新城ラリー2023 Supported by AICELLO
開催日時:3月3日(金)〜5日(日)
開催場所:愛知県新城市、岡崎市
スペシャルステージ本数:11本
スペシャルステージ総距離:63.66km
ラリー総距離:328.93km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ/ウエット
ポイント係数:1.0
2023年シーズン全日本ラリー選手権第2戦「新城ラリー2023 Supported by AICELLO」が、3月3日(金)~5日(日)に開催され、トップカテゴリーのJN-1クラスは、シュコダ・ファビアR5をドライブしたヘイキ・コバライネン/北川紗衣が勝利を飾った。2位にはファビア・ラリー2 Evoの福永修/齊田美早子、3位にスバルWRX STIの鎌田卓麻/松本優一が入っている。
スノーイベントの嬬恋で幕を上げた全日本ラリー選手権は、約1カ月のインターバルを経て、シーズン初のターマックラリー、新城ラリーを迎えた。このラリーには開幕戦をスキップし、フィンランド国内選手権を走った昨年王者コバライネンが登場。さらに、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、勝田範彦/木村裕介が、最新のトヨタGRヤリス・ラリー2を持ち込んだ。ただ、車両は開発中のため、エンジンが一般に流通しているハイオク燃料に適合しておらず、全日本ラリー規定に合致していないため、今回はJN-1 OPクラスでの参戦となっている。
さらにTGRは眞貝知志/安藤裕一が、新たに製作されたトヨタGRヤリスのDAT(8速AT)仕様をドライブ。福永修も先代ファビアの最終スペックである「ファビア・ラリー2 Evo」をこのラリーから投入する。これまで福永がドライブしていたファビアR5は、金岡義樹/朴木博則がステアリングを握ることになった。
20周年記念大会となった今回の新城ラリーは、実に4年ぶりとなる有観客での開催を実現。サービスパークが置かれた県営新城総合公園には、様々なメーカーブースや売店が立ち並ぶラリーパークが設営されたほか、公園内のステージで行われるデモンストレーションランには、TOYOTA GAZOO Racingのヤリ-マティ・ラトバラ代表、勝田貴元、モリゾウこと豊田章男トヨタ自動車社長も参加している。
レグ1
3月3日夕方、久々の有観客での実施となった新城文化会館でのセレモニアルスタートに続き、翌4日から本格的なステージを走行する。ラリー初日は新城総合公園内のショートステージ(600m)、ハイスピードな「Onikubo(6.72km)」とツイスティな「Gampo North(10.69km)」をサービスを挟んでループする6SS、36.02km。
朝から多くの観客が集まったSS1、わずか600mのショーステージで幸先よいくベストタイムを刻んだのはコバライネンだった。0.5秒差の2番手タイムには、開幕戦の勝者鎌田、1.4秒差での3番手に新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI)、1.6秒差の4番手で福永が続く。本格的な林道を走行するSS2 Onikubo 1(6.72km)。コバライネンは、このステージだけで2番手の福永に13.3秒差をつける圧倒的なベストタイムをたたき出した。コバライネンはさらにSS3 Gampo North 1(10.69km)でも福永に22.4秒差という、圧巻の3連続ベストを刻み、最初のループだけで2番手につける福永に37.3秒、3番手の新井に44.0秒もの大差をつけている。
新城総合公園でのサービスを挟んだ午後のセクションでも、コバライネンのスピードは変わらない。SS4からSS6まで余裕のベストタイムを並べ、この日行われた全SSを制してみせた。福永はコンスタントに2番手タイムをマークしたものの、初日だけで1分10秒3も首位から引き離されてしまったかたちだ。
JN-1 OPクラスで参戦した勝田は、GRヤリス・ラリー2の習熟に務めながら、福永と新井敏弘を上回る総合2番手相当のタイムで走行。ただ、こちらもコバライネンに、1分08秒6ものリードを許している。JN-1クラス4番手は、ラリージャパンでも使用したプジョー208ラリー4で走る新井大輝/金岡基成。2輪駆動ながらも新井敏弘からわずか5.8秒差で初日を走り切った。
