全日本ラリー選手権第4戦
MSCC東京ラリー
6月1~3日/ 福島県東白川郡棚倉町
スペシャルステージ本数:15本(うち1本キャンセル)
スペシャルステージ総距離:103.06km
ラリー総距離:2レグ約344km
SS路面:グラベル
SS路面状況:ドライ
独走の奴田原文雄が、終盤にまさかのリタイア
勝田範彦が3勝目をあげ、シリーズ制覇に向けてリードを広げる
2007年最初のグラベルイベントとなった第4戦には、福島県棚倉町を拠点とする100km以上のSSが用意された。ニューコースも加わって昨年とは構成が少し異なるとはいえ、そのステージは、牧野を走り抜ける高速コースもあれば、道幅が狭く岩があちこちに潜むトリッキーな山道もあり、全体としてみれば変化に富む難しいラリーといえるだろう。昨年は奴田原文雄が先頭出走の不利をものともせず序盤に一気にリードを築いて他を圧倒すると、あとは着実な走りに切り替えて横綱相撲で優勝、チャンピオンの実力を見せ付けた。
今年も奴田原の速さは予想どおりといおうか、4本のSSから成るループを一巡した時点で、開幕3連戦で2勝と波に乗る勝田範彦に30秒もの差をつけて、トップの座はすでに不動と思えた。前戦で2年ぶりの勝利をあげて負傷から完全復活した石田正史は、グラベルで奴田原の優勝を阻止する最右翼と見られていたが、SS1で手痛いバーストを喫して下位に低迷し、SS3で早くもタイロッド破損からリタイア。また、昨年終盤に全日本ラリー初優勝を遂げ、今年はグラベルでの活躍が期待された炭山裕矢も、SS1でバーストして出鼻をくじかれた。
昨年このラリーで最後まで奴田原に食い下がった石田雅之は、今年はグラベルラリーに的を絞り、満を持して福島に乗り込むはずだった。ところが、今年、石田のランサーを駆ってターマックラリーを受け持った横尾芳則が、第2戦でそのクルマを崖から落として修理不能とし、シーズン中盤から使用予定だった新車の製作も間に合わず、石田雅之は今回は欠場を余儀なくされた。さらに、開幕からの舗装3連戦をすべて表彰台でフィニッシュしたダートラチャンピオン北村和浩は、今回のラリーは全日本ダートトライアルと日程が重なっているためスキップ。この状況では、奴田原の独走を阻む要素は、何もなさそうに見えた。
レグ1の後半、同じループの2巡目には、奴田原はすでにステディな走りに切り替えたようだが、それでも2位勝田との差をさらに広げ、47.2秒のリードをもって1日目の約70kmのSSを終えた。残るSSは7本、約34kmだ。トリッキーな道にコースアウトするのみならず、マシントラブルに見舞われるクルマが続出し、レグ1終了時点ですでに38台中17台がリタイアしていたが、その中には、今年はこのラリーが緒戦となったグラベルスペシャリスト田口幸宏も名を連ねていた。また、炭山はその後もバーストを繰り返し、順位は11位ながらトップとの差はすでに5分以上に開いている。
明けてレグ2。奴田原は今季初勝利に向けて順調にラリーを消化していくかに見えた。ところが、2本のSSを終えた時点で突如トランスミッションに異変が。SS11に向かう途中で動けなくなり、あっけなくリイアとなった。また、我慢のラリーを続けていた炭山も、SS11を走り終えたところでミッショントラブルからリタイア。さらに4位を走行していた星野博もSS12でデフトラブルからリタイアするなど、レグ2になっても上位陣に脱落車が続出。この荒れたラリーを最後まで着実に走りきった勝田が思いがけない勝利を手にし、4戦を終えて3勝2位1回とシリーズランキングでのリードを大きく広げた。
総合およびJN4クラス2位には大嶋治夫、同3位には大庭誠介というベテラン勢が、新クラス制度になってからはともに初めて表彰台に。また、一昨年からは年に1回程度の全日本ラリー出場を楽しんでいる綾部美津雄がダイハツブーンでJN-2クラス優勝、総合でも7位に入るなど、往年のトップドライバーたちが、サバイバルラリーで強さを発揮した。
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