全日本ラリー選手権第2戦
5月7~9日 宮崎県東臼杵郡美郷町
スペシャルステージ本数:10本
スペシャルステージ総距離:108.36km
ラリー総距離:2デイ約330km
SS路面:グラベル(一部舗装)
SS路面状況:ドライ

勝田範彦GRBが開幕2連勝


 宮崎県北部地方はレキ日の朝から雨模様だったが、初夏を思わせる日差しで路面はあっという間に乾き、ラリー本番は完全なドライコンディションで戦われた。長距離グラベルラリーのポイント係数が高くなったためか、エントリーは昨年を上回る40台。特にJN3クラスは昨年まで舗装イベントを主体にしていたレギュラー陣が数多く参戦し、内容の濃いエントリーとなった。コースは主催者の努力により良好硬質路が用意されたが、細かいダストや砕石が乗る個所も多く、これらがコンディションを厳しいものとした。最終的に半分にあたる20台がリタイアし、完走したクルーの多くもトラブルを抱えていたことからもコースの難しさがうかがえた。

 ラリーは前代未聞の”消毒”から始まった。口蹄疫対策のため急遽全車両の消毒が行われることが決まり、土曜の未明からオフィシャルカー、早朝からラリー車、その後サービスカーや搬送車に至るまで、関係する全ての車両の消毒が行われた。こうした関係者の努力の結果、午前9時、ラリーは予定通りスタートした。

 JN4クラスは14台のエントリー。セクション1は昨年と同じく珍神山周辺の林道を2ヶ所で区切り、そこを2回ずつ走る4SS、30.06kmが設定された。SS1八重原は2.17kmのショートステージ、ここは勝田範彦インプレッサGRB、石田正史ランサーエボ10、奴田原文雄ランサーエボ10の3台が0.1秒ずつの差で並び、3つ巴の戦いを予感させた。これに福永修ランサーエボ10が1秒差で続いた。
 SS2珍神は12.85kmのステージ、最初にひむかのコースの洗礼を受けたのは石田だった。「ぶつけた覚えは全く無い」と石田。しかしオイルクーラーの破損により早々にリタイアとなった。このSSも勝田が奴田原をわずかにリードし、2周目に入る。このセクションは奴田原がトップ、わずか1.1秒差で勝田が続いた。

 セクション2は毎年使っている14.56kmの山神下2本と、珍神の一部11.45kmを走る構成で、3SSの合計は40.57km。山神下1本目となるSS5、砂利掻き役となった奴田原を尻目に、勝田が奴田原を9.4秒も上回るベストタイムで一気に差を広げた。SS6、SS7は両者ほぼ同秒で、デイ1終了時の勝田と奴田原の差は9.1秒。3番手以下は福永が奴田原と約20秒差と善戦しているものの、後はすでに分単位で遅れていた。

 デイ2は前日の逆走となる山神上14.60kmを2本と、珍神の一部を走る8.53km、計3SS、37.73km。SS8、先頭は勝田、2番手は奴田原。出走順は再び勝田に味方した。この時間、林道は無風状態になっており、奴田原は勝田のホコリの中での走行を強いられたのだ。差は更に7.1秒広がり16.2秒となった。しかし勝田もすべて順調というわけではなかった。「ロワアームの付け根にクラックを見つけた」という勝田はSS9、10を車をいたわりながらの走行に切り替え、奴田原は猛然と追い上げたが5.2秒届かず、勝田が今期2勝目をあげた。2位は奴田原、3位には福永が入った。また「グラベルはほとんど初めて」という高山が4位に入った。勝田はここで40ポイントを得、シリーズを大きくリードすることとなった。

 JN3クラスは15台のエントリー。セクション1、SS1を制したのは小倉雅俊ブーンX4だった。小倉はさらにSS2、SS3もベストタイムを奪い、リードを広げる。続くSS4は香川秀樹インテグラと田中伸幸ミラージュがともに小倉を6秒上回るタイムで走り、セクション1は小倉、田中、香川のオーダーとなった。一方、優勝候補の一人、曽根崇仁セリカはエンジントラブルのためSS2でリタイアした。

 セクション2、SS5では足回りにトラブルを抱えた小倉のペースが上がらない。ここで香川がトップに立った。それに田中、小倉が続く。路面としては3回目の使用となるSS6、ここで田中は足回りが破損、制御不能となり、リタイアしてしまった。SS7は再び香川がベストタイムでリードを広げ、デイ1を香川、小倉というオーダーで終えた。

 明けてデイ2、小倉は壊れた足回りを交換し、逆転に臨んだ。SS8終了時点で差は18.5秒。「20kmで20秒ならいけると思った」という小倉はSS9で差を一気に3.6秒まで詰めた。最終となるSS10は14.6km、香川は「ラリー北海道に温存する予定だった新品タイヤを投入した」と逃げ切りを図る。ここで小倉はタービンが壊れて失速、香川は全日本ラリー初優勝となった。2位は小倉、3位には2年ぶりのグラベルラリーとしては上出来という岡田孝一インテグラが入った。

 JN2クラスは5台のエントリーで、実質的に天野智之ヴィッツと鷲尾俊一スイフトの戦いとなった。SS1から勝負をかけた鷲尾はここで天野を1.3秒上回り、まずはラリーをリードした。続くSS2、天野は追いついた前走車のホコリの中を延々と走る羽目になってしまい、石を避けきれずにバーストを喫し、更にそのまま走ったことでサスペンションにまでダメージを負ってしまった。結局、天野はペースを落としてなんとか完走し、鷲尾は全SSをベストタイムで走りきり、自身初の優勝を飾った。

