モントレー2016 in 嬬恋

開催日時:8月25日(木)〜28日(日)
開催場所:群馬県嬬恋村
スペシャルステージ本数:16本
スペシャルステージ総距離:68.775km
ラリー総距離:319.137km
SS路面:ターマック
SS路面状況:デイ1/ウエット、デイ2/ハーフウエット
ポイント係数:1.0

全日本ラリー選手権第6戦「モントレー2016 in 嬬恋」は8月25日(木)〜28日(日)の日程で開催され、新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)が終始安定した好タイムを刻み、今季2勝目を挙げるとともに昨年に続き雨のモントレーを制覇した。

ラリー概要

第3戦若狭以来のターマックラウンドとなる今回のラリーは、開催直前に局地的豪雨の影響を受け、SSに予定していた林道の路面が崩壊。そのため、急遽アイテナリーを変更して開催されることとなった。新たなアイテナリーは、2日間合わせて16SS(68.755km)を設定。初日にSajiki(5.222km)を4回(SS1/SS4/SS6/SS7)、Omae Suzaka Down(5.316km)を3回(SS2/SS5/SS8)、ラリーパークとサービスパークが隣接する特設ステージのSammy SSS(0.491)を2回(SS3/SS9)走る計9SS(37.818km)が設定された。Sammy SSSは、ラリーの拠点となるパルコールつま恋リゾートホテルの駐車場を利用したテクニカルステージだが、2本の林道ステージはいずれもシリーズのなかで平均スピードが高いことで知られる高速ステージだ。また、林道SSそれぞれの距離が約5kmと比較的短く、各SSで0.1秒を争う熾烈な戦いが展開されることが予想された。

天候は、シェイクダウンが行われた前日の雨がこの日も残り、終日雨と霧に覆われる状況に。特に午前中は雨足が強く、ターマックラウンドのなかでは今シーズン初のウエットコンディションで戦われることとなった。

デイ1

SS1は、ウエットコンディションとなった昨年のラリーも制した新井がベストタイムをマークし、トップに躍り出る。さらに新井はSS2とSS3で3連続ベストタイムをたたき出し、後続との距離を少しずつ広げていく。その後も新井はSS6で「スタートで3速に入ってしまった」とタイムロスするが、後続に5.1秒のリードを保ち、初日を首位で折り返した。2番手には、「レインタイヤを投入した作戦が功を奏した。もちろん、2日目は逆転を狙いますよ」という鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)がつけ、「うまく攻めることができなかった」というSS5でタイムを落とした奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX)が3番手、シリーズポイントトップの勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)は、「タイヤやクルマの問題ではなく、ドライバーが攻めきれなかった」と、新井から12.4秒差の4番手で初日を終えた。

FIAグループR車両がベースとなる5台のRR車両が出場して話題を集めたJN5クラスは、第5戦まで関根正人がドライブしていたシトロエンDS3 R3-MAXで出場した新井大輝/伊勢谷巧がSS1から快調に飛ばし、2番手の眞貝知志/漆戸あゆみ(アバルト500ラリーR3T)に25.1秒差の首位に立っている。シリーズポイントトップの柳澤宏至/中原祥雅(プジョー208 R2)は、「やはり高速ステージはR3車両が速いですね。今回はあまり無理せず、自分の走りに集中しようと思います」と、眞貝に8.1秒差の3番手につけている。GT86 CS-R3での初ターマック戦のステアリングを握った勝田貴元/足立さやかは、SS5後の愛妻の丘でのレストホルトでミッショントラブルによりリタイアとなった。

JN4クラスは、「今回のラリーに投入したレインタイヤが乗りやすく、ハイドロを気にせずに走ることができた」という石川昌平/石川恭啓(トヨタ86)が、5度のトップタイムで首位を堅持。横嶋良/木村裕介(スバルBRZ)が8.8秒差の2番手、曽根崇仁/桝谷知彦(トヨタ86)が3番手となっている。

