全日本ラリー選手権第6戦
開催日時:10月21~23日
開催場所:愛知県新城市周辺
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離:64.22km
ラリー総距離:2デイ3セクション235.00km
SS路面:ターマック(舗装路)
SS路面状況:デイ1/ウエット デイ2/ドライ一部ウエット
ポイント係数:1.0

三つ巴で迎えたJN3タイトル争い

牟田周平が初のチャンピオンを獲得



 4月に開幕した2011年全日本ラリー選手権は、今回の第8戦「新城ラリー2011」で最終戦を迎えた。この新城ラリーは、地元新城市の強力なバックアップを受け、毎年大勢の観客を集めて、全日本ラリーでは人気の高いラリーの一つになっている。今年は新城高校・吹奏楽部の演奏で開会式がスタート、ラリーの盛り上げに一役買ってくれた。また今年はアジア・パシフィックラリー選手権で現在シリーズ3位につけているリファット・サンガー選手(インドネシア)がプロトン・サトリア・ネオで参戦してきた。サンガー選手は残念ながらDAY1でリタイアしたもののDAY2は無事完走。セレモニアルゴールでは詰めかけた観客に対して「とても楽しいラリーだった。来年も参加したい」と語っていた。

 今回は全日本ラリー初の試みとして、開会式後に救命救急講習会が開催された。これは名古屋第二赤十字病院に勤める勝田範彦のコドライバー足立さやか(JRCA会員)が中心となり、日本赤十字の協力の下に行われたもので、第一次救命である蘇生の方法に関する講習が行われた。会場には蘇生人形4体が運びこまれ、これに各一人ずつインストラクターが配置されて胸骨圧迫に関する講習を行った。1分間に100回押すこと、疲れるので事前に大勢の交代要員を確保することなどを教わった後に実地講習が行われ、全日本ラリーストたちは「イチ、ニ、サン……」と掛け声をかけながら、蘇生人形の胸に両手を当てて圧迫を行った。ラリー中、事故現場に最初に到着するのは後続のラリークルーたち。今回の講習は、具体的な蘇生方法の理解はもちろん、ラリースト自身の安全意識の向上にも大いに役立った。

 台風12号と15号は奥三河方面にも爪痕を残して去った。だが主催者と新城市の努力により、雁峰、大平、ほうらいせん、ボーイスカウトの4ステージを確保することができた。今回のラリーはJAF中部・近畿ラリー地方選手権とTRD・ヴィッツチャレンジが併催されており、中部・近畿ラリー選手権はDAY1を、ヴィッツラリーはDAY2を走る設定になっていた。DAY1は大平リバース、雁峰、ほうらいせんリバースを2セット走行する。DAY2はほうらいせんショート、ボーイスカウト、大平ショートを、やはり2回ずつ走行する。21日金曜日から降り出した雨は、予報では土曜日には雨脚がさらに強くなるという。こうなると、狭くてツイスティな難コースである雁峰をどう攻略するかが、ラリー全体の鍵を握ることになる。

 前戦北海道の2位入賞で、勝田範彦/足立さやか組(GRB)が2連覇を決めているJN4。SS1リバースを最速で駆け抜けたのは、ここ数戦で復活の兆しが見えてきた石田正史/竹下紀子(CZ4A)。SS2雁峰ノースは勝田が取ったものの、ゼッケン3柳澤宏至/中原祥雅(CZ4A)がコースオフして道をふさいでしまった。後続の2台はなんとかすり抜けたものの、ゼッケン6番以降はリタイア現場でストップを余儀なくされ、それまでの最遅タイムを与えられた。SS3以降、勝田が順調にラリーを進め、DAY1を2番手の石田に46.1秒の大差をつけて、トップで折り返す。横浜ゴム新城工場の期待を背負って出走した奴田原文雄/佐藤忠宜組(CZ4A)だったが、タイヤ選択のミスからDAY1は5位に沈んだ。だがDAY2になると奴田原がスパート。SS7こそ勝田にベストタイムを許したものの、以降SS8~11と連続ベストタイムをマークするもDAY1の遅れが響いて3位がやっと。2位は高山仁/大橋正典。最終戦こそ優勝をと誓った高山だったが「目がいつもと違っていたかも」と最終SS12はベストタイムをマークして今シーズンを締めくくった。優勝は「勝負所の雁峰で後続を引き離せたのが良かった」という勝田。勝田は新城ラリー3連勝を果たした。

 牟田周平65ポイント、筒井克彦57ポイント、曽根崇仁56.5ポイント。この3人がチャンピオンを賭けて争うこととなったJN3。前戦ラリー北海道でサトリア・ネオで全日本ラリー初優勝を飾った牟田だったが、今回の新城ラリーは当初からサトリア・ネオ参戦計画に入っておらず、牟田は自身のラリーデビュー戦で使ったというDC2インテグラでの参戦となった。同様に第6戦ラリー洞爺でサトリア・ネオで優勝した明治慎太郎は自身のマシンであるEP82スターレットターボで参戦してきた。さらに、2010年以降、JN3ターマックラウンドで連勝を続けている眞貝知志も参戦しており、彼ら5人の戦いが注目された。
 だがラリーが始まると、明治/漆戸あゆみがズバ抜けた速さを披露する。DAY1のすべてのステージを制し、DAY1終了時点で2番手に30秒以上の大差を築いてしまった。その2番手は「コンディションが悪くなると成績が良くなる」という上原利宏/郷右近孝雄(EK9)。3番手には山口清司/島津雅彦(AE111)が付けた。ターマック連勝がかかる眞貝/田中直哉(DC2)だったが「セットアップの選択が甘かった」と4番手。チャンピオン争いのほうは、筒井/石田裕一(AP1)が序盤明治に食らいついて2番手につけていたが、SS5で失速してしまう。曽根はSS2で軽くクラッシュしてしまい、追い打ちをかけるように「黄旗が出ていてがっかり」と、完全に脱落してしまった。牟田/星野元はDAY1を5位で折り返した。

