ツール・ド・九州2020 in 唐津

開催日時:11月27日(金)〜28日(土)
開催場所:佐賀県唐津市
スペシャルステージ本数:11本
スペシャルステージ総距離:72.56km
ラリー総距離:304.64km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.0

全日本ラリー選手権第3戦ツール・ド・九州2020 in 唐津は、11月28日(土)の競技初日を終えて、スバルWRX STIの新井大輝/小坂典嵩がJN1クラス優勝、自身初のシリーズチャンピオンを決めた。2位には三菱ランサーエボリューションの奴田原文雄/佐藤忠宜、3位はスバルWRX STIの勝田範彦/石田裕一という順位となった。注目を集めたトヨタGRヤリスは、クスコ・レーシングの柳沢宏至/保井隆宏が5位に入っている。

新型コロナウイルスの影響で当初の4月開催から大きく遅れた今大会は、2020年シーズンの最終戦。大会スケジュールそのものも、27日金曜日の午前中にレッキを行い、午後にはスタートする変則的なものとなった。初日は2SS、2日目に9SSを走る、計11SSが戦いの舞台だ。季節が4月から11月に変更になったことによって、一部のステージでは落ち葉や枯れ木が多いコンディションとなっていたほか、初日のSS2は日没後の走行となる点など、これまでにない難しさをもつラリーとなった。さらに、タイヤへの攻撃性が高いとされる唐津の路面で、使うことのできる6本のタイヤをどのようにマネージメントするのかという点も、難易度を上げるひとつの要因となる。

また、今回のラリーには、注目の新車であるGRヤリスが4台登場した。オフィシャルカーとして2台、コースの安全を確認する00カーと0カーが走り、競技車両としてはクスコ・レーシングとオサムファクトリーの2台が初の全日本ラリーに挑んだ。00カーと0カーはTOYOTA GAZOO Racingの全日本ラリーチームがメンテナンスを担当。00カーは豊岡悟志/足立さやか、0カーには眞貝知志/安藤裕一が乗り込む。クスコ・レーシングは柳沢宏至/保井隆宏、オサムファクトリーは福永修/齊田美早子がドライブ。JN1クラスでスバルWRX STIや三菱ランサーエボリューションを相手に戦うこととなる。

レグ1

JN1クラスのチャンピオンは、ランキング首位の新井大輝から4番手の新井敏弘まで、4人によって争われる。新井大輝は優勝すれば、2日目のレグポイントに関係なくチャンピオンが確定する状況だ。15時00分、サービスパークの置かれるボートレースからつ駐車場から、カーナンバー1をつけた新井大輝がスタート。オープニングステージとなるSS1では、ランキング2番手の奴田原がベストタイムをマークして機先を制することに成功した。ナイトステージとなったSS2では、トラブルなどで今シーズン波に乗り切れていない勝田が一番時計。僅差ながら、2006年から12年連続で唐津を制したスピードは伊達ではないことを示してみせた。
この結果、首位奴田原、4.2秒差の2番手で新井大輝、3番手に勝田というトップ3が形成された。その後ろには鎌田卓麻/鈴木裕、新井敏弘/田中直哉、そして福永が続く。注目のGRヤリス勢は両車ともノーマルに近く、各種パーツやセッティングなど、ラリーカーとしての熟成はまだまだこれからといった印象だが、「第一歩を踏み出せたことに意味がある」と福永が語るとおり、先陣を切って実戦投入をした両チームにとっては今後大きなアドバンテージとなるはずだ。

ドライバーチャンピオン候補が2名に絞られたJN2クラスは、トヨタGT86 CS-R3を駆る中平勝也/行徳聡、トヨタ・ヴィッツGRMNの中村英一/大矢啓太、ホンダ・シビック・タイプRユーロの上原淳/漆戸あゆみがエントリー。この日を終えてトップは中平、1.8秒の僅差で上原、上原から約20秒離れて中村というオーダーとなった。
首位の中平は「淡々とチャンピオンに向かって走るだけなので、リスクを避けて走っています。抑えすぎると逆に危ないので、今くらいのペースを刻みたいですね。落ち葉は多いですが、グリップがないわけではなく、走りやすいです。チャンピオンを獲りにきているので、とにかく現状キープですね」とコメント。2番手は、前戦ラリー北海道でのリタイアで自身のチャンピオン獲得の可能性が潰えてしまった上原。「久々に真っ暗な中のSSを走りましたが、ラリーをしているという実感があって楽しかったです。でも、暗いからオジさんたちは軒並みタイムを落としていますね(笑)。見えていても、スピード感覚が一段下がっている印象です。明日は新しいステージもありますし、うちのナビにチャンピオンの目があるので頑張ります」と、初日を振り返った。

