ツール・ド・九州2024 in 唐津

開催日時:4月12日(金)〜14日(日)
開催場所:佐賀県唐津市
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離:76.78km
ラリー総距離:347.44km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.0

2024年シーズンの全日本ラリー選手権第2戦「ツール・ド・九州2024 in 唐津」(ターマック)が、4月12日(金)~14日(日)にかけて、佐賀県唐津市を拠点に開催された。トップカテゴリーのJN-1クラスはシュコダ・ファビアR5をドライブした新井大輝/松尾俊亮が優勝。2位にはトヨタGRヤリス・ラリー2の勝田範彦/木村裕介、3位にはシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoの福永修/齊田美早子が入っている。

開幕戦三河湾ラリーから1カ月半のインターバルを経て、全日本ラリーはカレンダー唯一の九州ラウンドを迎えた。サービスパークは例年どおり「ボートレースからつ」に置かれ、2日間で12SS、76.78㎞を走行する。唐津のステージは大きく回り込んだ見通しの悪いロングコーナーと、タイヤへの攻撃性が高い路面が特徴。レッキを終えたクルーは路面に生えた苔を警戒しており、イレギュラーなグリップ変化には注意が必要だ。

トップカテゴリーのJN-1クラスは、前戦に続きチャンピオンのヘイキ・コバライネンが欠場。コバライネンは、上行大動脈瘤の開胸手術を無事に終えたことを自身のSNSで報告しており、現在は回復に向けてリハビリを続けているという。今回もラリーチーム・アイセロのトヨタGRヤリス・ラリー2のステアリングは、田口勝彦が握る。また、スバルWRX S4で参戦する新井敏弘は、マシンにさらなる軽量化や足まわりの改良を施し、ターマックでの挽回を狙う。

今季からJN-2クラスに導入されたトヨタGRヤリスのワンメイクシリーズ「MORIZO Challenge Cup」には、開幕戦を走った7名に加えて、Ahead Japan Racing Teamの稲葉摩人がエントリーしている。

レグ1

ラリー初日は「MIKAERINOTAKI(10.37km)」、「AMANOGAWA(4.95km)」、「SAYO LAKE(7.58km)」の3SSを、サービスを挟んで午前と午後でループする6SS、45.80km。ラリーはボートレースからつをスタートし、市内の唐津神社でセレモニーを実施。春らしい青空が広がるなか、多くの観客からの歓声に見送られながら、クルーたちはステージへと向かった。

オープニングのSS1で幸先良くベスタイムを刻んだのは、不調をきたしていたギヤボックスに修理を施した新井大輝/松尾俊亮(シュコダ・ファビアR5)。このステージだけで2番手の福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)を11.5秒、3番手の新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)も13.5秒まで突き放してみせる。一方、前戦優勝の勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2)はポップオフバルブのトラブルに見舞われて、ここだけで14.6秒も遅れてしまった。

この開幕ステージでは奴田原文雄/東駿吾が、スタートから1km地点の左コーナーでペースノートの遅れにより、まさかのコースオフ。マシンに大きなダメージはなかったものの、コース復帰は叶わず、早くもデイリタイアを選ぶことになった。

SS2、SS3も新井大輝が制し、圧巻の3連続ベストマーク。午前中のセクションを終えて、総合2番手の福永に対し、25.6秒ものアドバンテージを握った。新井敏弘はマシンの軽量化が功を奏し、R5/ラリー2勢に割って入る27.8秒差の3番手。エンジンにトラブルを抱えたまま走り続けた勝田はペースを上げることができず、41.2秒差の4番手に沈む。その後方、42.0秒差の5番手に鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)、42.2秒差の6番手に田口勝彦/北川紗衣(トヨタGRヤリス・ラリー2)が僅差で続く。

サービスを挟んだ午後のセクション。サービスでエンジンを修復した勝田が、SS4で新井大輝に3.8秒差の一番時計をマーク。このステージは13.5秒差の5番手に沈んだ新井敏弘を捉えて、総合3番手にポジションアップを果たした。SS5は0.3秒差ながらも新井大輝が勝田を上まわり、この日4度目のベスト。セカンドベストの勝田が福永をパスし、2番手に順位を上げた。

