MONTRE 2021

開催日時:6月11日(金)〜13日(日)
開催場所:群馬県高崎市
スペシャルステージ本数:3本
スペシャルステージ総距離:61.22km
ラリー総距離:290.25km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.0

群馬県高崎市を拠点として開催された全日本ラリー選手権第6戦モントレー2021は、6月13日にすべての競技日程を終了。シュコダ・ファビアR5の福永修/齊田美早子が最終SSで逆転を果たし、今シーズン3勝目を飾った。2位には同じくファビアR5の柳澤宏至/保井隆宏、3位は鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)が今シーズン初の表彰台を獲得した。

無観客での開催となったモントレーは、これまでの嬬恋村から高崎市へと拠点を移し、SSも県南西部エリアのターマック林道を使用する新しいラリーへと生まれ変わった。サービスパークやHQが置かれる拠点となるのは、高崎競馬場の跡地に建設されたコンベンションセンター『Gメッセ群馬』。高崎駅からも歩いてアクセスすることが可能で、有観客であれば大きな賑わいを見せたはずだ。本来であれば2020年からこのスタイルで開催する予定だったが、昨年は中止を余儀なくされたため、2年ぶりのモントレー開催となった。

また、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ラリー主催者は競技に先立ち関係者全員に問診表の提出と抗原検査を実施。サービスパークの出入りに際しては行動実績票の記入を行うなど、様々な感染防止策をとって大会の運営を行った。

レグ1

ラリーは初日の土曜日に1SS、2日目に2SSというわずか3SSだが、各SSが20km前後というロングステージでの構成となった。初日は午前5時からレッキを行い、午後3時半に1号車がスタートというハードスケジュール。21.77kmのSS1はハイスピードでバンピーなコース。クルマのセットアップが決まっているか否かでタイムは大きく変わってくる。また、同じSSを2度走行する2日目は初日と異なりテクニカルなコース。SS2とSS3の間にはサービスの設定がなく、従来とは異なる戦いになることが予想された。スバルの鎌田卓麻は「ステージの間にサービスがないので、いったん走り出してしまうと車両の大きな変更やセットアップができず、ドライバー側でアジャストしていかなければなりません。ドライバーとクルマのポテンシャルが勝敗を左右する戦いだと思います」とコメントしている。

トップカテゴリーのJN1クラスには全11台が参戦。内訳はGRヤリスが6台、ファビアR5が2台、スバルWRX STIが2台、三菱ランサーエボリューションが1台。GRヤリスは徳尾慶太郎/石田一輝がこのラリーから投入したことで、今季最大の6台エントリーとなった。16時48分スタートのSS1では、柳澤が後続に3.5秒差をつけて首位に。2番手には奴田原、3番手に勝田とGRヤリス勢が続き、8.6秒差の4番手に福永修/齊田美早子、5番手に鎌田/松本優一がつけるかたちとなった。スバルの新井敏弘/田中直哉は中盤でパンクを喫し、ステージ内でのタイヤ交換を余儀なくされ大きくタイムロス。SSは走り切ったものの勝負権を失い、2日目のレグポイント獲得を目指す。

トップの柳澤は、「ベストを獲れました。前戦の丹後よりも路面とタイヤの相性が良くて、グリップを感じて走れました。クルマは少しサスペンションのセッティングを硬い方向に振ってきたくらいです。明日はまたコースが変わるので、そこに向けて調整していきます」と手応えを感じさせるコメント。一方、2番手の奴田原は「ハイスピードでグレーチングのギャップもあって、気の抜けない道でしたね。そこを上手くコントロールしていくのが大変でした。スムーズな丹後と比べると難しい路面です。タイムはもう少し詰められたかもしれませんが、前半はシフトミスしたり、ドライバー側がまだ慣れていないのが出てしまいましたね」と、難しさを語る。

