久万高原ラリー Supported by Sammy
開催日時:4月28日(金)〜30日(日)
開催場所:愛媛県久万高原町
スペシャルステージ本数:8本
スペシャルステージ総距離:107.70km
ラリー総距離:261.72km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.2
全日本ラリー選手権第3戦「久万高原ラリー Supported by Sammy」が4月29日(土)〜30日(日)の日程で開催され、初日序盤から首位に立った奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションⅩ)が今季初勝利を挙げた。
日本三大カルストのひとつ、四国カルスト周辺の山々を舞台に争われる久万高原ラリーは、今年初めて久万高原町役場でセレモニアルスタートを開催。GW初日ということで、旅行に訪れていた人や地元の人々が、戦いに臨む選手たちを見送った。ラリーの拠点は、このラリーではおなじみとなる美川スポーツランド(旧美川スキー場)。初日は14.48kmと14.40kmのSSを2回ずつ走行する4SSというシンプルな設定だ。1本のSS距離が長いため、タイヤの摩耗やブレーキはもちろん、マシン各部への連続走行によるトラブルや、標高1500m級の高地ゆえのエンジンパワー低下の影響など、高原ならではの様々な要素がラリーに影響を及ぼした。
デイ1
今年のラリーは、初日にして多くの選手が脱落する波乱の展開となった。JN6クラスでは、SS1でトップゼッケンの勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)がターボトラブルによりデイリタイア。さらにSS1で2番手タイムをマークした福永修/齊田美早子(三菱ランサーエボリューションX)がミッショントラブルでデイリタイアとなり、新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)は原因不明のエンジン不調に加えてSS4ではコース上の石でパンクを喫し、上位陣が続々脱落してしまった。
波乱の展開となったデイ1で、トップを快走したのが奴田原だ。奴田原は初日のすべてのSSでライバルを5秒以上引き離すトップタイムを連取。自身もリヤデフトラブルに見舞われながらも、デイ1を終えて1分8秒6もの大量リードを手にした。2番手にはスバルWRX STI最上位の竹内源樹/加勢直毅、3番手には徳尾慶太郎/枝光展義(三菱ランサーエボリューションX)、以下4番手に村瀬太/宮部弘陽(三菱ランサーエボリューションX)、5番手に新井という順位となっている。
その他のクラスでも、トップと2番手以下の差が大きく開いた。小濱勇希/馬場雄一と川名賢/保井隆宏のシトロエンDS3 R3-MAX同士による対決となったJN5クラスは、前戦唐津ラウンドを制した小濱が初日をリード。JN4クラスは曽根崇仁/桝谷知彦(トヨタ86)、JN3クラスは天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)、JN2クラスは明治慎太郎/北田稔(トヨタ86)が、2番手を数十秒以上引き離している。
また、JN1クラスは前戦唐津で終盤まで熾烈なトップ争いを展開した古川寛/池田孝之(スズキ・スイフトスポーツ)が首位に立つも、須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)が7.2秒差に迫る接戦。さらに、須藤から28.3秒差の3番手には第2戦唐津を制した小川剛/佐々木裕一(ホンダ・フィット)がつけている。
デイ2
最終日となる2日目は、今回のラリーで最長となる23.85kmのターマックSSと、グラベル部分を含む1.12kmのギャラリーステージを2回ずつ走行する4SSが設定されている。SSの本数は少ないながらも、大差が生まれやすいロングステージと、短距離ながらもターマックセッティングのままで走行しなければならないグラベルステージという設定に加え、最終SSには各クラス優勝者に賞金が授与される「Sammy SS」という賞典が設定され、最後まで気の抜けない1日となった。
奴田原が初日の4SSすべてを制して大量リードを築いたJN6クラスは、2日目も奴田原が2カ所のショートSSでベストタイムをマークし、最終的には後続に2分以上もの大差をつけて独走。2日間ともデイポイントトップのフルポイントを獲得し、今季初優勝を飾った。奴田原は、「優勝できて良かったです。長くタフなラリーでした」とハードなラリーを振り返るとともに、「中盤戦には得意のグラベルラリーもあるので、次のターマックラリーも頑張ります」と、次戦以降に向けての抱負を語った。
