
石田正史が高速ステージが連続する北の大地を快走
JN3クラスはトヨタ86がワンツーフィニッシュの快挙
開催日時:9月14日(金)~16日(日)
開催場所:北海道十勝地方
スペシャルステージ本数:18本
スペシャルステージ距離:220.48km
ラリー総距離:2デイ7セクション
SS路面:グラベル
ポイント係数:2.5
ラリー概要
北海道帯広市を拠点とする十勝地方を舞台とするアジア・パシフィック・ラリー選手権(APRC)第5戦「ラリー北海道」との併催で開催された全日本ラリー選手権第7戦は、帯広市、陸別町、足寄町、本別町、音更町の1市4町に220.48kmのSSを設定。平均スピードが100km/hを超え、さらには全長が30km近いステージが多数用意されている。
今年は開幕戦から参加台数が増加傾向にある全日本ラリー選手権だが、ここ北海道でもオープンクラスを合わせて48台が出場。APRCと合わせるとフルグリッドとなる90台がエントリーリストに名を連ねた。
例年は9月を過ぎると初秋を感じさせるさわやかな気候となる北海道だが、ラリー開催ウィークには最高気温が連日30度を超えるという残暑が続いた。さらに、南から湿った空気を運ぶ前線が停滞し、まるで亜熱帯地方のような蒸し暑さが続いた。ちなみに、9月中旬に帯広市の気温が30度を超える日が3日以上続くのは気象観測が始まって以来初めてとのことで、まさにマシンにもクルーにもタフでハードなラリーとなった。
JN4クラス
金曜日の夕方にラリーの拠点となる北愛国サービスーパークで華やかなセレモニアルスタートが行われ、その後、サービスパークに隣接する特設コースで足慣らしともいえるスーパーSS「オビヒロ1」(1.20km)が行われた後、翌日の土曜日のSS2「ニュークンネイワ1」(28.04km)から本格的な競技が始まる。
このSS2は、昨年優勝の柳澤宏至/中原祥雅組(スバル・インプレッサ)がベストタイムをマーク。今季はランサーからインプレッサに乗り換えた柳澤だが、北海道でも相変わらずの速さをみせた。だが、続くSS3「リクベツロング1」(4.63km)でタイヤをバーストさせてしまい、3番手にポジションを下げる。
代わってトップに立ったのが、SS3でベストタイムを奪った奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボX)だ。その奴田原に食らいついていったのがSS4「パウセカムイ1」(9.98km)でベストを奪った石田正史/宮城孝仁組(三菱ランサーエボX)で、この2台のランサーエボXがラリーをリードしていく。
陸別でのリモートサービスを終え、2ループ目となるSS5「ニュークンネイワ2」では、奴田原と1.2秒差の2番手に付ける石田が、4ドアR4インプレッサでAPRCに出場する新井敏弘と4秒差という驚異的なタイムをたたき出すが、トップゼッケンの勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)から4番目にスタートした鎌田卓麻/竹下紀子組(スバル・インプレッサ)までが、APRCと全日本の間を走るコースカーに追いついてしまうというトラブルが起きたため、全車同一タイムが与えられ幻のベストタイムに。だが、3ループ目となるSS8「ニュークンネイワ3」では、2番時計の奴田原に5.5秒差をつけるベストタイムをマーク。SS5のタイムがフロックでなかったことを証明し、奴田原を一気に逆転してトップに躍り出た。その後もSS9「パウセカムイ3」も石田が奪い、デイ1を終えた時点で2番手の奴田原に8.3秒差を付け、デイポイント導入後初のトップで折り返す。
「絶好調だね。無理をせず、自分のペースでていねいに走ることを心掛けているのが良い結果につながった」という石田だが、この「ニュークンネイワ」では、体制を一新して挑んだ鎌田がコースアウト、柳澤がエンジンブローでリタイアなど、APRCと全日本合わせて9台がデイリタイアするという難所ともなった。
また、ポイントランキングトップの勝田もSS2「クンネイワ1」で「慎重になりすぎてしまった」とトップから約30秒遅れでフィニッシュ。このタイム差が最後まで響き、デイ1はトップの石田から32.3秒差の3番手で折り返した。
デイ2に入っても石田の勢いは衰えず、SS12「オトフケ1」(6.29km)とSS13「ニューアショロロング」(29.11km)を連取。終盤は奴田原も追い上げるが、最後までペースを崩さなかった石田が、ラリー北海道の前身となる「インターナショナルラリー北海道」を合わせて3度目となる北海道を制覇。全日本としては2008年以来、4年ぶりの優勝を果たした。
また、奴田原が2位、勝田が3位に入賞したため、両者の差は0.5ポイントにまで接近。タイトル奪取に向け、ラスト2戦はさらに激しい戦いとなりそうだ。
JN3クラス
シリーズポイントトップの村田康介/平山真理組(ダイハツ・ストーリア×4)が2戦ぶりに出場してきたJN3クラス。その村田を追いかける眞貝知志/田中直哉組(ホンダ・インテグラ)にとっては、終盤のターマック2連戦に向けて、少しでも村田とのポイント差を縮めておきたいところだ。