この日の最後を締めくくるSS6も新井大輝が勝田に2.5秒差で獲り、終わってみれば6SS中5SSを制する強さを発揮。総合2番手の勝田に40.2秒差をつけて初日をトップで折り返した。48.1秒差の総合3番手に福永、57.3秒差の総合4番手に新井敏弘、59.8秒差の総合5番手に田口、1分36秒1差の総合6番手に眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスDAT)。午前中、5番手につけていた鎌田はSS4でスピンを喫してタイムロス、1分53秒9差のクラス7番手にポジションを落としている。

抜群の安定感を披露した新井大輝は「午後は燃料タンクとプロペラシャフトが干渉する音が聞こえていたので、それをケアしながら走りました。その時点で30秒差があったので、ブーストも落としましたし、クルマを消耗させるタイミングではないと考えました。この状態で勝田選手といいペースで戦えていることは、ポジティブに考えています。明日は40秒のアドバンテージがありますし、普段テストができないので、2週間後の久万高原も視野に入れた位置づけで走りたいです」と、振り返った。

エンジントラブルによる午前中の遅れが響いた勝田は、「午前中はストレスが溜まりましたが、午後はエンジンも直してもらって気持ち良く走ることができました。SS6ではちょっと失敗しましたけど(笑)。午後の1本目でベストを獲りましたが、続く2本は大輝選手が速かったですね。40秒差はもうどうしようもないので、明日は2番手を守ってフィニッシュしたいです」と、2番手堅守を宣言した。

JN-2クラスにおいて、JN-1クラスに割って入るスピードを見せたのは、前戦三河湾で厳しい戦いを強いられた三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)。三枝はSS3まで連続ベストを刻み、SS4でベストをマークした徳尾慶太郎/枝光展義(トヨタGRヤリス)に21.7秒差をつけて午前を終えた。3番手にMORIZO Challenge Cup(MCC)の山田啓介/藤井俊樹(GRヤリス)。4番手につけたKANTA/保井隆宏(MCC:GRヤリス)は、SS1では自身初めてMCC勢トップタイムを叩き出している。

SS5は前半のセクションでペースが上がらずクラス6番手まで順位を落としていた大竹直生/藤田めぐみ(MCC:GRヤリス)が、今回初のベストタイムを記録。このステージでは2番手につけていた徳尾がストップ。2番手に山田、3番手にKANTA、4番手に石川昌平/大倉瞳(トヨタGRヤリス)、5番手に大竹と、それぞれ順位を上げた。SS6は三枝がこの日4度目のベストタイムをマークし、2番手の山田に43.1秒の大差をつけて初日を終えている。

「SS4とSS5は抑えたわけではないんですが、フィーリングが合わなくて1ループ目よりタイムダウンしてしまいました。それでも、余裕をもって明日に挑めるタイム差は得られました。最終日は危険なSSもあるので、しっかりノートをチェックして順位を守って戻ってきたいです」と、三枝。クラス2番手、MCCトップで初日を折り返した山田は「午前中はフロントタイヤにかなり厳しい走らせ方をしていました。もう少しリヤを使った走りがしたかったので、空気圧のバランスを変えてみたらすごくいいフィーリングになりました。明日は大きく変えずに、このまま行こうと思います」と、自身のドライブを冷静に分析する。

トヨタGR86/スバルBRZによって争われるJN-3クラスは、SS1で長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)がベストタイムをマークし、首位に立つ。この日2度のベストタイムを刻んだ長﨑は、2番手につける開幕戦のウイナー、山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)に3.4秒差をつけて初日を首位で終えた。山本はSS4で一度首位を奪ったものの、最終SSで再び長﨑にポジションを獲り返されている。SS2でベストを記録した上原淳/漆戸あゆみ(トヨタGR86)が、10.9秒差の3番手。優勝候補のひとりに挙げられていたベテランの曽根崇仁/竹原静香(トヨタGR86)は、SS1の鋭角コーナーで痛恨のドライビングミスを喫し、10秒以上のタイムロス。優勝争いから33.3秒離れた4番手と出遅れている。

