M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2016 Supported by Sammy

開催日時:10月14日(金)〜16日(日)
開催場所:岐阜県高山市
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離:88.14km
ラリー総距離:375.81km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.0

全日本ラリー選手権第8戦「第44回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2016 Supported by Sammy」は10月14日(金)〜16日(日)の日程で行われ、初日から首位に立った鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)がトップの座を守り切り、今季初優勝を飾った。

2014年はBRZで年間4勝を獲得して当時のJN5クラスチャンピオンを獲得した鎌田だが、総合優勝は2005年の第2戦福島、第3戦北海道以来、11年ぶり3回目となる。2位には勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)が入賞し、今回3位となったシリーズポイントトップの奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションⅩ)との差を7.1ポイント差に縮め、タイトル争いは最終戦まで持ち越されることになった。

デイ1

シリーズも残り2戦となり、シリーズポイント首位の奴田原と、同2位の勝田、同3位の新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)による三つ巴のチャンピオン争いが注目となった今大会だが、晴天に恵まれた初日はオープニングのSS1から鎌田がSS4まで4連続ベストタイムを奪い、ラリーをリードした。スタート前に、「以前からドライ路面のターマックセッティングは進んでいたけど、ここ最近は雨のターマックばかりだったのでうまく活かし切れなかった。今回はそれがどう活きるのか期待しています」と語っていた鎌田は、その言葉どおりにライバルを引き離していく。初日終盤のSS5とSS6は、「やっとペースを掴むことができた」と序盤に出遅れた勝田が2連続ベストタイムを奪い、シリーズポイントトップの奴田原を抜き2位にポジションを上げるが、その差は7.9秒。「2日目はペースの上がり具合を見ながら、奴田原選手の状況をチェックしながら自分のペースを決めたいと思う」と、あくまでもタイトル争いに照準を合わせる構えだ。3位の奴田原は、「なかなかタイムが上がらなくて大変だった。明日は頑張るしかない」と、5.0秒差の勝田を追う。

苦戦を強いられたのが第6戦のモントレーと第7戦の北海道を制した新井だ。最終戦までチャンピオン争いに加わるためにはこのラリーで勝つしかない状況の新井だったが、序盤からターボ不調に悩まされタイムが伸びず、初日はトップから40.8秒差の5位。「タイトル争いはかなり厳しい状態になったけど、最終サービスでタービンを交換したので、明日のパフォーマンスに期待するしかない」と、2日目の展開に期待をかける。

JN5クラスは、第6戦でパイロンペナルティで優勝を逃した新井大輝/小坂典嵩(シトロエンDS3 R3-MAX)が、初日すべてのSSでベストタイムを奪う快走を見せ、2位に1分28秒5もの大差を付け、初日トップの座を奪った。「フィンランドで実践してきたペースノートがかなりうまく機能したと思います。今回のラリーは同じSSを2回ずつ走る設定なんですが、1回目も2回目もそれほどタイムが変わらない。最初のペースノートでベストラインが取れているからだと思います」という新井(大)は、総合でも6番手という高いパフォーマンスをみせた。

一方、タイトルを争う柳澤宏至/中原祥雅(プジョー208 R2)と大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)の2台は、大倉よりも上位でフィニッシュすれば柳澤のチャンピオンが決定するが、大倉が柳澤を2.4秒差に抑え初日を2位で折り返した。「初日の最終SS(SS6)で失敗してしまい、柳澤選手に差を詰められましたが、明日に向けて気合いを入れ直します」という大倉と、「中盤からかなり頑張ってみたんだけど、大倉選手が予想以上に速かったですね。明日は足まわりのセッティングを少し変えてトライします」という柳澤の対決にも注目が集まる。

JN4クラスは、SS4で石川昌平/石川恭啓(トヨタ86)を捉えた横嶋良/木村裕介(スバルBRZ)がトップに浮上するが、SS6で石川が再逆転を果たし、2.1秒差で初日トップを奪った。一方、シリーズポイントトップの曽根崇仁/桝谷知彦(トヨタ86)は、同2位の山口清司/島津雅彦(トヨタ86)に30秒以上の差を付け3位。2日目も山口よりも上位でフィニッシュすれば、曽根のシリーズチャンピオンが確定する。

JN3クラスは、すでに今シーズンのタイトルを決めた天野智之/井上裕紀子が、2位の唐釜真一郎/松浦俊明(マツダ・デミオ)に1分30秒以上の大差を付ける独走態勢となった。JN2クラスは、タイトル争いを最終戦まで持ち越したい小濱勇希/馬場雄一(スバルBRZ)が、シリーズポイントトップの明治慎太郎/北田稔(トヨタ86)に33.7秒差を付けトップ。JN1クラスは、第6戦モントレーのクラッシュから復帰した鈴木尚/山岸典将(スズキ・スイフトスポーツ)と、第7戦北海道を制した須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)の師弟コンビが、1-2態勢を築き上げている。

