最終決戦は壮絶な戦いに
全クラスでチャンピオンが決定

開催日時:11月2日(金)~4日(日)
開催場所:愛知県新城市周辺
スペシャルステージ本数:11本
スペシャルステージ距離:73.00km/2デイ4セクション
ラリー総距離:246.24km
SS路面:ターマック
ポイント係数:1.0

ラリー概要

JN4クラスからJN1クラスまでのすべてのクラスが、最終戦までタイトル争いが持ち越しとなった今年の全日本ラリー選手権。近年にない激戦となった今シーズンだが、そのチャンピオンの行方もいよいよこの最終戦で確定する。

そんななか、JN1クラスはエントリー締切の時点でシリーズ2位の葛西一省がエントリーしなかったため、シリーズトップの山口貴利/山田真記子組が走らずしてチャンピオンが確定。その他のクラスはチャンピオン候補すべてのクルーが顔を揃え、最終決戦へと挑む。

2日間で争われるラリーは、SS総距離73.00kmに11本のSSを用意。なかでも、このラリー最大の難所となる雁峰林道は、最長19.66kmのSSを含め全体のSSの70%以上を占める設定となった。道幅が狭い上にトリッキーなコーナーが連続する雁峰林道は、一瞬の油断が即リタイアに直結するという攻略の難しいステージ。今年もこの雁峰林道に数々のドラマが待ち受けていた。

ラリーと同時に開催されるイベントには、かつてWRCで活躍した往年の名ドライバーであるビョルン・ワルデガルド氏が来訪。ドイツから持ち込んだグループB仕様のセリカ・ツインカムターボで華麗なデモランを披露し、今もなお色あせない走りにギャラリーから大きな歓声が上がっていた。また、併催されたTRDラリーチャレンジにはモリゾウこと豊田章男トヨタ自動車代表取締役社長がドライバーとして出場。多くの話題を集めた今年の新城ラリーには、2日間合わせて延べ3万7000人の観客が足を運ぶという盛大なイベントとなった。

JN4クラス

勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)がシリーズトップに立つJN4クラスは、シリーズ2位につける奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューション)がこのラリーで優勝を奪えば、勝田を抜きシリーズ逆転チャンピオンの可能性がある。勝田にとってはシリーズトップといえども奴田原の優勝を阻止するためには、このラリーも全力で優勝を獲りにいかなければならない。まさに雌雄を決する戦いとなったが、このふたりの戦いに割って入ったのが、今年のラリー北海道を制した石田正史/宮城孝仁組(三菱ランサーエボリューション)だ。

SS1(雁峰北:12.83km)は勝田に1.0秒差のセカンドタイムだったが、SS2(雁峰中:4.45km)でベストタイムをマークし、トップに立つ。だが、勝田もSS4(雁峰北中:19.66km)で逆襲。このラリー最長となるSSでベストタイムをマークし、石田からトップの座を奪い返した。

一方、勝田とタイトルを争う奴田原は、SS3(ほうらいせん逆走1:4.23km)でこの最初のベストタイムを奪うが、SS1で勝田に対し11.3秒遅れと精彩を欠く。「雁峰林道の対策にローギヤ化してきたんだけど、これがまったくの裏目。ギヤチェンジが忙しくなってしまい、逆にタイムが伸びなくなってしまった」という奴田原は、デイ1ラストとなるSS5(ほうらいせん逆走2)でこの日2本目のベストタイムを奪うが、デイ1はトップから15.2秒遅れの3番手で折り返す。

デイ2は、SS6(雁峰西1:7.51km)の勝田ベストタイムからスタート。続くSS7(作手1:3.81km)、SS8(ほうらいせんショート1:2.48km)は奴田原が連取して勝田とのタイム差を縮めてくるが、反撃もここまで。SS9(雁峰西2)のフィニッシュまで約2km地点でターボチャージャーの異変を感じた奴田原はスローダウンし、結局SS9をフィニッシュした時点でリタイアとなった。
この時点でチャンピオンが確定した勝田は、その後もトップの座を守りきり今季4勝目をマーク。3年連続、自身5度目となるチャンピオンを優勝で決めた。

JN3クラス

村田康介/平山真理組(ダイハツ・ブーンx4)と眞貝知志/田中直哉組(ホンダ・インテグラ)、三好秀昌/保井隆宏組(トヨタ86 )がわずか0.5P差で並ぶという熾烈な戦いとなったJN3クラス。いずれも今回のラリーで獲得したポイントがそのまま有効ポイントに計上されるため、この3台の中で一番上位に立った者がチャンピオン確定という状況だ。

そんななか、これまでグラベルラリーでポイントを重ね、今回のラリーが今季初のターマックラリーとなる村田が、SS2でフロントロアアームを折ってしまい、早々と姿を消した。

