RALLY HOKKAIDO

開催日時:9月27日(金)~29日(日)
開催場所:北海道十勝地方
スペシャルステージ本数:18本
スペシャルステージ総距離:232.32km
ラリー総距離:1022.54km
SS路面:グラベル(未舗装路)
SS路面状況:レグ1/ドライ一部ハーフウエット、デイ2/ドライ
ポイント係数:2.5

ラリー概要

 第7戦を迎えた全日本ラリー選手権(JRC)は、今年も北海道の十勝地方を舞台とするアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)との併催イベントとして開催された。2002年の初開催以来、12回目の開催を迎えたAPRCラリー北海道だが、JRCとの併催は今年で9回目となる。

 総走行距離が1022.54km、SS総距離が232.32kmと、国内最大規模のスケールで開催されるこのラリーは、シリーズ最大となる2.5の係数が掛けられるため、タイトル争いを占う上で最も重要な1戦として位置付けられている。

 ラリーは、金曜日の夕方に行われるセレモニアルスタートを経て、ギャラリーステージとして設定されたSS1サツナイリバー(2.54km)を走る。かつて、2002年と03年にギャラリーステージとして使われたこのステージは、最近はAPRCのシェイクダウンコースとして使用されていた。

 本格的な競技は翌日の土曜日から始まり、今回のラリーで最もSS距離が長いニューアショロロング(29.11km)、2004年に初開催されたWRCラリージャパンのオープニングステージとして使用したヤムワッカ(23.49km)、ギャラリーステージのリクベツロング(4.63km)を3回ループし、最終サービス前にサツナイリバーを1回走る設定となっている。ニューアショロロングは砂利が深く、2ループ目以降は深い轍が刻まれることが予想される。また、ヤムワッカはステージ全体が踏み固められたマッド系の路面だが、コース後半のハイスピードセクションはコース脇から水が流れ出てウエット路面となっている。2011年に距離が延長されたリクベツロングは、ターマックとグラベルのミックス路面だ。このように、土曜日のステージは、まったく異なる路面で構成されている。

 日曜日は、これまでのラリー北海道でもおなじみのオトフケリバース(6.12km)、ホンベツリバース(11.03km)、パウセカムイ(10.40km)を2ループし、最後にサツナイリバーを2回走るという設定だ。オトフケとホンベツを逆走で使用するのは、今回が初めての試みだ。

 ラリー期間中、好天に恵まれた今年のラリー北海道は、ラリーの拠点となる帯広市郊外の北愛国交流広場で、北海道内の特産品や名物を集めた「第3回とかち北海道満腹フェスティバル」が併催されたこともあり、延べ67,990人(主催者発表)の観客が、3日間に渡りラリーを満喫した。
 

JN4クラス:勝田範彦が土壇場で逆転優勝

 今回のラリーでシリーズポイント2番手の勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)に5点差を付けると、奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX)のシリーズチャンピオンが確定するJN4クラス。注目のオープニングのSS1サツナイリバーは、昨年の覇者・石田正史/草加浩平(三菱ランサーエボリューションX)が左に曲がるジャンクションをオーバーシュートしながらもベストタイムを奪いトップに立つが、翌日のSS2ニューアショロロングでタービンブローに見舞われ、無念のレグリタイアとなってしまう。

 そのSS2でベストタイムをマークしたのが、奴田原だ。石田と同じくSS1はジャンクションをオーバーシュートしたため4番手だったが、ここで一気にトップに浮上する。だが、2ループ目に入ると柳澤宏至/中原祥雅組、勝田のインプレッサ勢が追い上げ、SS6ヤムワッカで柳澤がトップ、2番手に勝田、奴田原は3番手にポジションを下げる。さらに3ループ目に入るとSS9ニューアショロロングで勝田が柳澤を捉えトップに浮上。初日を終えた時点でトップが勝田、5.0秒差の2番手に奴田原、さらに3.8秒遅れて柳澤という今シーズンの各ラウンドのウイナーによる三つ巴の様相となった。

 迎えたレグ2、オープニングのSS11オトフケリバースで「思いっきり失敗した」という勝田を捉えた奴田原は、ここで勝田に対し7.2秒差のベストタイムをたたき出し、一気にトップを奪回する。また、レグ1のSS9でミッショントラブルを抱え3番手となった柳澤は、今度はドライブシャフトにトラブルが発生し、ペースが上がらない状態。なんとか3番手のポジションはキープするものの、優勝争いからは脱落してしまった。

 これで、今シーズンのチャンピオンを争う奴田原VS勝田の直接対決となったふたりの勝負は、SS11からSS16まで奴田原がベストタイムを連取し、勝田との差を15.2秒差に広げる。残すはギャラリーステージのサツナイリバー2本のみ。最終SS点前のSS17で勝田がベストタイムを刻み、その差を11.8秒まで縮めてくるが、残りのSS距離を考えると、ここで勝負あったかに見えた。

 だが、ウイニングランとなるはずだった最終SSで奴田原の右リヤタイヤがスタート直後にリムから外れるというトラブルが発生。それでも11.8秒のマージンを生かし切ろうと懸命に走る奴田原だったが、勝田のトータルタイムにわずか1.0秒届かない12.8秒遅れでフィニッシュ。まさかの逆転劇で勝田が今季3勝目を挙げる結果となった。これでチャンピオン争いは第8戦ハイランドマスターズ以降に持ち越される。

