第45回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2017 Supported by Sammy

開催日時:10月13日(金)〜15日(日)
開催場所:岐阜県高山市
スペシャルステージ本数:11本
スペシャルステージ総距離:82.45km
ラリー総距離:372.13km
SS路面:ターマック
SS路面状況:デイ1 ウエット/ドライ、デイ2 ウエット
ポイント係数:1.0

全日本ラリー選手権第8戦「第45回M.C.S.C.ラリ-ハイランドマスターズ2017 Supported by Sammy」が10月13日(金)〜15日(日)の日程で行われ、SS1でパンクを喫して初日を5番手を終えた新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)が猛烈な追い上げを見せるとともに上位陣の脱落も重なり、奇跡的な逆転優勝を果たした。

また、このラリーでシリーズチャンピオンが確定する可能性があった勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)は8位という結果に終わったため、JN6クラスのタイトル決定は最終戦に持ち越されることとなった。

デイ1

45回目と全日本ラリー選手権のなかでも最も長い伝統と歴史を持つハイランドマスターズは、高山市の南に位置するふたつのスキー場と近隣の林道を使用するターマックラリー。コースは午前中に2SS、午後に3SSの合計5SSが行われたが、なかでも約30年ぶりにSSに設定されたSS4「御嶽」は、激しく荒れた舗装に落ち葉や草も多く、さらに道幅が狭いハイスピードコースという難しいステージ。事前の天気予報に反して雨はほぼ降らなかったものの、前日までの雨が残っているという難しいコンディションだ。このステージで多くの選手がトラブルに見舞われ、「カーブレイカーラリー」というかつてこのラリーに名付けられた異名が久々に選手や関係者から聞こえてくる、マシンにも選手にも厳しい1戦となった。

JN6クラスは、SS1、3、4でベストタイムを刻んだ福永が首位。8.7秒遅れの2番手には、ポイントリーダーの勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)がつけ、チャンピオン獲得に向けて好スタートを切った。勝田はこのラリーで15ポイントを獲得すると、シリーズチャンピオンが確定するという好ポジションにつけている。昨年のウイナー、鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)は、序盤3番手につけたものの、セッティングに悩まされSS4で奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX)にかわされ4位に後退してしまった。ランキング2位の新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)は、オープニングのSS1でスローパンクチャーに見舞われ総合23位まで後退するものの、SS2、5とベストタイムを重ね、トップから48.7秒差の5番手まで挽回している。

JN5クラスは、今シーズンのチャンピオンマシンをドライブする大桃大意/小坂典嵩が、SS2〜4まで4連続ベストタイムを奪取してデイ1をトップでフィニッシュ。大橋逸夫/木村裕介、鷹野健太郎/ヤナら、MINI勢が2〜3番手につける。DS3で今季5度目の参戦となった川名賢/保井隆宏はSS1でパンクに見舞われ、ステージ中で交換したことにより4分をロス、4番手となっている。

JN4クラスは、モントレー以来の参戦となる石川昌平/竹藪英樹(トヨタ86)が、3度のベストタイムを奪う快走で首位に立っている。山本悠太の順位次第でチャンピオンが確定する曽根崇仁/桝谷知彦(トヨタ86)は、堅実に2番手を維持。3番手には香川秀樹/澤田耕一(ホンダ・シビックタイプR)がつけ、山本/藤田めぐみ(トヨタ86)は4番手からデイ2に懸ける。

JN3クラスは、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツRS)が全5SSベストタイムで文句なしの独走。後続では、渡部哲成/松浦俊朗(マツダ・デミオ)、大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)、内藤学武/小藤桂一(マツダ・デミオ)らが2番手争いを繰り広げるが、SS4で渡部がコースオフ、内藤も大きくタイムをロスし、大倉が単独2番手に浮上、40秒後方の3番手に内藤がつけている。

JN2クラスは、若狭で全日本初優勝を果たした戸塚和幸/松本優一(スバルBRZ)がSS1、SS2と連続ベストタイムで午前をリードするが、SS3で大幅にタイムを落としたうえ、SS4では痛恨のリタイア。代わって、ランキング2位の明治慎太郎/北田稔(トヨタ86)がトップに浮上し、ランキング首位の猪股寿洋/齊藤孝太(トヨタ86)もSS4でベストタイムをマークするなどして反撃し2番手に浮上。明治vs猪股のチャンピオン争いは、12秒差でデイ2に持ち越された。

JN1クラスは、逆転チャンピオンの可能性を残している古川寛/池田孝之(スズキ・スイフトスポーツ)と、伊藤隆晃/大高徹也(日産ノートNISMO)の2台がシーソーゲームを展開。最終的に8.7秒差で古川、伊藤という順位に。このラリーでチャンピオン獲得の可能性がある須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)は、安定した走りで3番手のポジションを守った。

デイ2

前日は一部濡れている路面があったものの、天候は曇りというコンディションで競われたハイランドマスターズだが、デイ2は早朝から雨が降るウエットコンディションのなかでの戦いとなった。この日は、グラベルラリー時代からおなじみの駄吉上り(5.61km)と青屋下り(8.87km)のヒルクライム&ダウンヒルステージと、前日にギャラリーステージが設けられたアルコピア‐無数河を逆走する無数河‐アルコピア(6.15km)の3SSを2ループする6SSが設定されている。どのSSも路面には濡れた落ち葉や前走車のインカットによる砂利がコーナーに散乱しているうえにウエットコンディションが重なり、難易度はより高いものとなった。

