RALLY HOKKAIDO

開催日時:9月18日(金)〜20日(日)
開催場所:北海道十勝地方
スペシャルステージ本数:17本
スペシャルステージ総距離:189.82km
ラリー総距離:741.66km
SS路面:グラベル
SS路面状況:レグ1/ウエット、レグ2/ドライ
ポイント係数:2.0

全日本ラリー第7戦「ラリー北海道」はレグ1を首位で折り返した奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX)がそのまま逃げ切り、今季初優勝を飾った。また、新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)が2位に入賞し、今シーズンのシリーズチャンピオンを獲得した。

ラリー概要

FIAアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)と併催して開催される「ラリー北海道」は、格式、規模、SS距離ともに国内最大規模を誇るラリーだ。今年も約189kmを超えるSSが設定されており、ポイント係数は「2.0」と通常の2倍のポイントが与えられる。名実ともに全日本ラリーの天王山となるグラベルラリーである。

ラリーは18日(金)夕方のセレモニアルスタートから始まり、直後に札内の特設ステージでスーパーSSが行われる。本格的なラリーがスタートする翌19日(土)には、金曜日のSS1と合わせて11SS(141.09km)が設定されている。23.49kmのヤムワッカ、28.75kmのクンネイワなど距離の長いハイスピードSSが多く、ラリーはデイ1からいきなり大きなヤマ場を迎える。金曜日の夕方から降り続く雨が勝負の行方にどのような影響を与えるかも注目された。

レグ1-A

シリーズポイント争いでトップを走る新井は、このラリーを2位以上でフィニッシュすればライバルの結果次第でシリーズチャンピオンを確定できる可能性がある。その新井は、雨が降り注ぐSS1でベストタイムをたたき出し、明日から本格的に始まる戦いに向け好スタートを切った。

一方、このラリーで19.7P以上を獲得すればシリーズチャンピオンが確定するJN5クラスの天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)は、トップから0.2秒差の2番手からスタート。トップは山口貴利/山田真記子(ダイハツ・ブーンX4)が奪った。

JN6クラス、JN5クラスと同様にこのラリーでチャンピオンが確定する可能性があるJN3クラスは、シリーズトップの岡田孝一/鶴田邦彦(マツダ・デミオ)が、JN2クラスは中西昌人/廣島真(スズキ・スイフトスポーツ)がトップタイムを奪っている。

レグ1-B

前日の夕方に降り出した雨が、本格的な雨に変わったレグ1-Bは、出走33台中19台がコースオフやマシントラブルでレグ離脱またはリタイアするというサバイバル戦となった。そのなか、陸別サーキットで行われたSS2でウエットタイヤを装着した奴田原がこのラリー初のベストタイムをマーク。その後も20kmを超えるロングステージのSS3、SS4でもベストタイムを連発し、SS4を終えた時点で2番手の鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)に1分04秒1もの大差を付けてトップに立った。

一方、シリーズチャンピオンを争う新井と勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)は、SS4を終えて勝田が3番手、新井が17.2秒差の4番手。先頭ゼッケンの新井は、路面の轍に溜まった雨水の“水かき役”となり、序盤戦で大きく出遅れてしまった。

その新井が、SS5のベストタイムを皮切りに、タイヤをウエット路面用に交換したSS6、SS8で次々とベストタイムをマーク。SS8では、それまで2番手に付けていた鎌田が電気系トラブルからリタイア、3番手の勝田がSSフィニッシュ手前約5kmでホイールが破損したために遅れたこともあり、新井が一気に2位まで浮上してくる。さらに勝田はSS9でこのラリー2回目のホイール破損。タイヤ交換に時間を要したため、一気に6位まで順位を落としてしまった。3位には、終日ドライタイヤを装着した炭山裕矢/保井隆宏(スバルWRX STI)が付けた。

