総合1位(JN4クラス1位)奴田原文雄/佐藤忠宜

両雄が熾烈なバトルを展開
奴田原文雄が最終SSで逆転優勝!

開催日時:4月29~30日
開催場所:愛媛県久万高原町周辺
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離:58.67km
ラリー総距離:2デイ 210.19km
SS路面:グラベル(未舗装路)
SS路面状況:デイ1 ドライ、デイ2 ウエット
ポイント係数:1.5

ラリー概要

今季初のグラベルラリーとなる全日本ラリー選手権第2戦は、愛媛県久万高原町を舞台に開催された。ホストタウンの久万高原町は、松山市から南の標高800m付近に位置し、四国では比較的冷涼な気候のため「愛媛の軽井沢」とも呼ばれる高原地域だ。

今年の3月には、町の幹線道路の国道33号線最大の難所となる三坂峠を二つのトンネルと9本の橋でバイパスする三坂道路が開通し、走行時間の短縮だけではなく、冬期や大雨時の通行規制の減少、さらには今後の久万高原町の救急体制の充実や産業の振興などが見込まれ、地域の発展や活性化が期待される。

その久万高原町からさらに高い標高1300mに位置する美川スキー場を拠点とする久万高原ラリーは、降水量の多い四国山地特有の気象も重なり、SSのスタートでは晴れていてもフィニッシュでは雨いというケースも多い。今年もこの雨が、勝敗の行方に大きく影響したラリーとなった。

開幕戦よりも多い47台がエントリーリストに名を連ねた今年のラリーは全12本・計58.67kmのSSが設定され、デイ1・デイ2とも6本のSSを走るステージ構成となっている。

JN4クラス

デイ1は、7.94kmの林道を一気に下る「大谷支線」と、1.21kmのショートコースながらもターマックの上りとスキー場のゲレンデを下るグラベルのミックスサーフェイスの「美川スキー場」を3ループし、デイ2は9.06kmのダウンヒル林道「大野ヶ原線」と5.34kmのヒルクライム林道「西の川」、さらにデイ1でも使用した「美川スキー場」を2回ループする。デイ1の天候は晴れ、うって変わってデイ2は雨となったが、その雨も「美川スキー場」付近が最も強く降り、「大野ヶ原線」と「西の川」は場所によっては雲の間から晴れ間が覗くという複雑な天候となった。

SS1「大野ヶ原線1」では、ゼッケン1の勝田範彦とゼッケン2の奴田原文雄が砂利かき役となったJN4クラス。そのSS1では6番スタートの石田正史がベストタイム、3番スタートの柳澤宏至が2番手タイム、9番スタートの桑田幸典が3番手タイムをマークするが、砂利が掃けた2ループ目からは勝田と奴田原がスパート開始。3ループ目を終えた時点で勝田が総合トップ、柳澤が0.3秒差で2番手、奴田原がトップから4.6秒差で3番手、石田がトップから5秒差で4番手と、5秒の間に4人のドライバーがひしめき合うというオーダーでデイ1を終了した。

未明から降り出した雨が路面状況を一変させたデイ2は、勝田、柳澤、石田がドライタイヤを選択したのに対し、奴田原はウエットタイヤを選択。デイ2のSSはいずれもガレ場が多く、耐バースト性やタイヤの摩耗を考えるとどちらの選択が正解なのか判断に悩むところだが、最初のループのSS7「大野ヶ原線I」、SS8「西の川I」、SS9「スキー場IV」で奴田原が3連続ベストタイムをマーク。トータルでも勝田を0.1秒逆転し、遂にトップに躍り出た。

だが、奴田原の追い上げもここまで。逆転はしたものの、予想以上にステージでの雨量が少なかったことが影響し、奴田原の選択したウエットタイヤはすでに限界状態。雨がほとんどやんだ2ループ目のSS10「大野ヶ原線II」では、ドライタイヤを履く勝田が奴田原を6.3秒上回り、再びトップの座を奪い返した。

