Rally三河湾2024 Supported by AICELLO

開催日時:3月1日(金)〜3日(日)
開催場所:愛知県蒲郡市、岡崎市、豊川市及び額田郡幸田町
スペシャルステージ本数:14本
スペシャルステージ総距離:80.74km
ラリー総距離:253.28km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.0

2024年シーズン全日本ラリー選手権開幕戦「Rally三河湾2024 Supported by AICELLO」(ターマック)が、3月1日(金)~3日(日)にかけて、愛知県蒲郡市を拠点に開催された。トップカテゴリーのJN-1クラスはトヨタGRヤリス・ラリー2をドライブした勝田範彦/木村裕介が優勝。2位にはシュコダ・ファビアR5の新井大輝/金岡基成、3位にはシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoの福永修/齊田美早子が入っている。

昨シーズンの最終戦ハイランドから約5カ月のインターバルを経て、全日本ラリー選手権は新たなシーズンの開幕を迎えた。昨年まで高い人気を集めてきた新城ラリーに変わり、愛知県南部の三河湾に面する蒲郡市を舞台とする「ラリー三河湾」が新たにスタートすることになった。

今回、山間部に組まれた高低差のあるワインディングロード、竹島埠頭を利用したフラットな特設コース、細かいコーナーが連続するタイトな林道コースなど、バリエーションに富んだステージ構成を採用。初開催かつ、参加クルー全員が未経験のイベントのため、レッキにおいて精度の高いペースノートを用意できるかが攻略の鍵になる。

JN-1クラスには、WRC開幕戦ラリーモンテカルロで実戦デビューしたトヨタGRヤリス・ラリー2が3台登場。モリゾウこと豊田章男トヨタ自動車会長が率いるラックwithルーキーレーシング・ラリーチームの勝田範彦、昨年JN-2クラスタイトルを獲得してJN-1に復帰した奴田原文雄、そしてヘイキ・コバライネンの欠場を受けて(胸部上行大動脈瘤治療のため当面の参戦見合わせ)、全日本ラリーはこれが初参戦となる田口勝彦が最新ラリー2のステアリングを握る。また、JN-2クラスには、新たに若手育成を目指したサブカテゴリー「MORIZO Challenge Cup」が導入されることなった。

レグ1

初日の午前中は『ヒメハル(6.51km)』、『SSS がまごおり竹島(0.89km)』、『SSS 西浦シーサイドロード(4.10km)』の3SSに、この日最長の10.31kmを走行するSS4『幸田遠望山』を加えた4SSを設定。ラグーナビーチに置かれたサービスを挟んだ午後のセクションは、午前中の3SSに、幸田遠望山を短縮したSS6『幸田遠望山ショート(3.45km)』を加えた計8SS、36.76kmを走行する。

3月1日金曜日の夕方に蒲郡駅南口駅前の特設エリアで多くのギャラリーを集めて華やかに行われたセレモニアルスタートに続き、2日土曜日から本格的なステージが幕を上げた。

SS1は勝田が、新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)に10.8秒差、鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)に12.0秒差をつけるベストタイムを刻む。このステージでは、柳澤宏至/竹下紀子(トヨタGRヤリス)がステージ走行中に出火したため、赤旗ストップ。柳澤の後、スタートしていた三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)以降のクルーには、8番手タイムで走行した田口勝彦/北川紗衣の記録(7分50秒2)がノーショナルタイムとして与えられることになった。

続く890mのSS2は、今回からシュコダ・ファビアR5をドライブする新井大輝が、勝田を0.6秒上まわる一番時計。SS3とSS4は勝田が連続ベストを獲り返し、総合2番手につける新井大輝に17.7秒差をつけて午前中のセクションを終えた。27.1秒差の総合3番手には「シーズンオフの作業もあって、マシンが乗りやすく、かなり良くなった」と語る新井敏弘がつけている。

