<速さを競う場は安全にも配慮>
 日本のスペシャルステージラリーも、基本的にはWRCなどで行われているラリーと同じと思ってもらえばいいでしょう。スペシャルステージを走行したタイムの合計が最も少ないものが勝者となり、早い順に順位がつく競技なので見ている者にもわかり易いルールといえます。
ただ、速さ(タイム)を競う競技だけに、安全に対しては十分すぎるほどの注意を払わなければならず、ルールの中でも厳しく規定されています。以前の国内ラリーでは主催者の自主性に任されていたレッキ(スペシャルステージの下見)も、「第6条」では必須のものとして義務付けられています。これは最も効果のある安全対策の一つといえるでしょう。
また競技車にはスペシャルステージ内の逆走を禁止したり、フィニッシュの予告標識(黄色いチェッカーフラッグマーク)からストップポイントまでの停車を禁じるなど、競技車同士の事故も防止しています。これも「第6条」で義務付けられるようになった項目です。
競技運営面では、ステージ内に競技に関係のない人や車両などが絶対に入らないようにすることは従来どおりですが、新規則ではこれを主催者にはっきりと求める文章になっています。

<スペシャルステージのスタート>
スペシャルステージは前記の様にタイムを争う区間なので、選手たちにとって最も集中を高めていくところです。この後に説明することになるタイムコントロール(TC)を通過すると、スペシャルステージのスタートが現れます。
タイムカードにスタート時刻を記入してもらい、オフィシャルの誘導に従ってスタートラインに車両の前端をぴったりと合わせて車両を停めます。スターターの合図でスタートしますが、30秒前からカウントダウンが始まり15、10秒前のコールの後、5、4、3、2、1、Goでスタートすることになります。
このとき、スタート合図より前に動き出してしまうと反則スタートとしてペナルティーを受けることになるので注意が必要です。また、ラリーによってはスターターの合図ではなく、電光掲示板などによるスタート信号が使われることもあります。

<スペシャルステージのフィニッシュ>
スペシャルステージのフィニッシュは、タイムが計測されるポイントの約100m手前に黄色いフィニッシュサイン(チェッカーフラッグマーク)がまず現れます。これは予告サインであり、その先の赤いフィニッシュサインがタイム計測地点となります。ここは「フライングフィニッシュ」として走り過ぎることになりますが、ここでステージは終了しているので、以後はもうアクセルは緩めます。
そして、ストップポイント(赤いSTOPサイン)で停車し、タイムカードにフィニッシュタイムの記入を受けます。黄色いフィニッシュサインからストップポイントまでの間は停車禁止となっており、違反すると失格という重いペナルティーが課せられることになるので、必ず頭に入れておきたいものです。

<スペシャルステージの基準時間>
JAFによる国内のラリーでは、原則として各スペシャルステージに「基準時間」が設定されます。これは国際ルールとは異なる部分なので、注意が必要です。
国際ルールでは、ロードセクションの所要時間の指定は、「スペシャルステージスタートから次のTCまで○分」という形で行われています。この場合、スペシャルステージ内で何らかのトラブルが起き、通常の走行時間より極端に遅くなってしまった時、その遅れを取り戻そうとして、スペシャルステージを出てから次のTCまでの一般道路区間で暴走するという事態が起こりがちです。
そのような事態を防止するための手段の一つとして設けられたのが、「基準時間」です。ステージタイムがこの基準時間を15分以上超えてしまった場合、失格となります。
注:現在のJAFの規則では特別規則書に明記することで「基準時間」のない国際ルール同様のルールに基づいた競技会も認められているので、参加の際注意が必要です。

<スペシャルステージ内で停車したとき>
ステージ内でトラブルが起こった場合の処置に関しては、二通りあります。
まず、クルーが負傷し医療処置が必要なとき、または車両火災が発生した時のように一刻を争う必要がある状況では、ロードブックに綴じこまれているSOSマークを後続車に提示し救助を求めなければなりません。この十字マークを提示されたクルーは、競技を中断し救助にあたる義務があります。まず、トラブルが発生したクルーから状況を聞き、ステージ進行方向で最寄のラジオポイントにこの状況報告をすることが必要です。次に事故現場に到着したクルーは、けが人の救助、または火災の場合は消火活動を行うことになります。
ステージ内でトラブルが発生し車両が動けない状態ではあるものの医療処置などが不要な場合は、ロードブック内の「OK」サイン(SOSマークの裏側にある)を少なくとも3台の後続車に提示することが義務付けられています。また、停止車両の少なくとも50m手前に反射式の三角表示板を置き、後続車に知らせることになっています。
JRCAでは選手同士の「申し合わせ事項」として『SS中の後続車への合図』を定めています。共通の合図を使用することで、事故が起こる確率を下げることができます。2001年に定められたこの合図は、今では全日本ラリー四駆部門ではすっかり定着して、事故防止に役立っています。皆さんも取り入れられてはいかがでしょう。

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