第43回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2015

開催日時:10月16日(金)〜18日(日)
開催場所:岐阜県高山市
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離:87.84km
ラリー総距離:301.40km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.0

全日本ラリー第8戦「第43回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2015」は、初日に設定された6本のSS中5本のSSでベストタイムを重ねた新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)が逃げ切り、今季5勝目を飾った。

ラリー概要

今年で43回目の開催を迎えたラリーハイランドマスターズは、全日本ラリー選手権のなかで最も長い歴史を誇る伝統の1戦だ。かつては「カーブレイクラリー」と呼ばれるほどラリーカーの耐久性が求められたラリーも、近年はサーフェイスをグラベルからターマックに変え、0.1秒を争うスプリント要素の強いラリーとして開催されている。さらに今年は、かつての難ステージ「青屋」がターマック路面で復活。かつて激戦を繰り返したステージで、激しい首位争いが展開されることが期待された。

ラリーの拠点となるヘッドクオーターやサービスパークは、高山市南東部の道の駅・モンデウス飛騨高山に設置され、ギャラリーステージは舟山スノーリゾートアルコピアに開設された。駐車場を利用したギャラリーステージでは、ラリーショーやフォトセッションなども行われ、多くの観客が集まった。

デイ1

高く澄み渡った秋空のもとで行われたデイ1は、サービスを挟み3本の林道を2回ずつ走行する6SS(SS総距離42.22km)が設定された。SS1/4の「駄吉上り」は、山を一気に駆け上がるヒルクライム、ターマックになってからは初採用となるSS2/5「青屋下り」は山を一気に下るダウンヒル、ギャラリーステージが設定されたSS3/6はゆるやかなアップダウンコースとそれぞれキャラクターが異なるが、いずれもタイトなコーナーが連続するテクニカルステージだ。

SS1で優勝候補の福永修/鈴木裕(三菱ランサーエボリューションⅩ)がコースアウトするという波乱の展開となった序盤は、第7戦「ラリー北海道」でJN6クラスのチャンピオンを確定させた新井がSS1からSS3までベストタイムを連取。リピートステージのSS4、SS5でもベストタイムを重ね、トップを快走した。デイ2のステージを考慮してタイヤの使用本数を4本に抑えた新井は、SS6で「さすがにタイヤ摩耗が厳しかった」とベストタイムを3位の奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションⅩ)に奪われるものの、2位で終えた勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)に対し11.4秒の差を付け、トップの座を一度も譲ることなく初日を折り返した。

一方、昨年はすべてのSSでベストタイムを刻み完全勝利を遂げた勝田は、ツイスティなステージにマシンセッティングが合わず苦戦。SS3はロアアームを曲げタイムが伸びない奴田原を捉え2位に浮上するものの、新井の独走を許してしまった。勝田は初日最初のサービスでスタビライザーを交換、最終サービスではサスペンションスプリングを交換し、2日目の巻き返しを図る。

JN5クラスは、このラリーでシリーズ2位の関根正人/竹下紀子(三菱ミラージュ)が4位以下となり、眞貝知志/漆戸あゆみ(アバルト500ラリーR3T)が優勝を逃した場合、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)が2位以上でチャンピオン確定となる。その天野だが、「ブレーキとパワーステアリングのフィーリングが変化してしまう」という症状を訴え、初日トップを上原利宏/佐瀬拓野(ホンダ・シビックタイプR)に奪われてしまう。さらに、SS5では僅差の勝負と繰り返していた寺島信也/関根慎二(ホンダ・インテグラタイプR)の逆転を許し、初日を3位で折り返した。一方、関根はSS4で電動ファンにトラブルが生じオーバーヒート状態となり5位。眞貝はSS2でブレーキにトラブルを抱えデイリタイアとなっている。また、山口清司/山本磨美(トヨタ86)が天野と同タイムで3位に付け、2日目に上位進出を狙う。

JN4クラスは、横尾芳則/渡邊晴子(トヨタ86)、シリーズランキング2位の番場彬/加勢直毅(トヨタ86)、シリーズランキングトップの石川昌平/石川恭啓(スバルBRZ)による三つ巴の戦いとなった。0.1秒を争う展開が続くなか、3本のSSを奪った横尾がトップ、2ループ目からペースを上げてきた番場が1.3秒差の2位、SS6で土手にヒットしてタイムを落とした石川がトップから4.5秒差の3位という僅差の勝負となった。

