全日本ラリー選手権2輪駆動部門第5戦
11月5~6日/大分県臼杵市野津町周辺
競技区間:8
競技区間総距離:約30km
ラリー総距離:約200km
路面:オールグラベル
路面状況:ドライ~ウエット


1995年から始まった全日本ラリー(JRC)の2部門制。それまでのJRCは2輪駆動車、4輪駆動車の混走だったが、1995年から駆動輪数により部門別に分離した。同時期、FIAは世界ラリー選手権(WRC)に「2リッターワールドカップ(W2L)」を創設し、将来はWRCを二駆・ノンターボ化するという方針を打ち出していた。しかしその後、WRカーなどの導入などに伴い方針が転換され、W2Lは数年前に廃止(注:現在WRCにはJ-WRCというFF車だけの部門がありますが、これは若手ドライバー育成のために低コストで公平な競走の場を与える目的のもので、四駆とは別に二駆に選手権を与えるのとは少し意味が違います。)。JRCでも今年を最後に2部門制が終わることになった。その最後を飾ることになったのが、今回のEAST九州2005だ。

 頓知話で有名な吉四六(きっちょむ)さんの生まれ故郷・野津町を中心に行われるこのラリーは、例年オールグラベルで2輪駆動部門の最終戦としてシリーズを締めくくってきた。同ラリーは、最近の全日本ラリーはSS方式のラリーが主流なのに対してCP方式を採用している。
 今シーズンの2輪駆動部門は当初全6戦が組まれていたが、栃木で開催される予定だった第5戦が中止となり、シリーズ争いの様相が一挙に変わってしまった。中止が決定した段階でAクラスで若槻幸治郎が、Cクラスで大庭誠介がそれぞれチャンピオンを決定してしまったのだ。だが逆にBクラスはチャンピオン争いが混沌としてしまった。最終戦を前にチャンピオンの権利を有しているのはポイント順に榊雅広(インテグラ)52ポイント、横尾芳則(インテグラ)50ポイント、上原利宏(シビック)42ポイント、アキラ(セリカ)40ポイント。4人とも優勝が条件だが、例えばアキラが優勝しても榊は横尾より上の順位でゴールすることが条件ながら4位以内でチャンピオン獲得となるなど、ケース・バイ・ケースで条件は異なってくる。また、榊は九州出身のドライバーなのに対して他の3人は全員関東出身。榊がポイント、地の利とも若干有利だ。なおアキラのコドライバー安東貞敏は2位以内でコドライバーチャンピオン獲得となる。

 だがラリーが始まって最初のハイアベレージ区間で、本命の榊がミッショントラブルでリタイアしてしまった。これで横尾が有利となった。たとえ上原が優勝しても横尾は2位につければチャンピオン獲得。アキラ優勝、上原2位となっても、横尾は3位以内でチャンピオンが決まるのだ。その最初のハイアベ区間を最小減点の18点でクリアしたのは森博喜セリカと大津康孝インテグラだった。1秒遅れて高橋悟志AE111と三苫和義ミラージュがつける。横尾がその1秒遅れ。アキラと上原は20点で終えた。次のハイアベセクションでアキラと横尾が最小減点であがり、この時点で減点44点で横尾がラリーリーダーとなった。だがわずか2秒差以内にアキラ、森、三苫、大津の5人がひしめく大接戦。上原は少し遅れて減点51。次のハイアベはB&Cクラスがキャンセルとなり、第4ハイアベへと競技は進む。ここで上原が目覚めた。15点の最小減点であがり、アキラとの差を5点に縮めた。ここで大津がリタイアしてしまい、優勝争いはトップのアキラが61点、2番手に三苫が62点でつける。以下64点の横尾、65点の森、66点で上原、68点で岡田孝一セリカという順だ。

 アキラは第5、第6ハイアベとも最小減点であがりリードを広げる。横尾、上原もなんとかアキラに食らい付いているが、岡田、森、三苫が遅れだした。残る2本のハイアベ区間。アキラは激走を続けた。第7ハイアベも最小減点であがり、最終の第8ハイアベを前にトップのアキラが減点127点、2番手に上原が138点で続く。3番手は142点で横尾、4番手に三苫が146点、5番手に森が147点、6番手には岡田が151点で続く。そして迎えた最終ハイアベ。泣いても笑ってもここ1本でシーズンが決まる。ここを最速で駆け抜けたのは、チャンピオンを目指す上原だった。だがアキラ、横尾は上原の2秒落ちでゴール。アキラがリーダーの座をキープして優勝。上原は2位、横尾が3位という順でラリーを終えた。この結果、チャンピオンはラリーを始めて3年目という横尾が獲得することになった。シリーズ2位には今シーズン初優勝を収めたアキラが、3位には上原、4位は残念なリタイアとなった榊という結果となった。またアキラが優勝したことで、コドライバー・チャンピオンには安東貞敏が輝くこととなった。
 Aクラスはすでに若槻マーチがチャンピオンを決めているが、4輪駆動部門Aクラスチャンピオンの平塚忠博と同2位の小野寺清之が、新型ブーンのグループNマシンで参戦してきた。この2台はことしのラリージャパンに参戦したマシンで、あまりにあっけないリタイアを喫し、雪辱戦とするとともに、06年のデータ取りという意味も含めての参戦となった。迎え撃つのは若槻を筆頭に地元の森吉徳和スターレット、中西昌人アルト、藤田幸弘スターレット、山本剛スターレットなど。だがラリーが始まると軽さにものを言わせて若槻がハイアベ3連発ベスト。第4&第6ハイアベで森吉が最小減点を奪取するも他のハイアベはすべて若槻がベストであがり、得意のグラベルラリー2勝をあげてシーズンを締めくくった。若槻に一矢報いた形の森吉が2位、平塚が重いグループNブーンを操って3位に入った。平塚は2番手、3番手タイムを刻むなど、来シーズンに期待を持たせる結果となった。

