記者発表会の内容

● 2000年7月5日(水)午後4時~5時30分
  東京都港区・ホテルニューオータニ16階「紫雲」にて実施

● 出席:会長・桜井幸彦、評議員・加勢裕二、同・西尾雄次郎、同・中野正裕、
   同・奴田原文雄、同・石田正史、同・田口雅生、同・市野諮、
     同・(株)ラリーアート(代表代理:国内モータースポーツ支援グループ長・須賀健太郎)、
     同・スバルテクニカインターナショナル(株)(代表代理:渉外部長・上田忠成/渉外部
     渉外第一課・津田耕也)、事務局・山口顕子
  欠席:評議員・CMSC青森(第8戦開催準備で多忙のため)
     同・ルート10延岡(土田孝男代表多忙のため)
     同・横浜ゴム(出席予定者急用のため)

● 進行(司会:山口顕子)
1) JRCA設立発起人代表挨拶
2) 発足までの経緯説明
3) 会長挨拶
4) 「第一次活動目標」について
5) JRCAへの期待と抱負
6) 質疑応答

● 各項詳細

1) JRCA設立発起人代表挨拶――加勢裕二
 ラリーというスポーツをこの国でもっと発展させるために、それに関わっている我々自身ができることはもっとあるはず、そう考えてこの会を発足させた。出場者、主催者、協賛企業が協力し合ってラリーを発展させることで、それぞれが恩恵を受けることができる。自分の都合だけを考えてのことではなく、全体の利益を考えた活動であることを理解してもらいたい。

2) 発足までの経緯説明――中野正裕

「正式発足までの経緯」参照

3) 会長挨拶――桜井幸彦
 自分は20歳のときにラリーを始め、以後27年間ラリーと関わってきた。今のラリーを見ていると、参加者が減り、観客が減り、そしてスポンサーが減るという悪循環に陥っている。選手、主催者、協賛企業が協力してなんとか状況を改善できないものか。自分の力は小さいが、この3者が力を合わせることによってよりよい環境を作るお手伝いをしたい。社会的に地位のあるラリー、みんなに理解されるラリーにしたい。圧力をかけるのではなく、互いに協力し合うことで、よりよい環境を作っていきたいと願っている。

4) 「第一次活動目標」補足説明
1. 冒頭の断り書きを入れた理由――昨年11月ごろから、主催者、出場者、ラリー協賛企業に対して「設立趣旨」を含めた資料を提出し、協力を求めてきた。すでに「設立趣旨」の中に、この冒頭の断り書きと同様の内容が明記されているにも関わらず、これまで各方面との話し合いにおいては、「日本のラリーすべてを同じ形式(SS主体)にすべきだとは思わないので、JRCAには賛同できない」というような言葉をたびたび聞いてきた。このことから、「設立趣旨」に書いて配布するだけでは充分には理解してもらえないと感じたので、今回もわざわざ冒頭にこのような断り書きを入れることにした。

2. 本来の目的――JRCAが本来目的とすべきことは、この「第一次活動目標」の「5.ラリー振興のためのプラン策定と実施」である。しかし、現状では、最初から「5」だけに取り組んでも効果をあげるのは難しそうで、「5」を達成するためには、「1」から「4」のことも平行して進めなければならないと考えている。その意味で「1」から「5」の項目が挙げられていることをご理解いただきたい。

5) JRCAへの期待と抱負――ラリーアート、STI
 ラリーの人気が上がればたしかに自社のクルマの販売成績は上がるだろうが、そのような目先の考えではなく、モータースポーツを日本でもっと盛んにしたい、という気持ちからこの会に賛同した。モータースポーツがもっと社会の広い層に根づいて行くよう、この会とともに力を合わせていきたい。

6) 質疑応答
Q1:(奴田原に)日本のラリーのどこをどうすればもっと面白くなるか、海外ラリーのどういうところを日本のラリーに取り入れたらいいと思うか?