シリーズポイントトップの天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツRS)がこのラリーで8.5点以上を獲得し、中西昌人/美野友紀(マツダRX-8)よりも上位に入賞すれば今シーズンのチャンピオンが確定するJN3クラスは、上りのSSで速い伏兵のAki HATANO/鷹巣恵鈴(マツダRX-8)が、下りのSSで速い内藤学武/小藤桂一を0.6秒差に抑え、初日のトップに立った。天野は、サスペンションのアライメントをラリー前に変更したことが裏目に出てしまい、「このラリーで勝てば開幕6連勝なんだけど、今回はタイトル獲得を目標にポジションキープに徹する」と、3番手で初日を折り返している。

JN2クラスは、ラリー転向1年目の山本悠太/内田園美(トヨタ86)と、速さに定評のある明治慎太郎/北田稔(トヨタ86)が激しいバトルを見せたが、「今まで、後半にズルズルとタイムが落ちてしまうことが多かったんだけど、今回はなんとか最後まで逃げ切ることができた」という山本がラリー序盤のマージンを活かし、初日のトップに立った。

JN1クラスは、鈴木尚/鈴木裕(スズキ・スイフトスポーツ)と須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)との師弟対決となったが、「最初のステージが勝負だと思って攻めた」という鈴木が、セッティングに苦しむ2番手の須藤に30秒以上の大差をつけるトップに立っている。

デイ2

30.957km(7SS)が設定された2日目、ラリーの拠点となる「パルコールつま恋リゾートホテル」周辺は、前日に続き終日霧雨が降るウエットコンディションとなったが、この日設定されたMihara Kadokai short(4.023km)とPanorama R(4.023km)、Omae Suzaka UP(5.737km)は、パルコールつま恋リゾートホテル側に近いOmae Suzaka UPのゴール付近以外は雨が上がり、路面の一部が乾くハーフウエットコンディションとなった。

この路面コンディションに対し速さを見せたのが、初日3位の奴田原だ。SSベストタイム2本を含み、この日のデイポイントトップを奪う奴田原は、SS12でフロントサスペンションを痛めてタイムが伸び悩んだ鎌田を一気に捉え2位にポジションを上げてくる。
一方、初日トップの新井も、この日オープニングとなるSS10でベストタイムを奪う盤石の態勢。その後もベストタイムこそなかったが、終始安定したペースで走り切り、2位に浮上した奴田原に対し5.5秒差をつけ、今季2勝目を挙げた。
「最終SSはエンジンのアンチラグが掛からなくて危なかったけど、それ以外はマシンもタイヤも安定して良かった」と勝因を語る新井。2位の奴田原は、「初日は攻め切れないところもあったけれど、2日目で2位に上がることができ、次につながった。ラリー北海道はシリーズを考えても大切な一戦なので、頑張ります」と、次戦に向けての抱負を語っている。また鎌田が順位を下げたSS12では、初日4位の勝田も3位に浮上。
「自分自身のドライビングやタイヤ選択がうまくいかず、いろいろと反省点が多い」という苦しい展開のラリーだったが、表彰台の一角をしっかりとつかんだ。

JN5クラスは波乱の展開となった。初日2位の眞貝に25.1秒差をつけるトップで初日を終えた新井は、この日も3本のSSでベストタイムを奪う快走を見せる。だが、最高速を下げるためのシケインがストレート区間に設置されたSS11で新井は、3本の規制パイロンをヒット。このシケインは、スタート前のドライバーズブリーフィングで“著しくパイロンにあたった場合は、競技長判断でペナルティを与える”とアナウンスされていたこともあり、このSSで新井は30秒のタイムペナルティを科せられることとなった。このペナルティにより、眞貝がトップに浮上。さらに新井と同様に3本のSSでベストタイムを奪う力走を見せ、最終的には1.2秒の僅差で今季2勝目を飾った。

