全日本ラリー選手権第4戦

開催日時:6月10~12日
開催場所:福島県東白川郡棚倉町周辺
スペシャルステージ本数:11本
スペシャルステージ総距離:55.86km
ラリー総距離:2デイ363.00km
SS路面:グラベル(非舗装路)
SS路面状況:デイ1/ウエット~ハーフウエット デイ2/ドライ
ポイント係数:1.5

BIG3が夢の対決
新井敏弘が14年ぶりに全日本優勝

 全8戦のスケジュールで競われる2011年全日本ラリー選手権は、折り返し地点となる第4戦を迎えた。福島県棚倉町をホストタウンとするこのラリーは、主催者が東日本大震災の影響を考慮し、ラリーの開催を行うか否かの検討を何度も行った結果、「このような時期だからこそ復興に向けてひとつのきっかけとしてモータースポーツを行い、ひとりでも多くの皆様に気分一新となる場を提供しよう」という結論に達し、地方自治体や選手たちの協力を得ることで無事開催を迎えることができた。

 14年ぶりに全日本ラリーを走ることとなった新井敏弘選手も、スタート前の共同記者会見で「デモランや0カーの時とは違う本気の走りを地元の人に見てもらい、ぜひワクワクして少しでも元気になって欲しい」とコメント。また、積極的なラリー活動を行い、震災後に喜多方市などでボランティア活動を行っている俳優の哀川翔選手も、「微力ですが、自分たちが走ることで少しでも皆さんに喜んでいただければ、来た意義がある」とコメント。それぞれの選手が震災復興への思いを胸に挑んだラリーでもあった。

 例年よりコンパクトな設計となったラリーは、4本のステージで構成。デイ1は今回のラリー最長SSとなる「真名畑八溝リバース」13.64kmを3回、ギャラリーステージが設けられ、最短SSとなる「ルネサンス」0.5kmを逆走含めて4回、デイ2は比較的フラットでハイスピードレイアウトの「東野牧野」2.81kmを3回、「東前田」2.29kmを2回トレースする。勝負所となるのはデイ1の「真名畑八溝リバース」。これまでは上りで使用することが多かったが、今回は下り主体の逆走となる。レキを終えた選手の多くが「かなりシビレます」と語った真名畑八溝ダウンヒルを誰が制するのかが大きな焦点となった。

 注目のSS1「真名畑八溝リバース1」、ベストタイムを奪ったのは第2戦・第3戦を制しグラベルラリー2連勝中の奴田原文雄/佐藤忠宜(CZ4Aランサー)だ。第2戦では優勝を奪うものの、タイム的には0カーで出場した新井敏弘の後塵を浴びる結果となった奴田原は、その鬱憤を晴らすかのように2番手の新井敏弘/松井博和(GRBインプレッサ)に10.6秒差のベストタイムをマークし、いきなりの先制パンチを放つ。また、SS走行中にフロントをクラッシュした影響を受けた勝田範彦/足立さやか(GRBインプレッサ)がトップの奴田原から12.3秒遅れ3て番手につける。

 ギャラリーステージのSS2「ルネサンス1」は新井がベストタイムを奪い、0.7秒差で奴田原、さらに0.7秒遅れて勝田が続くという展開に。フロントクラッシュにより完全に出鼻をくじかれた勝田だったが、濃霧がコース全体を覆ったSS3「真名畑八溝リバース2」では、サービスでマシンの調子が復調したこともあり、2番時計の新井に対して2.6秒、濃霧に苦戦する3番時計の奴田原に対して7.8秒差のベストタイムをマーク。トップ奴田原との差を5.2秒差にまで縮めてきた。すでに3番手の勝田と4位以降のタイム差は大きく、優勝争いは奴田原、新井、勝田らチャンピオンによる三つ巴戦の様相となった。

 デイ1最後のロングSSとなるSS6「「真名畑八溝リバース3」。直前のサービスで「コース状況に合わせてサスペンションの仕様を硬い方向に変えた」という新井の作戦が見事的中し、スローパンクチャーのため後半ペースダウンした奴田原に対して8.8秒差のベストタイムを叩き出し、トータルでも奴田原を抜き一気にトップに躍り出る。続くデイ1最終SSとなるSS7「ルネサンス・リバース」でも新井は連続ベストタイムをマークし、トップが新井、5.0秒差で奴田原、奴田原から9.7秒差で勝田というオーダーでデイ1を終了した。