奴田原:
 日本と海外で明らかに異なると感じるのは、根づいている文化が違うこと。日本では、ラリーのギャラリーはクルマ好きの人、ラリーファンの人。海外では、おじいさん、おばあさん、子供連れもいる。みんながマラソンの応援をするような感覚でラリーを楽しんでいる。日本のラリーも、もっと多くの人に見る機会を与えて認知度を上げる努力をしないと根づいていかない。ラリーは一般道路を使う競技、つまり地域の人たちの生活の場所を借りている。だから、みんなが認知してくれる競技形態であることが必要になると思う。

Q2:(奴田原に)日本のラリーと海外のラリーでは、参加していてどちらが楽しいか?
奴田原: どちらも楽しい。世界選手権やアジパシではレベルの高いドライバーが何人もいて、自分がかなわない人もいる。そういう意味では海外は面白い。でも、日本のラリーもトップ争いをする人たちは非常にレベルが高く、こちらもやはり面白い。ただ、海外ではたくさんの人が見に来てくれるから、みんなに見てもらえるという意味では海外のほうが楽しい。

Q3: 活動目標にある「会員共通の懸案事項」とは?
西尾: 主催者からよく言われることには、エントラントの減少がある。出場者からは、シリーズ戦であるにもかかわらずルールがバラバラということ。たとえば、運営の方法などを統一すれば主催者も出場者もラクになるし、コストも減らせる。また、タイヤメーカーからは準備が大変なのでタイヤの使用本数を制限してほしい、という要望もある。
加勢: 今の日本のラリーは「買い物ラリー」がベースになっているが、これはちがうと思う。スポーツとしてのラリー、グローバルスタンダードに添ったラリーというのは、スピードを競う区間の積み重ねだ。日本の場合は「減点」というシステムになっていて、普通の人には理解できない。これをはじめとして、会員共通の懸案事項というのは非常にたくさんある。それらをひとつずつ解決していきたい。

Q4: この「第一次活動目標」を見ても、コメントを聞いても、奥歯にモノのはさまったような言い方で具体的なことは何一つない。ホンネとしては、今の加勢さんの言葉がメイン(の活動目標)ではないのか?もっと具体的な活動目標が聞きたい。
桜井: われわれの第一の目標はラリーを盛り上げること。ギャラリーを増やせばラリーをしたいと思う人(ラリーに憧れる人)が増え、スポンサーしようという企業も増える。スポンサーが増えればエントラントも増える。こういう循環を狙っている。
市野:「共通の懸案事項」が非常に多く、今は危機的な状況にある。具体的に何をするかといっても、すべきことがあまりにも多い。では実際にどれをするのか、そういうことを話し合えるシステムこそが、まず必要だ。(それがJRCAとして今こうして始まったところなので、具体的なことを決めるのはこれから。)

Q5: 盛り上げるとか楽しいものにすると言っているが、そもそもこうなったのは何が原因かといえばギャラリーを締め出したことが原因だ。そのために主催者、出場者、企業それぞれが恩恵を受けるはずの循環サイクルが断たれてしまった。観客不在のスポーツになってしまった。これが海外とのちがいではないのか?
田口: みんなが個々にはいろいろ考えていても、その考えをまとめて実行に移すこと(機会、手段)がこれまでなかった。それぞれ個人が考えていることは実際とてもたくさんあり、これからそれを汲み上げてまとめ、実行に移そうというのがJRCAだ。現状の規則の中でも、改善できる余地はじゅうぶんあると思う。プレスにもどんどん取り上げてもらって、ラリーが好きな人だけでなく、一般の人にも「うちの近くでラリーがあるらしいから、見に行ってみよう」と思ってもらうことができれば大成功だと思っている。そのためには、少しずつやっていくしかない。ラリーというのは非常に面白いスポーツだと思う。少なくとも自分自身は30年も楽しんでやってきた。自分がこれだけ楽しんだラリーというものを、是非、若い世代にも楽しんでもらいたい。行動を始めないと何も始まらない。これまでは、思ってはいても具体的なものにはならなかった。一人一人で思っているより、みんなが集まったほうが、現実的な、いいプランが出てくるかもしれない。暗中模索だが、できるところからやっていきたい。

Q6: 会報やウェブサイトでの情報公開を考えているということだが、これは会員だけのものか、一般にも公開するのか?
山口: ウェブサイトなので当然会員以外にも見てもらえる。現在、8月下旬公開予定のあるサイトの一部を提供したいというオファーが来ている。会員だけでなく、一般の人にももっとラリーのことを知ってもらいたいので、そのオファーがなくても、いずれウェブサイトは公開したい。