また、3位にはシリーズポイントトップの柳澤が入賞。このラリーを4位で終えた大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)とのポイント差を拡大することに成功した。

JN4クラスは、初日2位の横嶋が2日目オープニングのSS10からSS13まで4連続ベストタイムをマークし、初日トップの石川との差を、1.9秒差まで詰めてくる。SS14は石川が横嶋に1.6秒差のベストタイムを奪い、SS15はSS11で起きたアクシデントの影響でキャンセル。3.3秒差で迎えた最終SSは、横嶋がスタートから約2km地点で痛恨のスピンを喫し、「最後までギリギリの戦いでしたが、なんとか逃げ切ることができてホッとしています。横嶋選手と良い戦いができて良かった。タイヤの使い方など、勉強になるラリーでした」と語る石川が逃げ切り、開幕戦以来となる今季2勝目を飾った。

今季、開幕戦から5連勝を挙げている天野がタイトルに王手をかけているJN3クラスは、初日を3位で折り返した天野が、SS12で内藤を捉え2位に浮上し、そのままフィニッシュ。タイトル争いではライバルとなる中西が6位でフィニッシュとなったため、シリーズ最大のヤマ場となる第7戦ラリー北海道を迎えることなく、早々と今シーズンのJN3クラスチャンピオンを決めた。
「SS1の失敗が最後まで影響したが、逆にSS1の失敗があったからこそ、優勝よりもシリーズチャンピオン獲得の方に気持ちを切り替えることができた」と天野。今シーズンの連勝記録は途絶えたが、価値ある2位入賞となった。優勝は、「目まぐるしくコンディションが変わる難しいラリーで、最後まで緊張感を緩めることができなかった」というAki HATANOが、初日のトップを守り切り獲得。3位には、「デイ2でプッシュ仕切れなかったことが残念」という内藤が入賞した。

JN2クラスは、初日トップの山本が、明治の追撃をかわし逃げ切りに成功。全日本ラリー参戦2戦目で全日本初優勝を獲得する快挙を達成した。「これまで経験したことがない速度域のラリーだったので、優勝はもちろんですけど無事に走り切ることができたことがなによりもうれしいです。いろいろ学ぶことが多いラリーでした。また全日本に出場するチャンスがあったら、優勝争いできるように頑張りたいです」と、今後の抱負を語った。

JN1クラスは、初日トップの鈴木が、SS11でクラッシュしてしまい戦線離脱するというまさかの展開となった。鈴木の脱落により、初日2位の須藤が今季3勝目を獲得するとともにシリーズポイントでもトップに躍り出るが、チームメイトのアクシデントに「(優勝は)素直に喜ぶことができない……」と複雑な表情をみせた。2位には、今季初登場の伊藤隆晃/大高直大が入賞。3位には、最終SSで伊藤に0.5秒差まで迫った小川剛/佐々木裕一が入賞し、シリーズポイントも2位に浮上した。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN6-1 新井敏弘/田中直哉 富士スバルアライモータースポーツWRX 41:31.8
2 JN6-2 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 41:37.3
3 JN6-3 勝田範彦/石田裕一 ラックSTI 名古屋スバル DL WRX 41:46.2
8 JN5-1 眞貝知志/漆戸あゆみ ABARTH500RallyR3T DL 43:39.9
13 JN4-1 石川昌平/石川恭啓 ARTAオートバックス86 44:40.3
16 JN2-1 山本悠太/内田園美 SammyルブロスK-oneYH86 45:04.1
27 JN3-1 Aki HATANO/鷹巣恵鈴 HAL SPRINGS RX-8 47:02.7
31 JN1-1 須藤浩志/新井正和 スマッシュBRIGコマツYHスイフト 47:47.4

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2016年 全日本ラリー選手権 第6戦 嬬恋

イベントフォト

JN6クラス優勝 新井敏弘/田中直哉