新城ラリー2021

開催日時:3月19日(金)〜21日(日)
開催場所:愛知県新城市
スペシャルステージ本数:6本
スペシャルステージ総距離:51.17km
ラリー総距離:223.81km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ/ウエット
ポイント係数:1.0

3月21日(日)、2021年全日本ラリー選手権第2戦「新城ラリー2021 supported by AICELLO」の競技最終日が行われ、スバルWRX STIの新井敏弘/田中直哉が優勝、2位に新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI)、3位に福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5)という結果になった。4位には同じくシュコダの柳澤宏至/保井隆宏、5位にはJN2クラスのヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGT86 CS-R3)が入っている。

新型コロナウイルス感染拡大防止のために2020年大会と同様、無観客での開催となったラリーは、青空のもとスタート。この日の舞台となるのは、テクニカルな船着(SS1/3)とハイスピードの鬼久保(SS2/4)という両極の性格をもつ計4SS、29.66kmだ。朝9時、ラリーカーはサービスパークの置かれる新城総合公園からステージへと向かっていった。

レグ1

シュコダ・ファビアR5やトヨタGRヤリスなどがラインナップに加わり、大きく車両の顔ぶれが変わったJN1クラス。福永修/齊田美早子がオープニングのSS1から3連続ベストタイムを並べる好走でラリーをリードするが、この日最後のSS4でパンクを喫してしまい、大きくタイムを失うことに。それまでのマージンをすべて吐き出してしまい、総合5番手でこの日を終えることとなった。代わってトップに立ったのはスバルの鎌田。格上のR5車両を相手に、SS1/3ではベストタイムの福永にそれぞれ0.1秒、0.4秒差という僅差で食らいついていたことが奏功した。続く2番手にはファビアR5の柳澤宏至/保井隆宏、3番手に新井敏弘、4番手に新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI)というオーダーとなった。注目のGRヤリスは山本悠太/立久井和子が6番手。勝田範彦/木村裕介はSS1で、眞貝知志/安藤裕一はSS2終了後にそれぞれトラブルでラリー続行を諦めている。
この日を首位で終えた鎌田は「午前中は思っていたよりも路面がきれいで、グリップが薄い印象でした。昼のサービスでセットアップを変更してコントロール性も向上し、午後は2本とも悪くない走りができたと思います。ここまでは順調ですが、明日は雨が降りそうなので、雨用のセットアップに変更して臨みます。鬼久保(SS6/8)はR5勢が速いので、雁峰北(SS5/7)をいかにうまく攻められるかでしょうね」と、テクニカルコースの雁峰北がカギになると語った。

バラエティ豊かな車種が参戦するJN2クラスには、久々の全日本ラリー参戦となるヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGT86 CS-R3)が登場。レクサスRC Fの石井宏尚/竹下紀子、前年度チャンピオンの中平勝也/行徳聡(トヨタGT86 CS-R3)、上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)らが鎬を削る。初日午前中は石井が2SSとも一番時計を刻み、ラリーをリード。しかし午後になるとコバライネンがペースアップを果たし、2SS連続ベストタイムをマークした。石井はそれでも2番手コバライネンに対して5.6秒のマージンを残して初日を終え、首位の座を守り切ることに成功。3番手には中平、4番手にトヨタ・ヴィッツGRMNの中村英一/大矢啓太がつけている。
石井は「ちょっとミスをして縁石にヒットしてしまいましたが、なんとか被害を最小限にできたかなと思っています。鬼久保も1本目でミスしたところは修正できたと思うんですが、やはりコバライネン選手の追い上げには負けてしまいました。力は出し切れたかなと思います。明日は天候次第なんですが、タイヤがウエットに強いはずなので、なんとか頑張りたいなと思います」と初日を振り返っている。

