JAFへの要望(第二次)要約

1.要望の概要

1) 競技の公平性と信頼性を確保するため、計時機器類の貸し出しを要望いたします。
2)競技の安全確実な実施を促進するため、統一標識類の配布を要望いたします。
3)より一般社会に受け入れられやすい運営を実現するため、公認基準にある「150kmごとに連続60分のレストタイム」の再検討または弾力的運用を要望いたします。

2.要望の具体的内容

1)計時機器類の貸し出しについて

a.現状とその問題点
2001年現在、全日本ラリー選手権四駆部門はほとんどがSS主体のラリーであるにも関わらず、従来の「アベレージ走行ラリー」と同様の計時方法が採用されている。具体的には、SSフィニッシュのライン横に控えたオフィシャルがホイッスルを吹いて競技参加車両のフィニッシュライン通過を知らせ、少し離れた場所に待機した計時係が、ホイッスルの聞こえた瞬間の時刻を読み取るという方法である。
一方、FIAのラリーに関する一般規則(General Prescriptions)には、計時の具体的な方法が定められているが、これはタイムトライアルを中心としたラリーにおいては極めて合理的なものと考える。すなわち、「フィニッシュラインの真横に構えた計時係が、競技車両がフィニッシュラインを通過した瞬間にストップウォッチを押す。このストップウォッチには印字機能がついているものを使用する。また、別に2~3個のストップォッチでバックアップ計時を行うが、バックアップのストップウォッチは印字機能がなくてもよい。」という規則である。
実際の運営にあたっては、この印字された時刻を計時係が読み取り、STOP地点のオフィシャルに無線等で連絡する。STOP地点では、この時刻を当該競技車のフィニッシュライン通過時刻として、選手が所持しているタイムカードに記入する。
この方法に比べると、「アベレージ走行ラリー」において確立された計時方法は、そのままタイムトライアル区間の計時に採用された場合、以下のような問題があると考えられる。

I ) 近づいて来た車両がラインを通過する瞬間を目で見て計時するFIA方式とは異なり、いつ来るかわからない瞬間を時計を見ながら待ち、ホイッスルが聞こえた時刻を瞬間的に読み取るため、聞き逃しや錯誤が起こる可能性があり、信頼性および正確さにおいて充分とはいえない。

II ) 最近では、車両性能の向上と、より競技性の高い設定を求める傾向を反映して、SSが高速化しており、フィニッシュラインから計時車までの距離が長くなってきている。このため、ホイッスルが聞き取りにくいことがある。また、その問題を解消する手段として、フィニッシュラインのオフィシャルは無線機に向かってホイッスルを吹き、それを計時車の無線機で聞くという方法が取られる場合もある。いずれにしても、信頼性と正確さにおいて充分とはいえない。

III ) ターボ車ではブローオフバルブを殺しているものも増えてきており、アクセルオフ時の「ヒューン」という音がホイッスルの音と紛らわしい、という問題が現場のオフィシャルによって指摘されている。

IV ) 計時記録が残らない。(計時車において印字機能つきラリーコンピュータを使用すれば記録を残すことは可能だが、採用されているケースは少ない。)

V ) 1秒以下の計時が不可能なため、順位が正しくつけられていない可能性が高い。

b.計時機器導入による効果
I)正確さと信頼性を実現しつつ、オフィシャルの物理的・精神的負担を軽減する
現在の計時方法では、計時オフィシャルに高い技能と習熟が要求され、また、その任務を遂行するにあたっては、長時間にわたってほとんど休むことのない甚大な緊張を伴う。計時機器類を使用することにより、(I)~(IV)の問題が解消されるばかりでなく、計時オフィシャルに求められる習熟度と緊張感は大幅に緩和される。正確な計時のために割かなければならない物理的・精神的労力が軽減されることで、より安全で公正な競技運営への配慮が増加することも期待できる。

II ) 正確な計時によって正確な順位決定を実現する
1秒単位での計時では、実際には最大0.9秒の誤差が生じる可能性がある。FIAの調査によれば、過去のWRCで1位と2位の差が0.9秒xSS数より少なく、もしも0.1秒単位まで計時していれば順位が入れ替わった可能性のあるイベントは18%にのぼるという。
現在の全日本ラリー四駆部門では、SS距離は増加傾向にあるが、日本特有の地理的条件から各SS1本あたりの距離は短く、SSの数だけが多くなりがちである。SS1本あたり0.9秒の誤差が生じれば、SS数が多いだけに、合計の誤差もおのずと大きくなってしまう。
今年の第1戦から第5戦での1位と2位のタイムについて調べてみると、3戦で順位が入れ替わる可能性があり、WRCの18%と比べて非常に高い。これは、各SSの距離が短く、SSタイムの差がつきにくいという日本の事情をよく反映したものである。
成績が正しくつけられてこそ、スポーツとしての面白さもあり意義もある。それには0.1秒単位までの計時の実現が不可欠の条件と考える。
  
c.どのような計時機器を導入すべきか
I)目で見た瞬間の時刻を記録する機器
SSフィニッシュラインにおいて、競技車がラインを通過する瞬間を目で見てその時刻を記録することのできる機器→印字機能つきストップウォッチ(1個3万円程度)