僅差ながらも昨年王者の山本を上まわった長﨑は「接戦になっていますね。SS4でのミスが、このタイム差に表れています。折り返しで曲がれなくて、リバースを入れました。3秒くらいのロスがなければ、もう少しリードを得られたんですが……。ただ、中間サービスでセットアップを変えたらフィーリングが良かったので、このまま行きます」と、コメント。一度は首位を奪いながらも長﨑の先行を許した山本は「1ループ目からセットを変えて良くなったんですが、なかなか差が詰まらない感じです。クルマの調子が良くなったし、ドライバーの方でもう少し頑張るしかないですね」と、最終日の挽回を誓う。

スズキ・スイフトスポーツによって争われるJN-4クラス。前戦三河湾で復活勝利を果たした高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)が、SS1で総合12番手に入る好タイムでベストタイムから発進。このステージでは、黒原康仁/松葉謙介(スズキ・スイフトスポーツ)も総合13番手タイムで続いた。高橋はSS2も制してラリーをリードすると、この日の最後を締めくくるSS6でもベストタイムを刻み、2番手の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)に9.4秒差をつけて初日を終えた。黒原はSS4でベストタイムをマークし、16.0秒差の3番手。SS3でベストの前田宜重/勝瀬知冬(スズキ・スイフトスポーツ)が、34.9秒差の4番手につけている。

前戦三河湾に続き抜群のスタートダッシュを決めた高橋は、「復帰以来、好調をキープできているのは、ラリーに出ていない間もしっかり走っていたからだと思います。ただ、誤算はタイヤの仕様が変わっていたこと。それもあって、自分の従来のスタイルとは違う走らせ方をしないと、美味しい部分を使えないですよ」と、自身の状況を分析した。一方、今回も高橋の先行を許してしまった西川は「午前中に比べれば、だいぶ良くなったんですが、少しずつ離されている感じですね。僕らは皆さんよりも150kg以上(体重が)重いので、上りメインのコースであることを考えれば最小限の被害で抑えたと言えるかもしれません(笑)。明日の下りでは、巻き返せるはずです」と、下りメインの最終日に逆転を狙う。

JN-5クラスは、総合16番手に当たる好タイムでSS1を制した河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)が、この日は計3本のステージウインをマーク。前年チャンピオンの松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス)に11.8秒差をつけて初日首位に立った。優勝候補の大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)は、SS2でベストタイムを記録したものの、その後は河本と松倉のペースについていくことができず、トップの河本から24.3秒、選手権を争う松倉にも12.5秒も引き離されてしまった。

松倉と大倉を上まわるペースを披露した河本は「このラリーに向けて色々と変えた箇所が、うまくハマってくれました。それほど無理せずに良いタイムが出せています」と、冷静にコメント。河本の先行を許した松倉は「結果的に置きに行ったことがアダになりました。河本選手にガッツリといかれてしまいましたね。大倉選手とはいい勝負をしているんですが、河本選手が予想以上に良かったです」と、河本のスピードに驚きを隠さない。一方、大倉は「耐える、苦しい展開でした。セッティングを変えて良くなっているんですが、負けてしまうところは負けてしまうんですよね」と、我慢の展開だ。

JN-6クラスは、開幕戦を制した天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、赤旗によりノーショナルタイムとなったSS5以外の全SSでベストタイムをマークし、今回も首位を独走。初日だけで2番手の清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)に50.5秒の大差をつけてみせた。3番手には、地元九州のイベントに参戦し続ける山北研二/塩濱浩之(トヨタ・アクア)。5.3秒と僅差の4番手に同じく九州のベテラン、中西昌人/山村浩三(ホンダ・フィット)が続く。