「いい走りができたね。午前中は少し慎重に、午後は少しプッシュしたよ。ノリ(勝田範彦)さんがすごく速いから、少しギヤを上げたんだ。ノリさんはオープンクラスだけど、しっかりタイムをチェックしているよ(笑)。今日は新しいダンロップタイヤがすごく良かった。減りも少なくて4本のみで乗り切ることができたからね。明日は雨になりそうだけど、注意して走るだけだ。去年のWRCもかなり激しい雨になったけど、僕らはいいタイムで走れている。大きなリードがあるけど、油断せずに走るよ」と、コバライネンは余裕の笑顔をで語った。
コバライネンのスピードに圧倒された福永は「こっちがタイムを上げたぶんだけ、さらに上げてくる。ヘイキはやっぱり速いですね……。どうにも対策がない。キロ2秒も離れていると、もう別クラスですよ。これだけ頑張っても、さらにスピードを上げてきますからね……」と、がっくり肩を落とした。
今回、新井敏弘と鎌田は、JN-1規程に合わせた軽量化を施し、ボンネットに冷却用アウトレットを追加したスバルWRX STIを投入。1分28秒3差の3番手につけた新井敏弘は「ケガの影響があってあまり運動ができなかったことが、特にツイスティなGampo Northでは出てしまいましたね。午前中のOnikubo1(SS2)ではインカットした際、かなり危ない思いをしたので、後半はマシンを何かにヒットさせないよう、注意して走りました」と、振り返っている。
JN-2クラスは、社員育成のためにカヤバ(KYB)が新たに立ち上げた「KAYABA Rally Team」から、久々の全日本ラリー選手権復帰を果たした横尾芳則/髙橋昭彦(トヨタGRヤリス)が、SS1でベストタイムをマーク。本格的な林道ステージを走行するSS2でベストタイムを刻んだのは、今回から自身のNUTAHARA Rally teamでの参戦となる奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)だった。全体でも3番手に相当する好タイムを記録した奴田原は、横尾をかわして首位に浮上。続くSS3では1速が入らなくなるトラブルに見舞われながらも奴田原がベストを記録した一方、横尾は側溝にマシンを落としてサスペンションを破損しデイリタイアとなってしまった。
奴田原は午後のセクションは、全SSで一番時計を記録し、余裕の首位を快走する。1分以上離れた2番手は、今回から新車を投入した三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)。3番手につけていた石川昌平/大倉瞳(トヨタGRヤリス)は、SS5でストップ。トヨタ86からトヨタGRヤリスにマシンを変更し、JN-2クラスへステップを果たした山田啓介/藤井俊樹が3番手に順位を上げている。
「無事に戻ってくることができました。タイムはヘイキ(コバライネン)に負けていますし、JN-2クラスのトップではありますが、去年と同じ状況ですね(笑)。SS3での1速が入らなかった問題は、リンケージのトラブルだと思います。SS5ではグレーチングが外れていて、かなり危険な状況でしたね」と、奴田原は冷静にコメント。2番手に付けた三枝は「ラリー直前にマシンが出来上がって、実質的に今回がシェイクダウンとなっています。トップが速すぎる状況ですが、いい感じで走れています」と、納得の表情だ。4輪駆動初参戦となった山田は「ラリー中に感じた課題を一部改善することができました。ラリー中にペースを上げることができて、有意義な1日なりました」と、振り返っている。
2.4リッターエンジンを搭載する新型トヨタGR86の台数が大幅に増加した、JN-3クラス。SS2でベストタイムをマークし、首位に浮上した長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)が、2番手の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)にわずか2.4秒差をつけて、初日を首位で折り返した。18.5秒差の3番手に今回からGR86を投入した山口清司/丸山晃助。25.3秒差の3番手には、先代トヨタ86勢最上位となった上坂英正/山下恭平、少し離れた5番手には、久々の全日本復帰となった曽根崇仁/石田一輝(トヨタGR86)が続く。