福永修/齊田美早子(三菱ランサーエボリューションX)が初日トップを奪ったJN6クラスは、デイ2オープニングとなるSS6で勝田が福永との差を1.8秒差に詰めてくるものの、その後は福永も快走を見せ、SS9を終えて勝田との差を14.1秒に広げ、首位の座を堅守する。残るSSはあと2本。だが、最終SS前のSS10で、大波乱が起きた。2番手の勝田とのタイム差から見ると、今季2勝目は確実かと思われていた福永が、スタートから約4km地点でコースオフ。その後コースには復帰するものの、サスペンションに大きなダメージを受けたために大幅なペースダウンを強いられ、まさかの4位でラリーを終えた。さらに、福永と同じコーナーでチャンピオン決定となるはずだった勝田もコースオフし、まさかの8位となってしまった。

上位2台の脱落により首位に立ったのが、堅実なラリーを展開していた奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションⅩ)だ。だが、その4.7秒後方には、SS6からSS10まで5連続ベストタイムをマークする新井が驚異的な追い上げを果たし、2番手まで浮上してきている。残すは最終SSのみ。この最終SSで新井が渾身の走りを見せ奴田原を8.7秒上まわるタイムでフィニッシュ。奴田原を4.0秒逆転し、今季3勝目を獲得するとともに、最終戦に逆転チャンピオンの可能性を繋ぐ結果となった。

JN5クラスもJN6クラスと同様に波乱のデイ2となった。初めて運転するシトロエンDS3 R3-MAXに手こずりながらも、初日を首位で折り返した大桃大意/小坂典嵩が、SS7の左コーナーでクラッシュ。これで大橋逸夫/木村裕介(MINIジョン・クーパー・ワークス)が首位に立つが、後方から川名賢/保井隆宏(シトロエンDS3 R3-MAX)が猛烈な勢いで大橋を追い上げてくる。大橋とのタイム差は、デイ2がスタートした時点では2分近くあったが、SS10を終えた時点で10.1秒差にまで短縮。最終SSではついに大橋をとらえ、JN6クラス優勝の新井と同じくパンクを喫したSS1のビハインドから、最終SSで見事な逆転優勝を果たした。

JN4クラスも大波乱の展開となった。初日首位の石川昌平/竹藪英樹(トヨタ86)が、デイ2はタイヤ選択を失敗しペースダウン。ジワジワとタイムを詰めてくる香川秀樹/澤田耕一(ホンダ・シビックタイプR)にSS10で逆転を許し、石川は2位に転落。香川が待望の今季初優勝を飾った。また、最終SSで2位の石川に0.3秒差まで迫りながらも3位に終わった曽根崇仁/桝谷知彦(トヨタ86)が、最終戦を残し今シーズンのチャンピオンを決めている。

JN3クラスは、初日首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)が、この日も後続の追い上げを許さず独走態勢で優勝。今シーズンの連勝記録を8に伸ばしている。2位には大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)、3位にはこの日30歳の誕生日を迎えた内藤学武/小藤桂一(マツダ・デミオ)が入賞した。

JN2クラスは、初日首位の明治慎太郎/北田稔(トヨタ86)がこの日も快走を見せ、2輪駆動最速となる総合7位相当の順位で優勝。2位には昨年のJN1クラスチャンピオンの鈴木尚/鈴木裕(スバルBRZ)が入賞。3位にはシリーズランキングトップの猪股寿洋/齊藤孝太(トヨタ86)が入賞し、最終戦で明治とシリーズチャンピオンを競う結果となった。

JN1クラスは、初日首位の古川寛/池田孝之(スズキ・スイフトスポーツ)がデイ2オープニングのSS6でクラッシュ。これでデイ1から古川とシーソーゲームを繰り広げていた伊藤隆晃/大高徹也(日産ノートNISMO S)が首位に浮上。SS7、8でベストタイムを重ねた伊藤は、待望の今季初優勝を飾った。2位にはシリーズランキングトップの須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞し、最終戦を前にシリーズチャンピオンを確定。3位には満身創痍となりながらも最後まで走りきった三苫和義/小林剛(ホンダ・フィット)が入賞した。

2017シーズンの全日本ラリー選手権最終戦、第9戦「新城ラリー2017」は、11月3‐5日に愛知県新城市周辺で開催される。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN6-1 新井敏弘/田中直哉 富士スバルアライモータースポーツWRX 1:06:04.2
2 JN6-2 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 1:06:08.2
3 JN6-3 鎌田卓麻/市野諮 SYMS DL TEIN WRX STI 1:08:40.2
7 JN2-1 明治慎太郎/北田稔 YHGd高崎くす子86 1:10:16.9
9 JN4-1 香川秀樹/澤田耕一 DLテインBRIG東京鋳造VTシビックR 1:10:26.9
13 JN3-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツRS 1:11:01.8
16 JN1-1 伊藤隆晃/大高徹也 プレイドライブYHノートNISMO S 1:12:03.9
20 JN5-1 川名賢/保井隆宏 CUSCO ADVAN DS3R3MAX 1:13:49.7

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2017年 全日本ラリー選手権 第8戦 高山

イベントフォト

JN6クラス優勝 新井敏弘/田中直哉

JN5クラス優勝 川名賢/保井隆宏

JN4クラス優勝 香川秀樹/澤田耕一

JN3クラス優勝 天野智之/井上裕紀子

JN2クラス優勝 明治慎太郎/北田稔

JN1クラス 伊藤隆晃/大高徹也