トヨタ86とスバルBRZが鎬を削るJN3クラスは、竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ)を筆頭に、5クルーにチャンピオン獲得の可能性が残されている激戦区。SS1は曽根崇仁/竹原静香(トヨタ86)が制したが、SS2は山本悠太/山本磨美(トヨタ86)がベストタイムをマークし、クラストップに立った。
山本は「今回のラリーでは、初日のSS『SANPOU』がキモだと思っていたので、ここでしっかり攻めてタイムを出すことができたので良かったです。ターマックラリーのナイトステージは僕自身初めてなんです。汚れている部分が今ひとつ見えにくいんだなと。明日もしっかり走って、デイポイントも狙っていきたいです」と、手応えを感じた様子。2番手の山口は、「久々のラリーで、最初はペースが上がらずクルマに人が付いていけていませんでした。暗くなると落ち葉の影響もあり、かなり走りにくいですね。明日はコースも変わるので、セッティングを変えてトップを狙えるようペースを上げていきます」と展望を語った。選手権首位の竹内は3番手。「今日はセットアップ的にもチャレンジングな仕様で行ったんですが、いいところと悪いところが、しっかり分かりました。まだ勝負権もあるところにいますので、悪くなかったと思います。できればトップにいたかったんですけどね。明日はしっかりデイポイントまで狙い、チャンピオンも狙っていきます」と意気込みを語った。

JN4クラスはスズキ・スイフトスポーツ同士のバトル。ドライバーズチャンピオン争いはランキングトップの古川寛が絶対的に有利で、4点獲得すれば自力優勝という状況だ。ところがその古川は、SS1で岩にヒットしロワアームを破損。大きく出遅れてしまい、初日をクラス8位、総合47番手まで順位を落とすこととなってしまった。一方トップは、最初の2SSを連続ベストタイムでまとめた高橋悟志/立久井和子。2番手には須藤浩志/新井正和、3番手には地元の黒原康仁/川原愛がつけた。
SS1では総合6番手と、4WDターボ勢に割って入るスピードを見せた高橋。「上手くいきました。タイヤの良い時に勝負をかけるのがポイントかなと。タイヤも6本しかないので、温存するにしても、1本目のあとに考えようと思っていました。何度も走っているところですし、明日もこのまま逃げ切りたいです」と、自信を覗かせた。2番手の須藤は「クルマを舗装用に仕上げてきました。高橋選手には届かなかったんですが、かろうじて2番手集団では勝てましたね(笑)。フィーリングはいいので、このまま2位をキープしたいです」とコメント。3番手の黒原は、「SS1の最後にマシントラブルが出て、エンジンが吹け上がらなくなりました。SS2は全然ブーストも掛からず走ったんですが、3番手で自分でびっくりしています。マシンをしっかり直して、これ以上落ちないように、上を狙っていきます」とのこと。背後に迫る西川真太郎/原田晃一と2.3秒差で最終日に臨む。

JN5クラスのチャンピオン争いは大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)と天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR SPORT)の一騎打ち。同点のため、1点でも上まわった方がチャンピオンという状況だが、このクラスでも波乱が待っていた。SS1ではスタート直後に大倉のマシンにトラブルが発生。後ろからスタートした天野が追いつき、SS1だけで1分近いマージンを稼ぎ出すことに成功した。クラストップはヤリスのセッティングを煮詰めてきた小濱勇希/東駿吾。2番手にマツダ・デミオの岡田孝一/石田一輝。3番手に天野という順位となっている。
首位の小濱は、「ヤリスはセットアップを中心にチームがアップデートしてくれたので、それがしっかり効果を見せてくれた感じです。天野選手や大倉選手は明日、本来のスピードを取り戻すと思うので、彼らに負けないよう全開で行くだけです」と、力強くコメント。「老体には暗闇とツイスティなステージは厳しいです」と、冗談交じりに語るのは2番手の岡田。「小濱選手は速くて、コンマ1秒の隙もできないですね。クルマはセッティングを変えて、すごく乗りやすかったです。タイヤはちょっと失敗してしまいましたが、明日も前を追ってプッシュします」と笑顔を見せた。3番手の天野は、「大倉選手がトラブったので、チャンピオン争いは楽な展開になりました。明日は50kmもあるので、マージンをうまくつかっていきたいです。大倉選手より上でフィニッシュすることが重要なので、しっかりタイトルを決めにいきたいです」と、気持ちを引き締めた。