3度のベストタイムを刻み、山本をわずかに上まわった長﨑は「事前に想定していたとおり、Onikuboで稼いで、Gampo Northで吐き出す展開になりましたね(笑)。山本選手とはかなりの僅差ですし、上位3人は全員が地元出身で勝ちたい気持ちがあるので、激しい戦いになっています」と、コメント。2番手の山本は「騙し騙し、試行錯誤しながらセットアップを変えています。ツイスティなGampo Northが思ったよりもタイムが良く、首位との差が縮まりましたね」と、冷静に語っている。
スズキ・スイフトスポーツ中心に戦われているJN-4クラスには、今回、廣嶋真/廣嶋浩がトヨタ・セリカを持ち込んだ。ラリーは、2年ぶりのラリー復帰となった内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)が、全ステージでベストタイムを刻み、2番手の廣嶋に42.5秒の大差をつけて初日首位に立った。3番手はインカムトラブルに見舞われれた岡田孝一/石田裕一(スズキ・スイフトスポーツ)、4番手は昨年王者の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)がつけている。
首位の内藤は「2年ぶりのラリーなので、路面の対応などに気をつけながら走りました。Gampo Northでペースを落としてしまったのが反省点ですが、良い初日になりましたね。ある程度アドバンテージを持てたので、2日目はプレッシャーをあまり感じずに走れそうです」と、安堵の表情で語る。スイフトスポーツ勢に割って入った廣嶋は「ラリー中に反省点を修正しながら走ることができましたが、首位との差はまったく埋まっていません。どうしようもないですね」と、内藤のスピードに驚きを隠さない。西川を10.6秒抑えた岡田は「午後はインカムトラブルもなく走ることができました。トップ2には先に行ってもらって、我々は西川選手と争っています」と、肩をすくめた。
JN-5クラスは、マツダ・デミオにマシンをスイッチしたRina Itoが、オープニングのSS1でベスト。本格的な林道ステージとなったSS2は、吉原將大/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)が、大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)にわずか0.8秒差の一番時計を刻む。この日最長のSS3は大倉が圧倒的なベストをたたき出した一方、吉原はマシントラブルからデイリタイアを余儀なくされた。午後のセクションは大倉がすべてのSSでベストタイムを並べ、2番手の河本拓哉/柴田咲希(マツダ・デミオ)に1分30秒以上の大差をつけて初日を終えている。3番手には鎌野賢志/坂井智幸(トヨタ・ヤリス)、4番手に冨本諒/里中謙太(トヨタ・ヤリスCVT)で続く。2番手につけていたRina Itoは、SS5でコースオフを喫して、リタイアに終わった。
「今回からタイヤが変わったこともあり、色々と試行錯誤しながら走ってます。タイヤに関してはセッティングを変えたり、僕自身が慣れてきた部分もあって、多少タイムも上がっています。いい方向には向かっているようです」と、大倉は笑顔を見せた。大倉からは離されたものの、鎌野に5.6秒差をつけて2番手をキープした河本は「なんとか初日を無事に走り切れて良かったです。それなりにタイムも出ているので、明日も頑張ります。ただ雨になるとタイヤがないので厳しいですね」と、コメントしている。
JN-6クラスは、嬬恋を制した天野智之/井上裕紀子が、今回から新型トヨタ・アクアを投入。SS1こそ昨年チャンピオンの海老原孝敬/遠藤彰(ホンダ・フィット・ハイブリッドRS)の先行を許したものの、林道ステージでは5連続ベストをマークし、終わってみれば海老原に26.6秒差をつけて、初日をトップで走り切った。3番手にはトヨタ・ヤリス・ハイブリッドにマシンを変更した、モータージャーナリストの清水和夫/山本磨美がつけている。
ニューマシンのデビュー戦でも安定した強さを発揮した天野は「クラストップですが、新しいクルマなので制御やセッティングなどは、まだまだ課題があります。2ループ目でペースは上がってきましたが、クルマそのものが速くなったというよりは、自分がクルマに合わせ込むことでタイムが上がった感じです」と、冷静にコメント。打倒天野に燃える海老原は「午前中よりも天野選手がペースを上げたことで、差をつけられてしまいましたね。午前中に発生したブレーキトラブルは解消したんですが、敵いませんでした」と、首を振る。
レグ2
