開催日時:9月2~4日
開催場所:北海道洞爺湖町周辺
スペシャルステージ本数:15本
スペシャルステージ総距離:114.78km
ラリー総距離:2デイ9セクション532.02km
SS路面:グラベル(一部ターマック)
SS路面状況:デイ1/ウエット デイ2/ウエット~一部ハーフウエット
ポイント係数:2.0
勝田範彦が渾身の走りでシリーズトップを奪い返す! JN3はプロトン・サトリアネオが全日本初優勝
昨年は倶知安町周辺を舞台とし、「ラリーイン後志」の大会名で開催された全日本ラリー選手権第6戦。今年は、北海道の中でも人気の観光スポットとして名高い洞爺湖町にホストタウンを移し、大会名も新たに「ラリー洞爺」と変えて開催された。
洞爺湖周辺の洞爺湖町、伊達市、壮瞥町、豊浦町を舞台とするこのラリーは、すべてのステージを一新。全日本ラリーに使用するのは1980年代中頃以来という歴史あるクラシカルコースがメインルートとなる。ラリーは、5本のSSをデイ1で2周、デイ3で1周の合計3周ループするというシンプルな設定だが、SS1/6/11のCHRYSANTHEME(8.16km)はステージの約7割がターマックというミックスサーフェース、SS2/7/12のAPPLE(3.27km)とSS3/8/13のSTRAWBERRY(5.97km)は道幅が狭い上に路面もルーズで滑りやすいテクニカルコース、SS4/9/14のPLUM(2.58km)は距離は短いものの道幅が広い上に路面も固く締まったダイナミックなコース、このラリー最長となるSS5/10/15のFRUITS TRAVERSE(19.37km※SS15のみ16.10km)は、壮瞥町の久保内から駒別に抜ける山々を尾根伝いに一気に駆け抜けるパノラマコースと、それぞれキャラクターが違う多彩なステージが用意されている。
この第6戦の約1ヶ月後にラリー北海道を控えていることもあり、シリーズの行方を占う上でも重要な1戦となる今回のラリーだが、エントラントたちを苦しめたのが台風12号の影響による大荒れの天候だ。レキが行われた2日金曜日の時点から降り続ける雨は、デイ1の3日土曜日に入るとさらに本格化し、ゲリラ豪雨的に各ステージに降り注ぐ雨は、レキの時点では「走りやすい」と好評だった路面を一変させていく。各ステージにはこの地域の特産でもあるフルーツの名が冠せられているが、それは決して甘い物ではなかった。
この雨の影響を最も受けてしまったのが、第5戦でシリーズトップに立った奴田原文雄/佐藤忠宜組ランサーエボXだ。ライバルの勝田範彦/足立さやか組インプレッサに対し、シリーズポイントで5P差のトップに立った奴田原にとっては、この第6戦と第7戦のグラベル2連戦で、その差を一気に引き離したいところだ。ところが、オープニングのSS1では福永修/奥村久継組ランサーエボXに対し3.8秒差の2番時計。続くSS2でも、ステージベストを連発する福永に対し3.7秒差の6番時計、SS3でステージベストを奪った勝田に対し8.3秒差の5番時計、SS4では勝田と同タイムながらもこの日初となるステージベストを奪うものの、SS5はステージベストの柳澤宏至/中原祥雅組ランサーエボXに対し9秒遅れの4番時計と、最初のループでいきなりトップから18.6秒ものビハインドを背負ってしまう。
そのトップに立ったのが、ステージベストは2本ながらもコンスタントに好タイムをマークした勝田だ。「第5戦から約1ヶ月のインターバルの間、徹底的にクルマを見直しセットアップしてきた」という勝田は、2ループ目もステージベストは2本ながらも、勝負所でキッチリとライバルを引き離す走りで、デイ1を終えた時点で2位の柳澤に24.9秒という大量マージンを築き上げ、トップで折り返す。
一方、デイ1で3本のステージベストを奪った柳澤は、「今回はあくまでもラリー北海道を見据えたセッティングを数々トライしているので、ある意味タイム差は想定内」と、ターゲットはあくまでもラリー北海道に絞り込んだ戦い方で、セッティングが合ったSSでは充分な手応えを掴んでいる。
その柳澤から0.9秒差の3番手でデイ1を終えた奴田原は、「最初のループでセッティングが合っていなかったのが痛かった。2ループ目に大幅にセッティングを変えて、クルマ的には良い方向に向かってはきている。明日は全力で勝田くんを追いかけます。それにしても今回の勝田くんは速いね。今日のタイム差は、純粋に勝田くんが速かったということ」と、デイ2に向けて気持ちを引き締める。
またSS1、2を連取し、波に乗るかと思われた福永だが、最終的にデイ1はトップの勝田から57.2秒差の4番手。だが福永は、「実は8月に、今までにないほど走り込みをしてきたんです。今回0カーで走っている新井選手にもいろいろアドバイスをもらいました。その中で、こうやって走ればタイムが上がるという走り方が見えてきた。ただ、それがまだ完全に自分のモノにはなっていないんです。でも、その走らせ方を習得しないと、上の2人にはいつまでたっても追いつくことができない。ターマックではやっと戦えるようになってきたので、グラベルでも速さで勝負できるよう、今回はトライを続けていきます」と、デイ1のタイム差は納得の様相だ。