JN3クラスは9台のトヨタ86と3台のスバルBRZがエントリー。初日の主導権を握ったのは、BRZを駆る竹内源樹/木村悟士だった。この日の4SS中3SSでベストタイムをマークし、2番手の鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ)に6.9秒差、3番手の曽根崇仁/竹原静香(トヨタ86)に10.8秒差をつけて、首位の座を守り2日目に挑む。鈴木、曽根ともにSS3でのペースアップを果たしたものの、竹内を捉え切ることはできなかった。
竹内は「午前中は抑えていたなかでは、よく走れていたと思います。去年の唐津からアップデートをかけて、足まわりのセットアップも見直してきましたが、その感触が良く出ていますね。午後は2本ともベストを獲れましたし、明日は明日でしっかり走れればいいかなと思います」とコメントした。

JN4クラスはスズキ・スイフトスポーツ4台と、ホンダ・シビック・タイプRユーロ1台のバトル。初日はスイフト勢3台が上位を占める結果となった。トップの須藤浩志/廣田幸子を西郷匡瑛/大倉瞳、西川真太郎/本橋貴司が追いかける展開に。西郷は2019年以来の全日本ラリー。当時はBRZでJN3クラスに出場していたが、今回はスイフトスポーツでの参戦となる。
2番手の西郷に8.1秒差をつけて首位を走る須藤は初日を終えて、「なんとかトップで帰ってきました。西川選手がライバルだと思ったら西郷選手が追いついてきて、ちょっと脅威になってきましたね。クルマは舗装仕様が煮詰まってきて走りやすくなりましたが、明日は雨でまったく違うラリーになってしまうと思います。けっこうタイヤが決め手になるとは思っているんですが、経験値を活かして粛々と行くしかないかなと」と、初日を振り返った。

トヨタ・ヤリス、ヴィッツ、マツダ・デミオが鎬を削るJN5クラスは、SS1で大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR SPORT)を0.1秒上回る接戦でスタート。しかしその後は天野が3SS連続で一番時計を叩き出し、初日を首位で終えた。2番手には大倉、3番手に3番手にスイフトスポーツからスイッチした内藤学武/小藤桂一(トヨタ・ヤリス)が続く。4番手にはヤリスCVTでエントリーした清水和夫/山本磨美がつけた。
「なかなかここまでの僅差で争うことはないので、とても楽しかったです」と天野。「ただ、明日がすごく荒れると思うので、今日の4.7秒というリードはないようなものです。雁峰ではどのくらいマージンを取るかで10秒単位での差になると思うので、そういったところも含めて明日が勝負ですね。気が抜けないですし、ヤリスも速いですね。1戦ご1戦ごとに速くなってくるでしょうね」と警戒する。

トヨタ・ヤリスが主力車種となるJN6クラスには今回、GRヤリスRSが登場。ステアリングを握るのは、久々の全日本ラリー参戦となる村田康介。コ・ドライバーは梅本まどかが務める。初日トップは、前年度チャンピオンの明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヤリスCVT)。2番手には全日本ラリー初参戦の吉原將大/佐野元秀(トヨタ・ヤリスCVT)、3番手に村田というトップ3となった。
首位の明治は、「昨年の唐津でクルマを壊してしまって、ラリー前に直ってきたので、セットアップもない状態で走っています。無理せず走っているのですが、それが良かったと思います。明日は雨なのでちょっと難しいですね。今日のリードはないものだと考えて、しっかり走ります」とコメント。全日本初参戦の吉原は「気負ってしまったところもありますが、少しずつ緊張もほぐれてきました。明日は雨でリスクが大きいと思うんで、ちゃんと走り切ってマイルを稼ぎたいと思います」と、初日を振り返った。

レグ2

競技最終日に予定されているのは、テクニカルな林道として知られる雁峰北(SS5/7)と、初日も使用したハイスピードコースの鬼久保(SS6/8)。これらを2度ずつ走行する計4SS、43.02kmだ。前日の夜から降り始めた雨により、コースは全面的にウエット。ところによっては山肌から染み出した水がコース上を川のように流れる部分もあり、非常に難しいコンディションのもと最終日はスタートした。この日2本目のSS6では、先頭を走る鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)がハイドロプレーニングを起こしクラッシュ、横転を喫してリタイアを余儀なくされることに。主催者は降雨による走行路面悪化の状況が危険と判断し、SS7およびSS8をキャンセルする公式通知を発行。SS6までのタイムをもって、第2戦新城ラリーはフィニッシュとなった。また、SS6で鎌田の救護にあたった車両や、後続の車両に対しては主催者からタイムが与えられ、ほとんどの選手は実質的にSS5のみの走行でこの日を終えることに。鎌田と松本は背骨を圧迫骨折したが、早期の復帰を目指し現在入院治療中だ。