前戦ラリー北海道でチャンピオンを決めた明治慎太郎がオープンクラスでの参戦となったため、勝負の行方に注目が集まるJN6クラスは、海老原孝敬/遠藤彰(トヨタ・アクア)がリードを築き首位。2番手には水原亜利沙/高橋芙悠(トヨタ・ヤリスCVT)、3番手には山北研二/糸永敦(日産マーチ)という順位になった。
首位の海老原は、「ずっとスピードが乗らない道で、ブレーキを踏まずに走れたのでクルマに合っていたんだと思います。明日はスピードレンジが上がるので、置いてかれないように頑張ります。京都と真逆のセッティングにしたらすごく良かったので、そのまま行こうと思っています」とコメント。42秒差の2番手につける水原は「SS1から頑張ったんですが、アクアに差をつけられてしまいましたね。ヤリスはクルマが軽いので、ハイスピードもツイスティも得意なはずなんですが、私自身はハイスピードがやっぱり得意ですね。明日は違う特徴のステージになるので、クルマのセッティングを少し変えて、動画を見返してまた頑張ります」と、翌日の追い上げを誓う。3番手の山北は「ノーマルショック、ノーマルパッド、スタビなしのクルマですから、思いのほか成績が良くてびっくりしています。今日のSSは得意なので、今日に賭けてきました(笑)。明日はノートの電池との戦いですね」と、日産車同士のバトルに言及した。

レグ2

競技最終日となる28日(土)は、3SSを3回走行する9SS、SS距離51.69kmが舞台。2ループしてサービスをはさみ、最後の1ループという構成だ。2日目の天候は晴れ時々曇り。雨は降らないものの気温は低い。ギリギリの勝負をしていく選手たちにとっては、タイヤへの攻撃性が高い路面に対してどのようにタイヤのマネージメントをしていくかが大きなポイントとなるはずだ。午前7時45分、朝の15分サービスを終えた各車がステージへと向かっていく。

奴田原が4.2秒のリードを築き首位を走るJN1クラス。オープニングのSS3は僅差で奴田原が制したが、続くSS4からは新井大輝が猛追。SS4、SS5でベストタイムをマークして奴田原の背後2.0秒にまで迫る。そしてSS6、奴田原は痛恨のスピン! このSSを一番時計でまとめた新井大輝に対し15秒という大きなタイムロスを喫してしまい、順位は逆転。奴田原は総合3番手にドロップすることとなった。続くSS7では両者譲らず、同タイムでのSSベスト。SS8では奴田原がベストタイムを獲るが、その差を大きく縮めるには至らず。午前中の6SSを終え、新井大輝が奴田原に対し10.7秒のリードを得ることに成功した。サービスを挟んで午後最初のSS9では再び新井大輝がベストタイムをマークし、奴田原との差を12.6秒に拡大。残る2SSは奴田原が制したものの、10.8秒差で新井大輝が逃げ切り、前戦ラリー北海道に続く今季2勝目を獲得。自身初となるJN1クラスのシリーズチャンピオンを逆転優勝で決めた。
新井大輝は「奴田原選手の方がセッティングが出ている状況だったので、今日スタートから全開で攻め続けました。縁石や排水溝を使ったり、ありとあらゆる部分で攻めていったので、足まわりにも負荷が掛かったかもしれません。それでもしっかりと走り切れたのは、メカニックや支えていただいているスポンサー様のおかげだと思っています。それに、ラリーの動画や結果を見て応援してくれるファンの皆さんのためにも、しっかり結果を残せて良かったです」と、笑顔でコメント。今後の活動については「来シーズンの活動についてはこれからですが、新型コロナウイルスの問題が解消して、フルシーズンで戦えるといいですね。もちろん海外に行きたい気持ちもありますし、今回のタイトルが海外につながるきっかけになるといいですね」と語っている。
コ・ドライバーを務めた小坂は「奴田原選手のスピンなどもありましたが、最後まで緊張感をもって、いいラリーで締めくくることができて良かったです。ナイトステージはペースノートの重要性も高く、自分としてもすごく勉強になりました」と、ラリーを振り返った。