それぞれの思惑の中迎えたデイ2、奴田原の逆襲が始まった。デイ2最初のSS11でステージベストを奪った奴田原は、柳澤をかわし2位に浮上。トップの勝田との差を18.8秒差に縮めてきた。だが、続くSS12は勝田が奪い、タイム差を23.4秒差に引き戻す。両者一歩も引かない勝負は、SS13で決着がついた。雨の影響で極悪路と化したこのステージで、奴田原が痛恨のタイヤバーストを喫し、ステージベストを連取した勝田に対し55.9秒遅れでゴール。順位を3位に下げ、このラリーを終える結果となった。結局、勝田はS15でもダメ押しともいえるステージベストを叩き出し、2位の柳澤に対し42.7秒もの大差で今季2勝目をマーク。デイポイントも両日ともトップポイントというフルマークを獲得し、シリーズトップの座を奪い返すという結果となった。
JN3クラスは、シリーズトップの曽根崇仁/桝谷知彦組セリカがSS3でミッショントラブルが原因でリタイアと、波乱の幕開けとなった。この波乱はライバル達にも連鎖し、シリーズ3位の松原久/香川俊哉組ブーンX4がSS5でミッショントラブル、シリーズ4位の山口清司/島津雅彦組レビンがSS8でコースアウト、同じくシリーズ4位の香川秀樹/浦雅史組インテグラもSS10でミッショントラブル、SS8までクラス2位を快走していた宇田圭祐/石川恭啓組インテグラがドライブシャフトを破損しリタイアと、上位陣が次々と戦列を離れるというサバイバル戦となった。その中、トップを独走したのが、今季初登場となる小倉雅俊/高橋巧組のブーンX4だ。FF勢に対しグラベルで有利な4WDのブーンX4は、大雨をも味方につけ、デイ1終了時点で2番手に浮上してきたプロトン・サトリアネオの牟田周平/星野元組に対し、1分04秒2もの大量リードを築き上げ、デイ1をトップで折り返す。3番手はクスコ・ジュニアラリーチームの明治慎太郎/漆戸あゆみ組と、プロトン勢が表彰台の一角を狙う。
デイ2、すでにライバル不在の状態となった小倉は、「以前、ひむかでもトップにいながらタービントラブルで優勝を逃してしまったことがある。今回は同じ轍を繰り返さないためにも、ペースはしっかりと抑える」と確実にゴールを目指す。だが、最後の最後にまさかの悪夢が小倉を襲った。最終SSとなるSS15、ここで小倉はまさかのタービントラブルに見舞われ、スローダウンしてしまう。今年、全日本にデビューし注目を集めるプロトンにとっては、千載一遇のチャンスが訪れた。ここでフルアタックをかけた牟田は小倉をかわしトップに浮上。ところが、その牟田をさらに逆転した明治が最後の最後でトップを奪取。SS1でも悪コンディションの中で2本のステージベストを奪った明治が、「丈夫なクルマを造ってくれたプロトンとキャロッセに感謝します」と、プロトン初の全日本ラリー優勝を奪った。
JN2クラスは、シリーズトップの天野智之/井上裕紀子組と、「クルマとドライビングのすべてを見直してきた」というベテランの田中伸幸/遠山裕美子組の、新旧ヴィッツの一騎打ちとなった。
勝負所となったSS5では田中が天野を10秒差に抑える快走をみせるが、深い霧が立ちこめたリピートステージのSS10では、逆に天野が田中に対し12秒差のステージトップタイムを叩き出すという、両者一歩も譲らぬ戦いとなった。だが、デイ2に入り天野のヴィッツのマフラーが脱着しかけるというアクシデントが起き、一気にペースダウン。「やっとクルマが気持ちよく走ってくれるようになった」という田中が、遅ればせながらも今季1勝目をマークした。一方、天野と激しいシリーズ争いを展開する増川智/赤城弥生組ヴィッツだが、デイ1はコースオフから3分をロス。それでも「少しでもポイントを加算して、なんとかラリー北海道に繋げたい」とデイ2を走ったが、デイ2最初のSS11でミッショントラブルに見舞われ万事休す。痛恨のノーポイントでラリーを終える結果となった。
JN1クラスは、序盤から元BOOBOWワークスドライバーの村田康介/平山真理組のストーリアが快走し、2番手につける山口貴利/山田真記子組ストーリアに対し、SS14終了時点で5分以上という圧倒的な大差をつけラリーをリードする。だが、「今日は3割程度の走りから2割程度の走り。あとはゆっくりゴールするだけ」と豪語する村田に、SS15でまさかの展開が待ち受けていた。SS15の中間地点で、村田のマシンのロアアームが折れ、コース上にストップ。いつもはプレスとして全日本ラリーを転戦する山口が、「まさかの展開。自分自身の楽しみのために走っているので、優勝するとは夢にも思わなかった。僕が走ることで『クラス成立の役に立てられればいいなぁ』ぐらいの気持ちで出場したので、逆に申し訳ない気持ちです」という山口が、全日本ラリー初優勝を奪うという結果となった。
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