鎌田卓麻が全日本ラリー2連勝
APRCは田口勝彦が悲願の
国内開催の国際格式ラリー初制覇
7月22~24日/北海道・十勝管内
スペシャルステージ本数:16本
スペシャルステージ総距離:約250km
ラリー総距離:約1000km
路面:オールグラベル
路面状況:ドライ(一部ウエット有)
アジア・パシフィックラリー選手権(APRC)と全日本ラリー選手権(JRC)との併催……05年ラリー北海道は国内ラリーの歴史に記念すべき新たな一歩を記すことになった。このケースは海外ではよく行われていることであり、ラリーオーストラリアでは長く世界ラリー選手権(WRC)とAPRC、さらには国内選手権やその下の州選手権まで併催されて、幅の広い参加層を集めて行われていた。
こうしてFIA選手権と国内選手権を併催することで、国内の参加者は腕試しになるとともに、いつも以上に気合が入るというもの。事実今回のラリーでも、あわよくばAPRC勢を食ってやろうと、虎視眈々と狙っている国内ラリーストも見受けられた。
ラリーは国内屈指のハイスピード&ロングステージ(SS)がずらりと並び、普段短いステージの連続する本州以南のラリーにしか参加した経験のない者にとっては、かなり難しいラリーとなる。ラリーの構成は、レグ1は3本の林道ステージを攻略して陸別サーキットでのショートステージをワンクールとし、これを2周する設定。レグ2は4本の林道ステージを2周する設定だ。どのステージも基本的には固く締まった路面だが、2周目にはワダチができたり、所々山から浸み出した水で路面がウエットになっていたりと、結構トリッキーな部分もあり、なかなか攻略が難しいコースとなっていた。
出走順はまずAPRCが走ってその後スイーパーが安全確認を行ったうえで全日本勢が走る。これが後にトラブルを招いてしまった。
では詳しくラリー展開を見ていこう。まずAPRCから。APRCの主な参加選手は、新井敏弘(インプレッサ)を筆頭に現在ポイントリーダーのJ.ヴァリマキ(ランサー)、同じMRFチームの田口勝彦(ランサー)、そして全日本から海外へと活動の場を移した柳澤宏至(インプレッサ)が主なところ。ヴァリマキは初来日だけに、どこまで日本の道を攻略できるかが期待された。だがそのヴァリマキ、SS1スタート後数kmでバースト。コース内でタイヤ交換を余儀なくされて大きく出遅れてしまう。田口もSS1でバースト。こちらはゴールまであとわずかという場所だったので交換せずに走りきった。さらに田口はSS3でもスピンを喫してしまった。これに対して好調だったのがインプレッサの2台。SS1で新井がベスト、柳澤が2番手タイム。そしてSS2/3/4と柳澤が連続ベストタイムをマーク。新井に詰め寄るものの、新井も負けじとレグ1残りの全ステージでベストタイムをマークして、その差を大きく広げてしまった。好調かと思われた柳澤だったが、レグ1最終のSS8で大きなミスを犯してしまい、総合7位にまで後退してしまった。こうしてレグ1を終えてトップ新井敏弘、2番手に田口勝彦、3番手に大庭誠介(ランサー)、4番手にダートトライアラーの荒井信介(ランサー)、5番手に海外経験の豊富な山田大輔(インプレッサ)、そしてヴァリマキ、柳澤と続く。
明けてレグ2。新井は序盤のSS9/10と連続ベストをマークして後続をさらに引き離しにかかる。だが新井はあろうことかSS11でまさかの転倒!リタイアとなってしまったのだ。これで田口が一躍トップに躍り出る。レグ2に入って猛追を開始したヴァリマキが2位というオーダーになった。この時点で田口とヴァリマキの差は2分以上もある。マキシマムに攻める必要はない。田口にとって、日本で行われるFIA選手権ラリーで、初の栄冠がぐっと近づいた。その一方で素晴らしい激走を見せたのが柳澤だった。SS11を皮切りに、SS14をヴァリマキに譲った以外はすべてベストタイムをたたき出し、終わってみれば3位にまで浮上してきたのだ。結局田口は1度もベストタイムをたたき出すことはなかったものの、コンスタントに好タイムを並べて、日本で開催される国際格式ラリーで初優勝を飾った。2位ヴァリマキに2分34秒の大差をつけての勝利となった。
なお、3位に入った柳澤だったが、競技終了後の再車検でロールケージの公認申請書に記載ミスが発覚し、失格を言い渡されてしまった。この結果大庭誠介が繰り上がりで3位入賞となった。
全日本ラリーのほうは、前戦で全日本初優勝を遂げた鎌田卓麻(インプレッサ)と04年チャンピオンの奴田原文雄(ランサー)のニ人に、他の全日本勢がどこまで食らいついていけるか? また車両規則が違うとはいえ、APRC勢のタイムにどこまで迫れるかが注目された。
ラリーはSS1、「攻めるところは攻めて抑えるところは抑える」という作戦の鎌田がベストタイム。これに奴田原、勝田範彦(インプレッサ)、飯泉忠男(ランサー)というオーダー。だがSS2、全日本先頭ランナーの奴田原がスタートしてしばらくすると、APRCのスイーパー車両に追いついてしまい、スローダウンを余儀なくされてしまった。このためSS2はキャンセルとなったが、奴田原は完全に走りのリズムを崩してしまったようだ。さらに足まわりにトラブルまで抱えだし、奴田原は思うようにアタックができない。これに対して好調を維持したのが鎌田だった。レグ1後半のSS6/7/8で連続ベストタイムをマーク。レグ1を終えて鎌田が2位奴田原に33秒もの大量リードを築いて単独トップに立っていた。