また、初日はエンジン不調とパンクで順位を落とした新井が、2日目に猛チャージを見せた。この日を初日2番手の竹内から48.8秒遅れ、3番手の徳尾から29.3秒遅れの5番手でスタートした新井は、オープニングのSS5でベストタイムを獲得。このSSで、2番手の竹内がパンクにより大きく脱落したために、新井が3番手に順位を上げるとともに、2番手に浮上した徳尾との差を12秒まで縮めてくる。さらに、ロングステージのSS7で徳尾を21.6秒上まわるタイムをマークし、ついに逆転。初日は表彰台獲得が難しい展開となったラリーで貴重な2位を獲得した。3位には「なんとか新井さんからポジションを守ろうとしたけど、願掛けが足りなかった」と悔しがる徳尾が、2007年最終戦新城ラウンド以来となる、自身最高位タイの3位を獲得した。2日目にターボトラブルから復調した勝田は、「まだいまいち踏み切れない」としながらも、ロングステージでベストタイムを刻むなどしてデイポイント1点を獲得している。
JN6クラスを上まわる大荒れの展開となったのがJN1クラスだ。初日トップの古川が、2カ所のロングステージで須藤を大きく上まわり、その差を拡大。「自分の地区(九州)以外の全日本で勝てたことは本当に大きい」と、全日本ラリー初優勝を成し遂げた。2位には須藤が入り、このまま終わるかと思われたSS7でドラマは起きた。なんと、単独3番手を走行していた小川、激しい順位争いを展開していた4番手の松原久/和田善明(マツダ・デミオ15MB)と5番手の三苫和義/小林剛(ホンダ・フィット)の3クルーが相次いでこのステージでリタイア。6番手を走行していた伊藤隆晃/大高徹也(日産ノートNISMO S)が「ラリーは最後まで分からない。諦めずに走っていて良かった」と3位に浮上し、今季初表彰台を獲得した。
小濱vs川名の対決となったJN5クラスは、初日の勢いをそのままに小濱が第2戦に続き連勝。「長いステージもでトラブルなく安定していたので、気持ち良く走れました。路面コンディションがこのクルマとタイヤにばっちりマッチしたのが良かった」と勝因を語った。2本のショートSSでベストタイムを奪い2位となった川名は「まだ色々とやらなければならないことがある」と次戦に向けて気を引き締めた。
トヨタ86が上位を占めるJN4クラスは、ロングステージを制した曽根が唐津に続いて2連勝。唐津ではリタイアに終わった山口清司/山本磨美(トヨタ86)が2位、SS6でベストタイムをマークした香川秀樹/漆戸あゆみ(ホンダ・シビックタイプR)が3位表彰台に食い込んだ。
JN3クラスは、「セッティングを変えたのがいい方向に行った」という天野が、独走のままフィニッシュ。前戦唐津に続いて2位にはCVTヴィッツを駆る大倉聡/豊田耕司が入賞、3位には若手の内藤学武/小藤桂一(マツダ・デミオ)が3入賞した。
JN2クラスは、初日トップの明治が逃げ切り2勝目をマーク。昨年のJN1クラスを制した鈴木尚/島津雅彦は、スバルBRZを投入してクラス2位で完走を果たした。
(RALLY PLUS)
総合結果
順位 | クラス | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | JN6-1 | 奴田原文雄/佐藤忠宜 | ADVAN-PIAAランサー | 1:25:04.4 |
2 | JN6-2 | 新井敏弘/田中直哉 | 富士スバルアライモータースポーツWRX | 1:27:04.7 |
3 | JN6-3 | 徳尾慶太郎/枝光展義 | クスコDLitzzフォルテックランサー | 1:27:20.4 |
6 | JN5-1 | 小濱勇希/馬場雄一 | KYB DUNLOP DS3R3 MAX | 1:28:27.5 |
7 | JN4-1 | 曽根崇仁/桝谷知彦 | P.MU☆DL☆SPM☆INGING86 | 1:29:21.7 |
8 | JN3-1 | 天野智之/井上裕紀子 | 豊田自動織機・DL・ヴィッツRS | 1:30:45.3 |
11 | JN2-1 | 明治慎太郎/北田 稔 | YHGd高崎くす子86 | 1:31:49.2 |
14 | JN1-1 | 古川 寛/池田孝之 | スマッシュDLスノコitzzスイフト | 1:33:17.6 |
注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。
参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。