Rally of Tsumagoi

開催日時:2月2日(木)〜5日(日)
開催場所:群馬県嬬恋村
スペシャルステージ本数:20本
スペシャルステージ総距離:86.326km
ラリー総距離:410.754km
SS路面:スノー&アイス&ターマック
SS路面状況:スノー/アイス
ポイント係数:1.0

全日本ラリー選手権開幕戦「Rally of Tsumagoi」が2月2日(木)〜5日(日)の日程で行われた。JN6クラスについては競技会の決定事項に対する異議で、JAFモータースポーツ審査委員会への控訴となったため、正式結果は発表されていない。また、JN4クラスは参加がなかったためクラス不成立となった。JN5クラスは、参加が2台だったため選手権としては成立していない。JN3クラスはSS1から一度もクラス首位を譲ることなく、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツRS)が優勝。JN2クラスでは猪股寿洋/大野靖春(トヨタ86)が全日本初優勝を飾った。

デイ1

ラリーは2月3日の金曜日18時からスタートし、ナイトステージ5SS、SS距離20.129kmを走行するチャレンジングな設定。午前中から午後にかけてはこの時期としては比較的暖かな天候だったが、日が暮れるとともに気温はマイナス5℃付近まで低下。雪が溶け、日中は濡れたアスファルトが露出していた路面が一気にアイスバーンとなり、雪と氷に覆われた難しいコンディションとなった。

JN6クラスは前年度のチャンピオン勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)と、カラーリングを一新した鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)のシーソーゲームとなった。SS1を制したのは鎌田。SS2番手の勝田に対して1秒差をつけるが、続くSS2では勝田がベストタイム。鎌田に0.4秒差の総合首位に躍り出る。SS3では再び鎌田が一番時計をたたき出し、再び総合首位に。このSSで3番手タイムの勝田は総合タイムの差を1.9秒に拡げられてしまった。

このSS3でSS2番手タイムを記録したのは新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)。過去何度もこのラリーで好成績を収めており、優勝候補筆頭と見られていたが、タイヤが路面コンディションにマッチせず苦戦を強いられている。

続くSS4、勝田はベストタイムをマークするが、鎌田も0.4秒差の2番手タイムで食い下がり、総合順位は依然として鎌田がリード。この日最後となるSS5では勝田が渾身の連続ベストタイムを決め、1.5秒差をひっくり返した。SS2番手の鎌田は総合タイムで勝田に0.3秒差をつけられ2番手となっている。総合首位の勝田と総合3番手の新井の差が24.5秒差、総合4番手の奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションIX)の差が28.6秒となり、2日目もミスが許されないシビアな戦いが展開されそうだ。

JN3クラスは昨年度チャンピオンの天野が唐釜真一郎/新井祐一(マツダ・デミオ)に36.2秒差をつける快走を見せている。

トヨタ86勢同士の争いとなったJN2クラスは、SS2まで猪股寿洋/大野靖春と山本悠太/藤田めぐみが僅差の勝負を展開したが、SS3で山本がスピンを喫しスタック。猪股が山本に3分以上の差をつけ首位に立っている。

JN1クラスは天野浩明/羽琉(トヨタ・ヴィッツ)がSS1から3連続ベストを奪取する快走を見せ、2位の三苫和義/小林剛(ホンダ・フィット)に43.7秒差をつけてトップに立っている。

デイ2

この日はSS6〜SS13の計8SS、SS距離29.589kmが舞台となる。注目は0.3秒という僅差でスタートした首位勝田と2番手鎌田のバトルだ。ところが、鎌田はオープニングのSS6でスピンを喫してしまいタイムロス。15秒ほどを失い、勝田との差は総合で18.1秒に広がってしまった。3番手の新井との差は15秒あり、なんとか順位を守りつつ逆転のチャンスを探りたいところだ。

続くSS7でベストタイムを獲得して追い上げを図る鎌田は、SS8でエンジンを止めてしまいストップ。さらにエンジン再始動に手間取り、新井の逆転を許し順位を3番手に下げてしまった。午前中4本のSSを終えた段階で、トップ3は勝田、新井、鎌田。勝田と新井は37.9秒差、新井と鎌田はわずか0.3秒の接戦となっている。鎌田の後方11.3秒では、4番手の奴田原が虎視眈々と上位を狙っている。

各選手ともサービスパークでの選手紹介セレモニーを経て、午後のステージへ。気温が+5℃付近まで上昇し、日当たりのよい箇所ではアイスバーンが融けシャーベット状態となり、午前中よりもさらに難しいコンディションとなった。

トップの座を固める勝田に対し、0.1秒を争う激戦を展開する新井と勝田は、SS10では鎌田が新井のタイムを0.4秒上まわり、トータル0.1秒差で2番手に浮上。さらなるスクラッチバトルが展開されるかと思われたが、鎌田は続くSS11、SS12、この日最後となるSS13を3連続ベストタイムで新井との差を6.2秒にまで拡大することに成功した。首位の勝田も好タイムを連ね、2日目を終えて2番手の鎌田に34.1秒、3番手の新井に対しては40.3秒のマージンを築いている。

