開催日時:4月30日~5月1日
開催場所:愛媛県久万高原町周辺
スペシャルステージ本数:14本
スペシャルステージ総距離:64.59km
ラリー総距離:202.83km
SS路面:グラベル(非舗装路)
SS路面状況:デイ1/曇り:ドライ、デイ2/曇り一時雨:ウエット
ポイント係数:1.5
奴田原文雄ランサーエボⅩが今季初優勝
全日本ラリー選手権は、舞台を愛媛県久万高原町に移し第2戦が開催された。ここ数年はターマック路面で開催されていた久万高原ラリーだが、全日本戦としては1991年以来20年ぶりとなるグラベル路面での戦いとなる。新たに設定されたグラベル路のSSは、どのクルーにとっても未知なるルートであり、より正確なペースノート作りが要求される。特に今回設定されたSSは、0カーを担当した新井敏弘曰く「常にステアリングを回していなければならないぐらいコーナーが連続している。ずっと回しっぱなしで疲れたよ(笑)」というほど、細かなコーナーが連続する。さらに道幅がタイトな上にガレ場を含んだ区間もあり、クルーにとっては一瞬たりとも気を抜けないSSが続く。速さはもちろんのこと、耐久性も求められるタフなラリーとなりそうだ。
グラベル初戦となる今大会は、名門キャロッセの全日本への本格的な復帰、そのキャロッセがJN3クラスに投入したニューマシンのプロトン・サトリアネオが全日本デビュー、開幕戦のJN2クラスを制した天野智之に続き高橋悟志がNEWヴィッツを実戦投入するなど、各クラスとも話題豊富なラリーとなった。
グラベルラリー3連戦の緒戦となる今回、注目のSS1イワタケⅠ(3.28km)を制したのは開幕戦優勝の勝田範彦インプレッサだ。その勝田から1.7秒遅れで柳澤宏至ランサーと桑田幸典ランサーが並び、さらに0.4秒遅れて奴田原文雄ランサーというオーダーだ。だが、SS1でベストタイムを叩き出したものの「スプリングを柔らかくしすぎたこともあるけど、それ以上に自分のドライビングに納得いっていない。フロントの入りが悪くて思うようにインを攻められず、逆にインを攻め過ぎて土手に乗り上げてアウト側に行ったりと、ぎこちない運転をしている」と勝田。その不安が的中しSS2安田Ⅰ(6.35km)では奴田原、桑田の後塵を浴び、SS3スキー場Ⅰ(1.21km)を終えた時点ではトップの奴田原から2.4秒差の3番手まで順位を下げた。
一方、SS3までのセクション1を終えた時点でトップに立った奴田原だったが、彼も序盤戦は決して順風満帆なラリー展開ではなかった。「トラブルというほどではないんだけど、いつもよりパワー感がなかった。でも、それで逆にパワー感がないなりに丁寧に走ったのが結果的には良かったのかもしれない。セクション2はもっと頑張りますよ」と奴田原。サービスでトラブルシューティングした後のセクション2ではその言葉通り3本のSSを連取、SS6を終えて2番手に上がってきた勝田に11.1秒の差を付け、デイ1をトップで折り返した。また、久々の全日本ながらも「(全日本の)ペースはもう掴んではいます。ただ、今回のコースは攻めてタイムが出るとは限らないので、丁寧にキッチリと走ってるっていう感じですね。2ループ目はそれなりにペースを上げました」という柳澤が3番手に付けた。
一夜明けたデイ2は、前日の夜から降り続いた雨の影響でコースはウエット路面に変貌していた。その中、SS7大谷支線Ⅰ(7.04km)で奴田原は勝田に2.4秒差を付けるベストタイムを叩き出し、その差を13.5秒にまで広げる。
一方の勝田もSS8大野ヶ原線Ⅰ(9.08km)から反撃開始。SS8で1.2秒、SS9スキー場Ⅲ(1.21km)で0.3秒、SS10大谷支線Ⅱ(7.04km)で3.0秒、SS11大野ヶ原線Ⅱ(9.08km)で1.3秒奴田原とのタイム差を縮め、SS11を終了した時点でトータル7.7秒差にまで詰め寄ってくる。
だが、勝田の反撃もそこまで。ギャラリーステージのSS12スキー場Ⅳ(1.21km)では、SSフィニッシュ手前のフルターンでエンストしてしまい大きくタイムダウン。奴田原から4.5秒差でフィニッシュ。それまで稼ぎ出した奴田原とのタイム差を一気に吐き出し、その差は12.2秒とふりだしに戻ってしまう。さらに勝田にアクシデントが襲いかかり、SS13大谷支線Ⅲ(7.04km)のフィニッシュまで約1km地点でギアが1速にスティック。その後のリエゾン区間と最終SSとなるSS14スキー場Ⅴ(1.21km)をすべて1速で走らなくてはならない状況となり、結果的には奴田原が勝田に26.8秒の大差を付け、今季初優勝とともにデイ1、デイ2のポイントも奪う結果となった。
