5月20~22日 宮崎県東臼杵郡美郷町
スペシャルステージ本数:11本
スペシャルステージ総距離:102.14km
ラリー総距離:2デイ370.15km
SS路面:グラベル(一部舗装)
SS路面状況:ドライ~一部ウエット
ポイント係数:2.0
今季2勝目、奴田原文雄がデイ2で逆転
全日本ラリー選手権第3戦「ひむかラリー'11 in 美郷」は、SS総距離が100kmを超え、ポイント係数が2.0となるグラベルラリー。ここで獲得できるポイントがタイトル争いに大きく影響することは間違いなく、シリーズの行方を占う上でも重要な1戦となる。
ラリーは、例年と同じく宮崎県美里町周辺を舞台に開催。SSは、ドライであれば硬質だが、雨が降ると途端にルーズな路面に変貌する赤土路と、浮砂利、サスペンションやボディへの入力が大きい岩盤路が連続する。さらに今年は昨年までギャラリーステージだった区間が舗装化事業により一部ターマック路面になり、様々な路面がドライバーを苦しめる。また、梅雨入り直前のこの時期は、シャワーのような雨が降ったかと思えば太陽が顔を出すという状況。この猫の目のように変わる路面コンディションにどう対応していくかが問われるラリーでもあった。
デイ1は、SS1・山神下1(13.10km)からスタート。昨年のデイ2にも設定されたこの下りのロングステージは、勝田範彦GRBインプレッサが最も得意とするSSだ。昨年のこのラリーでも2番時計だった奴田原文雄CZ4Aランサーに対し9.1秒もの大差をつけ一気に逆転、開幕2連勝を決めている。
今回もその勝田が山神下を快走。前日まで降り続いた雨の影響が残り、スリッピーな路面となったこのSSで、今季初登場となる石田正史CZ4Aランサーに13.6秒もの大差をつけるベストタイムをマークする。さらにSS2・長迫1(2.98km)でも勝田が連続ベストを叩きだし、序盤のSS2本で早くも2番手の石田に対し15.9秒、3番手の奴田原に対して16.2秒もの大量マージンを築き上げた。
だが、路面がドライとなった2ループ目に入ると、奴田原が逆襲。SS3・山神下2(13.10km)は、奴田原がこの日初のベストタイムをマーク。そこ後もデイ1最終となるSS7までベストタイムを連発し、勝田とのタイム差を2.6秒にまで縮めてきた。
「SS1は滑りやすい路面とインプレッサの特性がマッチしてタイムが出たんだと思う。自分ではそれほどハードにはプッシュしていなかった。今回のラリーは、路面がドライになると厳しい……」という勝田に対し、「濡れた路面で細かいターンが続くとエボXの場合タイムを出すのは難しいが、ドライ路面なら充分に逆転できる」という奴田原。二人の勝負は、天候も大きく影響してくるという展開で、デイ2を迎えることとなった。
一方、SS2まで2番手をキープしていた石田は、SS3の途中でミッショントラブルに見舞われリタイア。また、グラベルで表彰台を狙う福永修CZ4Aランサーが、SS1でフロントサスペンションを大破しデイ離脱。さらに全日本ラリーにデビュー以来、14戦連続10位以内の完走記録を伸ばしていた高山仁CT9AランサーがSS5でオイルクーラーのパイプを破損してリタイア。GRBインプレッサを駆る杉村哲郎も、SS6で電気系トラブルからリタイアと、全日本レギュラー陣に次々とトラブルが襲いかかる。その中、「高速ステージが多いと予想して固めのセッティングにしてきたが、思ったよりもスピードが低くクルマが思うように曲がらない」とセッティングに苦しむ柳澤宏至CZ4Aランサーが、2番手の奴田原から43.4秒遅れて3番手、さらにその柳澤から約1分遅れの4番手に大西康弘CZ4Aランサーというオーダーで、デイ1を折り返した。
迎えたデイ2、一気に逆転を狙う奴田原、逃げ切りを図りたい勝田は、デイ2オープニングのSS8・珍神R1(6.77km)で一気に勝負に出る。だが、二人の戦いは予想外の形で決着がついた。SS8の約2km地点で勝田がフロント左タイヤをイン側の岩に引っかけバースト。このSSでベストタイムを叩き出した奴田原に対し47.2秒遅れでゴールし、奴田原に逆転を許すとともに44.5秒のビハインドを背負うこととなった。
