開催日:9月30日~10月2日
開催場所:北海道十勝地方
スペシャルステージ本数:19本
スペシャルステージ総距離:222.80km
SS路面:グラベル(一部ターマック)
SS路面状況:デイ1/ドライ一部セミウエット デイ2/ドライ
ポイント係数:2.5
柳澤宏至が独走体制でJN4クラス初優勝を奪う
~勝田範彦、2年連続チャンピオンが確定~
APRC(アジア・パシフィック・ラリー選手権)との併催で開催された全日本ラリー選手権第7戦「Rally Hokkaido」。北海道十勝地方の5市町村を舞台とする広大なステージには200kmを超えるSSが用意され、ステージによってはトップの平均速度が100km/hを軽く超えるという、国内でも類を見ないハイスピードステージが選手達を待ちかまえていた。
2001年に初の国際格式のラリーが開催され、翌02年にはAPRCに昇格したこのラリーは、今年で10年目の節目を迎えた。APRCには7ヵ国から37台、JRCに38台のエントリーが集まり、帯広市郊外に設置された北愛国サービスパークには十勝観光連盟主催の「とかち・北海道満腹フェスティバル」が併催されていたことも手伝って、大会期間中は約6万8500人(主催者発表)の観客がラリーを堪能した。
ラリーは、金曜日夕方に北愛国サービスパークでセレモニアルスタートが行われ、そのまま隣接する特設コースSSS(スーパースペシャルステージ)をこなし、翌土曜日から本格的な競技が始まる。そのデイ1は、山々の尾根を伝いながら走る「ASHORO LONG」(19.84km)と緑深い森の中を疾走する「NEW KUNNEYWA」(28.41km)を3回、新たにターマック区間が加わりミックスサーフェースとなった「RIKUBETSU LONG」(4.63km)を2回ループするという設定だ。このデイ1で快走を見せたのが、昨年まではAPRCでラリー北海道を走っていた柳澤宏至だ。
「前回のラリー洞爺でサスペンションのセットアップをかなり良い方向に煮詰めることができた」という柳澤は、「SSの距離やハイスピードなSSが多いことから、やはり1日目が勝負だと思っていたので序盤からプッシュした」という言葉通り、SS1「ASHORO LONG1」とSS2「NEW KUNNEYWA1」の2本のロングステージを終えた時点で、2番手につける奴田原文雄に対し18.4秒のマージンを築きあげた。
一方の奴田原は、「路面コンディションと足回りのセッティングが合っていない」と、SSごとにショックの減衰を変えながらセッティングを探っていくという苦しい戦いとなった。また、その奴田原とシリーズタイトルを競う勝田範彦は、SS3を終えて柳澤から33.7秒遅れの3番手。今ひとつペースが上がらない勝田だが、コ・ドラの足立さやかいわく「前回の洞爺からマシンが速くなったことで、ドライバーがその速さにまだちょっと慣れていない様子。マシン自体の調子は問題ない」と、2ループ目からの巻き返しを図る。
迎えたSS4「RIKUBETSU LONG1」。ここで5番手につけていた福永修が最終コーナーでインに引っかけ転倒しリタイア、さらに「スタートの時からACDの調子が悪くFF状態」という大西康弘が、ラリージャパンでM・グロンホルムがリタイアした同じ現場で転倒と、上位陣が次々と戦線離脱し、タフなサバイバル戦の様相となっていく。
その中、トップを快走する柳澤は2ループ目に入ってもそのスピードを緩めず、SS6「NEW KUNNEYWA2」を終えた時点で奴田原とのタイム差は23.9秒差にまで拡大する。
続くSS7「RIKUBETSU LONG2」。にわか雨とともに雹が降り注ぐというコンディションに、奴田原が翻弄されてしまった。すっかりウエットコンディションとなってしまったターマック区間からグラベル区間へと入る直角コーナーでまさかのコースアウト。優勝争いはもとより、タイトル争いからも離脱するという最悪の結果となってしまった。
これで独走態勢となった柳澤は、その後は安定した走りでラリーの主導権を完全に握り、最終的には2位の勝田に1分16秒3という大差で、今年のラリー北海道を制した。柳澤にとっては、97年にミラージュで奪ったBクラス以来の全日本優勝、JN4クラスでは初の優勝となった。