JN3クラスは、第7戦「ラリー北海道」で自身初となるチャンピオンを確定した岡田孝一/鶴田邦彦(マツダ・デミオ)がこのラリーでも快走をみせ、2位の島田章/内藤雄樹(マツダ・デミオ)に30秒以上の差を付け、デイ1を折り返した。

JN2クラスは、シリーズ4位の鈴木尚/山岸典将(スズキ・スイフトスポーツ)が、ポイントリーダーの高橋悟志/箕作裕子(トヨタ・ヴィッツ)に1分以上の大差を付ける激走をみせ、初日トップの座を奪った。一方、高橋もチャンピオン確定に向け2位で初日を折り返すが、中井育真/佐土原慶一(マツダ・デミオ)が12.7秒差の3位につけた。

デイ2

前日と同様に爽やかな秋空が広がったデイ2は、初日と同じくサービスを挟み3本の林道を2回ループする設定だ。デイ1で使用した林道の逆走と、デイ1では使用していない林道で構成されたステージは、デイ1よりもアップダウンが少ないものの、タイトコーナーが連続するツイスティなコースであることには変わりがない。

デイ2オープニングのSS7は、初日の最終サービスでサスペンションセッティングを変更した勝田がベストタイムを叩き出し、追い上げを図る。一方の新井もSS8でベストタイムを奪い応酬するが、サービスでアライメント調整を失敗し、SS10、11で大幅タイムダウン。SS11を終えた時点で勝田が1.7秒差にまで迫ってくる。ここで新井は、リエゾン区間で自らアライメントの再調整を行い、最終SSでフルアタックをかける。その結果、勝田とのタイム差を3.8秒に広げることに成功。勝田の逆転を許さず、今季5勝目を挙げた。

JN5クラスは、デイ2オープニングのSS7から大波乱の展開となった。このSSで初日トップの上原と初日2位の寺島の2台が、スタートから約1.5km先のコーナーでリタイア。トップは、初日3位の山口に変わる。ここから初日3位を分けた天野との攻防となるが、山口が6.2秒差で逃げ切り今季初優勝を飾った。また、天野とシリーズチャンピオンを争う関根が3位となったため、2位に入賞した天野が有効ポイント差で今シーズンのタイトルを確定した。

JN4クラスは、デイ2オープニングのSS7で初日2位の番場がトップに立つものの、SS8で初日トップの横尾が再逆転。その後、横尾は2位とのタイム差を引き離し、今季2勝目を挙げた。また、番場が2位でフィニッシュするものの、タイヤの摩耗が激しくスリップサインの出た状態となっていたため、規定により失格の裁定が下された。そのため、2位には小濱勇希/馬場雄一(スバルBRZ)が、3位には佐藤隆行/味村寛(スバルBRZ)がそれぞれ繰り上がり入賞した。初日3位の石川は、最終SSでホイールを破損したために5位にポジションダウン。その結果、JN4クラスのシリーズチャンピオン確定は、最終戦「新城ラリー」に持ち越しとなった。

JN3クラスは、初日のリードを生かした岡田がそのまま逃げ切り優勝し、今季5勝目を獲得。2位にはベテランの島田、3位には藤田幸弘/藤田彩子(マツダ・デミオ)がそれぞれ入賞した。

JN2クラスも、初日に1分以上のタイム差を築き上げた鈴木がデイ2のステージを快走。2日間合わせて全SSを制覇する速さで、全日本初優勝を飾った。また、2位にはシリーズランキングトップの高橋が入賞し、高橋にとっては2007年以来となるシリーズチャンピオンを確定した。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN6-1 新井敏弘/田中直哉 フジスバルアライモータースポーツWRX 1:05:41.5
2 JN6-2 勝田範彦/石田裕一 ラックSTI 名古屋スバル DL WRX 1:05:45.3
3 JN6-3 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 1:06:02.0
7 JN4-1 横尾芳則/渡邉晴子 諏訪姫PLUMレーシングBS86 1:09:58.1
9 JN5-1 山口清司/山本磨美 jmsADVANエナペタル久與86 1:10:36.4
20 JN2-1 鈴木 尚/山岸典将 スマッシュDLitzzコマツスイフト 1:14:09.1
22 JN3-1 岡田孝一/鶴田邦彦 キーストーンナビゲーターDLデミオ 1:14:15.2

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: 2015_rd08(PDF) 2015_rd08(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2015年 全日本ラリー選手権 第8戦 高山

イベントフォト

JN6クラス優勝 新井敏弘/田中直哉