Q7: こういう動きを起こすに際して、二駆部門との交流はあったのか、今後どうするのか?
中野: 四輪駆動部門の出場者、主催者、企業をまとめようとするだけでも実際にとても大変だったので、目標として設定した発足時期までに、二輪駆動部門の出場者、主催者まで一緒にすることは現実的には難しいと判断した。今日、ひとまずこの会を立ち上げたが、当然将来(二輪駆動部門と)一緒になることは良いことだと思う。現状では、とくに二輪駆動部門からの意見は聞いていない。

Q8: 「WRCの良い点をとりあげていきたい」と考えているようだが、JAFのマニュファクチュアラーズ部会や警察などとのミーティングの具体的なプランはあるか?
田口: 今のところ具体的な予定はないが、実際に活動していけば、第一義的にはJAF、おそらくラリー小委員会に提案する形になると思う。

Q9: 資料の会員名簿を見ると、Aクラスの2大メーカー(ダイハツとスズキ)やそのサポートを受けている選手が入っていないが、何か理由があるのか?
山口: その2社にも、他社に提出したものと同様の「賛同のお願い」を出したが、その2社からは今日までに返事がなかった。各主催者、選手にも賛同のお願いを出し、「賛同する」という返答のあった者が会員となっている。スズキスポーツの粟津原選手からは2日前に賛同の返答があったが、残念ながらすでにこの資料を作成してしまった後だったので、そこには掲載されていない。
加勢: 会員はこの資料作成後も増えていると考えてもらっていい。今後も会員はどんどん増えていってほしいと思っている。

Q10: 日本のレース界では、フォーミュラニッポンにJRP、GTにはGTアソシエイションなどの団体があり、競技規則改定においてもイニシアチブを持って活動している。イベントのプロモーションには競技規則も大きく影響するので、このような機能を持つことが必要になると思うが。
中野: 当然、将来的にはこの会が発展してGTアソシエイションのようになることを目指している。

Q11: 同じようにJRCA会員とはいっても、選手、チーム、主催者、企業ではそのスタンスがそれぞれちがうと思う。企業代表に尋ねるが、JRCAに参加したのはオブザーバー的なものか、あるいは、メーカーがらみでの参加になるのか?
須賀: ラリーをさかんにしてギャラリーを増やせばウチの会社のクルマは売れるが、それだけを目的にしているのではない。(この発表会の)最初にも言ったように、広い意味でモータースポーツをさかんにしたいと考えているのでこの活動に加わった。
上田: 早い話が、スポーツにならないと話にならない。30年前に自分自身ラリーに出たことがあるが、当時は夜中に走っていた。今回、北海道(第7戦ノースアタック)に行き、日本でもギャラリーを集めてやるラリーができるようになったことを知った。今の日本のラリーは観客を呼ぶ体制ではないし、衰退している。ラリーというのは面白いスポーツだ。見せる部分のラリー、見せない部分のラリーがあるし、有料で見せる部分も無料で見せる部分もあっていい。いろんな人が見に来れるラリーをしていかないと、ラリーはなくなってしまう。STI、スバルとしても、ラリーそのものを日本で大きくしていきたい。社内的にそういう意見だ。話はそれるが、アメリカでも支援する動きがある。(JRCAの目的は)観客が楽しめるラリーを実現していきたいということなので、それに協力したいと考えている。

Q12:(上田に対して)今年アメリカでWRCが企画され、資金が集まらないのでフォード、ミツビシ、スバルに協賛金出資を依頼したところ断られたという経緯がある。それでは、金銭的な支援でない場合、メーカーとしてどういうふうなバックアップをするプランがあるのか?
上田: 基本的にはどこかで資金援助が必要になるのは否定しない。たとえば、オーガナイザーがイベントで使うクルマを提供するなどの援助だ。しかし、あからさまにお金を出すと、各地のオーガナイザーがみんなメーカーに頼ってしまうこともありうる。だから間接的に支援するというスタンスをとっている。今回もそういう主旨だ。