GRヤリス・ラリー2での初ドライブとなった奴田原文雄/東駿吾は、SS3でセカンドベストをマークするなど、少しずつペースを上げて、28.1秒差の総合4番手。以下、福永、眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスDAT)、鎌田、田口のオーダーで続く。

サービスを挟んだ午後のセクション、SS5は奴田原が勝田に0.5秒差をつけ、今回初のベストタイムを記録。新井敏弘をかわし、総合3番手にポジションを上げた。続くSS6、総合4番手を走行していた新井敏弘がステージ中に姿勢を乱して側溝にタイヤを脱輪。サスペンションアームを折って、早くもリタイアを余儀なくされている。

SS6からSS8までは新井大輝がすべてのステージで勝田を上まわり、3連続ベストをたたき出す。特にSS8『ヒメハル2』では、総合首位に立つ勝田に4.9秒差をつけ、合計タイム差を12.8秒にまで縮めて初日を終えた。その後方では、SS8で3番手タイムをマークした福永が奴田原をかわし、首位から46.8秒差の総合3番手にポジションを上げている。

50.6秒差の総合4番手は、ニューマシンのラリー2で初日を走り切った奴田原。2分18秒3差の総合5番手につけていた鎌田はギヤボックストラブルにより、ステージフィニッシュ後にリタイアを決めた。この結果、ラリー2初ドライブの田口が、2分58秒4差で実質的な総合5番手となった。また、午前中のセクションで総合6番手につけていた眞貝はSS5で足まわりを壊し、ラリー続行を断念している。

後半、新井大輝のプッシュはあったものの、初日を首位で折り返した勝田は「午後は守りに入ってしまい、失敗が多かったです。自分としても反省しています。最後のヒメハル2でも、ヘアピンでエンストしてしまいました……明日に向けてはマシンのフィーリングは悪くないので、セットアップはこのままいこうと思います。ただ、大輝選手が迫ってきているので、油断はできません」と、慎重にコメント。

今回、ギリギリでマシンを間に合わせたという新井大輝は「シェイクダウンが終わりましたね(笑)。SS1で失ったタイム差が最後まで響いていますが、良い収穫を得られたと思っています。セットアップとして目指す方向性があるんですが、自分たちが持っているパーツではそこに到達できません。今ある状況でしっかりメンテナンスして、明日に臨む感じです」と、笑顔で振り返った。

3番手につけたものの、46.8秒差と上位ふたりから大きく引き離された福永は「まだベストタイムを出せるほどではありませんが、だんだんと良くなってきています。明日はとにかくプッシュあるのみです」と最終日の挽回を誓った。

JN-2クラスには、MORIZO Challenge Cup(MCC)にエントリーした7名に加え、昨シーズンに続き、三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)、徳尾慶太郎/枝光展義(トヨタGRヤリス)、石川昌平/大倉瞳(トヨタGRヤリス)ら、有力クルーも数多く参戦を決めている。

ラリー初日にスピードを見せたのは、フィンランドでラリー参戦経験を積んできた大竹直生/藤田めぐみ(MCC:トヨタGRヤリス)。SS2で初ベストタイムをマークすると、SS4からSS7まで連続ベストタイムを刻み、2番手につける貝原聖也/⻄﨑佳代子(MCC:トヨタGRヤリス)に13.1秒の差をつけてみせる。

ところが大竹は、この日を締めくくるSS8でオーバースピードからコースオフ。車両のダメージが大きく、ラリー続行を諦めることになった。この結果、SS3でベストタイムを記録し、その後も安定したペースで走行していた貝原が初日首位。0.5秒差の2番手に三枝、4.1秒差の3番手に山田啓介/藤井俊樹(MCC:トヨタGRヤリス)が僅差で続いている。

昨年まではFRのトヨタ86で参戦していた貝原は、今回が4WDでの初ラリー。初日首位にも「午後速さを見せていた大竹選手が最後のステージでコースオフしていたので、それに助けられていい位置にいる感じです。今回、ダスティな林道を初めて4WDで走りました。明日も厳しい道が多いので、今日の学びを活かしていきたいです。なかなか難しい道も多いので、マイレージを積み上げつつ、まずは走り切りたいですね」と、浮かれた様子はない。