 デイ2は、2.81kmの「東野牧野R」を2回、2.28kmの「東前田」を3回ループするという設定だ。ここでは前半2本のSSを奴田原が制し、一時は新井との差を2.5秒差にまで縮めるものの、新井も後半2本でベストタイムをマークし、ふたりの差は5.3秒差に戻るという展開となった。一方、3位の勝田もSS9で奴田原と同秒ベスト、SS10と12は新 井に次ぐセカンドベストで応酬するものの、結果的にはデイ1終了時点とほぼ変わらないタイム差で逆転はならず。結果的には奴田原はSS6でのスローパンクチャー、勝田はSS1でのコースオフによるフロントクラッシュが最後まで勝負に響いた結果となったが、日本を代表するトップ3の戦いは、14年ぶりの全日本優勝を飾った新井が「簡単には勝てるとは思っていなかったけど、予想以上に全日本のレベルが高く、結構大変な思いをした」という言葉通り、見応えたっぷりの戦いでもあった。

 一方、ブレーキトラブルやタイヤバーストが相次ぎ混沌とした4位以下の争いも、デイ2終盤までハイレベルな戦いが続いた。4位には、デイ1のブレーキトラブルを克服した福永修/奥村久継が粘りのラリーを見せ入賞。タイヤバーストが相次ぎ、デイ1は6番手に終わった柳澤宏至/中原祥雅がデイ2ではトップの3ポイントを奪う快走を見せ5位に浮上と存在をアピール、石田正史/竹下紀子組が全日本では約1年ぶりとなる完走を果たし6位に入賞、CZ4AランサーエボXを投入したベテラン大嶋治夫/井手上達也と昨年のMSCCラリー以来の出場となる若手の小舘優貴/田中直哉が最後まで競り合い小舘が7位でフィニッシュと、上位3台以外も最後まで熾烈な争いが展開された。

 JN3クラスは、SS1で香川秀樹/浦雅史(DC2インテグラタイプR)が2番時計の山口清司/島津雅彦(AE111レビン)に14.9秒もの大差を付けトップに立つが、その後は濃霧、タイヤバーストに悩まされタイムが伸びない。一方、SS1でコースアウトを喫し「コースに復帰するまで20秒近くロスして、一時は優勝争いは諦めていた」はずの松原久/香川俊哉(M312SブーンX4)がSS3からSS6まで4SS連続ベストタイムをマークし、デイ1を終了した時点でトップの香川に対し3.5秒差の2番手にまで浮上してきた。またデイ1の3番手には上原利宏/郷右近孝雄(EK9シビックタイプR)が、4番手には曽根崇仁/桝谷知彦(ZZT231セリカ)と、タイヤバーストに苦しみながらも浮上してくる。

 ほとんどのクルーがタイヤバーストの洗礼を受けるという波乱の展開となったJN3クラスは、デイ2に入ってもその波乱は収まらなかった。デイ2のファーストステージとなるSS8で松原に対し1.7秒差のベストタイムを奪った香川だったが、続くSS9で痛恨のコースオフ。そのままコースに復帰することなく、2戦連続のデイ1トップ&デイ2リタイアという結果となった。

 これで単独トップに立った松原は、「SS8で香川くんに負けた段階で2位キープを狙ったが、結果的に香川くんがストップしてくれたおかげで優勝が転がってきた。SS1では4mぐらい落ちたんだけど、結果的にマシンにダメージがなかったことがラッキーだった」と、昨年のMSCCラリーに続く2連覇を達成した。

 また、2位にはタイヤバーストが相次いだデイ1でドライタイヤを使い果たしてしまい、ドライ路面となったデイ2はウエットタイヤで挑んだ上原がデイ2のデイポイントトップを奪う走りを見せ2位に浮上。デイ1では4番手だった曽根がSS9でコースオフし順位を大きく下げる中、「今回からクロスミッションを搭載し、戦闘力が上がった」というサトリアネオの明治慎太郎/漆戸あゆみが3位表彰台をゲット、4位にもサトリアネオを駆る石川昌平/鈴木裕が入賞と、ニューカマーの健闘が光る結果となった。