JN3クラス:北海道の雄・関根正人がレギュラー陣を蹴散らす

 JN3クラスは、SS1でJN4勢の中に割って入る総合4番手という驚異的なタイムをマークした鎌田卓麻/市野諮(スバルBRZ)が、クラス2番時計の関根正人/石田裕一(三菱ミラージュ)にいきなり7.0秒引き離す快走をみせる。SS2ニューアショロロングも「スピンしてしまって30秒近くロスしてしまった」と言いながらも鎌田が連取するが、SS3ヤムワッカで関根が逆襲。「中低速コーナーが多いヤムワッカのようなステージはミラージュが有利だと思う」という言葉どおり、ここで鎌田からトップの座を奪い返す。

 だが、「BRZは高速ステージで真価を発揮する」という鎌田は、2ループ目のSS5ニューアショロロングで再び関根を捕らえトップに再浮上。北海道を地元とするふたりのドライバーがトップ争いを演じたが、2ループ目のリクベツロングでBRZのデフから異音が発生。鎌田のペースが一気に落ち、クラス6番手までポジションを下げてしまう。さらにSS9でフロントサスペンションにダメージを受けた鎌田は、ここでレグ離脱という結末となってしまった。

 これで単独トップに躍り出た関根は、2日目に入ってもトップの座を一度も脅かされることなくフィニッシュ。自身にとっては2008年以来となるクラス優勝を獲得した。

 また、レグ1はアンダーガードやマフラーが外れてしまうというトラブルに苦しめられた横尾芳則/船木一祥(トヨタ86)が、レグ2でペースを上げ2位に入賞。シリーズポイントを争う香川秀樹/浦雅史(ホンダ・インテグラ)が3位に入賞したため、トヨタ86にとっては初となるシリーズチャンピオンに王手をかけた。

JN2クラス:川名賢が念願のシリーズチャンピオンを獲得

 川名賢/安東貞敏(トヨタ・ヴィッツRS)と天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツRS G’s)がチャンピオン争いを展開するJN2クラス。このラリーで天野が川名よりも上位で入賞しない限り、川名のチャンピオンが決定するという天王山だ。

 SS1で天野に対し4.0秒差のベストタイムを刻んだ川名は、翌日の土曜日も9本中6本のSSでベストタイムをマーク。レグ1を終えて天野に対し39.1秒のマージンを築き上げた。

 レグ2に入っても川名の勢いは止まらず、SS11から3連続ベストタイムをマークし、その差を56.2秒差にまで拡大。勝負はここで決した。大量リードを築き上げた川名に対し、SS14からSS18まで天野が反撃を開始し、その差を34.2秒まで縮めてくるものの、逆転するまでには及ばず。昨年は「速さはありながらも安定感に欠けている」という川名が、今年は第7戦まで一度も表彰台を外さない速さと安定感を発揮し、念願のクラスチャンピオンを獲得した。

 また3位には、ラリー北海道初挑戦となる若手有望株の加藤辰弥/松浦俊朗(マツダ・デミオ)が入賞する健闘をみせた。

JN1クラス:中西昌人が4年ぶりに優勝

 「ラリーGB出場に向けた練習のために走る」という大庭誠介/廣瀬香織(ダイハツ・ストーリア)が3度目となる現役復活(!?)を果たしたJN1クラスは、その大庭がSS1からトップを快走するが、SS5で突然エンジンがストップし、リタイアとなった。これで鷲尾俊一/内田園美(ダイハツ・ストーリア×4)がトップに上がるが、その鷲尾もSS9でショックアブソーバーが折れるというトラブルが発生し、ペースダウン。ここでベストタイムをマークした中西昌人/北川紗衣(スズキ・スイフト)がトップとなり、その後はトップの座を一度も脅かされることなく、JN1クラスを制した。

 この結果、シリーズポイントでは北海道を欠場した松岡竜也(ダイハツ・ストーリアX4)に鷲尾が一気に迫り、逆転優勝の可能性も見えてきた。

総合結果

出走44台/完走26台

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN4-1 勝田範彦/足立さやか インプレッサ WRX STI 2:27:03.2
2 JN4-2 奴田原文雄/佐藤忠宜 ランサー エボリューション X 2:27:04.2
3 JN4-3 柳澤宏至/中原祥雅 インプレッサ WRX STI Spec C 2:28:55.9
4 JN4-4 福永 修/奥村久継 インプレッサ WRX STI Spec C 2:31:59.4
5 JN4-5 高山 仁/竹藪英樹 インプレッサ WRX STI 2:34:11.7
6 JN4-6 今井 聡/田中直哉 ランサー エボリューション IX 2:38:33.8
7 JN3-1 関根正人/石田裕一 ミラージュ 2:44:45.7
10 JN2-1 川名 賢/安東貞敏 ヴィッツ 2:45:37.2
23 JN1-1 中西昌人/北川紗衣 スイフト 3:16:25.4

注)JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両(過給器つき車両は排気量×1.7で換算)

参考総合結果表: 2013_rd07(PDF)  2013_rd07(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

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