僅差の2番手につける三枝は「最後のヒメハルはいい感じで走れました。コースオフしているクルマがあってスローダウンもしましたが、このフィーリングであれば、最終日は挽回できそうです。クルマのサイズに対して、このラリーの道はかなり狭いです(笑)」と、逆転勝利を口にした。

トヨタGR86/スバルBRZによって争われるJN-3クラスは、昨年王者の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が、SS2でベストタイムを刻んでトップに立つと、SS3でも連続ベスト。その後は、一番時計こそなかったものの安定して好タイムを刻み、2番手につける長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)に13.2秒差をつけて初日を終えた。長﨑から5.5秒差の3番手には、SS6でベストタイムをマークした山口清司/澤田耕一(トヨタGR86)がつけている。

道が狭い上に滑りやすく、FRマシンには厳しいコンディションとなった初日、大きなミスもなく盤石の展開でラリーをリードした山本は「午後はライバルがかなりタイムを上げてきましたね。自分自身としては、現状そんなに悪くないと思っています。そこそこ良かった感じです(笑)。明日は10kmの林道が続くので、リタイアも多そうなので、気をつけて走ります」と、コメント。山本の先行を許した長﨑だったが、「ギャラリーステージを失敗したんですが、クルマに問題があるわけではなくて、単純にドライバーのミスです。山本選手との差は想定の範囲内。おおむね悪くない感じですね」と、納得の表情を見せた。

スズキ・スイフトスポーツによって争われるJN-4クラス。SS3でベスト刻んだ昨年のチャンピオンの内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)が首位に立つが、続くSS4でインタークーラーを破損しリタイア。3年ぶりに全日本ラリー選手権復帰を果たした高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)が初日を首位で折り返した。2番手の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)は、この日最多となる3度のベストタイムを刻みながらも、苦手とするジムカーナステージ(SS2)でのスピンが響き、高橋に10.8秒差をつけられている。3番手には、SS7でベストタイムをマークしたベテランの須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)がつけている。

久々の全日本参戦を首位で折り返した高橋は「3年ぶりなので、やっぱり最初はブランクを感じました。準備はしっかりしましたが、実際のステージを走るとギャップを感じますね。午後は午前中の反省を活かして、想定したタイムが出せた気がします」と、笑顔を見せた。対する西川は「SS2は苦手のジムカーナステージで、やったことのないサイドブレーキを引いて、スピンを喫してしまいました。あとは最後の林道ステージでも負けてしまって、引き離されてしまいましたね。なんとか明日は、この差を埋めたいです」と挽回を誓う。

JN-5クラスは、昨年チャンピオンの松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス)が、SS3でベストをマークしてトップに浮上。SS5、SS6でもベストタイムを並べ、初日をトップで折り返した。ラリー序盤は大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)が僅差で追っていたが、SS7とSS8で連続ベストをマークした河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)が、SS8で2番手タイムの松倉に9.5秒差をつける快走を披露してトップタイムをマーク。ここで大倉を捉え、首位の松倉に3.8秒差の2番手にポジションを上げている。

首位初日の松倉は「悪くない展開で、大体自分の予想したタイヤチョイスが上手くハマってくれました。予想外だったのは最終SSで河本君がスーパータイムを出したこと。彼とは4秒弱の差ですし、ハマるとかなり速いので、明日が正念場になりそうです」と、若い河本を警戒する。河本は「ありがたいことに2番手に順位を上げられました。松倉選手や大倉選手から離されず、最後のSSで10秒近く勝てたので、巻き返せましたね。クルマがコントロールしやすくて、いつもよりペース上がっていたんですが、コ・ドライバーがしっかり合わせてくれました」と、満足の表情だ。