JN2はヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGT86 CS-R3)がJN1クラスに食い込む総合6番手タイムをマークし、クラス首位に立つ。2番手には第4戦唐津以来の参戦となるレクサスRC Fの石井宏嵩/竹下紀子、石井と僅差の3番手に中平勝也/島津雅彦がつける展開となった。4番手には前戦の丹後からマシンを修復してエントリーした上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)、その背後5番手にトヨタ・ヴィッツGRMNの中村英一/大矢啓太が続く格好となった。

コバライネンは「今日のターゲットは、初めて走るステージでもアタックすることだった。普段だったら1ループ目は様子を見ながら走り、2ループ目でペースアップという流れだけど、今回はステージ中にインプルーブすることを心がけた。レッキでしっかりペースノートを作れたこともあって、とても良いフィーリングで走ることができたよ」と手応え。課題を持って取り組み、きっちりとそれをこなしてみせた。2番手の石井は「登りが多いからいけるかと思ったら、下りも長くて。ブレーキが頑張れないので、これくらいが限界かな。タイヤもクルマも調子がいいんですが、今ひとつリズムに乗り切れていないですね」と、この日のステージを振り返った。3番手の中平は「様子見ができないので、すっごく頑張ったんですが、ヘイキ選手のタイムが尋常じゃなく速いですね。石井選手が4秒前にいるので、明日は順位を上げられるように頑張ります」と意気込みを語った。

トヨタ86とスバルBRZが鎬を削るJN3クラス。前戦優勝した竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ)がクラッシュを喫し、自走不能の状態でコースを塞ぎストップ。コース全域に赤旗が提示され、以降のアタックは中断。各選手には16分39秒0のノーショナルタイムが与えられることとなり、全車スルーでSSをフィニッシュ、この日の競技を終えることとなった。

競技2日目は19.75kmのSSを2度走行する39.10km。初日と異なりテクニカルな性格の強いステージとなるほか、天気予報では局地的な雨も予想されている。SS2と3の間にサービスは設けられないため、スペアタイヤを1本搭載するか2本搭載するか、各選手の見極めがポイントとなりそうだ。

レグ2

ラリー最終日は19.75kmのSSを2度走行する39.10km。SS2と3の間にサービスは設けられず、ステージが設置される山間部では午後に雨の予報も出ているため、スペアタイヤを2本搭載してステージへと向かう選手が多く見られた。実際SS3では雨が降りウエット路面に。選手たちは同じステージでドライとウエットの両方を走行することとなった。

JN1クラスは、この日最初のSS2で福永がベストタイムをマーク。スタート時点で8.6秒あった首位柳澤との差を3.1秒にまで縮めることに成功する。また、このSS2で鎌田は福永に次ぐ2番時計をたたき出し、奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)と勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス)をかわして一気に3番手に浮上した。最終SSでは、逃げる柳澤がステージ終盤に痛恨のスピンを喫してしまい、万事休す。柳澤はSSベストタイムの福永から8.6秒遅れのSS2番手となり、これで総合順位では福永が逆転。最終的に5.5秒差で第4戦唐津からの3連勝を飾った。3番手につけていた鎌田は、0.9秒差で勝田の追い上げをしのぎ、順位を堅守。今シーズン初の3位表彰台を獲得した。
首位でラリーを終えた福永は、「3連勝は自分としても、すごく良い流れになっていると思います。柳澤選手の強さはうかうかしていられないですね。ここからグラベルラリーになりますが、すべてを取られてしまうかもしれないので、いっそう気を引き締めていきます」と、表情を引き締めた。まさかの逆転負けを喫してしまった柳澤は、「残念無念です。SS2で福永選手に詰められてしまったので、かなりプッシュしました。雨も降ってきて、攻めた結果なので仕方ないのですが、自分のミスでロスしてしまいました。まだグラベルではR5で走ったことはありませんが、なんとか巻き返したいですね」と、次に向けて気持ちを切り替えた。今回、新たに車両を製作して臨んだ鎌田はこれがシーズン初表彰台。「ウエットコンディションを見越してタイヤを2本積んで行ったので、僕らとしてはもう少し雨が降ってくれた方がありがたかったですね。グラベルは得意なので、次からの3連戦で巻き返したいと思います」と、意気込みを語っている。