 JN1クラスは6台のエントリー。中西昌人ストーリアと山北研二マーチ、小野修二マーチの争いとなった。SS1から3までは中西がリードを広げていく展開だった。しかしSS4、中西のストーリアは足回り破損で4分も遅れ、勝負から脱落してしまう。サービスで部品を交換できたまでは良かったが、部品の強度への懸念から完走ペースに切り替えた。小野はSS6で遅れ、SS7でリタイアしてしまい、結局、山北が独走で優勝となった。2位にはしぶとく完走した中西が入った。

<優勝者のコメント>
●JN4優勝ドライバー 勝田範彦
 今回はロワアームのボディ側が切れたりして、あと10kmあったらやられていたと思う。本当にラッキーでした。勝負どころは1日目の山神の2本かなと思う。山神2本でいいタイムが出せて、順位が1番になって、出走順も1番になって、今日ホコリの影響が無く走れたのが勝因と感じた。
 北海道へは日程がタイトなので、主に車の駆動系を補強して臨みたい。目標順位は過去最高位を上回る4位以上。

●JN4優勝コドライバー 足立さやか
 勝田選手は今日はダートで胸を借りるつもりで行って、いいタイムが出ていたので、気持ちよく走れていたようだ。自分は苦手なタイヤ交換が少なかったので、今回は良かった。

●JN3優勝ドライバー 香川秀樹
 たくさんの選手がリタイアしていて、自分のところにそのトラブルが来てもおかしくない本当にハードなラリーだった。その中で、昨日(田中)伸幸さんがリタイアして、小倉さんと一騎打ちになった。珍神はブーンが速くて山神は自分が速く、その中で速いところはきちんと取って遅いところは負けを最小限に抑えるという作戦で行った。SS9で15秒もちぎられたので、最終ステージの最後の最後までが今日の山場だった。
 今回は車のダメージが大きかったので、仕事の合間になんとか元に戻して北海道に間に合わせたい。

●JN3優勝コドライバー 船木一祥
 ノートがきちんと読めていれば、コースアウトは無いと思っていた。

●JN2優勝ドライバー 鷲尾俊一
 ダートの初戦なので、リタイアしないで2番手を狙う作戦で来た。完走できるように車もきちんと作ってきた。SS1で天野さんの上にいけたら勝機があると思っていた。エンジンにトラブルが出たが、天野さんにもトラブルが出た。今回の結果が北海道につながっていくと思う。
 北海道では新しく作ったスイフトを投入する。現在製作中で、WRCもそれで出る予定。スケジュールも経費もきついので、北海道2戦は連続してほしい。

●JN2優勝コドライバー 鈴木隆司
 今年は鷲尾さんは狙う物がある。去年から車も進化しており、自分自身も少しは進化しているかなという気持ちはある。ダートでは何とか天野さんの上を行きたいと思っていたので、ここで取れてよかったと思う。2日目、トラブルを抱えた中で、切り替えて我慢のラリーができたのが良かったと思う。

●JN1優勝ドライバー 山北研二
 前回は1,000ccだったが、1,300ccを投入すれば何とかなるだろうと思って車を作ってきたが、パイピングガードもタンクガードも無い状況だった。SS1,2はゆっくり走っていたが、中西さんの土煙が見えた瞬間にスパートをかけた。小野さんもリタイアしたので、今日はゆっくり走った。JN1のレギュラーは中西さん一人で、四国は西山さんがマーチで参戦してくる。

●JN1優勝コドライバー 鶴田美香 
 最初から完走ペースでといわれていたので、そのペースを守ることに気をつけた。サービスに感謝している。

【全日本ラリー選手権 第2戦 総合結果】(出走40台/完走20台)
総合順位/クラス順位
ドライバー/コ・ドライバー
車名
トータルタイム
 1位/JN4-1位 勝田範彦/足立さやか ラック名スバルSTI DLインプレッサ 1:38:06.3
 2位/JN4-2位 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 1:38:11.5
 3位/JN4-3位 福永修/奥村久継 HASEPRO・SDF・DL・ランサー 1:39:21.3
 4位/JN4-4位 高山仁/広田沙貴子 DL☆Cロレーヌ☆ハセプロランサーエボVII 1:41:02.7
 5位/JN4-5位

堀江拓/松浦好晃

テイクグッドDLitzzランサー 1:43:59.6
 6位/JN3-1位 香川秀樹/船木一祥 el正和DLミッドランドBRIGインテR 1:45:12.1
 17位/JN2-1位 鷲尾俊一/鈴木隆司 ワコー・ベストワーク・スイフト 1:59:21.5
 18位/JN1-1位 山北研二/鶴田美香 BRIGダンロップF・XAマーチ 2:11:42.6
注)クラス区分の説明:JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、
           JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両。


【ドライバーズポイントランキング】
(総合/第2戦終了時点)
順位
ドライバー
ポイント
 1位  勝田範彦  64pts
 2位  高山仁  32pts
 3位  福永修  31.2pts
 4位  奴田原文雄  30pts
 5位  吉谷久俊  18pts

Event photo
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全日本総合1位(JN-4クラス1位)
勝田範彦/足立さやか

全日本総合2位(JN-4クラス2位)
奴田原文雄/佐藤忠宜

全日本総合3位(J-4クラス3位)
福永修/奥村久継

全日本総合6位(JN3クラス1位)
香川秀樹/船木一祥

全日本総合17位(JN-2クラス1位)
鷲尾俊一/鈴木隆司

全日本総合18位(JN-1クラス1位)
山北研二/鶴田美香

共同記者会見
(各クラス優勝クルー)


勝田選手(左)/足立選手

【参考総合結果表】
  2010_rd02.xls  2010_rd02.pdf
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

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