第7回役員会(主要メーカー会員・役員合同会議)の要約

● 2000年12月20日(水)午後1時~3時30分 於JAFモータースポーツ局内A会議室

1. JRCAと国際ラリー
北海道と群馬で国際格式のラリーが開催されるという情報があるが、これらのイベントがきちんと企画運営されるものならば、世界とつながる動きであり、JRCAとしても歓迎する。JRCAは全日本ラリーの発展を目的とする団体だが、これらの企画の意図するものが我々が目指すところと同じであるのなら協力したい。しかし、今の段階ではどちらのイベントについても情報があまりにも断片的すぎて、いかんともしがたい。
現在のところ、役員の中には個人的に国際ラリーの企画に協力している者がいるが、JRCAとして協力しているわけではない。それを混同して『JRCAが関わっている』という誤解も一部にある。これについては立場を明確にする必要がある。
より包括的な情報を得るためと、趣旨に賛同できれば協力したい、という姿勢をはっきり表明するために、主催者に対して、『協力したいので、企画について詳しく教えてほしい』という申し出をすればよいのではないか。外国人スタッフが細部まで指導するというのなら、協力することによって学ぶことも多いと期待する。
2. JRCAの活動に対する各メーカーからの意見、要望
・「モータースポーツ予算は年々厳しくなっており、その中でレース、ラリーなどそれぞれの部門が予算の取り合いをしている。今の状況では、全日本ラリーは費用がかかるわりには効果が少ない。社内の協力を得たり、重要な取引先の理解を得るには、全日本ラリーがメジャーになってもらわなくてはならない。盛況になれば、我々も非常にやりがいがある。
 ワールドラリーカーズフェア、チャンピオンズミーティング、インプレッサミーティングなどを見ていると、お客さんが多く、活況を呈している。『競技』というものとは方向がちがうかもしれないが、できるならばそういう方向も検討してほしい。そういった意味で、アンケートの答えの中にある、『スタートは町の中で盛大にやるべきだ』とか『ラリーグッズのお店を出してはどうか』というふうな考え方は歓迎する。」

・ 「これまでのJRCA役員の努力には素直に頭が下がるが、報告書を見ていて懸念することがある。それは、JRCAの活動がトップドライバーにとって都合のいい方向に走りすぎているのではないかということだ。日本のラリー界全体の振興、底辺までの振興を考えた議論が抜けていると感じる。フィールド確保の困難、車両費用の増大に加えて、若い人が出て来られない構造的な問題があると思う。メーカーの立場からすると、まずそちらの議論をしてほしい。底辺が広がり、ラリー人口が増えて、パーツやタイヤの売り上げが増える、そういうことをこそめざすべきではないか。今の状況では、出て行くばかりで見返りがない。」

・ 「メーカーがラリーに参加するのは製品を売るためである。JRCAが全日本に重点を置くという考えは理解できるが、われわれとしては、底辺が活性化して、製品がより多く売れることを期待して参加している。ワールドラリーカーズフェアやインプレッサミーティングには多くの人が集まるが、彼らは我々の製品の購買層ではない。もしもラリーに簡単に入り込める環境があれば、彼らは入って来ると思う。しかし現実には国内ではラリーに入る人は非常に少ない。そこには、入り込めない事情があるのだと思う。企業は利益の中でしか活動できない。逆に、製品が購入されるようになれば予算も増えるはず。底辺拡大を念頭に置いた全日本ラリーの活性化であれば、協力していきたい。」

・ 「今年の後半からラリー担当になり、全日本ラリーは一度しか行ってないが、他のイベントと比べると、あまりきっちりしていないと感じることがよくある。たとえば、なぜ車検が終わってクルマがパルクフェルメにあるのに、そこでタイヤ交換をしているのか、と非常に不思議に思った。選手の意識改革をはじめとして、イベント全体を、見られることを意識したものに変えて行く必要があると思う。」

・ 「JRCAが全日本を発展させることを目標としているのは、頂点が光れば自然に底辺が広がるということを期待してのことだというが、逆に、底辺が広がれば頂点が光るとも言える。これはニワトリと卵で、どちらが先とも言えないだろう。しかし、効果をあげるためには、両方を一度にしていくべきではないかと思う。」

・ 「JRCAは全日本を発展させるための会と限定しないで、ラリーそのものを活性化する会としたほうが、多くの企業の支持も得やすいのではないか。」

・ 「イメージが大事というのももっともだが、イメージだけでは無理だとも思う。たとえば、タイヤ全体の売上に対するラリータイヤの売上は確かに少ないかもしれないが、ラリーと全然関係のないタイヤが売れても、ラリーによるイメージアップでタイヤが売れたとは言いにくい。」

・ 「当社はラリー用部品とレース用部品を出しているが、それらを買うお客さんのうち実際に競技に出ている人はほんの一部で、たいていは『まがい』の人達だ。しかも以前の調査では、その割合はラリーのほうが圧倒的に高かった。毎年1月に開催している『オートサロン』でも、『参加したい競技は?』というアンケートに対して、ラリーと答える人が一番多かった。ところが、最近はサーキット走行会の増加によってレースそのものがより身近に感じられるようになり、『レースまがい』の人が増えている。以前に『ラリーまがい』だった人たちはRVに流れてしまい、ラリーが中途半端になってきた。しかしラリーが『見せる興行』として成り立てば、潜在ユーザーを増やすことはできるだろう。今はとにかくあまりにも知られていないし、観客がいない。」

・ 「今の全日本ラリーは、道楽者が集まって好きなことをやっている閉鎖的な社会に見える。ところが閉鎖的な割にはバラバラで、この会合にもたったこれだけしか出席していない。主催者も出場者もラリーの発展を願っているのなら、WRCが日本に来ることの是非をもっと真剣に議論すべきではないのか? F1を見せた後のフォーミュラニッポンの二の舞になる可能性もないとはいえまい。」