JN-6では敵なしの天野だが、「ハイブリッドのアクアはバッテリーがなくなると遅くなってしまうので、バッテリーの節約をテーマに走りました。色々な走り方を試しながら、午前と午後でタイムを比べて検証しているところです。ハイブリッドをいかに速く走らせられるか、それがテーマですね」と、さらに上を目指して試行錯誤を続ける。SS3では天野のベストタイムに1.1秒差にまで迫った清水だが、「今回、今までとは違ったハイブリッドの走りに取り組んでいます。回生とステアリングでブレーキをかけることで、よりバッテリーを使うことができるようになっています。天野選手の背中が近づきつつありますが、やっぱり一発ドカンとやられてしまいますね」と、打倒天野はまだ遠いようだ。

レグ2

ラリー2日目は、前日の逆走となる「MIKAERINOTAKI Reverse(6.08km)」のほか、「WARABINONOTANADA(5.24km)」、「AZAMENOSE(4.17km)」の3ステージを午前と午後でリピートする6SS、30.98km。初日のSS1においてアクシデントによりレグ離脱となった奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス・ラリー2)はマシンを修復し、無事リスタートしている。

首位の新井大輝/松尾俊亮(シュコダ・ファビアR5)は2番手以下に40秒以上のアドバンテージを手にしており、「マシンに余計な負荷をかけずに走りたいです」と余裕の表情。オープニングのSS7は、ラリー初日にエンジントラブルに見舞われ大きく遅れた勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2)が、新井大輝に1.9秒差のベストタイム。再出走にまわった奴田原が5.6秒差の3番手タイム、7.0秒差の4番手タイムに福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)、8.4秒差の5番手タイムで新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)が続く。

SS8は奴田原が勝田に0.6秒差をつけて、今ラリー初のベストタイムをマーク。続くSS9は新井大輝が奴田原を1.4秒、勝田を1.5秒上まわる一番時計でしっかりと首位の座をキープした。午前中のセクションを終えて、首位新井大輝と総合2番手につける勝田の差は37.4秒とわずかに縮まったが、大勢に変化はない。1分2秒5差の総合3番手に福永、1分10秒5差の総合4番手は新井敏弘、1分15秒9差の総合5番手には「少しずつマシンのことが分かってきた」と語る田口勝彦/北川紗衣(トヨタGRヤリス・ラリー2)が入っている。

サービスを挟んだ午後のセクション。SS10では奴田原が新井大輝に0.8秒差をつけてこの日2度目のベストタイム。続くSS11をベストでまとめた新井大輝は、スタートから一度も首位の座を譲ることなくフィニッシュ(SS12は主催者の計測機器故障によりキャンセル)。シュコダ・ファビアR5での初勝利、そして2020年に最終戦として開催された唐津以来となる全日本ラリー選手権JN-1クラス優勝を決めた。

初日のトラブルが響き、新井大輝との接戦に持ち込むことができなかった勝田は、40.4秒差の2位表彰台。1分06秒4差の3位は「色々と試しているんだけど、タイムに結びつかない」と悔しさを吐露した福永。上位ふたりのペースからは離されたものの、2戦連続表彰台を確保した。1分20秒1差の4位は、序盤表彰台圏内をキープしながら、最終日は福永に引き離されてしまった新井敏弘が入っている。以下、5位に田口、6位に眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスDAT)、7位に鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)のオーダーでラリーを終えた。

新井大輝は「勝田選手のトラブルもあって、初日に40秒のアドバンテージを得られたのが大きかったです。まだ自分の中でやりたいことがありますが、マシンに関しては目指すところは固まりました。そして、リードを持って挑めたことで、最終日は久万高原に向けた良いテストができましたね。この後は、マシンが壊れなければ選手権タイトルを狙っていきます」と、2020年以来のタイトル奪取を宣言した。

新井大輝と接戦に持ち込めなかった勝田は「出し切っての2位です。初日のトラブルがなければ、もっと良い戦いができたかもしれませんが、大輝選手のクルマよりもこちらのポテンシャルが高いので、もっと頑張らないとですね。今日は奴田原選手もいいタイムを出していましたし、今後はさらに面白くなりそうです」と、次戦での挽回を誓う。