その後も奴田原の勢いは止まらず、SS9から最終のSS11までベストタイムを連発。最終的には勝田に対し57秒の大差で奴田原が久万高原に続きグラベル2勝目を奪った。
また、3位にはセッティングに苦しみながらもデイ2・2位のポイントを奪った柳澤が入賞、4位には「3位と5位とのタイム差が大きかったため、デイ2は第4戦・福島に向けたサスペンションをテストすることができた」という大西が、5位には今井聡CT9Aランサーがそれぞれ入賞した。
JN3クラスは、第2戦・久万高原で奇跡的な逆転優勝を果たした香川秀樹DC2インテグラと、開幕戦から連続2位入賞でポイントリーダーに立つ曽根崇仁ZZT231セリカとのマッチレースとなった。両者一歩も譲らず、デイ1を終えて香川がトップに立つが、二人の差はわずか0.6秒。3番手につける松原久M312Sブーン×4は、クラッチが不調で好タイムをマークするSSはあるものの、上りのSSや路面のグリップが高いSSではクラッチが滑りタイムが伸びず、優勝争いからは一歩後退したポジションにつける。
香川と曽根の対決は、デイ2オープニングのSS8で決着がついた。「抑えて走ったつもりなのに、SS中にいきなりサスペンションが壊れた……」と、サスペンションアームを破損した香川がストップ。労せず曽根がトップに立った。その後は一時的に松原が曽根とのタイム差を12秒詰めてくるものの、クラッチトラブルは解消せずにジリジリと引き離されていく。結局、2009年まで3連覇を挙げた相性の良いひむかで、曽根がトップを守りきり今季初勝利を獲得した。2位には松原、3位には「セクション1でアライメントが狂っていてタイムが伸びなかった」という山口清司AE111レビンが、サービスでアライメントを調整した後のセクション2からジワジワと順位を上げ入賞した。
JN2クラスは、第2戦でマシンの調整不足から思うようなラリーを展開できなかった天野智之NCP131ヴィッツが、第3戦ではその鬱憤を晴らすかのように次々と好タイムをマーク。SS1こそ、第2戦優勝の増川智NCP91ヴィッツが奪うものの、その後は天野の独断場となった。「距離の長いSSはマシンを労りながらそこそこに走り、短いSSでタイム差をつけた方が、相手にとっては精神的なダメージが大きいはず」という天野の戦略に増川が見事にはまり、SS1のリピートとなるSS3でスピンを犯して万事休す。最終的には2位の増川に対し1分51秒2という大差で天野が今季2勝目をマークした。
一方、鷲尾俊一HT81Sスイフトがセクション1を終えた時点のサービスでミッションケースの破損が発覚しリタイア、さらには2年目のシーズンに期待がかかる川名賢もSS2で発生したドライブシャフトトラブル修復のために約16分をロスするという荒れた展開の中、高橋悟志NCP131ヴィッツ、中西昌人HT81Sスイフト、藤田幸弘Z23Aコルト、南野保DE5FSデミオらが熾烈な3位争いを繰り広げた。デイ1は高橋が3番手につけたが、中西がデイ2で一気にスパートし、高橋を最終SSで捉え逆転に成功。表彰台の一角を奪った。
マーチVSストーリアの構図となり、開幕戦から3戦連続クラス成立となったJN1クラスはなった、マーチの西山敏がデイ1のSSでベストタイムを連発し、1位をキープ。昨年、全日本ラリーに約17年ぶりに復活した大西康弘に刺激され、「オレも17年ぶりに走りたい!」と現役復活を果たした大西の元コ・ドライバーでもある葛西一省は、久々ながらも西山から16.9秒差でデイ1を折り返す。だが葛西のストーリアは、すでにリアサスペンションに不安と抱え、全開走行ができない状況に。デイ2は西山労せずトップを守りきり、開幕戦に続き今季2勝目を挙げる結果となった。
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