 JN3クラスの牟田周平/加勢直毅がSS1でハーフスピンしてコースを封鎖してしまったため、SS1は全車同一タイムでスルーとなったJN2クラス。仕切り直しとなったショートステージのSS2では天野智之/井上裕紀子(NCP131ヴィッツ)が増川智/赤木弥生(NCP91ヴィッツ)を僅差で追うという展開となったが、続くロングステージのSS3で大桃大意/露木明宏(DE5FSデミオ)が、JN3クラスでも2番時計というスーパーラップを叩き出し、一気にトップに躍り出る。

 今シーズン、インプレッサからデミオに乗り換えた大桃は、「パワーのないクルマでどう走ったらタイムが出るのか模索中だったが、第2戦、第3戦では下りのSSではなんとかタイムが出ていた。これまでインプレッサに乗っていた経験を下りのSSで活かし、勝負するのであればこの下りのロングSSしかないと思っていた」という。大桃は、ギャラリーステージのショートSSでは天野にベストを奪われるものの、デイ1に3本用意された下りのロングSSを完全制覇。一方、追いかけるはずの天野も、SS6の終盤でトランスファーを破損し万事休す。ここでラリーを諦めるしかなく、大桃が2位以下に大差を付け、待望の全日本初優勝を果たした。FFマイスターの大桃千明の息子である大桃は、「父が偉大すぎ、自分が結果を出せないことがすごく苦しかった。やっと見返せたかなという思いと、周りのみんなが祝福してくれたのが何よりも嬉しかった」と、混沌とするJN2クラスのタイトル争いに名乗りを挙げる結果となった。2位には第3戦に続き増川が入賞しシリーズポイントトップに浮上、3位にはデイ2トップで迫る中西昌人/北川沙衣(HT81Sスイフト)を2.4秒差でかわした高橋悟志/箕作裕子(NCP131ヴィッツ)がそれぞれ入賞した。

 また、デイ2のSS9において、コースアウトし、脱輪のために作業中だったドライバーに後続車が衝突するという事故が発生したが、オフィシャルと後続クルーとの連携により重傷を負ったドライバーを救出し、救急車により郡山市内の救急病院に搬送。現在も治療中だが、一日も早い回復を願いたい。

【全日本ラリー選手権 第4戦 総合結果】(出走45台/完走33台)
総合順位/クラス順位
ドライバー/コ・ドライバー
車名
トータルタイム
 1位/JN4-1位 新井敏弘/松井博和 チーム アライ インプレッサ 44:55.7
 2位/JN4-2位 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN・PIAAランサー 45:01.0
 3位/JN4-3位 勝田範彦/足立さやか ラック名スバルSTi DLインプレッサ 45:10.6
 4位/JN4-4位 福永 修/奥村久継 HASEPRO・SDF・DLランサー 46:26.9
 5位/JN4-5位

柳澤宏至/中原祥雅

CUSCO ADVANランサー 46:37.2
 6位/JN4-6位 石田正史/竹下紀子 DL・テイン・マルシェ・ランサー 46:46.5
 12位/JN3-1位 松原 久/香川俊哉 SPMオガタKYB☆ブーン 49:54.4
 14位/JN2-1位 大桃大意/露木明浩 LAMPY-J DL トタル BRIGデミオ 50:46.0
注)クラス区分の説明:JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両。

【ドライバーズポイントランキング】
(総合/第4戦終了時点)
順位
ドライバー
ポイント
 1位  勝田範彦  63
 2位  奴田原文雄  61
 3位  柳澤宏至  25
 4位  大西康弘  20.5
 5位  新井敏弘  20
 6位  福永 修  19
※上記のポイント合計は、JRCAの独自集計によるものです。 正式ポイントおよび内訳はJAFホームページをご参照ください。

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【参考総合結果表】
  2011_rd04.xls  2011_rd04.pdf
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。
 

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