ラリー2日目は、前日のリピートとなる「Onikubo Rev(3.56km)」と、WRCラリージャパンでも使用されたルートの一部を走行する「Nukata(9.96km)」の2本を、県営新城総合公園でのサービスとショートステージ(SS9)を挟んでリピートする、27.64km。
JN-1クラスは、初日にヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)が圧倒的なリードを構築。午後から雨の予報がでているなか、コバライネンは「不安定なコンディションだが、良いアドバンテージを持ってスタートできる」と語ってサービスを後にした。
ドライとなったSS7 Onikubo Rev 1では、コバライネンが余裕のベストタイムをマーク。1.2秒差の2番手タイムは、初日にタイヤのマッチングで苦しんだ鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)。4.6秒差の3番手タイムで新井敏弘、5.8秒差の4番手タイムで新井大輝/金岡基成(プジョー208ラリー4)が続く。
多くのクルーが勝負になるとスタート前に指摘していた、この日最長の9.96kmを走るSS8Nukata 1。コバライネンはSS2番手タイムの新井大輝に20.0秒差という、圧倒的なベストタイムをたたき出す。クラス2番手につける福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)にこのステージだけで、21.8秒も差をつけた。セカンドベストの新井大輝は、ペースの上がらない新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI)をとらえて3番手に順位を上げた。
サービスを挟んだ午後のセクション、予報どおり雨が降り始め、コンディションはウエットに。すでに安全圏のリードを持っているコバライネンはSS9とSS10でもきっちり一番時計を刻む。雨を予想してタイヤを温存していた鎌田は、SS10でコバライネンに0.7秒差にまで迫ると、新井敏弘を捕らえて4番手に浮上。さらに鎌田はSS11で最後の最後にコバライネンを上まわり、ついに今大会初のベストタイムを奪取。新井大輝が2輪駆動には不利なウエットコンディションに苦しむなか、鎌田が最後の最後で3位表彰台を獲得した。
雨に見舞われたSS10では、JN-1 OPクラスながらも総合4番手につけていた勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2)が、ステージ終盤でクラッシュ。フロントにダメージを負って、ラリー続行を断念している。「ラリーを通じて少しずつドライビングにも慣れてきたのですが、ウエットコンディションで予想と異なる挙動に対応し切れず、クラッシュしてしまいました」と、勝田は肩を落とした。
午後のセクション、クレバーにペースをコントロールしたコバライネンは、2位の福永に大差をつけてシーズン初勝利。全日本選手権連覇に向けて、上々のシーズン滑り出しとなった。福永は最終ステージでパンクを喫しており、薄氷の2位表彰台。スバル勢最上位の鎌田には11.6秒届かなかったが、二輪駆動ながらも表彰台圏内にまで迫った新井大輝が4位。5位は勝田のGRヤリス・ラリー2同様、今回がデビュー戦のGRヤリスDATで走り切った眞貝知志/安藤裕一。初日表彰台圏内を走りながらも、ウエット路面で大きくペースを落とした新井敏弘は6位に終わった。
「2日間をとおして、とてもいいラリーが戦えたよ。シーズンオフの期間に、チームがファビアR5のセッティングを進めてくれたこと、そしてダンロップの新しいタイヤが素晴らしい性能を発揮してくれた。特に初日は自信を持って攻めることができたね。今シーズンはJN-1クラス2連覇を目指しているけど、ノリさん(勝田範彦)のトヨタGRヤリス・ラリー2がかなり強敵になりそうだ」と、コバライネンはチームへの感謝を語った。一方、待望のニューマシン投入にも関わらず、コバライネンの先行を許した福永は「午前中は逆転を狙ってウエットセッティングで走りましたが、ドライになりましたね。最後にパンクも喫しました。次こそはなんとかヘイキに迫りたいです」と、次戦での挽回を誓う。ウエットで抜群のスピードを披露し、3位に滑り込んだ鎌田は「予報どおり雨になってくれて、3位までポジションを上げることができました。今回、あらためて軽量化も含めてJP4マシンのポテンシャルを実感することができました。ニューマシンがすごく楽しみになっています」と、振り返っている。
