総合1位(JN4クラス1位)勝田範彦/足立さやか

インプレッサ同士の壮絶なバトル
勝田範彦が0.8秒差で逃げ切り今季2勝目!

開催日時:6月2~3日
開催場所:福島県東白川郡棚倉町周辺
スペシャルステージ本数:16本
スペシャルステージ総距離:63.43km
ラリー総距離:2デイ4セクション 441.57km
SS路面:グラベル(未舗装路)
SS路面状況:デイ1ドライ、デイ2ウエット
ポイント係数:1.5

ラリー概要

全日本ラリー選手権第3戦は、開催地を福島県に舞台を移し開催された。棚倉町をホームタウンとするこのラリーは、昨年から大会名に「がんばろう!福島」の冠タイトルが加えられ、ラリーを通じて地域住民とともに震災復興、風評被害払拭への機運を高めようという願いが込められたイベントとなっている。

16本のSSが棚倉町、いわき市、古殿町、鮫川村の1市2町1村に配された今年のラリーは、SSの総距離が63.43kmとコンパクトな設定ながらも、ラリールートは441.57kmという広範囲にわたって走行するという設定だ。そのなかには毎年ギャラリーから好評を得ているルネサンス棚倉や三株高原のギャラリーステージに加え、昨年新たに設置された「鹿角平観光牧場」のラリーパーク、今年新登場の「三和ふれあい館」のラリーパークなどが設定され、県外からラリー観戦に訪れるギャラリーだけではなく、地域住民もラリーと触れ合う機会が設けられている。

参加台数は、全日本ラリー選手権、イノベーション(選手権外クラス)、併催された東日本ラリー選手権を合わせ、総勢67台がエントリー。そのなかには、2008年アフリカラリー選手権チャンピオンの三好秀昌が話題のトヨタ86で、またWRCやPWRCで活躍した鎌田卓麻がGRBインプレッサで全日本ラリーに本格復帰と、話題の多いラリーとなった。

JN4クラス

デイ1のセクション1に6.18kmと8.50kmのSSを2ループするという、ラリーがスタートした直後にいきなり最大のヤマ場が訪れるという今回の設定、そのファーストループで2011年チャンピオンの勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサWRX)が連続してステージベストを奪い、ラリーの主導権を握る。だが、続くセカンドループでは、「ファーストループではセンターデフのセッティングが合わず、セカンドループに入る前に設定を変更した」という柳澤宏至/中原祥雅組(スバル・インプレッサWRX)が逆襲。ファーストループを終えたSS2終了時点では7.2秒あったタイム差を、セカンドループを終えたSS4終了時点には1.4秒差にまで一気にタイム差を詰めてきた。

一方、注目の鎌田卓麻/竹下紀子組(スバル・インプレッサWRX)は、SS1では柳澤と同タイムの3番手タイムをマークするが、SS2でドライブシャフトを破損し、早々とデイ離脱してしまうというほろ苦い復帰戦となってしまった。

また、第2戦久万高原を制した奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)は、SS1では勝田に0.6秒遅れの2番手タイムをマークするものの、その後ジリジリと後退。「コースがランサーよりもインプレッサに合っている」と言う奴田原は、SS4を終えた時点でトップの勝田に13.0秒遅れの3番手につける。以降、4番手に今季初登場のベテラン大嶋治夫/井手上達也組(三菱ランサーエボリューションX)、5番手に若手の牟田周平/加勢直毅組(スバル・インプレッサWRX)、6番手に福永修/奥村久継組(スバル・インプレッサWRX)、7番手に杉村哲郎/立久井和子組(スバル・インプレッサWRX)、8番手に高山仁/河野洋平組(三菱ランサーエボリューションVII)、9番手に小舘優貴/館山昌靖組(スバル・インプレッサWRX)がつける。5番手の牟田から9番手の小舘までのタイム差が約10秒という僅差の勝負に加え、デイ1セクション2以降はショートレンジのSSが続くということもあり、こちらの勝負も最後まで目が離すことができない展開となった。