ここで勝負が決着したかに思われたが、実はこのSS10のゴール直前で勝田のエンジンにブーストが掛からなくなるというトラブルが発生。それでもSS11「西の川II」では奴田原に対し2.4秒遅れに抑え、トータルでは3.8秒差でトップを守りきり、最終SS「美川スキー場V」を迎える。

すでに手負いの状態だが、最後まで死力を尽くす勝田。一方の奴田原もSS11後のリエゾン区間でフロントタイヤ2本がスローパンクチャーに見舞われ、1ループ目に装着したユーズドのウエットタイヤを使用せざるを得ない状況だ。さらにタイヤ使用本数規定いっぱいまでタイヤを使用しているため、リアタイヤは2ループ目に入っても交換することはできない。

わずか1.21kmのショートSSだが、果たしてどちらが優勝を掴むのか、雨にも関わらず多くのギャラリーが見守る中、奴田原が渾身の走りでベストタイムを叩き出し、スピードが上がらない勝田を再逆転。死闘を繰り広げてきた両者の戦いは、奴田原に軍配が上がった。

一方、柳澤と石田の3位争いは、2ループ目のSS10で石田が痛恨のコースアウトで戦線離脱。柳澤が表彰台3位の座を掴んだ。

JN3クラス

JN3クラスは、かつての愛機でもあるBOOBOWカラーのブーンX4で出場してきた村田康介と、地元四国の宇田圭佑がデイ1で好勝負をみせた。だが、ウエット路面となったデイ2は、4WDの特性を生かした村田が本領を発揮し、2位との差を大きく広げ優勝を飾った。

一方、2位争いはSS9でドライブシャフトを破損した宇田が、その修復作業のためサービスアウト時間に間に合わず10秒のペナルティを受けポジションダウン。3番手に付けていた山口清司が順位をひとつ上げ、2位に入賞した。

JN2クラス

JN2クラスは、昨年の久万高原ラリーを制した増川智が今年も快走をみせ、デイ1終了時点で独走態勢となった。だが、デイ2のSS11でまさかのコースオフ。これで、デイ2に入り天野智之を逆転し2位に浮上していた高橋悟志が、JN2クラス移籍後初のクラス優勝を飾った。

JN1クラス

JN1クラスは、昨年の「ARKラリー洞爺」で全日本初優勝を飾った山口貴利が次々と好タイムをマークし優勝。「前回はタナボタだったけど、今回は競り勝っての優勝だけにうれしい」と、生涯2度目の全日本優勝を喜んだ。

総合結果

出走42台/完走32台

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN4-1 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN PIAAランサー 1:02:49.8
2 JN4-2 勝田範彦/足立さやか ラック名スバルSTI DLインプレッサ 1:02:51.1
3 JN4-3 柳澤宏至/中原祥雅 CUSCO ADVAN インプレッサ 1:03:35.3
4 JN4-4 桑田幸典/澤田耕一 DL IDI KYBランサー 1:04:24.6
5 JN4-5 杉村哲郎/立久井和子 itzz☆DL☆KYB☆WAKOS☆LFインプレッサ 1:05:03.1
6 JN4-6 小舘優貴/館山昌靖 NCRP-DL-インプレッサ 1:05:26.9
10 JN3-1 村田康介/平山真理 EXEDY☆DL☆BOOBOWブーンX4 1:08:21.6
11 JN2-1 高橋悟志/箕作裕子 ミツバWM DL ラックMgヴィッツ 1:09:04.9
24 JN1-1 山口貴利/山田真記子 BOOBOWストーリアX4 1:11:45.4

注)JN4クラスは3000ccを超える車両、JN3は1500ccを超え3000cc以下の車両、JN2は1400ccを超え1500cc以下の車両、JN1は1400cc以下の車両(過給器つき車両は排気量×1.7で換算)

参考総合結果表: 2012_rd02(Excel) 2012_rd02(PDF)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCAが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

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