JN-2クラスは、初日で大きなアドバンテージを得た首位の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が、難しいコンディション下でも安定したペースを発揮。すべてのステージでベストタイムを並べ、JN-2クラス初勝利を飾った。前日まで2番手につけていた三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)は、最終のSS11でクラッシュ。道を塞ぐ形でストップし、以降のクルーにはノーショナルタイムが与えられることになった。この結果、山田啓介/藤井俊樹(トヨタGRヤリス)が、JN-2クラス初参戦で2位表彰台を手にした。3位には村田康介/梅本まどか(トヨタGRヤリス)が入っている。
JN-1クラスにも割って入るタイムを刻んだ奴田原は「午後から雨が降ってきて、路面状況はかなり危なかったです。ドライブしていてもドキドキしました(笑)。今回は確実に走り切るために、危ない箇所を抑えながら走りました。実際、JN-2クラス初勝利はうれしいですね。次の唐津も着実に走りたいと思っています」と、シーズン初勝利に笑顔を見せた。三枝のリタイアにより、予想外の2位表彰台を獲得した山田は「色々なことをトライしながら走ることになりました。最終日はある程度プッシュしたことで、手応えと同時に課題も見つかっています。次の唐津も、課題を持って挑みたいです」と、さらなる成長を見据えている。
JN-3クラスは、GR86をドライブする首位の長﨑雅志/大矢啓太が、同じくGR86を駆る2番手の山本悠太/立久井和子に2.4秒差をつけてスタート。このまま僅差のバトルが続くと思われたが、SS8で長﨑が駆動系のトラブルでストップ。無念のリタイアに。「正確な原因は分かりません。純粋なマシントラブルなので、シーズン序盤の段階で出たことをよしとするしかないと思います」と、長﨑はコメントを残した。ライバルのいなくなった山本は、残されたステージも安定したペースで走り切り、シーズン初勝利を飾った。こちらも僅差となった、山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)と上坂英正/山下恭平(トヨタ86)による2番手争いは、SS10でドライに賭けた山口を、ウエットタイヤを履いた上坂がパスし、2位表彰台を決めている。久々の復帰戦となった、曽根崇仁/石田一輝(トヨタGR86)が4位で走り切った。
「まずは勝てたことがうれしいです。ただ、ライバルの長﨑選手がリタイアしてしてからは、ペースを掴むのが難しかったです。トップを走れましたが、自分としてはまだタイム的に満足していません」と、山本は待望の勝利にも反省点を語る。最後に山口を突き放した上坂は「雨が降った2回目のOnikubo Rev(SS10)で、ウエットタイヤが効いてくれました。逆転できましたし、とてもいいラリーになりましたね」と、笑顔を見せている。一方、賭けが外れてしまった山口は「最後は天候が保つと信じて、ドライセットのままでいきました。今回は負けてしまいましたが、色々と得るものが多かったラリーになりました」と、納得の表情だ。
JN-4クラスは、初日の段階で2番手以下に大差をつけた内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)が、そのままトップフィニッシュ。2年ぶりのラリー参戦を勝利で飾った。2番手でスタートした廣嶋真/廣嶋浩(トヨタ・セリカ)はSS8でコースオフし、リタイア。ベテランの岡田孝一/石田裕一(スズキ・スイフトスポーツ)が2位、昨年王者の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が3位を得ている。
今回からコ・ドライバーに大高徹也を迎え、復帰戦を飾った内藤は「ラリーへの復帰を決めて、昨年の11月からコツコツと準備を進めてきました。今回、予想以上に良い成果だったので、参戦予定を増やせないか考えています」と、笑顔で喜びを語った。最終SSを前に岡田との差を9.4秒にまで詰めた西川だったが、最終SSがキャンセルとなったため、順位を上げることはできなかった。「最終ステージをキロ1秒くらい詰めることができれば、逆転の可能性もありましたね。勝ちたかったですが、仕方ないです」と、西川は悔しさをのぞかせている。