これでタイトル争いは眞貝と三好のふたりに絞られた。しかしラリーは、「雁峰林道に合わせて、タイヤサイズをいつもとは違うサイズに変えてきたのがうまくいった」という山口清司/島津雅彦組(トヨタ・カローラレビン)がSS1から一気にライバルを引き離し、トップを快走する。一方、三好よりも上位で入賞すれば逆転チャンピオンの可能性が出てきた眞貝だが、SS1は山口の23.9秒遅れ、直接的なライバルの三好にも10.5秒遅れと、大きなビハインドを背負ってのスタートとなった。「実はブレーキが奥に入ってしまうトラブルが出てしまい、曲がるためのブレーキを踏めなくなってしまった」という眞貝は、三好を捕らえることができずに3番手のまま最初のサービスへ戻る。

だが、そのサービスで「ブレーキで曲がるのではなく、オーバーステア気味にしてクルマ全体で曲がれるようにセッティングを変えました」という眞貝は、SS4とSS5を連取し、三好を逆転して2番手に浮上。デイ1はトップ山口、2番手が眞貝、3番手が三好というオーダーで折り返す。

デイ2に入っても眞貝の勢いは止まらず、SS6とSS7を連取。ここで三好との差を30秒以上広げた眞貝は、「トップの山口さんは追いません。今日は三好さんだけをマークしています」とペースを抑え、2位でフィニッシュするとともに自身初となる待望のシリーズチャンピオンを手に入れた。

一方、トップの山口はデイ2も快走を続け今季初優勝を獲得。「レビンはまだまだ速くなることを今回で再確認できました。来年は86やBRZが増えるんでしょうけど、僕はこのレビンで頑張ります」と、早くも来シーズンに気持ちを向けていた。

JN2クラス

川名賢/小坂典嵩(トヨタ・ヴィッツRS)と天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツRS)の新旧ヴィッツ対決となったJN2クラスのチャンピオン争いは、川名がSS2で転倒リタイアとなってしまい、天野に逆転のチャンスが訪れた。

天野は今回のラリーで優勝する以外に逆転の可能性はなく、手を抜くことができない。さらに、ラリーは岡田孝一/漆戸あゆみ組(マツダ・デミオ)がデイ1を終えた時点で天野に対し20.2秒差を付けてトップに立つという状況。デイ2でこのタイム差を逆転するのはかなり厳しいと思われた。

だが、デイ2のオープニングとなるSS6で、岡田はサイドターンが必要な左鋭角コーナーをオーバーシュート。ここでこれまでの貯金を一気にはき出してしまい、天野とのタイム差は一気に2.0秒にまで縮まった。

このチャンスに天野はSS7をフルアタックで駆け抜け逆転に成功。SS8、SS9も連取してトップの座を確固たるものとし、今季3勝目とともに3年連続のシリーズチャンピオンを獲得した。

JN1クラス

すでにスタート前に今シリーズのチャンピオンが決まった山口貴利/山田真記子組(ダイハツ・ストーリア×4)だが、「今年最後のラリーもしっかりと優勝を狙いたい」と戦いに挑む。だが、SS3で前走車に追いついてしまいペースを上げることができず、さらにSS11ではフライングスタートとなったために10秒ペナルティを計上し4位でフィニッシュ。初のチャンピオン獲得を優勝で飾ることは叶わなかった。

優勝は、今年の開幕戦を制した小泉茂/小泉由起組(日産マーチ)が獲得。「マーチは、雁峰林道にサイズが合っているのか、ストレスなく楽しく走れるんです(笑)」と小泉。2位には松岡竜也/縄田幸裕組(ダイハツ・ストーリア×4)、3位には篠原正行/北川紗衣組(ダイハツ・ストーリア×4)と、今季のウイナーたちがそれぞれ入賞した。

総合結果

出走50台/完走35台

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN4-1 勝田範彦/足立さやか ラック名スバルSTIDLインプレッサ 1:01:31.7
2 JN4-2 石田正史/宮城孝仁 DL TEIN MARCHE ランサー 1:02:00.3
3 JN4-3 柳澤宏至/中原祥雅 CUSCO ADVAN WRX-STI 1:02:01.1
4 JN4-4 高山 仁/河野洋志 DL☆OF☆レイルCL☆ハセプロランサー 1:02:18.4
5 JN4-5 田邉 亘/黒木崇史 DL國盛ランサー 1:02:30.3
6 JN4-6 大西康弘/市野 諮 ADVANPIAA大西ランサー 1:02:35.6
9 JN3-1 山口清司/島津雅彦 エナペタルADVAN久與レビン 1:04:00.1
16 JN2-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・ラック・DLヴィッツG’s 1:06:21.9
21 JN1-1 小泉 茂/小泉由起 TG厚木OKU安斉自工ADVANマーチ 1:08:38.9

注)JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両(過給器つき車両は排気量×1.7で換算)

参考総合結果表: 2012_rd09(Excel) 2012_rd09(PDF)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

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