JN-6クラスは、昨年王者の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が全SSでベストタイムを並べ、今回もJN-5クラスに割って入るスピードを披露。2番手につける清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)に1分3秒3もの大差をつけてみせた。しかし、天野のアクアは午後のセクションでオイル漏れの症状が出ており、最終日は余談を許さない状況だ。一方、序盤に3番手につけていた海老原孝敬/蔭山恵(ホンダ・フィット)はSS8のフィニッシュ目前で転倒し、戦列を去っている。

首位で初日を折り返した天野だが、「SS8で右フロントをヒットしてしまったんですが、その前からオイルクーラーからオイルがにじんでいました。明日は普通に走ることができそうですが、オイルクーラーの症状が悪化する可能性があります。運が良ければ完走、という感じです」と肩を落とす。海老原のリタイアもあり2番手につけた清水は「色々とタイヤを試したり、午後は天野選手と少しだけタイム差を詰めることができましたね。明日はもちろんポジションキープです。天野選手に対して経験が足りないので、調子に乗ってしまうと何が起こるか分からないので(笑)」と慎重にコメントした。

レグ2

ラリー2日目は、『岡崎桑谷山(10.69km)』と『豊川宮路山(10.72km)』という10kmを超える林道ステージ2本に、サービスパークから徒歩圏内に設定されたショートステージ『KIZUNA(0.58km)』を、午前と午後でリピートする6SS、43.98km。前日、アクシデントによりレグリタイアした新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)と、眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスDAT)はマシンを修復し、無事リスタートしている。

10kmを超える林道ステージが4本も残された最終日、初日後半は新井大輝/金岡基成(シュコダ・ファビアR5)に差を詰められていた勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2)だったが、SS9で5.1秒差のベストタイムをマーク。続くSS10でも新井大輝に8.8秒差をつける連続ベストを刻み、その差を26.7秒にまで拡大してみせた。

手持ちのパーツではツイスティなステージに合わせたセッティングで走ることが難しい新井大輝は、思うようにペースを上げることができない。一方、SS10では、再出走してからSS9では勝田、新井大輝に続く3番手タイムをマークしていた新井敏弘が、ギヤボックストラブルから戦列を去っている。

多くの観客が集まったショートステージのSS11。先頭スタートの勝田は、看板などの設置位置がレッキ時と違っていたことから、スタート直後にミスコースを喫してしまう。あわや3分のペナルティかと思われたが、その後のクルーでも同様の事態が続いたことを受けて、主催者はSS11のキャンセルを決定した。

午前中と同じルートを走行する午後のセクション。安全圏とも言えるアドバンテージを手にした勝田は、SS12をセカンドベスト、SS13をベスト、SS14は4番手タイムでまとめ、トップでフィニッシュ。スタートから一度も首位の座を譲ることなく、ホモロゲーションを取得したGRヤリス・ラリー2での全日本ラリー選手権初勝利を達成した。

21.2秒差の2位には、スタート直前までマシンの準備に追われながら、しっかり表彰台圏内でフィニッシュした新井大輝。福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)は上位2台のペースから離されてしまったものの、表彰台圏内を確保している。

今回が、GRヤリス・ラリー2初ドライブとなった奴田原文雄/東駿吾は、マシンの習熟に努めながら、首位から3分19秒1差の4位で完走。7分44秒5差の5位は、ヘイキ・コバライネンの代役として、初めてラリー2マシンでの参戦でGRヤリス・ラリー2をフィニッシュまで持ち帰った田口勝彦/北川紗衣が入っている。

開幕戦を制した勝田は「昨年のプロトタイプとは全然違う印象で、すごく乗りやすかったです。安心してプッシュすることができました。でも三河湾のステージは狭くツイスティで、驚きました(笑)。新井大輝選手がかなり速かったですし、ヘイキ(コバライネン)選手も復活してくるはずです。今シーズンも厳しい戦いが続きそうです」と、待望の勝利にも冷静にコメント。