デイ1セクション2は、0.5kmのギャラリーステージと4.30kmのグラベルとターマックがミックスされたステージを2ループする設定だ。ここでは勝田が柳澤とのタイム差をジワジワと引き離し、タイム差を3.1秒差まで広げ、デイ1を終える。

一方、上位2台とのタイム差を縮めたい奴田原だが、SS8前のTC8でエンジンが始動しないというトラブルが発生。なんとか再スタートはするものの、TC8で4分遅着(40秒)のペナルティを受けてしまい、逆に上位2台とのタイム差は大きく広がってしまうという結果となった。ただし、デイ1最終SSとなるSS9のスタート直後に大嶋がミッショントラブルのためストップしてしまったため、順位は3番手のままデイ2を迎えることとなった。

また、6台による4位争いは、アンダーステアに苦しむ牟田を逆転した福永が4番手に浮上、サービスでオーバーヒート症状を改善した高山がSS8、9で連続ステージベストを奪い5番手に浮上、杉村が高山に0.8秒差の6番手と、1.5秒の中に3台が並ぶという熾烈な戦いとなった。

迎えたデイ2、ここから2番手の柳澤が奇跡的な逆襲をみせる。SS10は勝田と同秒、SS11では勝田に0.8秒遅れた柳澤だったが、SS12で1.1秒、SS13で0.8秒、SS14で0.2秒、SS15で0.5秒と、デイ1終了時では3.1秒あったタイム差を1.3秒にまで縮め、最終SSを迎える。

全力で追い上げる柳澤と全力で逃げる勝田との勝負は、柳澤が0.5秒タイム差を詰めるものの、わずかに0.8秒届かず。結果的にはデイ1の前半で築いたマージンを活かし、勝田が今季2勝目を飾った。

一方、3台に絞られた4位争いは、好タイムを連発した高山が獲得。上位3台とは1分以上のタイム差はあったものの、苦手のグラベルで貴重なポイントを計上した。

また、ドライブシャフトトラブルによりデイ1を離脱した鎌田は、復帰したデイ2すべてのSSでステージベストをマーク。第4戦洞爺に向け、しっかりとその速さを見せつけてくれた。北の大地決戦第1ラウンドは、勝田、柳澤、奴田原の3強対決に加え、4強によるトップ争いが予想される。

JN3クラス

トヨタ86が2台に増えたJN3クラス。注目の86対決は、アフリカラリーチャンピオンの三好秀昌/保井隆宏組が前半をリードするものの、「ウエットタイヤを装着したが、ステージの路面コンディションが予想以上にドライで、セカンドループに入る前にタイヤを使い切ってしまった」と後退し、SS4で香川秀樹/浦雅史組が逆転、デイ1を終了した時点で香川が三好に対し4.4秒のマージンを築いた。

だが、デイ2では「なるべくテールを滑らせないように走り方を変えた」という三好が香川を逆転し、最終的には香川に8.5秒差をつけ、三好がクラス6位でフィニッシュした。

JN3クラスのトップ争いは、スポットながらもここ数年、必ず優勝争いに加わっている上原利宏/郷右近孝雄組(ホンダ・シビック)が、路面が深く掘れガレ場と化したデイ1セクション1のステージで、ワダチの縁を巧みに使うベテランらしい走りでトップをキープ。第2戦優勝の村田康介/北川紗衣組(ダイハツ・ブーンX4)を2.4秒差に抑え、デイ1をトップで折り返す。

だが、このタイム差は4WD車の村田にとっては射程圏内。「ワダチの深いステージでは上原さんに分があるかもしれないが、デイ1では無理をせずにデイ2で一気に勝負に出るのが僕の作戦」と村田は、第2戦と同様にデイ2で一気に勝負に出る。

一方の上原も、「デイ1はガレ場が多く、クルマを壊さない程度に走っていたつもりが予想外のトップ。ここ数年、デイ1で無理をしすぎて優勝を逃してしまうラリーが多かったので、今回も最初からデイ2で勝負するつもりだった。これ以上のチャンスはないので、デイ2は全力で攻めます」と、勝負所はデイ2という作戦だ。

