Sammy久万高原ラリー

開催日時:5月18日(金)〜20日(日)
開催場所:愛媛県久万高原町
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離: 67.82km
ラリー総距離: 196.60km
SS路面:グラベル
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.2

全日本ラリー選手権第4戦Sammy久万高原ラリーはすべての競技を終えて、スバルWRX STIの新井敏弘/田中直哉が初日のリードを広げて2018年シーズン初優勝を達成した。2位は奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションⅩ)、僅差の3位には勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)が入った。

レグ1

ラリー初日となる19日(土)は朝から晴れ上がり、久万高原町役場でのセレモニアルスタートは好天のもと開催された。4年ぶりにグラベルでの開催となる久万高原ラリーは、ラフな路面が特徴として知られており、サバイバルラリーとなることが予想された。この日のSSは、3SSを2回ずつ走行する6SS。18日(金)の夜に降った雨が路面を柔らかくし、レッキ時とは異なるコンディションをもたらした。このことがさらにラリーを難しいものとし、初日を終えて12台がレグリタイアを喫する波乱の展開となっている。

JN6クラスで序盤に速さを発揮したのは、新井敏弘と柳澤宏至/加勢直毅のスバル勢。新井はSS1、2で連続ベストタイムを刻んでラリーをリード、今シーズンの初優勝に向けて好調な出足となった。しかし、ギャラリーステージとなるSS3で、スタート直後のタイトコーナーでブレーキラインを切ってしまうトラブルに見舞われる。サービスでマシンを修復した新井は、SS5でもベストタイムをたたき出す快走で2番手につける奴田原との差を18.2秒とした。新井は「リードを守ることができた。午後は路面コンディションがかなり悪く、轍もできていたので様子を見ながら走った。午前中のブレーキトラブルは、サービスで直したので問題ないよ」と手応えを語る。何度かコースアウトしそうになったという2番手の奴田原は「色々と試しているんだけど、もう少しタイムが上がってほしい。明日も頑張って、最後まできっちり走り切りたい」とコメント。

JN5クラスは小濱勇希/草加浩平(シトロエンDS3 R3-MAX)と横嶋良/木村祐介(プジョー208 R2)の一騎打ちに。リードする小濱は「午前中よりも午後の方が、マシンやタイヤをコントロールする自信を持ってドライブできました。競っているライバルもいるので、しっかり走って、トップで帰ってきたいです」とコメント。追いかける横嶋は、昼のサービスでセッティングを変更。「セッティングを変えてもらって、かなり走りやすくなりました。しっかり走って、小濱選手との差を逆転できるように頑張ります」と意気込みを語っている。ヴィッツGRMNラリーの眞貝知志/安藤裕一は、SS4でマシントラブルによりレグ離脱。車両を修復して2日目の出走を目指す。

曽根崇仁/澤田耕一(トヨタ86)がリードするJN4クラス。新型車を投入した高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)と、第2戦優勝の山口清司/山本磨美(トヨタ86)が追いかける展開となっている。曽根は、「初日のステージは、レッキの段階から路面コンディションが悪くて前走車が走った後はどうなるかな……と思ったけど、予想以上に悪かったですね。大きな岩などが出ていたので、それを避けながら走りました。このラリーのキモとなるステージをクリアしたので、明日はクルマを壊さずにしっかりフィニッシュまで運びたいです」とラリーを振り返った。

JN3クラスをリードする天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR SPORT“GR”)は、総合順位でも9番手と好走。クラス2番手には大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)、3番手には岡田孝一/多比羅二三男(マツダ・デミオ)という順位。「道が悪かったので、壊さないようラインに気をつけて走りました。タイムは出ているので悪くないですね」と、クラス首位の天野は語る。

3台が生き残っているJN2クラスは、戸塚和幸/北村飛翔(スバルBRZ)がトップ。2番手には長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)、3番手には青木拓磨/桝井和寛(トヨタ86)となっている。戸塚は「今日の後半にセッティングを変えたことで、タイムがだいぶ良くなって、ドライブしていても楽しかったです。明日もこの調子で、コースから外れないようにしたいです」とコメントしている。また、全日本ラリー選手権初参戦となる青木は「ターマックラリーはもちろん、クロスカントリーとも違うグラベルラリーの難しさを感じています」とコメントしている。

JN1クラスはスズキ・スイフトスポーツの古川寛/廣田幸子が大きくリードを築き、2番手には伊藤隆晃/大高徹也(日産ノート)、3番手には小川剛/佐々木裕一(ホンダ・フィット)。想定どおりの路面コンディションだったと語る古川は、「マージンを築くことができました。クルマを壊さないように、しっかり走りました。全開では走っていないので、このまま目指せ完走です。明日は築いたマージンを切り崩しながら、最後まで壊さず勝ちたいです」と自信を覗かせた。

レグ2

競技最終日となる5月20日(日)も前日同様快晴に恵まれ、ラリーはスタートした。最終日はSS7〜SS12の6SS、28.14kmで争われる。一部のSSでは前日走行したコースを逆走方向に走行する区間もあるため、路面が荒れていることが予想された。