ファビアR5での初ラリーで2位表彰台を手にした新井大輝は「午前中の走りを踏まえてセットアップを大幅に変えたんですが、やはり道に全然合っていませんでした。もっと色々詰めなければならなくて。そうなってくると、デファレンシャルも含めて、色々と手を入れる必要があるでしょうね。それでも方向性が見えたことが、一番の収穫です。次戦の唐津までにはミッションを直したり、やることが多そうです」と、悔しさのなかにも手応えを語っている。

JN-2クラスは、オープニングのSS9を制した山田啓介/藤井俊樹(MCC:トヨタGRヤリス)が、前日の3番手から貝原聖也/⻄﨑佳代子(MCC:トヨタGRヤリス)をとらえて首位に浮上。貝原はSS10でベストタイムを獲ったものの逆転には至らず、SS12を制した山田がその差を20.1秒に拡大する。逆転を狙った貝原は、難しいコンディションとなったSS13において、山田を20.4秒引き離す圧巻のベストをたたき出し、0.3秒ながらも山田選手を上まわって首位に立つ。ところが、このSS13で貝原はスローパンクチャーに見舞われており、最終のSS14で大きくタイムロス。これで山田が逆転し、MORIZO Challenge Cupの初優勝、全日本ラリー選手権JN-2クラスにおいても、昨年の久万高原以来となる勝利を飾った。

2位には貝原が入り、3位は徐々にペースを上げてきた石川昌平/大倉瞳(トヨタGRヤリス)が順位を上げ、久々の全日本ラリー選手権表彰台を手にした。この日を2番手からスタートした三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)は、逆転を狙いながらもペースを上げることができず、4位に終わっている。

MCCラウンド初代ウイナー、さらには全日本ラリー選手権2度目の勝利を持ち帰った山田は「僅差の展開となった最終日は、クルマの状態を確かめつつ、できる限りのプッシュをしようと挑みました。特に午前中は、今できるベストの走りができたと思っています。今回、優勝できたことはうれしいですし、ぜひフィンランドにも行きたいです」と、MCCシーズン勝者に与えられる特典を視野に入れながら喜びを語った。

悔しい2位となった貝原だったが「ラリー三河湾はバリエーションに富んだSSが多く、勝ったり負けたりの展開になりました。SS13の終盤からスローパンクチャーしていたようです。この状況の中ではベストを尽くせたと思っています。完走することでGRヤリスの動きを学べた点は収穫ですし、自分の成長につながる一戦になりました」と、納得の表情を見せた。

JN-3クラスは荒れたコンディションとなった最終日も、トップの山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が、キャンセルとなったSS11以外の全ステージでベストタイムを並べ、シーズン初勝利。タイトル連覇に向けて上々のスタートを切った。2位に長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)、3位に山口清司/澤田耕一(トヨタGR86)と、前日と同じオーダーでフィニッシュ。4位には前日の5番手からひとつ順位を上げたベテランの曽根崇仁/竹原静香(トヨタGR86)が入っている。

最終日も2位以下を突き放した山本は「マージンはありましたが、気を抜くと負けてしまうし、コースオフする可能性もあったので、気合を入れて走りました。三河湾のステージはあまりにも狭く、道が汚れていたので、これだけ素晴らしいロケーションがあるのだから、もう少し良い路面のステージが増えてくれると嬉しいですね」と、コメント。2位の長﨑は「なんとか2位で帰ってこられました。危ない瞬間もありましたが、無事に帰ってこられて良かったです。ベンチマークにしていた山本選手に少しずつ離されてしまったので、このようなコンディションでの課題になりました」と、振り返った。

JN-4クラスは、首位の高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)がSS11「キズナ1」で痛恨のミスコース。3分のペナルティにより首位陥落かと思われたが、その後、このステージがキャンセルになったことで、2位の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)との差を43.7秒に拡大し、4年ぶりとなる全日本選手権勝利を飾った。ベテランらしい安定した走りを披露した須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)は、3位を守ってフィニッシュしている。