JN1クラスは、首位鎌田のリタイアによって新井敏弘が優勝。2位にはエンジンの不調に悩まされながらも新井大輝が入っている。3位に福永、4位に柳澤とシュコダ勢が続いている。GRヤリスで初参戦となった山本悠太/立久井和子は総合24位で完走を果たしている。また、初日にリタイアを喫したTGRチームのGRヤリス2台は再出走することなく、次戦に備えて原因を追及することを選択した。
新井敏弘は、「鎌田選手のクラッシュは残念でしたが、もし私が1番手スタートだったら、あのようなアクシデントになっていたかもしれません」とコメント。「クルマはとても良かったんですが、鎌田選手がかなり速く、WRX STIにはまだ伸び代があると感じました。今回はタイヤとサスペンションの関係に少し苦労しましたが、この辺りをしっかり分析し、次の唐津に活かしたいですね」とコメント。唐津に向けたテストも実施する予定とのことだ。

JN2クラスは、前日首位の石井宏尚/竹下紀子(レクサスRC F)がSS5でタイムロス。このSS5でクラスベストタイムをマークしたヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGT86 CS-R3)が逆転優勝を飾ることとなった。2位に石井、3位には中平勝也/行徳聡(トヨタGT86 CS-R3)。4位に上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が入っている。
久々の全日本ラリーとなるコバライネンは、「僕らとしては、いいラリーになった。初日はナイスなコンディションだったし、素晴らしいステージも走れた。今日は厳しいコンディションになったけれど、僕ら自身は悪くない走りができたよ。ただ、SS6では鎌田選手のアクシデントがあった。かなり激しいアクシデントで、鎌田選手と松本選手のケガの状況がひどくないことを願っている。この天気は本当に残念だね」と、鎌田/松本組を気遣った。
また、今シーズンはSUPER GTを主軸に、日程の重ならない範囲で全日本ラリーに参戦するという。
「次の参戦は丹後を予定している。楽しみだよ。ターマックだし、クルマのセットアップも決まってるからね。初めて参戦するラリーだから、いいペースノートを作れるかが鍵になる。週末は富士でGTのテストだし、かなり忙しいシーズンになるけど、次のラリーがすごく楽しみなんだ」

スバルBRZの1-2体制になっていたJN3クラスは、SS5で鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ)が竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ)に26.4秒の差をつけるベストタイムをマークし、逆転優勝。2位には曽根崇仁/竹原静香(トヨタ86)が入り、3位に竹内という順位になった。
鈴木は、「今回のポイントはやはりタイヤでした。これだけのウエットになったのは初めてですが、無理せずに走れたことが良い結果につながったと思います。初日最後のSSで竹内選手にかなり離されてしまったんですが、それでも想定の範囲内でした。竹内選手のタイヤがこの天候に合っていなかったことも大きかったですね。今季は舗装のラリーは全部出場します。次戦は大きくセッティングを変えず、トラブルが出たところをしっかり直して臨みます。昨年の唐津は振るわなかったので、その反省を活かしていきたいです」と、コメントしている。

JN4クラスは西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が3番手からの優勝を達成。SS5ではライバルの須藤浩志/廣田幸子、西郷匡瑛/大倉瞳らを20秒以上引き離すベストタイムをたたき出して勝負を決めた。これで2位は須藤、3位に西郷。4位にはSS5で2番手タイムをマークした香川秀樹/松浦俊郎が入った。
うれしい全日本初勝利を達成した西川は、「今回はダンロップさんのタイヤに助けられました。SS5の雁峰北だけで20秒くらい離すことができました。クルマはすごく良かったです。雨の中での安定感をあらためて感じました。今までは雨が苦手だったんですが、今回のような感じだったら、笑ってラリーができそうです。次は唐津に参戦する予定にしていますが、このままの良い流れを維持していきたいと思っています」と、笑顔でコメントした。