JN2クラスはオープニングのSS3から上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が快走。前日首位の中平勝也/行徳聡(トヨタGT86 CS-R3)をかわしてクラストップに立つと、続くSS4、SS5でも連続ベストタイム。チャンピオン狙いで淡々と走る中平を大きくリードしたが、SS6で大きくタイムロスし総合2番手にポジションダウン。SS7では再び一番時計をマークし中平の背後に迫るが、SS8でマシントラブルによりリタイアを喫することとなった。これで首位中平、2番手に中村英一/大矢啓太(トヨタ・ヴィッツGRMN)に。残る3SSも順位は変わらず、中平が優勝を飾り、JN2ドライバーチャンピオンを決めた。コ・ドライバーチャンピオンは2位中村のコ・ドライバーを務める大矢が獲得している。
中平は「いやあ、チャンピオンですね。ホッとしています、とにかくそのひと言です。やはり一戦一戦が大切なシーズンだったので、リタイアしないように、確実にやるべきことを積み重ねた結果としては良かったと思います。大きかったのはラリー北海道です。普通に走り切るだけでも難しい、まるで“一見さんお断り”のような難易度のラリーですから(笑)。トラブルなく整備してくれたシムス、サスペンションを用意してくれたテインのおかげです。まだ来シーズンについては検討中ですが、同じ体制でできればと思っています」と笑顔を見せた。

初日を終えた段階で首位に立っていた山本悠太/山本磨美(トヨタ86)がオープニングのSS3でコースオフ、リタイアするという波乱で始まったJN3クラス。竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ)と曽根崇仁/竹原静香(トヨタ86)による僅差のバトルが展開された。SS3を制して一気にリードを稼いだのは竹内だが、続くSS4からは曽根が怒濤の5SS連続ベストタイムをマーク。SS7で竹内を逆転し、曽根が単独トップに立って見せた。竹内も負けじとサービス明けのSS9を制して首位を取り返すが、最終SSで曽根が再びひっくり返し、今シーズン初勝利を獲得。これで曽根/竹原の両チャンピオンが決まることとなった。2位には竹内、3位には長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)が入っている。
初日4番手から、シーソーゲームを制しての逆転劇となった曽根は「初日の夜のステージでは落ち込みが大きかったんですが、気を取り直して、今日の序盤からいい走りができました。ドライ路面であれば逆転できると信じて、しっかり走ることができたと思います。2020年は短期決戦のシーズンとなってしまいましたが、開幕戦の新城でほぼノーポイント(8位3点)だったのはかなり痛かったですね。それでも終わってみれば、徐々に結果を残していって、最後に優勝できました。短いのに苦しいシーズンでしたが、楽しいシーズンでもありました」と、充実した表情でシーズンを振り返った。

スズキ・スイフトスポーツのワンメイク状態となっているJN4クラスは、初日を5番手で終えていた内藤学武/小藤桂一がペースを上げてSS3でベストタイム、SS4では須藤浩志/新井正和を逆転し2番手に浮上する快走を見せた。その段階で首位の高橋悟志/立久井和子との差は33.1秒と大きく開いてしまっているが、内藤はその後も諦めることなくSS5、SS6と連続ベストタイムをマーク。首位の高橋はマージンを活かしながら要所要所でベストタイムを刻み、大きくその差を詰めさせない。内藤は最後の3SSも連続ベストをたたき出すが、高橋には及ばず。高橋は今季2勝目。2位には内藤、3位には西川真太郎/原田晃一が入っている。ドライバーチャンピオンは6位で完走した古川寛、コ・ドライバーチャンピオンは内藤のコ・ドライバーを務める小藤が決めた。
SS1からクラス首位の座を譲らず勝利を獲得した高橋は、「1日目の一発目で決まりました。2日目は1本目のステージが寒くて、けっこう滑ってしまいました。今日のペースでは後続の選手の方が速かったと思いますが、タイヤの不安もあったので、ペース配分ができる余裕を1日目につくれたことが勝因だと思います。来シーズンもまた全日本を走る予定です」と笑顔でコメント。辛くもドライバーチャンピオンを獲得した古川は「辛かったです(笑)。最初から完走ペースで良かったとはいえ、それなりに走らないと、注意散漫になりますね。どのようにラリーに望めばいいのか、“普通”が難しかったです。そんな中やらかしてしまったのが、今回です。でも、あれがなかったから、完走できていなかったかもしれませんし、結果ヨシとします」と苦笑い。