一方、熾烈な戦いとなったのがJN4クラスの3位争いだ。まずはデイ1で3番手に付けた柳澤だったが、デイ2オープニングとなるSS7でコースオフしリタイア。これで桑田と福永の一騎打ちとなったが、SS11大野ヶ原線Ⅱで福永のタービンがブローし万事休す。福永はサービスの必死の修復で戦列に復帰することはできたものの6位でフィニッシュするのがやっと。「終始、自分のペースで走ることができた」という桑田が、自身にとって初の全日本表彰台となる3位でフィニッシュした。
JN3クラスは、クラス唯一となる4駆のブーンX4を駆る地元の松原久がSS1を奪うが、続くSS2で駆動系を破損してしまい早々とデイ離脱。これで昨年のチャンピオン香川秀樹がトップに立ったものの、SS5でフロントタイヤがバーストし、順位を一気にクラス7番手にまで下げるという波乱の展開となった。
その中、安定したタイムを刻んだベテランの曽根崇仁と、地元四国の新鋭・宇田圭佑がSS6終了時点で2.0秒差という僅差でデイ1を終えた。バーストに泣いた香川とトップの曽根とのタイム差は約36秒。デイ2のSSは8本/42.91km。優勝争いからは脱落したかに見えた香川だったが、デイ2のオープニングとなるSS7で14.2秒、SS8で18.1秒という驚異のハイペースで曽根に迫って来る。
一方の曽根もSS9でベストタイムをマークし応酬するが、SS11でついに香川が曽根を逆転しトップに返り咲き。その後は曽根が香川とのタイム差を2.4秒差にまで詰め寄るものの、そのまま香川が逃げ切り今季1勝目を奪った。
また3位には、「デイ2のデイポイントを奪いたい」とデイ1は5番手だった藤本鋼二がデイ2に入り一気にチャージ。デイ2では3番手を走行していた宇田を捕らえ3位に浮上するものの、TC12で痛恨の早着ペナルティが加算され4位に脱落。「デイ2で回りのペースが一気に速くなり、まだ走り負けているということを実感しました。(3位入賞は)うれしさ半分、悔しさ半分というところです」という宇田が3位に入賞した。
JN2クラスは、本命の天野智之が「まだグラベル仕様のセットアップができていない」という状況で、序盤からタイムが伸びず下位に低迷するという波乱の幕開けとなった。その中、トップ争いはヴィッツの増川智と昨年のJN1クラスチャンプ中西昌人が、デイ1のSSを3本ずつ奪うというベテラン同士の対決となった。
タイム的には、SS1でフライングペナルティ10秒が加算され、さらに「SS5でスピンし、狭い道で完全に横を向いてしまった」という中西が、増川に約26秒差で2番手。狭く荒れた道も苦にしない、増川のトップは盤石かと思われた。
しかしデイ2のオープニングとなるSS8で増川がペースノートをロスト。「感覚的にはそれほど遅れているつもりはなかったんだけど、タイムを聞いてビックリした」と増川が振り返るように、中西が一気に1.8秒差にまで詰め寄ってくる。さらにSS9でも中西が0.3秒詰め、両者のタイム差は1.5秒と、逆転は時間の問題かと思われた。
ところが、SS10で中西はブレーキホースが外れるというトラブルでタイムダウン。一方の増川も本来の速さを取り戻し一気にスパート。その後も一進一退の攻防が続いたが、結果的には増川が中西に21.2秒のタイム差を付け、全日本初優勝を飾った。
また、このラリーで新型ヴィッツをシェイクダウンした高橋悟志が「いろいろな細かいトラブルはあったけど、まずまずの手応えです」と3位に入賞した。
実質的には3台のストーリアの争いとなったJN1クラスは、「勝ち負けというよりも、自分自身がラリーを楽しむためにせめて年に1回は全日本を走ろうという気持ちで出場しました。ラリー界にも忘れられないように(笑)。だから、クルマを壊さずに気持ちよく走りきろうと思ってます」という村田康介が快走。全SSでベストタイムを奪い、クラス優勝を果たした。また、全日本初出場となる山口貴利が集中力を最後まで切らさずに完走、2位に入賞した。
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