Q13: ラリーを盛んにするには全日本ラリーのシステムそのものに大きな変革が必要になると思う。活動目標には「問題は山積しており、短期間での解決は不可能だと覚悟している。小さな一歩を踏み出したい」とあるが、十年かかってもやっていく、ということなのか?目標とするスパンはあるのか?
加勢: 自分としては3年をポイントとしている。目に見える変化をアピールするのに3年をめやすとしたい。今の規則の中でもできることはたくさんあるが、どうしても規則を変えないといけないとなれば、JAFに相談することになるだろう。

Q14: レース界におけるJRPやGTアソシエイションなど、各レースカテゴリーにある協会のような形をとりたいということだが、JRPやGTアソシエイションはプロモーションを掌握し、利権処理も行っている法人格の組織だ。これらの協会は、JAFの推進によって生まれた経緯があり、この会(JRCA)とは事情が異なるのはわかっているし、また、二輪駆動とのかねあいもあって難しいのかもしれないが、早い機会にJAFとの話し合いの中で、プロモーションを担う団体として確立すれば、いろんな部分でやりやすくなるのではないか?
加勢: 自分もGTアソシエイションの会員なので、その運営方法を実際に見ている。それらの良い部分は是非参考にしたい。

Q15: JAFとの会合をもったということだが、感触はどうだったか?
加勢: 田村(モータースポーツ)局長以下5名の職員と、われわれ発起人が会談した。「他のレースのカテゴリーにはあるものが、ラリーにはこれまでなかった。このような団体ができることを歓迎します。きちんとしたものにしてください。」と言われた。感触は非常によかった。

Q16: 日本で国際ラリーが開催されれば選手としては出場したいはずだが、現在のJAFの車両規定は海外とまったく違うので、わざわざグループNやグループAの車両を作らなくてはならない。このままではせっかく国際ラリーが日本で開かれても出る人がいない、あるいは出るにはもう一台クルマが必要ということになる。車両規則についてはどう考えているのか?
田口: 全日本であるからこそ世界を視野に入れるべきだと思う。車両規則に関しては、たとえばJRCA内で「自主規制」をしてグループNでやる、ということもできるかもしれないが、会員の人はそれに従っても会員以外は従わないというのも困る。JRCAだけでできればいいが、最終的には国内ラリーのレギュレーションの見直しをお願いすることになるかもしれない。

Q17: ランサーやインプレッサが出たときは、若い人がたくさん入ってきたが、最近は新規にラリー車を作る人が非常に少ない。若い人が入ってくるのに障害となるものがあるようだが、それは何か?
石田: クルマが高いという金銭的な問題があると思う。
市野: 人をひきつけるには「新鮮なもの」が必要だ。最初は流行っても、何年も同じことをやっていればそのうちみんなが飽きてくる。インベーダーゲームはあんなに流行ったのに、今では誰もする人はいない。ラリーにおいては新しい技術、新しいスターが、「新鮮なもの」であり、人をひきつける。スターへの憧れを持たせるにはステータスを高くすることも必要だ。ラリーに勝ったら雑誌に載る、それに憧れるからクルマを作って実際に出ようという気になる。今の全日本ラリーはステータスが低くなっている。だから入ってくる人が少ない。

Q18: 将来的にはバラ色のような話ばかりだが、今の規則の中で事前試走の問題がある。これは大事なことだと思うが。
西尾: ルールがある以上、選手は守る義務があるのは当然のこと。しかし、実際はご指摘のように事前練習の問題が後をたたない。この問題においては、ラリーフィールドの確保に悩む主催者だけではなく、ルールを守って事前練習をしない選手も同様に被害者であり、なんとか規則を守ってもらえるような方策が必要と思う。これは選手のマナーだけに頼っていては不可能で、規則違反を取り締まる現実的なシステムが必要になるだろう。
市野: 海外でもそういう話(事前試走が問題になった例)はいっぱいある。選手だけに主体性を求めても解決にはならない。規則があってもそれが適用されなければ規則は守られない。(WRCでは規則に定められた罰則が実際に適用されているので、規則が規則として生きている。全日本においても、)厳しいルールを定めるだけでなく、これを厳格に適用することが必要だ。


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