JN5クラスは、新型トヨタ・ヤリスの全日本ラリー初優勝を狙う小濱勇希/東駿吾と、前日のトラブルから息を吹き返した大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)がベストタイムを獲り合う展開となった。一方、チャンピオン獲得に照準を定める天野智之/井上裕紀子もきっちりとペースを上げ、SS4で岡田孝一/石田一輝を逆転し、2番手に浮上。その後もペースをコントロールし、大倉の上でフィニッシュするというミッションを確実にこなして見せた。結果、9SS中6SSでベストタイムを刻んだ小濱が優勝。2位に天野、3位に岡田というオーダーとなり、3SSで一番時計を刻み追撃した大倉は4位でラリーを終えている。これで天野は7年連続12回目、井上は11年連続13回目の全日本タイトルを確定させた。
新型ヤリスでの初優勝を獲得した小濱は、「朝イチは路面が滑りやすくて大変でしたが、昨日いいペースをつかめていたので、そのままの流れで走れました。2年ぶりの全日本勝利で、久しぶりでうれしいです。勝因はクルマのバランスの良さですね。このクルマが持っているポテンシャルを発揮できるセットアップが、1年をとおして煮詰まってきました。あとはドライバーが必死に踏みました(笑)」と、コメント。ヤリスのポテンシャルにも、あらためて自信を深めた様子だ。チャンピオンを決めた天野は「今回は初日の2SSがカギになると思っていて、ライトやセッティングの準備を進めてきたんですが、予想外の決まり方になってしまいましたね。デイ2はいかに戦略的に戦って、確実に獲るかがポイントでした。大倉選手は最後まで諦めずに攻めていましたから。セクション3はしっかり抑えて、確実にフィニッシュすることに集中しました。今シーズンは、新城の段階ではスピンをしても勝てましたが、ニューマシンやCVTの進化が早かったですね。1年でこれだけ進化するのかと驚いています」と、ライバルの進化に言及した。

JN6クラスは前日首位の海老原孝敬/遠藤彰(トヨタ・アクア)がスピードに乗れず、背後の水原亜利沙/高橋芙悠(トヨタ・ヤリスCVT)が6SS中3SSでベストタイムをマークし、徐々に差を詰めていく展開に。この日のスタート時点で42秒あった海老原と水原の差は、サービスに戻ってきた段階で4.6秒にまで縮まっていた。午後のオープニングステージSS9では水原が再びの一番時計を刻み、ついに海老原を逆転。水原は残る2SSでも海老原のタイムを上まわり、全日本ラリーでの初優勝を達成した。2位には海老原、3位には兼松由奈/美野友紀(日産ノートe-POWER NISMO S)、4位には永井歩夢/竹下紀子(トヨタ・ヴィッツ)、5位に山北研二/糸永敦(日産マーチNISMO)という順位となった。
「1日目のタイム差をひっくり返せるなんて、信じられないです」と、念願の初優勝となった水原。「あと、フィニッシュできてホッとしています。今回は色々と学ぶことも多く、とてもいいラリーでした。今年はラリーそのものが少なかったんですが、それぞれ違う土地で走れましたし、とてもいい経験になりました。新しいクルマにもようやく慣れて、最終戦で結果が残せて良かったです」と、笑顔でシーズンを振り返った。逆転されてしまった海老原は、「いや~、巻き返せなかったですね。ヘコんでいます。自分の運転で突っ込みすぎたり、力を入れすぎてコーナーでロスしたり……そこを改善して、来年も頑張ります」と、悔しさのにじむコメントを残した。

開催ラウンドが少なかったものの、若手の登場やニューマシンの登場など、話題の多いシーズンとなった2020年の全日本ラリー選手権も、このラリーをもってすべての日程を終了。2021年の開幕戦は2月4日(木)~2月7日(日)に群馬県嬬恋村で開催されるRALLY of TSUMAGOIとなる。来年からGRヤリスを新たに投入するチームも出てくるという情報もあり、2021年も目の離せないシーズンとなりそうだ。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 新井大輝/小坂典嵩 ADVAN KYB AMS WRX 55:41.5
2 JN1-2 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 55:52.3
3 JN1-3 勝田範彦/石田裕一 ラックSTI 名古屋スバル DL WRX 56:11.1
8 JN3-1 曽根崇仁/竹原静香 P.MU☆DL☆SPM☆INGING86 59:34.3
10 JN4-1 高橋悟志/立久井和子 ミツバitzzDLマジカル冷機スイフト 59:40.3
16 JN5-1 小濱勇希/東駿吾 KYB DUNLOP YARIS 1:00:09.0
19 JN2-1 中平勝也/行徳聡 DL シムス R-ART 86 R3 1:00:32.8
37 JN6-1 水原亜利沙/高橋芙悠 DUNLOP CUSCO YARIS 1:07:12.2

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN1クラス優勝 新井大輝/小坂典嵩

JN2クラス優勝 中平勝也/行徳聡

JN3クラス優勝 曽根崇仁/竹原静香

JN4クラス優勝 高橋悟志/立久井和子

JN5クラス優勝 小濱勇希/東駿吾

JN6クラス優勝 水原亜利沙/高橋芙悠