ふたりのガチンコ勝負となるはずのデイ2だったが、結果は予想外の展開となる。デイ2序盤は一進一退の攻防をみせた両者だが、トランスファーを破損しFF状態となってしまった村田が徐々に後退。結局、タイム差は13.3秒差に拡大し、上原が2輪駆動部門時代以来となる全日本優勝を手に入れた。

また、3位には宇田圭佑/石川恭啓組(ホンダ・インテグラ)が第2戦に続き連続入賞、開幕戦優勝の眞貝知志/田中直哉組(ホンダ・インテグラ)が入賞と、シリーズポイント争いもさらに激化しそうな展開となった。

JN2クラス

昨年、圧倒的速さでJN2クラスのタイトルを奪った天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツ)だが、今季はシリーズポイントでは僅差でトップに立つものの、第2戦まで未勝利と、天野らしい速さはみせていない。だが今回は、昨年までの“強い天野”を存分に見せつけてくれた。

「ライバルたちが速くなることを想定して、こちらもデフの効かせ方を変えたり色々セッティングを変え、昨年以上の速さを求めてきた。でも、結果的にはそれが裏目に。今回は考え方を変え、昨年までのぶっちぎりの勝ち方ではなく、1秒差でも2秒差でも勝ちは勝ちというオーソドックスなセッティングに戻してきた」という天野は、序盤から好タイムを連発し、デイ1終了時点で早くも2番手に33.3秒のタイム差をつけ、トップに立つ。こうなれば、もうすでにラリーの展開は天野の手中にある。デイ2は2番手とのタイム差をみながらマージンを活かし切り走破。久々に天野らしい勝ち方で、今季初優勝を奪った。

2位争いは、デイ1の中盤までは第2戦優勝の高橋悟志/箕作裕子組(トヨタ・ヴィッツ)がポジションを死守するものの、SS8で川名賢/小坂典嵩組(トヨタ・ヴィッツ)が高橋を9.6秒上まわるタイムをたたき出し一気に逆転。デイ2もそのまま逃げ切り、入賞を果たした。

JN1クラス

昨年、SS内で発生した事故により重傷を負った鷲尾俊一がダイハツ・ストーリアで1年ぶりにラリー復帰を果たしたJN1クラス。開幕戦から3戦連続のクラス成立となり、今年はシリーズを通してもクラス成立も期待される。

ラリーは、第2戦で2位に入賞した葛西一省/安田弘美組(ダイハツ・ストーリア)が快走。「新しい仕様のショックも良かったし、なによりも丈夫なクルマを作ってくれた仲間のおかげ」という葛西は、10本のSSでステージベストを奪い、2位の高篠孝介/出口毅巌組(トヨタ・ヴィッツ)に34.7秒差をつけ、今季初優勝を飾った。

また、3位には2本のSSでステージベストをマークした鷲尾が入賞、復帰戦で無事完走を果たした。

総合結果

出走42台/完走32台

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN4-1 勝田範彦/足立さやか ラック名スバルSTI DLインプレッサ 57:58.3
2 JN4-2 柳澤宏至/中原祥雅 CUSCO ADVAN インプレッサ 57:59.1
3 JN4-3 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN PIAAランサー 59:06.1
4 JN4-4 高山 仁/河野洋志 DL☆OF☆レイルCL☆ハセプロランサー 59:28.3
5 JN4-5 杉村哲郎/立久井和子 TZZ☆DL☆KYB☆WAKO’S☆LFインプレッサ 59:33.7
6 JN4-6 福永修/奥村久継 ハセプロCL☆DLインプレッサSTI 59:44.2
13 JN3-1 上原利宏/郷右近孝雄 BF-アクションDLシビック 1:02:43.3
17 JN2-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・ラック・DL・ヴィッツG’S 1:04:27.1
33 JN1-1 葛西一省/安田弘美 F1オートテイン兄貴ストーリア 1:09:33.2

注)JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両(過給器つき車両は排気量×1.7で換算)

参考総合結果表: 2012_rd03(Excel) 2012_rd03(PDF)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

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