 Cクラスでは、チャンピオンの大庭スターレットが優勝候補最右翼。逆に若手の藤井がどこまで食らい付いていけるかが注目された。予想どおり、大庭は7つのハイアベ中第6ハイアベを藤井博樹スターレットに1秒負けたほかは全部ベストタイムという貫禄を見せてブッちぎりの優勝を果たした。藤井は4つのハイアベでセカンドベストを出して2位入賞。これで大庭はシリーズ5戦すべて優勝という圧倒的な強さを見せ付けることとなった。2位に入った藤井もシリーズ3位でシーズンを締めくくることとなった。期待の若手・藤井が来年どのクラスに参戦するかは未定だが、その活躍に期待したい。
Event photo

アキラ & 安東 貞敏(Bクラス1位)
チェックメイト・シビック

上原 利宏 & 伊藤 一也(Bクラス2位)
チェックメイト・シビック

横尾 芳則 & 鈴木 一也(Bクラス3位)
スキルガレージカトウ(自)DC2

大庭 誠介 & 高橋 浩子(Cクラス1位)
REPSOL ADVANスターレット

若槻幸治郎 & 石丸 智之(Aクラス1位)
NRSマーチ

平塚 忠博 & 鈴木  裕(Aクラス3位)
ダイハツ ブーン

【各クラス優勝者】
●2輪駆動部門Bクラス
1位
1位 ア キ ラ/安東 貞敏 ARUZE TRD C-ONE CELICA 150
2位
2位 上原 利宏/伊藤 一也 チェックメイト・シビック 159
3位
3位 横尾 芳則/鈴木 一也 スキルガレージカトウ(自)DC2 165
4位
4位 岡田 孝一/藤田めぐみ DL KYBインターゲットセリカ 185
5位
5位 森  博喜/藤綱 和敏 ミツバ・ラック・セリカ 188
6位
6位 高橋 悟志/嶋田  創 ミツバレビン 196
  
●2輪駆動部門Aクラス
1位
1位 若槻幸治郎/石丸 智之 NRSマーチ 259
2位
2位 森吉 徳和/星野  元 J&S KYBモチュールEP82 283
3位
3位 平塚 忠博/鈴木  裕 ダイハツ ブーン 309


●2輪駆動部門Cクラス
1位
1位 大庭 誠介/高橋 浩子 REPSOL ADVANスターレット 237
2位
2位 藤井 博樹/原  信義 FLEX★bp★DLスターレット 289
3位
3位 山崎 庸由/下城 玲子 BPFDLスノコニッチ・スターレット 392
注)全日本選手権クラス区分は、排気量により分かれ、Cクラスは2000ccを超える車両、Bクラスは1400ccを超え2000cc以下の車両、Aクラスは1400cc以下の車両。

全日本ラリー選手権シリーズ結果
2輪駆動部門Cクラス ドライバー
1位 大庭 誠介 100
2位 青島  巧 54
3位 藤井 博樹 42
2輪駆動部門Cクラス コドライバー
1位 高橋 浩子 100
2位 高橋  巧 54
3位 原  信義 42
2輪駆動部門Bクラス ドライバー
1位 横尾 芳則 62
2位 ア キ ラ 60
3位 上原 利宏 57
4位 榊  雅広 52
5位 森  博喜 32
6位 石城 健司 22
2輪駆動部門Bクラス コドライバー
1位 安東 貞敏  60
2位 井手上達也 52
3位 伊藤 一也 49
4位 加藤 将敏 35
5位 藤綱 和敏 32
6位 鈴木 一也 27
2輪駆動部門Aクラス ドライバー
1位 若槻幸治郎 74
2位 山本  剛 39
3位 島田 雅道 28
2輪駆動部門Aクラス コドライバー
1位 石丸 智之 74
2位 伊藤 洋幸 39
3位 藤田 洋文 28
シリーズポイントは1位=20点、2位=15点、3位=12点、4位=10点、5位=8点、6位
=6点、7位=4点、8位=3点、9位=2点、10位=1点で計算されています。

【参考総合結果表】
  ●2005_2wd_rd5.pdf
  ●2005_2wd_rd5.xls
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。


JRCA Homepage