II )フライング検知機
現在行われているスタンディングスタートでは、1秒以下のフライングの認識は事実上不可能である。フィニッシュラインでの0.1秒単位までの計時を意義あるものにするには、正しいスタートがきられる必要がある。そのためには、SSスタートにおいて、公式時計を表示する機器と、それに連動したフライング検知機が必要である。

2)統一標識類の配布について
a.現状とその問題点
2001年の全日本ラリー選手権四駆部門においては、JRCA会員の合意のもとに、FIAのラリーに関する一般規則(General Prescriptions)に定められたものと同様の標識類を使用しており、主催者からは、デザインや大きさが適切で視認性が良く、特にSSにおいては競技の安全な運営に大いに役立っているとの報告を受けている。
 これらの標識類は、すでに1997年から一部の有志によって使用されていたが、JRCAでの使用によって、会員以外からも配布を希望する声が届いている。しかし、一個の任意団体がこれに応えて行くことには限界がある。

b.JAFによる標識配布により期待される効果
これら標識類の普及は、ラリーの参加者にSSやTCに関する共通の認識を育て、それによって、この標識を使用して運営されている個々のイベントだけでなく、すべてのイベントにおける安全性を向上させる効果がある。また、将来、競技規則が国際標準化されたとき、この標識はそのまま使用できる。
 このような標識類は、1個の任意団体が製作・配布するよりも、ラリー全体を統括するJAFにおいて製作・配布するほうが適切と考える。また、JAFによる管理を契機として、より迅速にかつ広範に、これらの標識類が普及していくことも期待できる。

3)「150kmごとに1時間の休憩」条項について

a.現状とその問題点
現在、JAF公認ラリーには、すべての格式において「競技中の走行距離最長150kmごとに連続して60分以上のレストタイムを設けなければならない」という公認基準が課せられている。
この基準の運用は厳格で、60分以上の休憩なしに150kmを1kmたりとも越えるルート設定は認められず、また、例えば「75km走行後に30分のレストタイム」という設定も認められない。そのため、以下のような問題が生じている。

I ) コース立案が非常にやりにくい。
II ) 開催地の住民生活へのラリー開催によるインパクトを増大させている。
III ) 資源、時間のムダづかい。

わが国は人口が多く、開発もすすんでおり、ラリーのルート設定をすることは容易ではないが、これに加えてこの基準があるために、ますますルート設定が困難になっている。この基準を満たすために非効率的なルート設定となり、その結果、競技時間がいたずらに長くなる、コースの閉鎖時間が長くなる、サービス場所の開設時間が長くなるなど、運営オフィシャルへの物理的・精神的負担を増大させ、同時に、地域の住民生活へのインパクトも増大させている。非効率的なルート設定が、ガソリンのむだ使い、時間のむだ使いにつながることも明白である。
ラリーは、地域住民の生活道路を借用して行われるという性格上、地域住民の理解と協力が不可欠である。また、世界的に環境問題への関心が高まるなか、林道を使うことが多いラリーは自然破壊と誤解されるおそれがあり、環境への配慮をもった姿勢を明確に示さなければ、このスポーツに対する一般の理解を得にくくなる可能性も指摘されている。
近年のWRCのコンパクト化は、このような世界的な流れを反映し、省エネルギーとコスト削減を狙い、開催地の住民感情に配慮したものとなっている。日本国内のラリーも、当然のこのような流れに乗ってしかるべきと考える。

b.提案その1:競技形態の変化に合わせて基準の再検討を

 かつて一般的であった「アベレージ走行ラリー」では、どこにチェックポイントがあるかわからないため、運転者も同乗者も、走行している間じゅう恒常的に高い緊張を保つ必要があった。また、アベレージ速度も低かったので、150kmを移動するのに連続4~5時間もの運転を強いられることも多かった。この状況では、「150kmごとに1時間の休憩」は安全確保に欠かせないものであったと思われる。
 しかし、現在行われているSS主体のラリーでは、SSからSSへの移動は一般のドライブと同じで、このように高い緊張が連続することはない。一般的ドライブにおいてもある程度の緊張は必要であるが、これは普通の運転者と同レベルのものにすぎない。また、一般のドライブにおいては1~2時間毎に1回の休憩が望ましいとされているが、モータースポーツであるラリーにそれと同様の休憩を求めることは的外れといえよう。
 FIAのGeneral Prescriptionsにおいては、「SS合計距離最長60kmごとに20分のサービスを置く」ことが規定されているが、これは、乗組員や車両が消耗するのは主にSSであって、それ以外の部分はほとんど消耗しないという考え方にもとづいている。これを参考に、現在の基準の再検討が必要と考える。
  
c.提案その2:現行基準のより弾力的な運用をFIA規則に準じた基準を設定することが理想であるが、それが不可能な場合は、現在の基準がより弾力的に運用されるような実施基準策定を要望する。
たとえば、以下のような方法が考えられる。

I ) 距離に比例した分割も可能とする。
  例)100kmで40分など
II ) 途中で運転者を交替し、運転していない時間を休憩時間に含めることも可とする。
  例)130km地点で運転者交代を指示し、そこからは0kmとして計算
III ) 「150km」に+15%程度の幅を持たせる。
IV ) 60分にリグループの時間も含める。また、リグループでは後方に行くほど待機時間が減るが、トータルで-15%程度の短縮は認める。

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上記について「ラリー専門部会等で検討いたします」旨JAFより口答で連絡がありました。


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