JN3クラスは前日から首位をひた走る天野が5度のベストタイムをたたき出し、クラス2番手の唐釜との差を1分25秒にまで拡大している。

JN2クラスは、猪股がクラストップを堅持。山本は5本のSSをクラスベストタイムで走行するものの、依然としてその差は3分22秒と大きく開いている。また、クラス3番手を走行していた西川真太郎/根本雅人はSS8でリタイアとなった。

JN1クラスは天野が2位に4分29秒の差をつけトップを堅持している。

デイ3

この日行われたのはSS14〜SS20の計7SS。SS距離は3日間で最長の36.608kmとなる。デイ1からデイ2にかけて晴天に恵まれた今回のラリーだが、デイ3は早朝から厚い雲が空を覆い、午後からは各ステージで雪が降り始めるという難しいコンディションでの戦いとなった。注目は2番手の鎌田と、それを6.2秒差で追いかける新井のバトルだが、その争いは思わぬかたちで決着することとなった。オープニングのSS14、ラリー最長の7.355kmでベストタイムを刻んだのは鎌田だ。SS4番手の新井に14.4秒差をつけて、総合でのタイム差を20.6秒とした。追いかけたい新井だが、続くSS15で雪壁にヒットしパンク。「雪の中に何か固いものがあったみたいで、それを踏んでしまった」と言う新井は大きくタイムロスを喫してしまい、奴田原にかわされ4番手にドロップしてしまった。

新井はサービスをはさんだSS17で3番手に返り咲くも、このSSで5速ギヤを失ってしまい苦しい状況に。続くS18は、通常であれば5速に入る高速セクションを4速のまま攻め続る渾身の走りをみせるものの、フィニッシュ手前でエンジントラブルに見舞われ万事休す。このSSを3番手タイムでフィニッシュラインを通過するものの、その後走行不能状態となり、ここでラリーを諦めなければならない結果となった。

SS19は天候不順およびコースコンディションの悪化によりキャンセルとなり、最終SSとなるSS20も上位陣に大きな順位変動は起きず。勝田ー鎌田ー奴田原というオーダーでフィニッシュするものの、上位入賞車に対し、競技会の決定事項に対する異議が提出され、この抗議がJAFモータースポーツ審査委員会への控訴となったため、正式な順位は現段階で確定していない。

JN3クラスは、SS1から一度もクラス首位を譲ることなく、天野が優勝。「とりあえず、クルマを雪壁にぶつけないということが今回のテーマでした。その中でタイム差をしっかりとつけられたのは大きかったと思います。デフのセッティングも良い方向が見つかったし、収穫の多いラリーでした」という天野は、3日間のデイポイントを含めフルポイントを獲得。幸先の良いシーズン開幕戦となった。クラス2位には「練習不足やセッティングが今ひとつでした。悔しいラリーでしたね」と語る唐釜が入賞、クラス3位は、若手の渡部哲成/松浦俊朗(マツダ・デミオ)がクラス3番手を守り切り最終SSをフィニッシュするものの、その後コースオフしてしまいストップ。オフィシャルに救出され脱出するものの、スーパーラリー規定によりペナルティを受け4位に転落。南野保/ポール・サント(マツダ・デミオ)が最後の最後に表彰台3位を獲得する結果となった。

JN2クラスは、2番手で追っていた山本がSS14でコースオフによりリタイアしてしまう。同じSSでトップの猪股もあわやリタイアというスピンアウトを喫するが、こちらは自力でコースに復帰。バック状態のまま残り約300mを走りきり、全日本初優勝となった。

三苫と天野の一騎打ちとなったJN1クラスは、この日の序盤2SSで天野が三苫を上回るタイムで追い上げをはかるが、残るSSを三苫が制し優勝を果たした。

1台のみのエントリーのためクラス不成立となったJN5クラスは、3日間ともエンジン不調に悩まされた能戸知徳/田中一弘が最後まで諦めずに完走を果たした。

次戦は4月7日(金)〜9日(日)に佐賀県唐津市で開催される第2戦「ツール・ド・九州2017 in 唐津」。勝田がこれまで11連勝という圧倒的な戦績を誇るターマックラリーに、ライバルたちがどう立ち向かうか注目だ。

(RALLY PLUS)

総合結果

クラス 順位 ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
JN5 1 能戸知徳/田中一弘 TEAM JAOS PEUGEOT 1:24:49.0
JN3 1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツRS 1:17:50.3
JN2 1 猪股寿洋/大野靖春 WAKOS☆PIAA☆BRIG☆YH86 1:24:51.0
JN1 1 三苫和義/小林剛 Oside1 DL TGレイズWMフィット3 1:35:29.3

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2017年 全日本ラリー選手権 第1戦 嬬恋

イベントフォト

JN3クラス優勝 天野智之/井上裕紀子