開催日時:7月8~10日
開催場所:岐阜県高山市周辺
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離:58.64km
ラリー総距離:2デイ3セクション255.91km
SS路面:ターマック(舗装路)
SS路面状況:デイ1/ドライ デイ2/ドライ一部ウエット
ポイント係数:1.0
コンマ1秒を争う大接戦は最終SSで決着!
奴田原文雄が今季3勝目をマーク
全日本ラリー選手権第5戦「第39回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ」は、開幕戦・唐津以来今季2回目のターマックラリーとして開催された。
これまで、岐阜県高山市の北に位置する「ほおのき平スキー場」を拠点としていたこのラリーだが、2月27日に乗鞍を震源地とする地震の影響ハイランドマスターズの”名物SS”ともいえる「駄吉林道」に土砂崩れが発生し、通行不能となってしまった。そのため、ラリーの拠点となるサービスパークを高山市南部の久々野町に移動。昨年までDAY2のステージとして使用していた「アルコピアスキー場」周辺をDAY1の主戦場とし、DAY2はサービス地点から東に約20km移動した「鳥屋峠」が舞台となる。17年前の全日本ラリーに使われたことがある鳥屋峠だが、当時はグラベルステージだったため、ターマックステージとして使用するのは今回が初となる。これまで長年ラリーに使用されていなかったこともあって、路面全体を苔が覆っている上に一部はわき水が溢れ出し完全ウエット状態となっている。この難ステージをどう攻略するか、勝敗の行方に大きく影響するステージとなりそうだ。
飛騨高山地方の梅雨明け宣言が出たDAY1は、朝から強い日差しが差し込み気温がグングンと上昇。スタート時刻の正午には気温が30度を超えるという真夏の気候となった。DAY1に用意されたSSは、無数河下り5.55km/上り5.52km、牛牧上り2.46km/下り5.44kmを、サービスを挟んで2回ずつ走るという設定だ。ストップ&ゴー的なコーナーが続く無数河は、メリハリの効いたドライビングが必要となる。一方の牛牧は中速のロングコーナーが多く、ドライバーにとっては「まだ攻めて走れるんじゃないか」と思わせるチャレンジングなレイアウトだ。性格の異なる2本の林道がDAY1の舞台となるが、いずれにしてもDAY2の前に少しでもマージンを稼ぎ出しておきたいところだ。
ところが、いざ蓋を開けてみるとSS1「無数河下り1」は、奴田原文雄/佐藤忠宜組(CZ4Aランサー)と福永修/奥野久継組(CZ4Aランサー)が4分30秒1の同タイムでステージベストを分け合い、勝田範彦/足立さやか組(GRBインプレッサ)と高山仁/広田沙貴子組(CT9Aランサー)が1.3秒差で2番時計を分け合うという僅差の勝負で幕を開けた。続くSS2「牛牧上り1」も、ギャラリーが見守るゴール手前のヘアピンコーナーで福永がコースオフしかけながらも奴田原と同タイムで連続ステージベスト。この二人に1秒遅れで勝田が続き、SS2を終えた時点でトップの奴田原・福永に対し2.3秒差で勝田、さらに勝田から0.8秒差で高山という四つ巴の展開となった。
だが、2周目となるSS3「無数河下り2」からラリーは動く。ここでステージベストを奪った奴田原は、続くSS4「牛牧上り2」でもベストタイムを奪い、セクション1の4本のSSを完全制覇。スタート前にターマック用のリアブレーキキャリパーが不調となり、急遽15インチ用のキャリパーを装着して挑んだ福永は、SS3で4番時計、SS4で2番時計となり、奴田原から3.7秒差の2番手でセクション1を折り返す。一方、「なぜかクルマの動きがしっくりこない」となかなかベストタイムが奪えない勝田は、SS3・4とも3番時計となり、セクション1はトップから5.4秒差の3番手。トップ奪還はもちろんだが、0.2秒差で迫る高山も無視できない存在だ。