そしてそのチャンスが、デイ1でいきなり訪れた。SS2のスタート直後にいきなりタービントラブルに見舞われた村田は、その後もリモートサービスまでのSS3とSS4でスロー走行を強いられたのだ。
代わってトップに立ったのが、トヨタ86の三好秀昌だ。「ハイスピードのラリー北海道は、リヤ駆動でも勝ち目はある」と語っていた三好は、序盤から次々とベストタイムをマーク。デイ2に入ってもその勢いは衰えず、三好本人にとっては2輪駆動部門時代の2003年以来となる全日本優勝を果たした。また、2位にはトヨタ86の香川秀樹/浦雅史が入賞し、トヨタ86のワンツーフィニッシュを達成した。
一方、3位には村田が入賞。4位に終わった眞貝との差をさらに広げることに成功した。
JN2クラス
48台中17台がリタイアするというサバイバルラリーとなった今大会。JN2クラスでも大桃大意/露木明浩組(マツダ・デミオ)がSS3のウォータースプラッシュの水に乗ってしまいコースアウト、同じコーナーでいとうりな/小泉雅之組(マツダ・デミオ)もコースアウトしてしまいデイ離脱、田中伸幸/遠山裕美子組(トヨタ/ヴィッツRS)がSS3終了後にエンジンが不調になりリタイア、中西昌人/藤田めぐみ組(スズキ・スイフトスポーツ)がSS5で転倒、上原淳/漆戸あゆみ組(マツダ・デミオ)もSS9でリタイア、終盤まで3位を死守していた増川智/赤木弥生組(トヨタ・ヴィッツRS)もラス前のSS17で姿を消すなど、11台中7台がリタイアするというサバイバル戦となった。
そのなか、序盤からトップを快走したのが天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツG’s)だ。これまでラリー北海道では2回勝っている天野は、今年も相性の良さをみせ、次々とベストタイムをマーク。「丹後半島ラリーではオーバーヒート気味の症状が出ていたので、冷却系を対策してきた」という天野が、今季2勝目を飾った。
2位にはシリーズトップの川名賢/小坂典嵩組(トヨタ・ヴィッツRS)が、3位にはマシン修復のためにTC6で2分30秒の遅着ペナルティを受けながらも、最後まで粘り強く走った南野保/P.サント組が入賞した。
JN1クラス
ラリー北海道では初のクラス成立となるJN1クラス。果たして最も排気量が少ないクラスのマシンが、ハードなステージが連続するラリー北海道でどんなパフォーマンスをみせるかが気になるところだが、ストーリア×4を駆る山口貴利/山田真記子組が、シリーズトップの葛西一省/安田弘美組(ダイハツ・ストーリア)を圧倒。4WDストーリアの山口と2WDストーリアの安田の対決は、デイ2のSS12でリヤのサスペンションアームが折れるというトラブルに見舞われながらも、なんとか最後まで走りきった山口が、今季2勝目を挙げる結果となった。これでシリーズトップの葛西に14ポイント差まで近付いた山口は、「最後まで走り切れたのは、マシンを直してくれたサービスのみなさんのおかげ。こうなったら、次のラリーも優勝を狙い、葛西さんを逆転したい」と、逆転チャンピオンに向け次戦にも意欲を示した。
2位には葛西、3位は序盤で大きく出遅れながらも最後まで粘り強く走った高篠孝介/山岸毅巌組(トヨタ・ヴィッツ)が入賞した。
総合結果
出走48台/完走24台
順位 | クラス | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | JN4-1 | 石田正史/宮城孝仁 | ランサーエボリューション X | 2:10:41.4 |
2 | JN4-2 | 奴田原文雄/佐藤忠宜 | ランサーエボリューション X | 2:10:49.9 |
3 | JN4-3 | 勝田範彦/足立さやか | インプレッサ WRX STI | 2:11:27.8 |
4 | JN4-4 | 大嶋治夫/井手上達也 | ランサーエボリューション IX | 2:13:39.2 |
5 | JN4-5 | 小舘優貴/町田勇弥 | インプレッサ WRX STi | 2:18:25.2 |
6 | JN4-6 | 高山 仁/河野洋志 | ランサーエボリューション X | 2:18:55.7 |
9 | JN3-1 | 三好秀昌/谷内壽隆 | 86 | 2:27:42.3 |
11 | JN2-1 | 天野智之/井上裕紀子 | ヴィッツ | 2:28:48.4 |
20 | JN1-1 | 山口貴利/山田真記子 | ストーリア | 2:46:17.3 |
注)JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両(過給器つき車両は排気量×1.7で換算)
参考総合結果表: 2012-09-16 RH2012 Data(Excel)
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。