2003年度から施行されたラリー車両規定はそれまでの規制緩和の流れに基づく「車検に合格すれば良い」という基本概念から、車検に通ることは前提としながらも、国際ラリー車両規定のグループNを基本にした車両に変更となり、改造範囲や改造して良い部分がかなり明確になりました。いわゆる車検に通る車両というのは意外に大きな改造が可能だったり、手間や資金をかければ相当なチューニングマシンになりえる可能性も含んでいることもあり、新規定ではむしろ改造の許される箇所を明確にして、これまでより改造幅をせばめた格好となりました。さらにパワーばかり追求することを制限するため国際ラリー車両規定のグループNと同じリストリクター規定が義務づけとなりました。これはターボチャージャーの吸入空気量を制限するためのもので、どのターボ車も同じ空気量しか吸い込めないため、公平になるうえに、パワーアップも限界がありむやみなエンジンチューニングの意味がなくなることになります。しかもこれにより国内戦で戦うラリー車も国際格式の競技会に若干の手直しで参加できるようになりました。RN車両もRJ車両も改造の許される部分はほとんど同じですが、前者はカタログには記載されていないが、FIAに公認されたパーツが使用可能であったり、最低重量となる重量が公認書記載のものとなり、後者はカタログ記載の重量を元にして最低重量になるなどの違いがあります。RJ車両の場合公認部品制度がなかったり市販される仕様がそのままではスポーツ走行にあまり適さなかったりすることもあるので、それらに配慮して大きな改造をせずに交換だけで装着でき、誰でも購入できるようなパーツは国際グループN規定に比べ緩和されています。以下はどのような改造等が可能かを規則をベースに簡単に解説したものです。詳細について、また実際にラリー車を製作するにあたってはJAF発行の「JAF国内競技車両規則」最新版をご覧ください。

安全規定

ロールバーなど安全性に関わるものの規定で概ね以下の通りです。

ロールバー
RN車両にはFIA公認ロールバーまたはFIAのJ項(国際競技車両規定)に従って作られたロールバーの装着が義務づけられます。前者は複雑な構成のパイプを指示通りに全て溶接で組まなければならないので、熟練したメカニックと充分な設備が整ったファクトリーが必要となります。後者は基本構造を守れば良いことと、すべてを溶接しなければならないわけではないので、公認ロールバーよりは取付が多少簡単にはなりますが、構成する部分のパイプの仕様が厳しく定められていたり、ボルト&ナットジョイント部などは厳しく構造が定められているので、信頼できるメーカー製のものや経験のあるファクトリーで作ってもらい装着する方が無難でしょう。2005年からはRJ車両にも、前述のFIAのJ項(国際車両規定)に従って作られたロールバーの装着が義務づけられました。
なお、2008年から追加されたJN1.5(スーパー1500)クラスはロールバーについてFIAのJ項ではなくJAF規定に沿ったものであれば良いことに特別に緩和されています。


安全ベルト
純正3点ベルトに加え、4点式以上のワンタッチ式フルハーネスセーフティベルト取り付けることが義務つけられています。過酷な走りをするためしっかりとドライバーとコドライバーをシートに固定する必要があるラリーでは、純正の3点シートベルトはとてもしっかりと体をホールドしてくれないので、実際には純正の3点シートベルトだけで参加する人はいないでしょう。

改造規定
エンジンやサスペンションなど走行性能に関わる規定は概ね以下の通りです。簡単に要約してありますが、実際には細かい条件などがついているものもありますので、あくまで参考としてご理解ください。全日本レベルの有力チームは条文ぎりぎりの改造を行って戦闘力の高いマシンを製作して競技会に臨んできますが、改造規定は絶対に改造しなくてはならないというものでなく、もちろんノーマルのままでも良いので、実際にはビギナーの方は最低限の改造からはじめて、自分の技量や予算に応じてだんだんとパーツを加えていっても良いわけです。

エンジン
基本的にエンジンの改造は禁止です。ただしエンジンコンピュータはノーマルとのユニット置き換えタイプであれば交換可能です。もちろん排気ガスなどは車検基準が適用されます。また、ターボ付車両には国際グループN規格同様の吸入空気量を制限するリストリクターの装着が義務付けられます。


吸排気系
排気系で交換できるのは触媒より後ろのマフラーだけと考えて良いでしょう。これも開催地域での騒音に配慮されノーマル装着が義務づけられる場合があります。吸気系はエアクーナーエレメントのみ交換が許されます。 

駆動系
クラッチディスク、クラッチカバー、そしてフライホイールの交換は許されているので、強化品や軽量品にすることができます(ただしカーボン製は不可)。また、ケースを改造しなくても装着できるLSD(リミテッドスリップデフ)、クロスミッションやファイナルギアへの交換は可能です。これにより市販車仕様のままではあまりスポーツ走行に適さないデフやギアレシオであっても、充分にエンジンパワーを使い切ることができます。


サスペンション&ブレーキ
サスペンションは取付部分の改造無しに装着できるものであればピロアッパー付車高調整タイプでもOKです。エンジンパワーにも限りがあるので、ラリー車の善し悪しはこのサスペンションの性能に大きく左右されているといっても過言ではないでしょう。ブレーキはブレーキホース、パッドの交換が可能です。

室内
内装はフロアカーペットやロールバー取付に伴って外されたり切り取られる部分を除き、ドアの内張やダッシュボードの取り外しは許されません。交換が可能なのはステアリング、シート、そして3点式純正シートベルトに加えての4点式以上のスポーツセーフティベルト追加くらいですが、バケットシートとロールバーが入った室内はこれだけで充分スパルタンになります。ちなみにロールバーやスポーツセーフティベルトを取り付けて後席が使用できない場合は、後席を取り外し定員を2名乗車に変更しなければなりません。他にコドライバーが使用するトリップメーターやラリーコンピューターが取り付けが可能です。

外装
いわゆるラリー用のマッドフラップ、そして車検で通るフロントスポイラーやリアウイングなどの追加型エアロパーツは装着可能です。その他アンダーガード類はもちろん装着OKです。その他ストラットタワーバーの交換や部分的に補強も認められています。
 

タイヤ&ホイール
ホイールについてはRN車は公認サイズまでが使用可能最大サイズ、RJ車両は原則としてクラスごとに使用可能最大サイズが定められ、またタイヤはホイールの適正適合範囲に含まれるサイズの装着が認められています。これにより極太長扁平タイヤ競争になったりせず、公平性を保ちつつ、入手しやすさにも配慮がなされています。

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