奴田原文雄が6度目の
Cクラスチャンピオン獲得
第33回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2005
10月21~23日/岐阜県・高山市周辺
スペシャルステージ本数:7本
スペシャルステージ総距離:約50km
ラリー総距離:約200km
路面:オールグラベル
路面状況:ドライ~ウエット
05年のシリーズはわずか5戦。チャンピオン争いはかなり激しくなることが予想された今シーズンの全日本ラリー4輪駆動部門Cクラス。だが最終戦を前にチャンピオン候補として残っていたのは奴田原文雄と鎌田卓麻の2人だけ。今シーズン、いかにこの2人が突出して速かったかがわかる。ただし、奴田原は6位以内でチャンピオン獲得となるのに対して、鎌田は優勝が必須条件。前戦の結果が、奴田原をかなり有利な条件にしてしまっていた。
最終戦の舞台は岐阜県高山市周辺。ここ10年以上最終戦として開催されているラリーハイランドマスターズは、荒れた路面とバーストを誘う石や岩がドライバーを苦しめる、ラフでタフなラリーとして定評がある。今回は3本の道を使い、順走、逆走を含めて10本のSSが設定されていた。ラリースタートとなる10月22日は朝から曇り空が広がり、いつ降り出してもおかしくない空模様となっていた。
午後0時01分、ほおのき平スキー場をスタートした競技車はスペクテイターが待ち受けるSS1=約1.2kmにアタックした。ここでベストタイムをマークしたのは奴田原ランサー。だがショートステージゆえにトップ10までのタイム差は約3秒ほどでしかない。続くSS2=約19kmが今回のラリーのメインステージといってもいいだろう。ここを最速で駆け抜けたのはスタート前に「今日はいきますよ」と語っていた勝田範彦インプレッサだった。奴田原は勝田に約5秒遅れて2番手タイム。3番手には「今年は好きなラリーを選んで出る」と語っていた綾部美津雄インプレッサが、約1年ぶりのラリー参戦ながら好調な滑り出し。4番手には2週間前に行われたラリージャパンでいいところを見せた石田雅之ランサー。鎌田インプレッサは調子が上がらず勝田の約15秒遅れで5番手タイムだ。
SS3、4はSS1、2と同じコース。SS3をスタートするころから雨が降り出し、小ぶりになるかと思うと霙混じりとなり、荒れた展開が予想された。SS3をベストで上がったのは奴田原。やっと調子が戻ってきた鎌田が2番手タイムで続く。SS4は奴田原が制したが、勝田がここでサスペンショントラブルからリタイアしてしまった。鎌田が奴田原についでセカンドベストをたたき出したものの奴田原の9秒遅れ。ここまでの順位を見てみるとトップは奴田原。ついで約14秒遅れて綾部が2番手につける。鎌田は奴田原から21秒遅れて3番手。4番手には昨年のこのラリーで全日本Cクラス初優勝を飾った田口幸宏ランサーがつけていた。
45分のサービスを受けてリフレッシュしたラリー車たちは、ライトポッドを装着してSS5と、SS5の逆走となるSS6(両方とも約6km)へと挑む。SS5はまたしても奴田原がベストタイムをマーク。鎌田は約6秒遅れの2番手タイムだ。そしてシリーズを決定付けたSS6。ここでも奴田原はベストタイムをマーク。2番手に約4秒遅れで石田。3番手タイムは田口、4番手に平林織部インプレッサ……鎌田がいない。鎌田は逆転トップを狙って激走しすぎたのか、コースアウトからリタイアとなってしまったのだ。これで奴田原の05年チャンピオンが決定した。
夜に入ってグッと気温が下がり、麓では霙混じりの雨がひどくなっていた。20分のサービスをはさんだSS7のコースはSS2&4の逆走となる。ゼッケン1の奴田原がアタックを開始したが、コースを上るにつれて雪が深くなり、ついには路面一面が真っ白! ライトに照らし出された雪が荒れた路面を覆い隠してしまっていた。後続車にワダチをつけて道を教える役になってしまった奴田原は、このステージではトップタイムをマークした田口から22秒遅れた5番手タイムしか出せなかった。
雪は降り止む気配を見せずに降り積もっていった。この状況に主催者は競技続行を断念。SS8以降をキャンセルとして、SS7までのタイムでラリー終了となった。結果、7SS中4SSでベストタイムをマークした奴田原が優勝。シリーズチャンピオン獲得に花を添えることとなった。2位にはラリー後半で調子を戻した田口が、3位にはベテランの味を思う存分発揮した綾部が入った。
Bクラスは前戦で原口真がドライバーズチャンピオンを決めている。だが原口のコドライバーとして新井正和と松井和子がそれぞれ今シーズン2戦ずつ参戦したため、新井、松井、そして大嶋治夫のコドライバー井出上達也が35ポイントで並んでシリーズトップという状態になっていた。原口、大嶋とも自分のコドライバーに最高のプレゼントをしようと奮い立つ。だがSS1こそ原口インプレッサがベストタイムをとったものの、SS2以降4まで大嶋インプレッサが連続奪取。SS4を終えて大嶋は原口に約35秒ものマージンを築いていた。原口がSS5、6と連続奪取で巻き返しを図るもののSS7で再び大嶋がベストタイム。この時点でラリーが終了となったため、大嶋が有終の美を飾るとともに、井出上のコドライバーズ・チャンピオンが決定した。2位には原口。3位には石川俊明ランサー、4位には守屋教昭インプレッサとベテランが表彰台を独占した。