・ 「エントラントと主催者は本来永久に対立関係にあるものだと思う。その対立を解消するには、『観客を集める』ということを共通の目的にしていけばいいのではないか。」

・ 「二駆、四駆関係なく、ラリー全体の振興を考えたほうが、支持は得やすいと思う。たとえば、二駆用のパーツしか出していない会社では、四駆だけを対象にした団体には協力しにくい。そういう会社がラリーとのつながりを維持していくには、JRCAが二駆をも含めた活動をすることが望ましい。」
これらについての役員の説明または議論の結果は以下のとおり。

・ JRCAが全日本四駆を活動の中心としていることについて
 日本のラリー全体がよくなってほしいと願うのは当然のことだが、それを考えるのはJAFの仕事で、JRCAがそこまでするのはおこがましいのではないかという遠慮がまずあった。また、地方のクラブやJMRCにプレッシャーを与える存在になってはならないとも考えた。彼らに対して何かを押しつけるものではないということを、はっきり示す必要があった。
 さらに、現段階ではいろいろなラリー形式が混在しているという状況がある。地方のクラブの中にはSS主体のラリーができないところも多い。そういうクラブの存在を否定するわけにはいかない。かといって、SS主体のラリーでなければ、広く一般の人に魅力をアピールできない。
 これらの事情をふまえて、対象を全日本だけに絞った。四駆部門だけで発足したのは、自分たちの力でできる範囲からまず取りかかろうと考えてのことで、二駆部門の人達が参加し協力してくれれば、それに越したことはない。

・ 頂点の活性化と底辺拡大の優先順位について
 モータースポーツはピラミッド型構造をしていて、頂点が光れば光るほど全体が発展する。上を活性化することによって全体を活性化しようというのが現在の活動方針。その一つとして全日本ラリーを見せるチャンスを作り、見に来る人が増えることでラリー全体の人気が高まることを期待している。
 底辺を無視しているのではなく、日本のラリー全体の活性化のために、まず頂点を光らせる方法を模索しているのであり、基本的な考えは同じと思う。今はこういうアプローチをとっているが、もしもこの方法で裾野が広がらなかったら、別のことをやってみなければならないだろう。

・ 購買層と競技人口
 たとえば、インプレッサミーティングに来る人たちには、実際にラリーをやっている人はほとんどいない。しかし彼らは自分のクルマをWRCのワークスカーのようにするためにお金をかける。実際にラリーに出場しなくても、全日本ラリーのファンがそういう形で増え、それがパーツやタイヤの売上につながるのなら、それは歓迎すべきことであろう。
 しかし、世界で活躍する選手を生み出し、ラリーというスポーツそのものを発展させるには、やはりこの競技への新規参入者を増やす必要がある。つまり、サポーターとしてラリーを応援する人やマネをしてモノを買う人たちの層と、走ることが好きでラリーに参加する人たちという二つの層を取り込まなくてはならない。
 頂点を光らせることでラリードライバーへの憧れを持たせ、自分もそうなりたい、という気持ちをより多くの若い人たちが持つように、というのが現在すすめようとしていることの趣旨だが、参入した若い人たちにラリーを続けてもらい、より早く芽を出せるようにするには、公平な競技環境を作っていくことが必要だろう。たとえば、タイヤの使用本数や車両の改造レベルは、より制限する方向が望ましいのではないか。

・ 興行としての魅力アップで、より広い層へのアピールを
 日本ではまだ実現していないが、WRCでは、最初は『親類縁者』のすべてを動員してスポンサーになってもらったチームも、実績ができるとラリーと関係のないところからスポンサーが取れるようになった。このように、関連のない企業にとっても魅力あるものにならないと、発展は望めない。
 ラリーは身体一つでできるものではなく、クルマを使うからお金がかかる。走る側、運営する側、全体にお金がまわるシステムにしていきたい。
 現在の国内ラリーはアマチュア主催者の努力のみに頼って運営され、経済的制約からできることも限られており、企業体によって運営されているレースとは事情が大きく異なる。メーカー側から見た印象として、「他のイベントと比べてあまりきっちりしていない」と映ったのは、そういう事情が原因と思われる。WRCではラリーの主催団体も企業になっている。そういうふうにするほうが、興行としての運営もよりやりやすくなるのではないか。

・ 主催者、企業も会員となっているJRCAならではの協力体制を築きたい
 JRCAは出場者、主催者、企業という、ラリーに関わる者全員が参加しているので、みんなの共通認識として話し合いをすすめていける。JAFもこの団体を認知してくれているので、主催者にも企業にも、会員としてどんどん意見を出してもらい、それを全日本ラリー関係者の声としてJAFに伝えていきたい。
 今年の7月に発足して半年たったが、これまで試行錯誤の連続だった。何事もやっている本人はとかく視野が狭くなりがち。そうならないためにも、周囲から口を出して軌道修正をしていってもらいたい。
 ラリーグッズの店を出す、といったような、より来やすくする演出については、メーカーにお願いしたいこともいろいろ出てくると思う。また、エントラントとしては見世物として走るという協力もできる。まずは、観客を集めて、より多くの人に見てもらうことが第一歩だと思う。
3. その他
(1) ホームページへのバナー広告掲載に対する広告費を会員企業から募るという案について、「少なくとも、観客の来ないイベントのプログラムに広告を出すよりは効果が期待できる」という意見が企業から出された。

(2) 「主催者がもっと積極的にJRCAの活動に参加してくれるような環境を作ることが大切ではないか」というアドバイスが企業から出された。

(3) メーカーも二駆との統合を望んでいるので、二駆部門の主催者、参加者に具体的に呼びかけを行う。

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