャルステージ距離:77.38km/2デイ4セクション
ラリー総距離:342.11km
SS路面:ターマック
ポイント係数:1.0

ラリー概要

全9戦で戦われる全日本ラリー選手権は、シリーズ佳境となる第8戦を迎えた。岐阜県高山市周辺を舞台とする「M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ」は、今年で40回目の開催を迎える伝統の一戦だ。かつては過酷で壮絶なステージから「カーブレイクラリー」と呼ばれていたこのラリーは、2008年以降はターマックラリーとして開催。高低差の大きいヒルクライム&ダウンヒルのステージを主体とし、コンマ1秒を争うスプリントラリーへと変貌した。昨年も福永修が奴田原文雄を最終SSまで0.1秒差で追いかけるという戦いを展開。今年も最終SSまで目が離せないスリリングな勝負が繰り広げられることとなった。

ステージ構成は、デイ1とデイ2に4本ずつの合計8SSを設定。デイ1は、昨年は崖崩れのため使用できなかった駄吉下り(4.11km)を2回連続走行し、高山市郊外のアルコピアスキー場を拠点とした無数河線と牛牧線を繋げた無数河→牛牧(14.71km)も駄吉下りと同様に2回連続走行する。デイ2は、2009年以来となる大山線(5.29km)と、デイ1の無数河→牛牧の逆走となる牛牧→無数河(14.56km)を、デイ1と同じく2回ずつ連続して走るという設定だ。デイ1、デイ2とも14kmを超えるロングステージ×2回が勝負所となるだろうが、これまで幾度となく使用し、距離は短くともドライバーの資質を試すような強烈なダウンヒルコースの駄吉下り、さらにはハイスピードコースの大山線も気を抜くことはできず、今年もハイランドマスターズらしいエキサイティングなステージが用意された。

JN4クラス

オープニングとなるSS1駄吉下り1でいきなり先制パンチを浴びせたのが、奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)だ。当初予定していたスタート位置が道路工事のため移動され、SSの距離が6.32kmから4.11kmに短縮されながらも、セカンドベストの石田正史/宮城孝仁組(三菱ランサーエボリューションX)に1.7秒、シリーズポイントトップの勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)には5.2秒の差を付けるというハイペースでベストタイムを奪う。

続くSS2駄吉下り2でも、奴田原は勝田に5.5秒差を付けるベストタイムをマークし、序盤の2本のSSで勝田に対し10.7秒ものマージンを築き上げる。「ここで勝田クンが勝ったらシリーズチャンピオンが決まってしまう。絶対に負けられない状況なので、序盤から全開で攻めています」という奴田原に対し、このラリーに満を持して新車のインプレッサを投入してきた勝田は「やってもうたぁ~って感じですね。でも、クルマのセッティングを大きく外しているわけではないので、最後まであきらめずに頑張りますよ。勝負所は後半のロングステージだと思いますし」と、仕切り直しを図る。前半戦で一気に勝負を決めたい奴田原は、規定で10本まで使用できるタイヤをデイ1に8本投入、一方の勝田はデイ1の使用本数を6本にとどめ、デイ2に向けて4本のフレッシュタイヤを温存するという作戦だ。

結局デイ1は、SS4無数河→牛牧2でベストタイムを奪った勝田が奴田原とのタイム差をわずかに縮めるが、その差は9.3秒。奴田原にとっては、残りのSSの距離を考えると十分とも言えるタイム差だ。

だが、デイ2のオープニングとなるSS5大山線1で、奴田原の勝利の方程式が大きく崩れた。タイム的にはベストタイムを奪った勝田に対し0.3秒差という僅差だったものの、このSSでコース脇の壁面にボディサイドを激しくヒットさせてしまい、タイヤがスローパンクチャー。SS7のロングステージ前に残り2本のタイヤを交換する予定だったが、ここでタイヤ交換せざる終えない状況となってしまったのだ。

一方、デイ2に向けてフレッシュタイヤを4本残した勝田は、ユーズドタイヤとうまくローテションしながら奴田原とのタイム差を縮め、9.3秒差あったタイム差を最終SS手前までに5.2秒差まで縮めてきた。最終SS牛牧→無数河2の距離は14.56km。タイヤが厳しい奴田原に対し、逆転も可能な状況だ。だが、奴田原も「ここで負けるのもリタイアするのも結果は一緒」と、ユーズドタイヤながらもフルアタックを敢行。勝田に対し4.5秒差のタイムに踏みとどまり、わずか0.7秒差で今季3勝目を挙げ、最終戦に望みを繋いだ。2位には勝田が、3位にはデイ2で石田をかわした高山仁/河野洋平組(三菱ランサーエボリューション7)がそれぞれ入賞した。