セクション1後のサービスを終え、これまでの逆走ステージとなるセクション2に向かう4クルー。サービスでのタイヤ交換が、この後の戦いに大きく影響する結果となった。今回のラリーで使用できるタイヤは10本までだが、DAY2の「鳥屋峠」が勝負所と睨んだ奴田原はフロントタイヤのみ2本を交換して、残りの4本はDAY2用に温存するという戦略に。一方、福永と高山の2台は、3つのセクションの中でSSの距離が最も長いセクション2に4本のフレッシュタイヤを投入し、一気に勝負に出るという戦略をとった。また、セクション1でトップから5.4秒差の3番手というポジションの勝田は、「本来ならDAY2に向けてタイヤを温存しておきたいところだけど、ここでトップに追い付かなければ勝負にならない」と、福永・高山と同様に4本のフレッシュタイヤを投入する。
注目のセクション2は、SS5「牛牧下り1」こそ奴田原がステージベストを奪うものの、SS6「無数河上り1」はフレッシュタイヤ4本を投入した福永がステージベストをマーク。SS7「牛牧下り2」は「ショックアブソーバーの減衰の設定を大きく間違えていたことに、セクション2になって気付いた」という勝田が本来の速さを取り戻し、この日初のステージベストをマーク。DAY1最終となるSS8「無数河上り2」は福永がこの日4回目のステージベストを奪うとともに、終盤になるにつれ徐々にタイムを落としていった奴田原を捉え、0.8秒差のトップに躍り出る。
一夜明けたDAY2は、このラリー最大の難所「鳥屋峠」をノーサービスで順走・逆走方向に2回ずつ走るというタフな設定だ。
ここではDAY1トップの福永と奴田原が両者一歩も譲らぬ展開となり、SS10でステージベストを奪った奴田原が福永を逆転し1.5秒差のトップに立つものの、SS11では福永がステージベストを奪い、その差は0.1秒に縮まる。残すは最終SSのみとなった両者の対決は、奴田原がSS11の自己タイムをさらに4.7秒縮める渾身の走りをみせ、福永に対し1.0秒差のステージベストをマーク。DAY2終盤を見据えたタイヤ戦略が見事に当たった奴田原が今季3勝目をマークし、シリーズポイントも今回3位に終わった勝田を逆転しトップに浮上するという結果となった。
JN3クラスは、ターマックの速さに定評がある眞貝知志/田中直哉(DC2)の独断場となった。DAY1のセクション1では「ドライバーもコドライバーもグラベルラリーの感覚が抜けなくて、実際にタイムが出ているのか出ていないのかわからない状態だった」という眞貝だが、それでもSS1からSS5まで5本連続ステージベストをマークし、早くも独走態勢を決める。結果的にはDAY1の8SS中7本でベストタイムを奪った眞貝が、DAY2もそのまま逃げ切り今季2勝目をマーク。ターマックラリーではなんと6連勝という強さを見せつけた。2位には、「レキ前に本番車が故障したため、急遽ミニバンでレキしたが、慣れていなかったせいか、ペースノートの作りが甘かった。なんとか眞貝選手に食らいつきたかったんだけど……」という筒井克彦/永山聡一郎(AP1)が、2本のSSでステージベストを奪い入賞、香川秀樹/北田稔(DC2)と山口清司/島津雅彦(AE111)が終盤まで競った3位争いは、「ターマックラリーでは香川さんに負けるわけにはいかない」という山口がDAY2オープニングのSS9で香川を捉え逆転。その後は香川も追い上げるものの、最終的には1.9秒差で山口が逃げ切り、第3戦ひむかに続く3位に入賞した。
新型ヴィッツを駆りシリーズ2勝を挙げている天野智之/井上裕紀子(NCP131)と、開幕戦で速さを見せながらも無念のリタイアとなった丹羽和彦/谷内壽隆(GD3)との対決が注目となったJN2クラスは、DAY1を終えてトップの丹羽と2位の天野のタイム差が2.3秒というがっぷり四つの対決となった。注目のDAY2は、SS9でステージベストを奪った丹羽がそのまま逃げ切ったかにみえたが、最終SSをゴールした時点でトラブルによりリタイアとなってしまった。この結果、最後の最後に今季3勝目を手に入れることとなった天野だが、最後まで好勝負が続いただけに歯切れの悪い結末となったのは残念だ。また、天野からは23.4秒遅れたものの、昨年速さをみせた若手の川名賢/関根慎二(NCP13)が開幕戦以来となる2位入賞、3位には毎年スポット参戦ながらも上位に食い込む青島巧/松井博和(GD3)が、熾烈な3位争いから頭一つ抜けだし入賞した。
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