初日をJN6クラス首位で終えた新井は、この日のオープニングステージSS7で幸先の良いベストタイム。続くSS8でも一番時計をたたき出し、追いすがる奴田原を突き放しにかかる。スタート時点で18.2秒だったふたりの差は24.8秒に拡大していた。しかしギャラリーステージのSS9で、新井のマシンに初日と同じブレーキラインのトラブルが発生したため、奴田原のタイムよりも7.0秒遅れてフィニッシュ。この段階でふたりの差は17.8秒に縮まった。昼のサービスを挟んだSS10は奴田原、SS11は新井、最終SSのSS12は奴田原と、両者一歩も退かぬ走りを見せたものの、新井は再び奴田原との差を広げ、最終的には22.4秒差で新井が今シーズン初勝利を獲得した。また、この日は3番手につけていた勝田が上位タイムを並べ、一時は2番手の奴田原に3秒差と迫る好走。レグ2首位となりレグポイント3点を獲得してみせた。これでJN6クラスは4戦を終えて4人目の勝者が誕生。選手権はあと6戦残されており、誰が勝ってもおかしくない状況が続きそうだ。

新井は「ようやく勝てた。今日のレグポイントを獲れなかったのは、今後のことを考えると少し厳しいかもね」とコメント。今回のラリーではブレーキラインが切れるトラブルが2度起きており、今後グラベル連戦に向けてトラブルの種は完全に消しておきたいところだ。

小濱勇希/草加浩平(シトロエンDS3 R3-MAX)と横嶋良/木村祐介(プジョー208 R2)の一騎打ちとなっていたJN5クラスは、小濱が逃げ切り勝利。小濱は「クルマとタイヤのポテンシャルを引き出しきれていない自分がもどかしかったです。ただ、最後まで横嶋選手と戦ったことで、全開で走り続けることができました。そのおかげで、色々分かったことがありました。やはりラリーは本番を全開で走らないと、分からないことがたくさんありますね」とコメントしている。前日、マシントラブルでレグ離脱を喫した眞貝知志/安藤裕一はこの日もトラブルに見舞われることに。眞貝は「競技スピードで走ることがほとんどできませんでしたが、足まわりやエンジンなどのポテンシャルは感じることができました」と語った。

JN4クラスは前日からのリードを保ち、曽根崇仁/澤田耕一(トヨタ86)が今シーズン初優勝。2位には終盤で再逆転を果たした上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)、3位には新車で参戦した高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)が入っている。曽根は「とにかく道が悪く、パンクを避けるように走りました。なんとかノートラブルで走ることができて良かったです。モントレーのグラベルは初めてなので、まずは上位入賞を目指して、マシンをしっかり準備したいです」と、次戦に向けての意気込みを語った。

JN3クラスは「クルマを労わるのが大前提なんですが、遅くすればいいというわけではないので、本当に難しいです」と語っていた天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)が貫録のフルポイント勝利。クラス2位には、今季初出場となった大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)、3位には0.2秒差で岡田孝一/多比羅二三男(マツダ・デミオ)を下した藤田幸弘/藤田彩子(マツダ・デミオ)が入っている。「タイム的には悪くないラリーだったと思います。ラリー進行関係のトラブルもあったので、もうちょっと気持ちよく戦いたいですね。モントレーも頑張りたいと思います」と今季も向かうところ敵なしだ。

2台が生き残ったJN2クラスは、TGRラリーチャレンジからステップアップ参戦した長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)が全日本選手権での初勝利を達成した。2位は青木拓磨/桝井和寛(トヨタ86)。長﨑は「色々なことがあったタフなラリーでした。完走できたのは、ひとつ大きな成果だと思います。全日本3戦目で勝てたのは、運が良かったとしかいいようがないです。今回グラベルで色々と試すことができましたが、次のモントレーもまずは完走を目指します」と喜びのコメント。全日本ラリー初参戦となる青木は「これまでラリーレイドなどにも参戦してきて、荒れた路面は経験してきましたが、一般車両ベースのラリーはやはり違いますね。このような環境で鍛えられることで、市販モデルも改善されていくのだと感じました。私は足がまったく動かず、運転補助装置を使って手だけで運転しています。そんな私が入賞や表彰台に上がれるところまで来られました。もっとドライビングの精度を上げて、また全日本選手権に挑戦したいです」と、今後への意欲を語っている。

古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)が初日のリードを守り切って今季2勝目を挙げたJN1クラス。順位は前日と変わりなく、2位に伊藤隆晃/大高徹也(日産ノート)、3位に小川剛/佐々木裕一(ホンダ・フィット)が入っている。古川は、「自分が知っている四国とは違うタフなイベントでした。かなり荒れていました。でも、クルマのことを考えなければ、嫌いじゃないステージですね。モントレーはグラベルよりも、その中にあるターマックセクションが少し心配です」と、ラリーを振り返った。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN6-1 新井敏弘/田中直哉 富士スバル AMS WRX STI 1:09:23.0
2 JN6-2 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 1:09:45.4
3 JN6-3 勝田範彦/石田裕一 ラックSTI 名古屋スバル DL WRX 1:09:48.5
8 JN3-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツ 1:17:25.2
9 JN4-1 曽根崇仁/澤田耕一 P.MU☆DL☆SPM☆INGING86 1:17:29.9
10 JN5-1 小濱勇希/草加浩平 KYB DUNLOP DS3R3TMAX 1:18:07.7
14 JN1-1 古川寛/廣田幸子 スマッシュDLインディゴパワースイフト 1:19:18.5
25 JN2-1 長﨑雅志/秋田典昭 名古屋トヨペット NAVUL 86 1:22:44.3

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2018年 全日本ラリー選手権 第4戦 久万高原

イベントフォト

JN6クラス優勝 新井敏弘/田中直哉

JN5クラス優勝 小濱勇希/草加浩平

JN4クラス優勝 曽根崇仁/澤田耕一

JN3クラス優勝 天野智之/井上裕紀⼦

JN2クラス優勝 長﨑雅志/秋田典昭

JN1クラス優勝 古川寛/廣田幸子