全日本復帰戦を勝利で飾った高橋は「初めて走るラリーでしたが、色々と探ることができたのは良かったです。事前テストで、ある程度フィーリングをつかんだ状態で走れたのが、勝利につながりました」と、喜びを語った。西川は「午後は路面状況が悪くなったことで、無理をしなかったことがタイムダウンの原因です。クルマには問題なく、ドライバーの技術の問題なので、唐津までに持ち直せるように頑張ります」と、高橋へのリベンジを誓っている。

JN-5クラスは、首位の松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス)が10kmを超えるSS9、続くSS10で2番手以下を突き放す好タイムをマーク。午後のセクションはアドバンテージを活かして手堅いペースで走り切り、全日本ラリー選手権で自身初となるターマックラリー勝利を達成した。2位は河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)、ツイスティなステージで松倉や河本に互するタイムで走れなかった大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)が3位でラリーを終えている。

松倉は「午後は安全に走ることを考えて、無難なペースを選びました。タイムでは河本選手に負けましたが、うまくコントロールできたと思います。実は、ターマックでの全日本初優勝なんです。去年のハイランドはもう少しのところで勝てなかったので、すごく嬉しいです。いい自信になりました」と、満面の笑みで喜びを語った。河本は「1ループ目は松倉選手に負けてしまったんですが、2ループ目はかなりアタックできました。スピンしたり、溝に落ちたりもあったので、もう少しクレバーに走れるようになりたいです。ただ、松倉選手と大倉選手というトップドライバーふたりの中に割って入れたのは、自信になりました」と、手応えを語っている。

JN-6クラスは、オイルクーラーにトラブルを抱えながらも、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が初日に続き全ステージを制覇。結果、2日間・全SSでベストタイムをマークする完全勝利を飾った。2位には清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)、3位は鷲尾俊一/菅野総一郎(ホンダCR-Z)が前日の4番手からひとつ順位を上げた。

完全勝利にも天野は、「なんとか走り切れて良かったです。今回のラリーは、コースのライン取りをミスしていたようで、それが反省点です。ここまでのトラブルに見舞われるのは、このクルマでは初めてです。オイルクーラーの破損は、弱いとは分かっていましたが、あの程度の衝撃で壊れるとは予想していませんでした」と、安堵の表情で振り返った。2位に入った清水は「天野選手にまだまだ貯金があって、こちらにはあまりなかった感じですね(笑)。それでも、万年3位から上がれて、2位表彰台は嬉しいです。最終日は走り方を色々と変えてみて、少し理解が深まった気がします」と、成果を語った。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 勝田 範彦/木村 裕介 トヨタ GR YARIS RALLY2 1:08:57.7
2 JN1-2 新井 大輝/金岡 基成 シュコダ ファビア RALLY2 1:09:18.9
3 JN1-3 福永 修/齊田 美早子 シュコダ ファビア 1:11:58.4
6 JN2-1 山田 啓介/藤井 俊樹 トヨタ GR YARIS 1:17:21.9
10 JN3-1 山本 悠太/立久井 和子 トヨタ GR 86 1:18:43.1
13 JN4-1 高橋 悟志/箕作 裕子 スズキ スイフト 1:19:20.9
18 JN5-1 松倉 拓郎/山田 真記子 トヨタ YARIS 1:20:33.3
37 JN6-1 天野 智之/井上 裕紀子 トヨタ アクア GR SPORT 1:25:28.6

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN-1クラス優勝 勝田 範彦/木村 裕介

JN-2クラス優勝 山田 啓介/藤井 俊樹

JN-3クラス優勝 山本 悠太/立久井 和子

JN-4クラス優勝 高橋 悟志/箕作 裕子

JN-5クラス優勝 松倉 拓郎/山田 真記子

JN-6クラス優勝 天野 智之/井上 裕紀子