JN-2クラスは、40秒差を持って最終日に挑んだ三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)が、アドバンテージを活かしてトップフィニッシュ。待望の全日本ラリー選手権初優勝を達成した。2位にはMORIZO Challenge Cup(MCC)の山田啓介/藤井俊樹(トヨタGRヤリス)が入り、開幕戦の三河湾に続きMCCで2連勝を飾っている。SS8とSS10でベストタイムをマークし、ようやく期待されていたスピードを発揮した大竹直生/藤田めぐみ(MCC:トヨタGRヤリス)が、SS10でKANTA/保井隆宏(MCC:トヨタGRヤリス)をパス。SS11でもベストタイムをマークして今季初の3位表彰台を得た。

ついに念願の全日本初勝利を手にした三枝は「リードは十分ありましたが、何度かヒヤリとする瞬間がありました。平常心で走ることを心がけましたが、最終SSは心臓がバクバクで……。今回は本当に気持ちよく走ることができました。実感が湧かなかったんですが、最後にメディアに囲まれてようやく実感しました(笑)」と、喜びを語った。

MCC2連勝を飾った山田は「MCCのペースが全体的に上がるなかで、勝ち切れたことがすごく嬉しいです。レベルが高いなかで、2連勝できたことで、開幕戦三河湾よりも嬉しさは増しています。最終日は2位とのタイム差を見つつ、路面的にも少し危ないところがあるので、マージンを少しずつ使いながら安全に、なおかつタイムを落としすぎないように組み立てをしました」と、笑顔で振り返った。

JN-3クラスは、SS6とSS7で首位の長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)が連続ベストを刻み、2番手につける山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)を一気に突き放した。長﨑は午後のセクションでもステージウインを1本獲り、終わってみれば、2位山本との差を拡大し、うれしいシーズン初勝利を飾った。4番手からこの日をスタートした曽根崇仁/竹原静香(トヨタGR86)が、この日に2本のベストをたたき出して3番手の上原淳/漆戸あゆみ(トヨタGR86)に迫ったが、7.3秒届かず4位に終わっている。

シーズン初勝利を手にした長﨑は「ここからラリーが隔週で続くので、まずは最初のラリーで無事に戻ってこられて良かったです。午前中は頑張ったんですが、ひたすら全開というわけではなく、セーフティを取りながら走ることができました。攻めと守りのバランスが良かったので、午後もその走りを心がけました。結果、差を拡大できた感じです。今シーズンは山本選手の独走を許さないようにしたいですね」と、冷静に振り返った。逆転を狙いながら、逆に差を広げられてしまった山本は「三河湾の段階ではターマックでかなり良くなったと思ったんですが、路面の質がだいぶ違うことを差し引いても、振り出しに戻った印象です。午後に入って路面が良くなったのに、僕はタイムが落ちていましたから……。次に向けて時間はありませんが、なんとか対策します」と、肩を落とした。

JN-4クラスは、首位の高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)がSS7でベストタイムをマークし、アドバンテージを拡大。しかし、SS8とSS9で西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が連続ベストをたたき出し、その差を3秒にまで縮めてみせた。サービスを挟んだ午後のセクション、SS10は高橋が午前中に続く一番時計。SS11は西川が獲り、最終SSを前にその差は2.5秒に縮まった。しかし、最終のSS12がキャンセルに終わったことで、高橋が開幕戦三河湾に続く2連勝を飾った。首位を射程に捉えながら、西川は悔しい2位。3位に黒原康仁/松葉謙介(スズキ・スイフトスポーツ)、4位に前田宜重/勝瀬知冬(スズキ・スイフトスポーツ)が入った。

高橋は「ゼロスタートのつもりで行かないと、やられてしまうと思ったので、必死で攻めました。ただ、最後のセクションでミッションが壊れてしまって、最終SSの後半はかなり危なかったです。フィニッシュまでたどりつけない可能性もあったので、本当に嬉しいです」と、安堵の表情で語った。高橋に一歩届かなかった西川は「下りメインでしたし行けると思ったんですが、高橋選手の底力を見せられましたね。高橋選手と競ることで、私自身のレベルも引き上げられたと感じています。総合順位でも昨年より上がっていますし、大きな刺激を受けました」と、高橋を称えた。