また2位には、デイ1の2ループ目から本来の速さが戻った勝田が入賞。「奴田原選手がリタイアしてからは、とにかく完走と自分自身との戦いだった」と安定したペースを守りきり、シリーズポイントでも奴田原を逆転し、2年連続チャンピオンを確定させた。
3位には、2001年「インターナショナルラリー」優勝の石田正史が入賞。「自分の中でまだ行ける、まだ行けると思いながら走った。マシンの調子というよりも自分の気持ち的な問題が一番だったような気がする」と、今季の不調を払拭する1戦となった。
7人のドライバーがチャンピオンの可能性があるという大混戦となったJN3クラスは、シリーズランキングトップにつける曽根崇仁が金曜日のSSS1でドライブシャフトが折れ、わずか300m走行でデイ離脱という波乱の幕開けとなった。この波乱は土曜日に入っても続き、SS5では前戦でプロトン・サトリアネオに全日本初優勝をもたらした明治慎太郎がSSスタートでドライブシャフトが折れデイ離脱、さらにランキング2位につける眞海知志がSS5のギャラリーステージで転倒しデイ離脱、昨年チャンピオン香川秀樹も、SS7でオープンクラスの前走車に追いつき、ラジエターとフロントガラスを飛び石で割られるというアクシデントでリタイア、さらにクラス唯一の4WD車を駆る松原久もSS9でコースアウトしデイ離脱と、ラリー洞爺同様、序盤から上位陣が次々と戦線離脱するというサバイバル戦となった。
その中、トップを快走したのが牟田周平だ。SS6で香川を捕らえトップに立った牟田は、香川が戦線離脱した後も手を緩めずトップを快走し、全日本初優勝。「洞爺で明治さんのプロトンが優勝したことが刺激になった」という牟田は、国内屈指のハイスピード&ロングステージのラリーでもプロトンの耐久性の高さと安定性を証明してみせた。
また、2位には筒井克彦が入賞、3位には初プロトンを初ドライブする鈴木尚が入賞。最終戦のタイトル争いはシリーズトップに立った牟田と曽根と筒井の三つ巴の戦いとなる。
大桃大意がSSS1でステージベスト、川名賢がSS2と3のロングステージで連続ステージベストと、序盤は若手ドライバーが活躍したJN2クラスは、SS6で川名がコースオフしデイ離脱、大桃もマシントラブルやコースオフなどが相次ぎ、若手ドライバーに次々と試練が襲いかかる。代わってトップに立ったのが、前戦の洞爺で見事な復活を果たしたベテランの田中伸幸だ。SS5で総合でも7番手とトップに立った田中は、その後も手綱を緩めず2番手につける天野智之との差を広げ、デイ1を終えた時点でその差を1分38秒差にまで拡大する。これで独走態勢となった田中だったが、その田中にも試練が襲った。デイ2のSS15、「ペースノートの4と6を聞き間違えてしまった」という田中は、オーバースピードでコーナーに進入、たまらずコースアウトしてしまい、ここでラリーを終える。これでトップに立った天野は、「今回のラリーは優勝争いというよりも、シリーズ2位の増川(智)さんとの戦い。増川さんの上にいることだけに集中する」という我慢のラリーを展開。最後まで自分のペースを守りきり、今季4勝目とともに2年連続のチャンピオンを確定させた。
一方、2位争いは終盤まで熾烈な戦いとなった。デイ1は、ハイスピードコースに対応するため、新たにクロスミッションとエンジンをセットアップしてきた南野保が増川を抑え3位をキープ。デイ2に田中がリタイアしたことにより2位に浮上してきたが、デイ1終了時には16.4秒差にいた増川が猛プッシュし、南野に肉薄する。
「高速コーナーにマシンもドライバーも対応しきれなかったけど、中速コーナーや轍の深いコースは自分自身最も得意なコース」という増川に対し、南野は高速コーナー重視のセッティング。二人の差はSS16で0.1秒差にまで縮まるが、SS18を終えた時点で南野が1.5秒差で2番手を死守する。残すは1.2kmのSS19のみ。だが、「SS18の後半でサスペンションから異音がした」という南野のマシンは、SS19走行中にリアショックが破損し、さらにスプリングが外れてしまうというトラブルが発生。最後の最後に増川が1.5秒逆転し2位に入賞という劇的なフィニッシュとなった。
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