JAFへの要望(第三次)要約

1.本書をまとめた動機

このたび、全日本ラリー選手権四輪駆動部門第6戦ノースアタックラリーにおいて、計時結果が信頼できず、また、その対応のために競技結果の発表が遅れるという事態が発生いたしました。この背景にはさまざまな要因があると思われますが、その一つに国内競技規則の未整備という問題があると考えます。そこで、これを管轄されるJAFモータースポーツ局においては是非とも規則改善に向けてご検討いただきたく、ここに要望をまとめ提出することと致しました。
もちろん、ラリー振興を目的とする当JRCアソシエイションにおいても、会員すべてが自覚を新たにし、このような問題の再発防止に努力していく所存です。JAFモータースポーツ局におかれましても、私どもの姿勢をご理解のうえ、前進に向けての努力に力をお貸しくださいますよう、宜しくお願い申し上げます。

2.要望の概要

1)CRO(Competitor Rerlations Officer)の設置を要望いたします。
2)レグごとの「暫定結果」発表を義務付ける規則の制定を要望いたします。
3)正式結果が確定しても、事後に新事実が発覚した場合には、抗議あるいは調査が行えるような現実的システムの制定を要望いたします。
4)オーガナイザー、オフィシャル、参加者による重大な不正または過失に対して、資格停止や資格取り消しなどを含む罰則の制定と、その根拠となるべき規則の制定を要望いたします。

3.要望の具体的内容

1) CROの設置について

<現状>
現在の規則のもとでは、出場者の過失・反則の申し立ては出場者または主催者によって行われ、それを審査委員会が裁定していますが、主催者の過失・反則の申し立てが提出されることはほとんどありません。それは、提出先が主催者側責任者である競技長であるため(国内競技規則12-2「抗議の提出」参照)、申し立て自体が受理されることが非常に少ないからです。このような状態では、公正な競技運営は望めません。

<改善案>
国際規則においては、出場者の申し立てを聞く役目として、CRO(Competitor Relations Officer)が設置されています。主催者が警察、審査委員会が裁判所とすれば、このCROは弁護士の役割を果たし、ラリーにおいても三権分立のシステムが確立されているといえます。
CROは、出場者からの申し立てを審査委員会に伝えます。つまり、主催者の過失・不正の疑いを「競技長」を経ずに直接審査委員会に諮ることができます。また、競技中に不正や過失の疑惑があってもそれを自分で調査している時間を持たない出場者に代わって、CROは、調査を代行する権限も与えられています。
 CROが設置されてこそ、出場者の権利は確保されることができます。
 なお、CROの役割の詳細は、FIAのGeneral Prescriptions Appendix IIに明記されておりますので、それを参考にしていただければと思います。

2)レグごとの暫定結果

<現状>

今日の全日本ラリー選手権では、SSの本数、距離が増えておリーが行われるケースが多くなってきました。ところが、現行の規則は、一晩でラリーが行われた時代のままで、競技がすべて終了してからでなければ暫定結果は発表されません。
ノースアタックラリーにおいては、レグ1(第1日目)の結果を前提としてレグ2(第2日目)の戦いを展開した出場者が多くいましたが、レグ2まですべてが終了してから、レグ1の結果が覆されるという事態が起こりました。つまり前提としていたことが後になって覆されたということです。
また、現行の規則のもとでは、競技結果に対する抗議は暫定結果発表後30分というり、2日間にわたってラ短い時間しか受け付けられないため、思いもかけない結果に抗議の内容を考える時間もなかったという出場者も多く見られました。

<改善案>
ラリーの形態に合わせて暫定結果の発表のタイミングを設定する必要があります。第1日目の結果は第1日目に発表し、その時点で抗議を受け付ける。これを審査委員会によって裁定し、その結果を前提として第2日目を行うという方法が望ましいと考えます。

3)事後の抗議または調査を実質的に可能に

<現状>
 現在の規則では、「競技中の過失または反則に対する抗議はその競技終了後30分以内」、「競技の成績に関する抗議はその発表後30分以内」とされており(国内競技規則12-4「抗議の時間制限」参照)、暫定結果の発表後30分が抗議受け付けの最終期限となっています。また、抗議の結果、審査委員会による裁定が与えられ、これに不服な場合は裁定後1時間以内に控訴の意思を文書をもって審査委員会に通告することが求められ、その機会を逃せば申し立てをすることはできません。
 しかしながら、実際には、競技中にはわからなかった重大な事実が後になって発覚する場合もしばしばあります。しかし、それでは時すでに遅く、どのような申し立てをすることもできません。
 そこで、多くの主催者においては、「とにかく暫定結果発表後30分以内に抗議が出ずに収まりさえすればよい」という発想から、疑わしいチェックポイントやSSを安易に「キャンセル」し、競技を成立・終了させる、という方法がたびたび取られています。このような姿勢では、公正な競技運営などは到底望めないと言わざるを得ません。

<改善案>
いくら重大な事実が事後に発覚したとはいえ、際限なく抗議を認めていては収拾がつきませんが、ある程度の制約を持たせたうえで、抗議の提出を認めるということも、公正な競技運営を実現するためには必要ではないかと思われます。
具体案は今後の検討に委ねることといたしますが、例えば、当日はわからなかった重大な新事実が発覚した場合、それが事実であるという証言または証拠を添えれば、競技終了後一定の期間内であれば抗議の提出を認めるなどの方法が考えられます。
また、計時の不正など競技の根幹に関わる重要な案件に関しては、事後にあらためて調査を行うことも可能にしておくことが望ましいと思われます。
このような規則を定め、運用することによって、安易な「キャンセル」に歯止めをかけ、問題が生じた場合もできるだけ公正な解決策を求めるよう努力を促すことができると考えます。

4) 罰則とその根拠となる規則

<現状>
 現行の規則では、罰則は定められているものの、具体的にどの条項に反すればどういう罰則が与えられるという規定がありません。また、「資格停止」や「資格取り消し」についての規則は、出場者のみが想定されているようです。

<改善案>
過失・反則については、出場者、主催者を問わず、それを犯した者がその責任を取るべきであるのは当然のことと言えます。
現在の規則では、資格停止や資格取り消しは出場者のライセンスについてのみの想定しかなされていないようですが、オフィシャルについても、重大な過失・反則についてはそのライセンスの停止または取消があってしかるべきであり、主催団体についても同様のことが言えます。
罰則がしかるべき場合に適用されてこそ、それらの過失・反則を防止する効果が期待できます。罰則を具体的に定めた規則を制定し、実際にそれを適用していくことが必要と考えます。

4.実現への協力
以上、国内競技規則改善についての要望を、その根拠となる現状報告とともにご説明いたしました。これらについてご検討されるにあたり、さらに詳しい調査などが必要であれば、当会にお申し付けください。また、具体的規則の策定やその後の周知徹底についても、出来る限りのことをさせていただく所存であることは申し上げるまでもありません。
より公正な競技環境を整えていくために、是非とも貴局のご理解とご協力をお願いいたします。

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上記について「ラリー専門部会等で検討いたします」旨JAFより口答で連絡がありました。

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