最終日、波乱の展開となったのが、JN-5クラスだ。首位を走行していた大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)がSS8で溝にはまり、10分以上のタイムロス。これで大倉は最後尾まで順位を落とし、鎌野賢志/坂井智幸(トヨタ・ヤリス)が、河本拓哉/柴田咲希(マツダ・デミオ)に3.1秒差をつけて首位に浮上する。ところが、河本もSS9でコースオフを喫してリタイア。ドライを想定し、ウエット路面でペースの上がらない首位鎌野の後方には、冨本諒/里中謙太(トヨタ・ヤリスCVT)が3.2秒差にまで迫ってきた。続くSS10でスピンを喫した鎌野を冨本が逆転、そのままトップでフィニッシュを果たした。2位に鎌野、3位には吉田知史/高田幸治(トヨタ・ヴィッツ)が入っている。
自身初の全日本選手権勝利を決めた冨本は「ウエット路面での経験がないので、最終セクションは様子を見ながら走ったことが、優勝に結びつきましたね。今回は本当にできたてのクルマで挑んで、CVTに慣れるところから始まりました。すごくいいフィーリングですし、さらに上のレベルでも勝てるように頑張りたいです」と、喜びを語っている。ウエットコンディションを前に勝利を逃してしまった鎌野は「単純に天候を読み間違え、結果タイヤ選択も間違えてしまいました」と、振り返っている。
JN-6クラスは、初日に圧倒的な強さでリードした天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、SS8で痛恨のオーバーシュート。「ありえないミス」と天野は振り返り、ここだけで30秒近くをロス。これで首位天野と2番手海老原の差は3.8秒にまで縮まった。SS10では海老原がベストを刻み、その差は2.6秒差にまで接近。しかし、最終SSがキャンセルになったことで、天野が海老原を従えて開幕2連勝を飾っている。トヨタ・ヤリス・ハイブリッドでのデビュー戦となった清水和夫/山本磨美は、3位表彰台を獲得した。
ニューマシンでの初陣を飾った天野は「デビュー戦ですし完走できればいいと考えていましたから、勝ててラッキーでした。コンディションも難しかったのですが、新しいクルマでバタバタしてしまいましたね。ただ、今回は絶対やってはいけない大きなミス(ジャンクションのオーバーシュート)があったので、これは反省点です」と、ラリーを振り返った。僅差の2位に終わった海老原は「不完全燃焼でした。最後のSSで決着をつけたかったので、本当に残念です」と、悔しさをのぞかせている。3位で走り切った清水は「後続との差があったので、最後はコントロールしながら走りました。このクルマは以前のヤリスと比較すると、燃費が半分で楽しさが倍になります。本当に楽しいラリーカーです」と、笑顔を見せた。
次戦は4月14日(金)~16日(日)にかけて、佐賀県・唐津市を拠点として行われる第3戦「ツール・ド・九州2023 in 唐津」(ターマック)が開催される。
(RALLY PLUS)
総合結果
順位 | クラス | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | JN1-1 | Heikki Kovalainen/北川 紗衣 | AICELLOラックDL速心FABIA | 44:42.1 |
2 | JN1-2 | 福永 修/齊田 美早子 | アサヒ☆カナックOSAMU555ファビア | 46:32.3 |
3 | JN1-3 | 鎌田 卓麻/松本 優一 | SUBARU WRX ラリーチャレンジ | 46:53.5 |
5 | JN2-1 | 奴田原 文雄/東 駿吾 | ADVAN カヤバ KTMS GRヤリス | 47:16.6 |
9 | JN4-1 | 内藤 学武/大高 徹也 | YHアーリット スイフト | 50:18.0 |
11 | JN3-1 | 山本 悠太/立久井 和子 | SammyK-oneルブロスYHGR86 | 50:35.9 |
24 | JN5-1 | 冨本 諒/里中 謙太 | ARTAオートバックスヤリスCVT | 54:11.7 |
26 | JN6-1 | 天野 智之/井上 裕紀子 | 豊田自動織機・DL・アクア | 54:39.0 |
注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。
参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。