JN3クラス

JN3クラスは、シリーズ逆転優勝を狙うためには残り2戦をデイポイントを含めて全勝しなければならない眞貝知志/田中直哉組(ホンダ・インテグラ)がSS1を奪うが、ラリー北海道でトヨタ86を全日本ラリー初優勝に導いた三好秀昌/保井隆宏組も1.1秒遅れのセカンドベストと、一歩も譲らない構えだ。この三好のタイムに「もっと引き離さなければ……」とSS2を攻めた眞貝は、「明らかにオーバーペースでした」とスピン。コース復帰に30秒ものタイムをロスしてしまい、クラス最下位に転落してしまう。だが、このピンチを救ったのがコ・ドラの田中だ。「2011年の開幕戦もSS1でスピンして最下位からのスタートとなったんですけど、なんとか逆転優勝することができたんです。だから、その時のことを思い出せと眞貝に伝えました。いつも通りに走れば、絶対逆転できると」。この田中の言葉に奮起した眞貝は、その後のSSでベストタイムを連発し、ついにデイ2のSS5でトップを奪回。そのまま逃げ切り今季3勝目を挙げた。2位には、三好と山口清司/島津雅彦組(トヨタ・カローラ)が激しく争った2位争いは、山口が最終SSで三好を逆転して入賞。三好が3位となったため、シリーズポイントは最終戦の新城ラリーには出場してくる村田康介がトップを堅守しているが、0.5P差で三好が2番手、さらに0.5P差で眞貝3番手という1Pの間に三人が並ぶという僅差の勝負となった。三者とも最終戦で獲得するポイントはそのまま有効ポイントとして計上される。デイポイントを含めどんな勝負となるのか、4WD、FR、FFという三つ巴の戦いに注目だ。

JN2クラス

JN2クラスは、シリーズポイントトップの川名賢/小坂典嵩組(トヨタ・ヴィッツRS)がデイ1すべてのSSでベストタイムを奪う快走をみせ、デイ2もデイ1で稼いだマージンを守りきり今季2勝目を挙げた。一方、ラリー北海道を制しシリーズポイントでも川名を追いかけるディフィンディングチャンピオンの天野智之/井上裕紀子組は、SS2でJN3クラスの眞貝がスピンしたほぼ同位置でスピンしてしまい、30秒ものビハインドを背負ってしまう。だが、デイ2は天野がSSベストを連取し、クラス2位まで追い上げフィニッシュ。最終戦に逆転チャンピオンの可能性を残した。3位には第6戦丹後半島ラリーで最終SSまでトップを走りながらも電気系トラブルで無念のリタイアとなった岡田孝一/漆戸あゆみ組(マツダ・デミオ)が、4位には全日本ラリーを転戦して2年目となる20歳の加藤辰哉/西江浩和組(マツダ・デミオ)が入賞した。
注目の最終戦は、シリーズ2位の天野は優勝する以外、川名を逆転する可能性はなく、一その川名も2位以下では有効ポイントが伸びないという状況だ。どちらに軍配が上がるのか、さらにこの二人のタイトル争いに誰が絡んでくるのか、最終戦も目が離せない展開となりそうだ。

JN1クラス

シリーズポイントトップの葛西一省が欠場したJN1クラスは、シリーズポイント2位の山口貴利/山田真記子組(ダイハツ・ストーリア×4)がデイ1のSS4でトップに浮上。デイ2は小泉茂/小泉由起組(日産マーチSR)とベストタイムを奪い合ったが、そのまま逃げ切り今季3勝目を挙げた。これでシリーズポイントも葛西を逆転しトップとなった山口。最終戦に葛西が出場して来なければ、その時点でJN1クラスのタイトルが確定するという状況となった。

総合結果

出走41台/完走34台

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN4-1 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 56:50.6
2 JN4-2 勝田範彦/足立さやか ラック名スバルSTIDLインプレッサ 56:51.3
3 JN4-3 高山 仁/河野洋志 DL☆OF☆レイルCL☆ハセプロランサー 57:14.4
4 JN4-4 石田正史/宮城孝仁 DL TEIN MARCHE ランサー 57:35.2
5 JN4-5 柳澤宏至/中原祥雅 CUSCO ADVAN WRX-STI 57:59.3
6 JN4-6 福永 修/奥村久継 ハセプロCL☆DLインプレッサSTI 58:01.5
12 JN3-1 眞貝知志/田中直哉 メロンブックスDLテインBRIGインテ 59:41.9
17 JN2-1 川名 賢/小坂典嵩 TAKUMICRAFT YH KYB Vitz 1:01:28.1
27 JN1-1 山口貴利/山田真記子 DL☆itzz☆BOOBOWストーリア 1:05:26.4

注)JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両(過給器つき車両は排気量×1.7で換算)

参考総合結果表: 2012_rd08(Excel) 2012_rd08(PDF)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

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