デイ2

初日と同じく快晴に恵まれた2日目。この日も鎌田は好調をキープし、2日目オープニングのSS7と続くSS8を連取し、初日2番手の勝田との差を12.7秒に広げる。一方、勝田もSS9を制し反撃。さらに2ループ目に入ると奴田原が一気にペースを上げ、SS10でベストタイムを奪い2番手の勝田との差を3.1秒差に詰めてくる。勝田とともに奴田原も追い上げてくる展開となったが、「SS9は落ち葉があったので、念のためにペースを抑えましたが、あまり抑えすぎるのも逆に危ないので、序盤のペースをキープして走ります」という鎌田は、最終SS前のSS11で決定打ともいえる7本目のベストタイムをマーク。最終SSで勝田は鎌田との差を5.2秒詰めるスーパーアタックを見せるものの合計タイムでは3.1秒届かず、鎌田が11年ぶりとなる総合優勝を飾った。
「最後のSSは抑えながら、攻めるところは攻めながら走ったのですが、勝田選手もかなり攻めていたので、追い詰められてビックリしました(笑)。ホッとしたというのが正直な気持ちです。勝つことができて本当に良かった。ハイランドマスターズは昨年リタイアしているので今日のステージはあまり経験がないのですが、初日のステージとイメージを変えずに走り切れたことが良かったのと、今回は本当にクルマが良かった。仕上げてくれたチームスタッフに感謝しています」と喜びを語った。

2位の勝田は、「かなり攻めましたが、鎌田選手も速く残念ながら届きませんでした。でも、奴田原選手の上でフィニッシュできたので本当に良かった。最終戦で逆転するチャンスがあるので、全力で戦います」とコメント。3位の奴田原も、「最終戦は勝った方がチャンピオンになる状況なので頑張ります」と、チャンピオン争いの最終決戦に向けての意気込みを語った。

JN5クラスは、初日トップの新井(大)が、この日も次々とベストタイムを重ね独走。最終SSこそコバライネンに0.5秒届かずベストタイムを譲るが、エンジン不調に苦しみながらも総合4位でフィニッシュした父の新井(敏弘)に34.7秒差に迫る総合5位という好成績でクラス優勝を果たした。「今年1年間、海外のチームで難しいステージを走ってきたことが、少しずつ機能してきているような気がしています。自分のペースノートを信じながら走り続けました」と新井(大)。自身にとって初の全日本優勝を果たした。

一方、柳澤と大倉のチャンピオン争いは、SS10で大倉を逆転した柳澤が、大倉の追撃をかわし2位に入賞。有効ポイントの差で、柳澤が自身初となる全日本チャンピオンを獲得した。「今回で決めたかったので、嬉しいと同時にホッとしています。コ・ドラの中原さんのチャンピオンはまだ決まっていないので、最終戦もしっかりと走り切りたいと思います」と喜びを語った。

JN4クラスは、初日トップの石川を追いかける横嶋が、2日目オープニングのSS7で転倒リタイアという波乱の展開となった。横嶋の離脱により、独走態勢となった石川はこの日の6SS中5本のSSでベストタイムをマーク。初日のデイポイントを合わせて自身初となるフルポイントを獲得し、今季3勝目となった。2位には曽根が入賞し、自身初となる全日本チャンピオンの座を掴んだ。

JN3クラスは、チャンピオンの天野が、ギャラリーステージでアンダーガードをヒットして失うトラブルがありながらもライバルを寄せ付けず優勝。今季7勝目という圧倒的強さを発揮した。2位には、SS7で唐釜を逆転した島田章/内藤雄樹(マツダ・デミオ)が、昨年に続き2位に入賞。3位には「2日目はいろいろとミスがありすぎた」と嘆く唐釜が入賞した。

JN2クラスは、「チャンピオンを獲得するためには残り2戦でフルポイントを獲らなければならない」という小濱が、その言葉どおりに優勝を飾りフルポイントを獲得。最終戦は、今回2位に入賞した明治との決戦となる。また、「楽しく3位争いを展開することができた」という加納武彦/横手聡志(スバルBRZ)が、鎌野賢志/蔭山恵(トヨタ86)とのバトルの末、表彰台の一角を掴んだ。

JN1クラスは、初日トップの鈴木が、須藤を抑え、昨年に続き2連覇を達成。須藤との直接対決では初の師匠越えを果たした鈴木は、表彰台で「マシン製作を深夜まで手伝ってくれた仲間と、叱咤激励し続けてくれた師匠のおかげ」と感涙。最終戦はタイトルを懸け、師匠との対決となる。また、3位には若手ドライバーの伊藤隆晃/大高徹也を起用したプレイドライブ・ラリーチームの日産マーチNISMO Sが、チーム初となる表彰台を掴んだ。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN6-1 鎌田卓麻/市野 諮 SYMS TEIN DL WRX STI 1:05:00.4
2 JN6-2 勝田範彦/石田裕一 ラックSTI 名古屋スバル DL WRX 1:05:03.5
3 JN6-3 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 1:05:11.6
5 JN5-1 新井大輝/小坂典嵩 MATEX-ZEUS KYBDL DS3 1:06:52.4
11 JN4-1 石川昌平/石川恭啓 ARTAオートバックス86 1:09:20.8
12 JN2-1 小濱勇希/馬場雄一 YH フェイスクラフト BRZ 1:09:54.2
18 JN3-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツRS 1:11:31.5
20 JN1-1 鈴木 尚/山岸典将 スマッシュ DL itzzコマツスイフト 1:12:18.1

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2016年 全日本ラリー選手権 第8戦 高山

イベントフォト

JN6クラス優勝 鎌田卓麻/市野諮