2006年から全日本ラリーは大きく変わりました。
      
 2005年までは二駆部門・四駆部門それぞれ別々に年間何戦かずつシリーズが組まれ、合計すると1年間に10~13戦もの「全日本ラリー」が開催されていました。2006年からは二駆・四駆の部門分けが廃止され、駆動方式にかかわらず出場できる「全日本ラリー」が年間8~10戦開催されています。


国際ラリーに準じた選手権規定となり、よりグローバル性を誇るシリーズに

 競技規定や車両規定は2003年からの規則変更でかなり国際ラリーに準じたものとなりましたが、2006年から実施された選手権規定変更によって、全日本ラリーはこれまでよりもさらに国際ラリー選手権における選手権争いのスタイルに近づき、わかりやすくなり、スポーツ性も高まりました。ここでは特に重要な規定変更を4つご紹介しましょう。

●総合順位の導入:チャンピオンの栄冠は1人のドライバーに
   実はこれまで「全日本ラリー選手権」には総合順位というものがありませんでした。1979年にJAFが「全日本ラリー選手権」を創設して以来ずっと、クラス別の順位しかなく、総合順位はJAFの選手権としては正式には存在しなかったのです。

 ということは、たとえばこの10年は二駆部門と四駆部門それぞれにAクラス、Bクラス、Cクラスがあったので、毎年6人もの「全日本ラリーチャンピオンドライバー」が誕生していたというわけです。

 2006年には初めて総合順位というものがJAFの規則によって正式に認められました。ドライバーズポイントは、クラス別の順位についても与えられますが、同時に、総合順位に対しても与えられます。こうして、シリーズの総合優勝者が決められ、ただ1人の「全日本ラリーチャンピオンドライバー」が2006年末から誕生しました。

●出走順について
 

 08年までは前年の上位ランキングによって与えられる出走順が規則として制定されていました。これはシリーズ3戦目までは前年のチャンピオンが1番、ランキング2位者が2番と言う具合です。1~6番まではこのように決められ、7番目以降は前年やこれまでの実績から速いと思われる選手が続いて番号が与えられていました。4戦目からはその年に獲得したポイントの多い順に与えられると決められていました。

 しかし09年からはこれらの規則はいったん撤廃となりました。これは必ずしも前年上位ランキング選手が翌年に引き続き参加しない場合があることや、4戦以降のイベントの開催間隔が近い場合に直前のイベントが終わるまで番号が付けられないためにエントリーリスト作成が遅くなってしまうなどの理由があったためと言われています。

 現状のSSラリーでは、アクシデントや天候の悪化などでSSが途中までの選手が走った時点でキャンセルになった場合、その後SSを走れなかった選手には、通常の場合走りきった最後の選手のタイムが与えられることから、この規則があってもなくても、前年のランキングやそれまでの実績で速いと思われる選手から順にカーナンバーが与えられ出走順になると思われます。

 また出走順についての規則がないということは制限もないため、ギャラリーステージなどではこれまで同様に通常のSSの出走順とは逆になるリバースオーダーが設定されることもありそうです。


●クラス分けの変更:2010年から新たな4つのクラス分けに
   2002年までは国際ラリーとは大きく異なる車両規定で行われていた国内ラリーに、FIAの定めるグループNに近い車両規定が導入されたのは2003年のこと。そして2009年までは、クラス分けの基準となる排気量区分も国際格式ラリーと同じになりました。

国際規則では同じ区分でN1~N4という名称になっているところを、全日本ラリーではJN1~JN4とされたのは、完全にはグループNとは車両規定が完全に一致していないことを表現したものだったのでしょう。

そして2008年からはJN1~4に追加されるかたちでJN1.5クラスが新設され、さらに2010年からはすべてのクラスの区分が変更となりました。下記表のようなクラス分けとなり、参加できる車両区分もJN1、JN2の2クラスにRF車両の参加が可能になりました。RN車両やRJ車両にくらべ自由度の広い車両規定で参加者の車種選びが広がり、車両製作についての費用も軽減されているので、参加者の増加が期待されています。またこれまで2つのクラスに別れていたクラスが実質1つのクラスに統合されたJN3クラスは参加できる新旧のスポーティ車が多いこともあり、今後激戦が予想されるクラスとなりました。
クラス 排気量等 車両区分
JN4 3,000cc超 RN/RJ
JN3 3,000cc以下 1,500cc超 RN/RJ
JN2 1,500cc以下 1,400cc超の2WD車 RN/RJ/RF
JN1 1,400cc以下 RN/RJ/RF
*RN/RJ車両はFIA公認またはJAF登録車両が参加可能、RF車両はFIA公認、JAF登録のされていない車両も参加可能。
*JN2クラス以外は4WD、2WD(FF、FR)などの駆動方式による区分なし。
*ターボ、スーパーチャージャーなどの過給器付は排気量×1.7で換算した数値でクラス区分。

●ラリー形式の指定:全日本戦はすべて「SSラリー」に
   WRCなどのFIA公認国際格式ラリーは、スペシャルステージ(SS)で速さを競い、移動区間は通常走行での移動という競技形式によって行われています。このようなラリーがJAFの国内競技規則に初めて登場したのが2003年のこと。JAFの規則では、こういうラリーは「SSラリー」という名称がつけられています。

 これに対して、日本独特のラリー競技形式は「アベレージラリー」という名称で呼ばれています。その中には、ハイアベレージと呼ばれる区間や、個別のタイムトライアル区間で速さを競う箇所を含むスタイルのものもありますが、本来は主催者の設定した「正解時間」と自分の所要時間との差を秒単位で比較し、その差を減点として合計し順位をつけるもので、基本的には「速さ」よりは「正確さ」が要求される競技と言えるでしょう。

 2006年からの新規定によって、全日本選手権はすべて「SSラリー」となりました。つまり「全日本ラリーは速さを競うモータースポーツです」と、一言で言えるようになっているのです。

JRCA Homepage