奴田原はレグ2に向けてマシンを再セットアップする。だがそれでも33秒の差を崩すことは困難に思われた。レグ2序盤は鎌田vs奴田原のシーソーゲーム。SS9を奴田原が取るとSS10は鎌田、SS11では再び奴田原、SS12で今度は鎌田といった具合だ。SS12を終えてまだ30秒のリードを保っていた鎌田、もうマキシマムアタックは必要ない。SS13は、SS1でスピンを喫した石田雅之が気を吐くが、残る3SSはすべて奴田原が奪取。それでも鎌田は20秒の差をつけて記念すべき大会を優勝で飾るとともに全日本ラリー2連勝を達成し、一躍シリーズリーダーに躍り出た。「今までは気合が空回りしていた感があって、今回は特に気合を入れすぎずに走ったのが良かったようだ」と鎌田。一方敗れた奴田原は「PWRCと並行して参戦しているから、国内仕様のラリー車はテストが不十分。今回はセッティングがいまいちで違和感が多かった。そんな中での2位には満足」と語っていた。
Bクラスはうっかりすると原口真(インプレッサ)のシリーズチャンピオンが確定してしまう恐れがあった。これを何とか食い止めたい大嶋治夫(インプレッサ)、地元のベテラン田中伸幸(ランサー)が原口の前に立ちふさがった。まずSS1~3と大嶋が3連続ベスト。原口はSS3でバーストして約6分も遅れを取ってしまう。負けじと原口がSS4/5と取り返すが、SS6大嶋、SS7/8原口と両者一歩も譲らない。レグ2に入っても両者の攻防は続くがSS14で大嶋のマシンにトラブルが発生してリタイアしてしまった。これでトップに立ったのが、ベストタイムこそ1回しかなかったものの、堅実に好タイムを刻んでいた田中。この時点でトップ田中は2位原口との間に3分近いリードを築いていた。SS14以降全SSで原口がベストタイムをマークするも時すでに遅し。田中が逃げ切り原口は2位でラリーを終えた。
Aクラスは優勝候補の小野寺清之(ストーリア)がラリー序盤でフロントのドライブシャフトを破損して完全に出遅れてしまった。小野寺のチームメイト平塚忠博(ストーリア)は独り舞台のラリーを展開することになった。レグ1、レグ2を通じてほとんどのSSでベストタイムを独占という圧倒的な速さを見せつけた。「すべて順調。小倉選手(雅俊・ストーリア)がポイントリーダーだから何とかしないとね」と平塚。シリーズ争いは、小倉45ポイントでこれに平塚と小野寺が40ポイントで追いかける。Aクラスのシリーズ争いはまだまだ予断を許さない状況だ。
【各クラス優勝者】
●4輪駆動部門Cクラス |
1位
|
鎌田 卓麻/加勢 直毅 |
東京スバルインプレッサ |
2:22:46.5 |
2位
|
奴田原文雄/小田切順之 |
ADVAN-PIAAランサー |
2:23:06.6 |
3位
|
石田 雅之/澤田 茂 |
C-ONE POTENZA LANCER |
2:24:54.1 |
4位
|
飯泉 忠男/石田 裕一 |
ブリッグMOTUL CMSCランサー |
2:26:01.7 |
5位
|
平林 織部/晝田 満彦 |
5ZIGEN・Dunlopインプレッサ |
2:28:14.0 |
6位
|
吉谷 久俊/高田 新二 |
RS★R-G&Tランサー |
2:33:34.8 |
7位
|
藤生 敏夫/黒崎 直樹 |
三菱ランサーエボVIII |
2:33:38.4 |
8位
|
天羽 佳介/馬渕 貴則 |
ランサー |
2:35:46.5 |
9位
|
上村 智也/和泉 孝明 |
シックスセンスアドバンゼロスランサー |
2:35:59.0 |
10位
|
草間 一朝/森 公聖 |
クスコポテンザCMSCランサー |
2:40:00.3 |
●4輪駆動部門Bクラス |
1位
|
田中 伸幸/波川 弘 |
クスコBSヴィッセランサー |
2:50:07.8 |
2位
|
原口 真/新井 正和 |
スピードマスターDLインプレッサ |
2:52:18.9 |
3位
|
森清 俊幸/萱原 敏幸 |
ダンロップランサー |
2:56:36.3 |
●4輪駆動部門Aクラス |
1位
|
平塚 忠博/鈴木 裕 |
ダイハツストーリア4×4 |
2:52:51.9 |
2位
|
小野寺清之/黒田 正彦 |
ダイハツストーリア4×4 |
2:57:42.2 |
3位
|
和田 誠/宗方さおり |
スズキアルトワークスR |
3:09:55.7 |
注)クラス区分は、排気量により分かれ、Cクラスは2000ccを超える車両、Bクラスは1400ccを超え2000cc以下の車両、Aクラスは1400cc以下の車両。
●アジア・パシフィックラリー選手権 第4戦 |
1位
|
田口 勝彦/M.ステイシー(AUS) |
ランサー・Evo VIII |
2:40:06.7 |
2位
|
J.ヴァリマキ(FIN)/P.プロシラ(FIN) |
ランサー・Evo VIII |
2:42:41.1 |
3位
|
大庭 誠介/高橋 浩子 |
ランサー・Evo VII |
2:43:04.6 |
4位
|
荒井 信介/内田 昭佳 |
ランサー・Evo VIII |
2:44:18.1 |
5位
|
D.マレイ(NZ)/S.スミス(NZ) |
ランサー・Evo VIII |
2:51:09.8 |
6位
|
坂上 哲司/原 信義 |
ランサー・Evo VII |
2:51:36.5 |
ご注意:ここに掲載のレポートはJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。なお、最終結果表については、主催者ホームページにてご確認ください。