JN-5クラスは、首位の河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)が、オープニングのSS7でベスト。2番手で松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス)は、SS8とSS9で連続ベストを刻むが、河本も僅差で続いており、思うように差を縮めることができない。河本は、午後も2本のベストタイムをマークして初日に得たアドバンテージを守り切り、昨年の久万高原以来となる全日本ラリー選手権勝利を決めた。3位は前日の順位を守った大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)、4位には小川 剛/山本祐也(トヨタ・ヤリス)が入っている。

優勝候補のふたりを破り、2度目の全日本勝利を手にした河本は「理想的なラリーになりました。近づかれた局面はありましたが、心配になるような状況ではなかったです。ラリーを通して淡々と走ることができました。ここからのターマック3連戦、すべてのラリーを走りたかったので、とにかく最初の唐津でアクシデントを起こさないように注意しました」と、落ち着いた表情で振り返った。最終日は僅差の展開に持ち込みながら追いつくことができなった松倉は「初日に足まわりのセッティングを慎重に置きに行ってしまったことが、最後で響きました。タイヤや足まわりに関して試行錯誤もありましたし、色々と勉強になったラリーでした。次は丹後に出る予定です」と、反省の弁を語っている。

JN-6クラスは、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、前日までのアドバンテージを守り切って開幕2連勝を達成。ただ、最終セクションでは、左フロントハブをとめているボルトが緩んだことでペースを上げられず、2位の清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)にベストタイムを奪われる場面もあった。3位は地元の山北研二/塩濱浩之(トヨタ・アクア)、4位には中西昌人/山村浩三(ホンダ・フィット)が入っている。

最終日の午前中までは完璧なラリーを展開していた天野は、マシントラブルを抱えながらも、しっかりと勝利を持ち帰った。「今回、もし海老原選手が出ていたら、勝利は難しかったと思います。キャンセルになった最終SSは、ここだけで40秒近くも遅れましたから……。午後は毎回ボルトを指で締めてなんとか走り切った感じです。それでも、フィニッシュしたら、ガタガタでしたからね」と、薄氷を踏む展開だったことを明かしている。一方、今回はベストタイムをマークした清水は「天野選手に少しずつ近づいている気がしますが、やはり持っている引き出しの差を感じました。それでも、ブレーキングを含めたハイブリッドの走り方について収穫の多いラリーだったと思います」と、冷静にコメントしている。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 新井 大輝/松尾 俊亮 Ahead Skoda Fabia R5 55:52.7
2 JN1-2 勝田 範彦/木村 裕介 GR YARIS Rally2 56:33.1
3 JN1-3 福永 修/齊田 美早子 OSAMU焼肉ふじ☆CTE555ファビア 56:59.1
8 JN2-1 三枝 聖弥/船木 一祥 名古屋スバル ラック DL WRX 58:42.9
12 JN4-1 高橋 悟志/箕作 裕子 ミツバWMDLマジカル冷機スイフト 59:58.3
13 JN3-1 長﨑 雅志/大矢 啓太 NTP NAVUL GR86 59:59.8
22 JN5-1 河本 拓哉/有川 大輔 DL・クスコ・WM・TWR・OTSデミオ 1:01:02.3
41 JN6-1 天野 智之/井上 裕紀子 TRT・DLアクアGR SPORT 1:04:14.6

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN-1クラス優勝 新井 大輝/松尾 俊亮

JN-2クラス優勝 三枝 聖弥/船木 一祥

JN-3クラス優勝 長﨑 雅志/大矢 啓太

JN-4クラス優勝 高橋 悟志/箕作 裕子

JN-5クラス優勝 河本 拓哉/有川 大輔

JN-6クラス優勝 天野 智之/井上 裕紀子