コバライネンが大きくリードするJN2クラス。トヨタGT86 CS-R3のコバライネンはこの日もSSベストタイムを並べたが、最終SSではスピンを喫してしまい、車体にダメージはなかったもののタイムをロスし、総合6番手の座を眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリス)に奪われている。コバライネンはこれでシーズン3勝目。2位には最終SSで順位を上げた中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3)、3位にレクサスRC Fの石井宏尚/竹下紀子が入っている。
コバライネンは、「今日のステージは少し難しかったね。最終SSではスピンを喫して、リバースギヤに入れる必要があって10~12秒ほどロスしてしまった。昨日のSS1は自分のラリーキャリアでもベストといえる走りができたと思っている。それと比べると、今日はそうでもなかった。とりあえずアクシデントにならなくて良かったよ」とのこと。次戦カムイでも勝利を狙って走るとコメントした。中平は「雨用のコンパウンドを2本積んでいったので、SS3ではいいフィーリングで走ることができましたが、ヘイキ選手はそれ以上に速かった感じですね。カムイは例年どおりであれば、好きなコースなので、楽しみです」と振り返った。石井は「雨の経験も少ないので抑えすぎてしまいました。前半や中盤が滑りやすく、車重にタイヤが負けてしまいましたね。これまで完走率もポディウム率も100%なので、とにかく完走を目指しました」と語る。

JN3クラスは、トヨタ86勢がトップ3を占め、長﨑雅志/秋田典昭が優勝。新城でクラッシュを喫した影響によりRPN車両で参戦を続けているなか、SS2〜3と連続ベストタイムを並べ、JN3クラスでうれしい初優勝となった。2位は山口清司/里中謙太。3位には最終SSでスピンを喫してしまったという曽根崇仁/竹原静香が入った。4位はコンスタントにポイントを重ね選手権首位を維持した鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ)。
長﨑は、「2019年にJN3に上がってから、初優勝です。RPNのクルマはギヤ比が全然違って、登りで加速してくれないので戸惑いましたが、結果を残せてほっとしています。カムイにはRJ車両が修理から上がってくる予定なので、心機一転頑張りたいです」と力強く語った。ペース配分も、コンディションも難しかったと言う山口は、「トップには上がれませんでしたが、SS3は悪くないタイムで走ることができました。次に向けて、3週間でしっかり準備をしたいですね」と次戦カムイに向けたコメントした。曽根は、「今日もドライとウエットで同じコースを走れて、良いデータが取れたと思います。最後の最後にスピンで順位を落とてしまったのが反省材料ですね。最初はどうなるかと不安に思いましたが、終わってみれば、楽しかったです」と、2日目の戦いを振り返った。

西川真太郎/本橋貴司と岡田孝一/河本拓哉のスズキ・スイフトスポーツ対決となったJN4クラスは、SS2〜3ともに西川がベストタイムをマークして、今シーズン3勝目を獲得。西川は「SS1は2016年の群馬ラリーシリーズで走って、大好きなステージだったので少し残念ですね。最後のSS3はウエットだったんですが、タイヤがピッタリでドライのように走ることができました。グラベルは苦手ですが、修行をかねて挑みます」とコメント。一方の岡田は、「疲れましたねぇ。道は楽しかったんですが、体力的にキツかったです。ドライ路面は頑張ったら、そこそこのタイム差で走ることができましたが、ウエットになったら大きくあけられてしまいました。でもクルマは徐々にセッティングの方向が分かってきました」と、まだ3戦目のスイフトスポーツで試行錯誤中。