トップ3台が1.4秒に並ぶという大接戦となったJN5クラスを制したのは、大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)。2位は0.6秒差で天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR SPORT)、3位は1.4秒差で内藤学武/小藤桂一(トヨタ・ヤリス)という結果になった。
大倉は、「初日は天野選手に負けてしまっていたんですが、タイム差は少なかったので、雁峰北が勝負になると思っていました。SS5では内藤選手には負けてしまったんですが、天野選手にはちょっと勝てました。やはり初日に離されなかったのが大きかったということですね」とラリーを振り返った。
アイシンAWラリーチームとしての参戦は今回がひと区切りとなるという。CVTでのラリー参戦については、「3年前のことを考えると、ここまでのレベルに到達できただけでも驚きです。最初は30秒くらいの差をつけられていたのが、今はほとんど差がないところまで来ましたから。これはすごいことです。CVTのユニットは市販車と変わらないものを使いながら、制御面とハード面が少しずつ進化した結果です。データをクラウドに上げたり、アイシンAW全体が色々と協力してくれました。勝利のために、総力を挙げていただいたことで、今回勝てたということです。モータースポーツが、そういったモチベーションになる。それこそが、メーカーがラリーに参加する意義だと思いました。他のメーカーにもこの火を広げていきたいですね」と語った。また、今後の新プロジェクトについても動き始めているとのことだ。

JN6は全日本初参戦の吉原將大/佐野元秀(トヨタ・ヤリスCVT)がSS5でベストタイムをマークし、明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヤリスCVT)を逆転、初優勝の殊勲に輝いた。2位には明治、3位にはGRヤリスRSで参戦の村田康介/梅本まどかが入った。
ウエットコンディションでのタイムアタックが初めてという吉原は、「初出場の緊張もあり、バタバタした部分もありましたが、走り切れて良かったです。クルマに慣れていない部分もあるので、次戦に向けてしっかり自分のベースを上げて準備したいです。コンディションの変化がなくても、良い勝負ができるようになりたいですね。クルマの長所を活かすことがこれからの課題です。MT車と違って、思ったパワーバンドに入れられなかったりするので、CVTの良いところを活かせるようにしたいです」とコメント。今後の成長にも注目したい。

全日本ラリー選手権第3戦は、4月10〜11日に開催されるツール・ド・九州2021 in 唐津。今回はエントリーを見送った奴田原文雄がGRヤリスでエントリーする予定としており、大きな注目が集まる。JN1以外の各クラスでも熾烈なバトルが展開されることは必至だ。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 新井敏弘/田中直哉 富士スバル AMS WRX STI 39:10.3
2 JN1-2 新井大輝/小坂典嵩 ADVAN KYB AMS WRX 39:37.6
3 JN1-3 福永 修/齊田美早子 アサヒ☆カナックOSAMU555ファビア 39:54.2
5 JN2-1 Heikki Kovalainen/北川紗衣 AICELLOラックDL速心GT86R3 40:19.9
7 JN3-1 鈴木 尚/山岸典将 スマッシュDL itzz コマツBRZ 40:57.9
13 JN4-1 西川真太郎/本橋貴司 スマッシュDLモンスターitzzスイフト 41:27.5
19 JN5-1 大倉 聡/豊田耕司 アイシンAW Vitz CVT 42:22.4
29 JN6-1 吉原將大/佐野元秀 KYB DL アップガレージ Yaris 44:11.2

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN1クラス優勝 新井敏弘/田中直哉

JN2クラス優勝 Heikki Kovalainen/北川紗衣

JN3クラス優勝 鈴木尚/山岸典将

JN4クラス優勝 西川真太郎/本橋貴司

JN5クラス優勝 大倉聡/豊田耕司

JN6クラス優勝 吉原將大/佐野元秀