 DAY2に入ると眞貝がスパート。SS8を明治、SS10を松本琢史/萠抜浩史(ロータス・エキシージ)に譲ったものの、他はすべてベストタイムをマーク。鬼神の追い上げを見せて2位でフィニッシュした。明治はDAY2でタイヤ選択のミスはあったものの、DAY1のマージンをしっかり守りきり優勝。これで明治はシリーズを通じてグラベル1勝&ターマック1勝をあげ、JN3でただ一人、両路面優勝者となった。

 チャンピオン争いはSS5以降、常に筒井より一つ上の順位で走り切った牟田が制した。シリーズ2位に終わった筒井は「序盤いいペースを維持できたのがうれしかった」とS2000の熟成に満足気だった。初の全日本タイトルを獲得した牟田は「いや~もう、言葉が出ないです。このラリーは初参戦なので、チャンピオンを取るための必要ポイントに的を絞って走っていました」。ベテラン・コドライバーの星野も「成長しましたよ、走り的にも気持ちのコントロール面でも」と牟田を称える。弱冠26歳の牟田、久々の20歳代全日本チャンピオンの誕生となった。JN3ナビゲーターチャンピオン争いは、曽根のコドライバー桝谷知彦が、星野を僅か1.5点上回り、初の全日本タイトルを獲得した。

 前回のラリー北海道で天野智之/井上裕紀子組(NCP131)がクラス2連覇を達成したJN2。今回はその天野に対して、元WRCドライバーの丹羽和彦/永山聡一郎(GD3)、最近グラベルでも速さを身に付けてきた川名賢/関根慎二(NCP13)が、序盤から三つ巴の戦いを演じた。SS4でラリーリーダーとなった丹羽だったが、SS5でコースアウトからリタイアを喫してしまう。そのSS5でベストタイムをマークしラリーリーダーとなった川名は、DAY1最終のSS6でも天野を7秒ちぎるベストタイムをマーク。川名は天野に9.3秒差をつけてDAY1を終えた。DAY2に入っても川名はSS7、SS8とベストタイムを連発。だが天野もセカンドベストで川名に食らいついていく。そして天野はSS9、SS10とベストタイムを連発し、川名との差を一気に1.6秒にまで縮めていく。SS11を川名が取ってその差は2.8秒。そして迎えた最終SS12。「最後はコンマ差で決まる」と予想していた天野だったが、あろうことか川名がコースオフ。あっけない幕切れで、天野が新城ラリー3連勝を飾った。

 JN1のチャンピオン争いは、西山敏と山口貴利が41点で同ポイントリーダー。これを葛西一成が34ポイントで追う展開。だが山口は今回不参加。西山と葛西の、シリーズを賭けた一騎打ちにスポット参戦の小泉茂/由起組(AK12)がどうからむかが注目された。SS1で葛西/安田弘美組(M112S)を3秒引き離すクラスベストタイムをマークした西山/三好明宏組(K11)は「これで波に乗れると思った」もののSS2、SS3とも前走車のトラブルでアタックを敢行できずに出鼻をくじかれた形となった。だが気を取り直した2ループ目となるSS4で再びベストタイムをマーク。以降DAY2のSS10までベストタイムを連発。終始ラリーをリードしきって優勝を果たした西山が、1年ぶりとなるチャンピオンを獲得した。なお、ナビゲーターのタイトルは葛西のコドライバー安田が獲得。安田は青森県初の全日本ラリーチャンピオンとなった。

【全日本ラリー選手権 第8戦 総合結果】(出走45台/完走35台)
総合順位/クラス順位
ドライバー/コ・ドライバー
車名
トータルタイム
 1位/JN4-1位 勝田範彦/足立さやか ラック 名スバル STi DL インプレッサ 56:18.9
 2位/JN4-2位 高山 仁/大橋正典 DL☆HMハセプロOFランサー 57:02.9
 3位/JN4-3位 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN・PIAAランサー 57:14.4
 4位/JN4-4位 石田正史/竹下紀子 DL・テイン・マルシェランサー 57:16.6
 5位/JN4-5位 榊雅広/井手上達也 加勢eレーシング ADVAN ランサー 57:30.8
 6位/JN4-6位 杉村哲郎/立久井和子 ITZZ☆DL☆KYB☆WAKOS☆LFインプレッサ 58:27.4
10位/JN3-1位 明治慎太郎/漆戸あゆみ OKU ADVAN P.MU TG厚木 スターレット 59:32.4
17位/JN2-1位 天野智之/井上裕紀子 豊田織機・ラック・DL・BRIG・ヴィッツ 1:00:58.4
32位/JN1-1位 西山 敏/三好明宏 el・DL・WAKO's・BRIG NASマーチ タカミ 1:04:43.8
注)クラス区分の説明:JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、
           JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両。


【ドライバーズポイントランキング】
(総合/第8戦終了時点)
順位
ドライバー
ポイント
 1位  勝田範彦  127.0pts
 2位  奴田原文雄  98.0pts
 3位  柳澤宏至  76pts
 4位  高山 仁  42.5pts
 5位  福永 修  42pts
 6位  石田正史  32.5pts
※上記のポイント合計は、JRCAの独自集計によるものです。 正式ポイントおよび内訳はJAFホームページをご参照ください。

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【参考総合結果表】
  2011_rd08.xls 
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

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