Aクラスのチャンピオン争いは平塚忠博、小野寺清之、小倉雅俊の3人のストーリア遣いに絞られていた。だが速さでは小倉が一歩遅れをとっており、実質的には平塚と小野寺の2人の争いとなった。SS1は平塚がベストタイムをマークしたものの、SS2ではサスペンションセッティングが合わずに平塚は小野寺に約20秒も負けてしまった。平塚はSS2の後の20分サービスでサスペンションセッティングを変更、巻き返しを図ることになる。だが果たして20秒も開いた差を逆転することが可能なのだろうか……。平塚は「1km当たり1秒とはいかないかもしれないけど、それに近いタイムで走り続ければ逆転できるよ」とSS3以降へアタック。その言葉どおりSS3でコンマ1秒、SS4で約16秒、SS5で約3秒と詰めていき、SS6のベストタイムでついに小野寺をとらえ、コンマ6秒リードすることに成功した。SS7も平塚がベストタイムをマーク。結局SS3以降全SSでベストタイムをマークし、平塚が小野寺を約3秒リードしてラリーが終了。平塚が昨年に続いてAクラスチャンピオンに輝いた。
【各クラス優勝者】
●4輪駆動部門Cクラス |
1位
|
奴田原文雄/小田切順之 |
ADVAN-PIAA ランサー |
58分34秒7 |
2位
|
田口 幸宏/佐藤 忠宜 |
アドバン PIAA カヤバ ランサー |
58分55秒7 |
3位
|
綾部美津雄/市野 諮 |
トラスト ダンロップ アヤベ GDB |
58分57秒9 |
4位
|
石田 雅之/澤田 茂 |
C-ONE POTENZA LANCER |
59分25秒8 |
5位
|
福永 修/奥村 久継 |
レイル☆オサム CMSC ランサー |
59分26秒7 |
6位
|
炭山 裕矢/沼尾 敬廉 |
クスコ スバル ADVAN インプレッサ |
1時間00分10秒6 |
7位
|
平林 織部/晝田 満彦 |
5ZIGEN・DUNLOP インプレッサ |
1時間00分21秒0 |
8位
|
星野 博/鈴木 一也 |
クスコ ポテンザ CMSC ランサー |
1時間00分21秒2 |
9位
|
飯泉 忠男/石田 裕一 |
BRIG MOTUL CMSC ランサー |
1時間01分31秒9 |
10位
|
桑田 幸典/井川 宏美 |
北大AIM ランサー 1.5 |
1時間02分27秒0 |
●4輪駆動部門Bクラス |
1位
|
大嶋 治夫/井手上達也 |
SAFETY21 ADVAN GC8 |
1時間01分18秒8 |
2位
|
原口 真/松井 和子 |
SPM・DL・インプレッサ |
1時間01分52秒4 |
3位
|
石川 俊明/田中 直哉 |
富士テクノ DL テイン CMSC ランサー |
1時間03分46秒8 |
●4輪駆動部門Aクラス |
1位
|
平塚 忠博/鈴木 裕 |
ダイハツストーリア X4 |
1時間01分13秒0 |
2位
|
小野寺清之/及川 陽也 |
ダイハツストーリア X4 |
1時間01分16秒1 |
3位
|
村田 康介/地神 潤 |
BOOBOW ・DL・ストーリア |
1時間07分04秒2 |
【各クラスシリーズ成績上位入賞者】
全日本ラリー選手権4輪駆動部門シリーズポイント
Cクラス・ドライバー
1位=奴田原文雄87ポイント、2位=鎌田卓麻52ポイント、3位=石田雅之45ポイント、4位=田口幸宏29ポイント、5位=勝田範彦28ポイント、6位=平林織部26ポイント、7位=炭山裕矢22ポイント、8位=飯泉忠男21ポイント、9位=石田正史15ポイント、10位=福永修14ポイント。
Cクラス・コドライバー
1位=小田切順之75ポイント、2位=加勢直毅52ポイント、3位=澤田茂45ポイント、4位=佐藤忠宜29ポイント、5位=北田稔28ポイント、6位=晝田満彦26ポイント、7位=石田裕一21ポイント、8位=星野元16ポイント、9位=宮城孝仁15ポイント、10位=奥村久継14ポイント。
Bクラス・ドライバー
1位=原口真85ポイント、2位=大嶋治夫55ポイント、3位=田中伸幸50ポイント。
Bクラス・コドライバー
1位=井手上達也55ポイント、2位=松井和子50ポイント、3位=新井正和35ポイント。
Aクラス・ドライバー
1位=平塚忠博75ポイント、2位=小野寺清之75ポイント、3位=小倉雅俊55ポイント。
Aクラス・コドライバー
1位=鈴木裕75ポイント、2位=平山真理55ポイント、3位=黒田正彦50ポイント。
注)全日本選手権クラス区分は、排気量により分かれ、Cクラスは2000ccを超える車両、Bクラスは1400ccを超え2000cc以下の車両、Aクラスは1400cc以下の車両。
【参考総合結果表】
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。