JN5クラスは、激しく首位が入れ替わる展開となった。SS2では第4戦&第5戦のグラベル2連戦を連勝した関根正人/竹下紀子(三菱ミラージュ)がトップに立つが、SS3では関根と同じ三菱ミラージュの松倉拓郎/松倉英実がトップ、SS4では石田雅之/遠山裕美子(トヨタ86)と、SSを走り終えるたびにトップが入れ替わる。その後、SS4でトップに立った石田は、その後もSS8、9、10を連取して2位との差を2分48秒6と大きく広げるが、SS10でリヤデフを破損してしまったため、フィニッシュ後にリタイアとなってしまった。この石田のリタイアにより、トップに立ったのが、このラリーでシリーズチャンピオンの可能性がある天野だ。その天野を関根が追いかける展開となったが、関根はSS9で3速ギヤと4速ギヤを失ってしまったために、ペースが上がらない。一方の天野も、フロントの左右ブレーキローターが割れてしまい、さらにエンジンマウントのボルトが破損するなど満身創痍の状態だ。それでもトップを守りきり初日をトップで折り返すが、関根との差はわずかに8.3秒。天野も関根も初日の最終サービスでマシンを修復できており、2日目はさらに激しい戦いが展開されそうだ。

JN3クラスは、シリーズ2位の鷹野健太郎/尼子祥一(マツダ・デミオ)が、SS2のゴール手前の最終コーナーで転倒。シリーズトップの岡田が完走を果たせばシリーズチャンピオンが確定する状況となった。

JN2クラスは、このラリーを得意とする田中伸幸/藤田めぐみ(スズキ・スイフトスポーツ)がSS2でラジエターを破損してリタイア。シリーズ逆転チャンピオンの可能性があった中西もコースオフしてリタイアとなり、地元の若手ドライバー阿部敬珠/阿部祥吾(スズキ・スイフトスポーツ)が初日をトップで折り返した。

レグ2

前日までの雨がやみ、天候が回復したレグ2は、2位の新井に1分50秒3の差を付けた奴田原が、ベストタイムはターマックSSの1本のみながらも、前日に築いた大量リードに守られ、待望の今季初優勝とともに昨年に続きラリー北海道2連覇を飾った。また、レグ1を2位で折り返した新井は、レグ2オープニングとなるSS12でベストタイムをマーク。その後もこの日に設定された6SS中4本のSSでベストタイムを重ね、2位に入賞するとともにデイポイントトップを獲得。今回は6位に終わった勝田とのポイント差を広げ、自身としては1997年に初獲得以来18年ぶりとなる全日本ラリーシリーズチャンピオンを決めた。また、レグ1はタイヤ選択に苦しみながらも3位で折り返した炭山が、レグ2もポジションを守りきり入賞した。

現行車両と旧型車両の戦いとなったJN5クラスは、レグ1の中盤で3速ギヤと4速ギヤを失った関根が、レグ1の最終サービスでミッションを交換し完全修復。一方、フロントブレーキやエンジンマウントにトラブルが出た天野は、関根と同じくレグ1の最終サービスで修復作業を終えるものの、暫定仕様のままという状況だ。レグ2はその両車の差がはっきりと分かれた。レグ1の最終サービスでミッションを完全修復した関根が、オープニングのSS11でベストタイムをマークし、天野を逆転してクラストップに浮上。一方、天野はレグ2もブレーキトラブルに悩まされ2位でフィニッシュ。チャンピオン決定は次戦以降に持ち越されることになった。サバイバル戦となった3位には、全日本ラリー初出場の中村修/木村悟士(三菱ミラージュ)が入賞した。

リタイア車両が続出し、孤軍奮闘の戦いとなったJN3クラスの岡田とJN2クラスの阿部は、岡田が今季4勝目を挙げシリーズチャンピオンを獲得。JN2の阿部も最終SSまでしっかりと走り切り、全日本初優勝を飾った。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN6-1 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 2:04:53.4
2 JN6-2 新井敏弘/田中直哉 フジスバルアライモータースポーツWRX 2:06:20.7
3 JN6-3 炭山裕矢/保井隆宏 ADVAN CUSCO WRX-STI 2:09:19.2
7 JN5-1 関根正人/竹下紀子 GセキネンDL WM MOTUL ミラージュ 2:23:06.7
11 JN3-1 岡田孝一/鶴田邦彦 キーストーンナビゲーターDLデミオ 2:33:42.1
13 JN2-1 阿部敬珠/阿部祥吾 ISMFカーショップHIROスイフト 2:44:15.8

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: 2015_rd07(PDF) 2015_rd07(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2015年 全日本ラリー選手権 第7戦 北海道

イベントフォト

JN6クラス優勝 奴田原文雄/佐藤忠宜