JN5クラスは、トヨタ・ヤリスの渡部哲成/橋本美咲が好タイムをそろえて全日本ラリー初勝利。2位にはGRヤリスRSで2戦目となる天野智之/井上裕紀子が入り、3位に内藤学武/小藤桂一(トヨタ・ヤリス)というトップ3となった。4位はトヨタ・ヴィッツCVTの大倉聡/豊田耕司、5位にホンダ・フィットの小川剛/梶山剛が入っている。
フィニッシュ前のタイムコントロールで辻井利宏監督に涙の優勝報告をした渡部は、「天候の変化もあり、作戦を練るのも大変だったんですが、チームの皆さんのサポートもあって、万全の体制で思いっ切り攻めることができました。初戦でリタイアしたり色々ありましたが、そこから這い上がれて、本当にうれしいです」と、ラリーを振り返った。2位の天野は、「前回も今回も流れがないですね。天候の変化もそうですが、2日目のタイヤサービスがなくなったり、このクルマにとってネガティブな方向に傾いてしまいました。タイヤを2本積みにすると重くなりすぎてしまうので、ドライ用タイヤのままSS3のウエットを攻めるのは厳しかったです」と語っている。グラベル3戦は予定どおりヴィッツにマシンをスイッチして臨む。3位の内藤は、「渡部選手の優勝は、チームメイトとしてうれしいです。今日はSS2の攻めが足りませんでした。そうした点をしっかり直したいですね。次に向け、残された時間のなかでしっかり準備したいです」と振り返った。

JN6クラスはトヨタ・ヤリスの吉原將大/佐野元秀が2連続ベストタイムで優勝。2位にはトヨタGRヤリスRSの村田康介/梅本まどか、3位にはトヨタ・ヤリスの水原亜利沙/高橋芙悠。4位にトヨタ・アクアの海老原孝敬/蔭山恵という順位。SS2で2番手につけていたトヨタ・ヴィッツの兼松由奈/立久井大輝はSS3で左フロントをヒットしリタイアを決めている。
吉原はこれで負けなしのデビュー4連勝。「2SSになったり途中で雨が降ったり、イレギュラーなラリーでした。朝の天気予報を見てタイヤのチョイスを変更したのが、良い結果につながりました。グラベルラリーはターマックよりも好きなんですが、クルマの実績がないので、短い時間でしっかり準備したいです」と語っている。2位の村田は「変則的なスケジュールでリズムに乗りにくかったです。ドライビングの仕方もあるのか、今日はCVTの油温が上がりすぎてしまい、ペースを上げられませんでした」と、シーズン2戦目のラリーを振り返った。3位に入った水原は、「ロングステージの経験があまりなく、後半の下りセクションで上手くブレーキを使えなかったので、SS2ではずいぶん離されてしまいました。SS3はタイムダウンする中で、なんとか食いついていけました。次はカムイの予定です。グラベルは好きなので、優勝目指して頑張ります」と、次に向けて前向きなコメントを残した。

第7戦ラリーカムイは虻田郡ニセコ町を拠点とするグラベルラリー。7月3日〜4日にかけて、各6SSずつ、計12SSがSS距離106.38kmで行われる。2021年シーズンはこのカムイをスタートに、秋田、ラリー北海道とグラベルラリーが3戦続くスケジュール。得点係数(SS距離50km~100km未満で1.2、SS距離100km以上で1.5)がかかるため、チャンピオンシップを考えるうえでは落とせない3連戦となる。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 福永 修/齊田美早子 シュコダ・ファビアR5 45:37.8
2 JN1-2 柳澤宏至/保井隆宏 シュコダ・ファビアR5 45:43.3
3 JN1-3 鎌田卓麻/松本優一 SUBARU WRX STI 46:08.2
7 JN2-1 Heikki Kovalainen/北川紗衣 TOYOTA GT86 CS-R3 47:17.2
13 JN3-1 長崎雅志/秋田典昭 トヨタ86 49:50.3
14 JN4-1 西川真太郎/本橋貴司 スズキ・スイフトスポーツ 49:59.6
17 JN5-1 渡部哲成/橋本美咲 トヨタ・ヤリス 50:22.9
34 JN6-1 吉原將大/佐野元秀 トヨタ・ヤリス 52:43.4

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN1クラス優勝 福永修/齊田美早子

JN2クラス優勝 Heikki Kovalainen/北川紗衣

JN3クラス優勝 長崎雅志/秋田典昭

JN4クラス優勝 西川真太郎/本橋貴司

JN5クラス優勝 渡部哲成/橋本美咲

JN6クラス優勝 吉原將大/佐野元秀