ツール・ド・九州2023 in 唐津

開催日時:4月14日(金)〜16日(日)
開催場所:佐賀県唐津市、伊万里市周辺
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離:85.74km
ラリー総距離:328.44km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ウエット
ポイント係数:1.0

2023年シーズン全日本ラリー選手権第3戦「ツール・ド・九州2023 in 唐津」が、4月14日(金)~16日(日)にかけて佐賀県・唐津市を拠点に開催され、トップカテゴリーのJN-1クラスは、シュコダ・ファビアR5をドライブしたヘイキ・コバライネン/北川紗衣が勝利を飾った。2位にはトヨタGRヤリス・ラリー2の勝田範彦/木村裕介、3位にプジョー208ラリー4で走る新井大輝/金岡基成が入っている。

ターマック初戦の新城ラリーから約1カ月のインターバルを経て、全日本ラリー選手権の舞台は唯一の九州ラウンドとなる唐津へ。今回、前戦新城はオープンクラスでの参戦となった勝田範彦/木村裕介が、トヨタGRヤリス・ラリー2のJP4規定クリアを受けて、無事JN-1クラスへのエントリーを実現。チームは初戦で得たデータやフィードバックを活かすべく、唐津に向けたテストも実施している。

また、新井敏弘/保井隆宏と鎌田卓麻/松本優一を擁する「SUBARU RALLY CHALLENGE」は、スバルWRX STIに、シーケンシャル式トランスミッションを投入。 新井敏弘は「まだ使い慣れていないので、どこでギヤを変えればいいのか試行錯誤があります。ただ、シフトあたり0.2秒くらいはスピードアップするはず」と、その効果を語っている。

ラリーは唐津市と伊万里市に広がる山間部のターマックステージを走行。ステージには攻撃性の高い荒れたアスファルト路面が多いうえ、この時期は天候も変わりやすく、タイヤマネージメントが重要な鍵となる。今回のラリーには新城に続き、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのヤリ-マティ・ラトバラ代表が来日。デモンストレーション走行をはじめ、サイン会やトークショーにも参加した。

レグ1

3月15日朝にサービスパークが置かれた「ボートレースからつ」でのセレモニアルスタートを実施。続いて行われるラリー初日は、10km以上を走行する「SANPOU(11.85km)」に「UCHIURA(4.74km)」と「HACHIMAN(5.67km)」の3SSを、サービスを挟んでループする44.52km。
前日までの予報どおり、朝から雨が落ちており、ステージはフルウエットコンディションとなった。SS1は、この日の最長距離の11.85kmを走行する「SANPOU 1」。ベストタイムを刻んだのは前戦のウイナー、コバライネンだった。ステージ終盤で金属片を拾ってパンクを喫しながらも、このステージだけで2番手の鎌田を13.1秒差も引き離してみせた。「タイヤにカットを入れすぎた」と振り返った新井敏弘が13.6秒差の3番手。14.2秒差で勝田、17.4秒差で2輪駆動のプジョー208ラリー4をドライブする新井大輝が続く。

SS2もコバライネンが制し、ここでは最初のステージで7番手に沈んだ福永が3.3秒差のセカンドベストをマーク。SS3は、スローパンクチュアに見舞われながらもコバライネンが3連続ベストタイム。午前中のセクションを終えて、コバライネンは2番手の勝田に25.2秒ものアドバンテージを手にしている。

2番手につけた勝田は「前戦のクラッシュもありましたし、恐る恐る走っている状態です」と、2番手という順位にも納得がいっていない様子。その後方、26.0秒差の3番手に福永、SS2でコースオフを喫して数秒を失った鎌田は26.6秒差の4番手で午前中のセクションを終えた。「2輪駆動でウエットは厳しい」と振り返った新井大輝は5番手。SS3でハーフスピンを喫した新井敏弘は6番手に沈んでいる。

ボートレースからつでのサービスを挟んだ午後のセクション。コースの一部で濃い霧が発生するなか、視界不良をものともせずコバライネンが圧巻の3連続ベストをたたき出す。コバライネンは、この日行われたすべてのステージを制し、初日だけで2番手以下との差を1分近くにまで拡大した。

「難しいコンディションだったけれど、無理をせず、とてもいい走りができた。タイヤは午前中の4本カットから、2本カットに変更して走った。路面があまり濡れていない場所ではさらにプッシュできたよ。マシンのセットアップもバッチリで、良いリードを得られた。明日も同じようなペースで走るつもりだ。あまり落としすぎると、逆に危険だからね」と、コバライネンは余裕の表情で語った。

雨が上がった午後のセクション、乾きつつある路面でスピードアップを披露したのが新井大輝。SS4とSS6で2番手タイムを刻み、“格上”の4輪駆動勢を従え、首位から56.1秒差の2番手で初日を折り返した。「セットアップを変えたことがばっちり決まりました。上手くいきすぎたくらいです。ただ、霧でまったく視界がなかった箇所もあったので、それがなければ、もう少し行けたはずです」と、笑顔を見せている。
56.7秒差の3番手は、午後のセクションでペースを上げた福永。1分11秒3差の4番手には鎌田、1分13秒8差の5番手に、1分22秒8差の6番手に新井敏弘が続き、ベテラン勢が厳しい戦いを強いられることになった。

JN-2クラスは、今回から待望の新車を投入した奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が、SS1から好タイムを連発。SS3ではJN-1クラスのコバライネンに続く総合2番手タイムを刻み、ライバルを圧倒した。奴田原は、この日行われた6本中5本のSSでベストタイムをマークし、2番手につける山田啓介/山本祐也(トヨタGRヤリス)に、56.7秒差をつけて、初日をトップで折り返した。3番手の徳尾慶太郎/枝光展義(トヨタGRヤリス)と、4番手の横尾芳則/井手上達也の差は、15.3秒差とまだまだ分からない状況だ。

JN-1勢に割って入るタイムを記録した奴田原は「午後は霧もあり、危なくてペースを落としました。ある程度差をつけてしまうと、張り合う必要もないし、怖い状況では気持ち的に落ちてしまいますね。クルマはシャキっとしていて、新車はやっぱりいいですね。去年までやってきたことを盛り込んだことで、午前中の走りができたんだと思います」と、納得の表情。2番手の山田は、4WDマシンでウエットコンディションでの走行経験がない中、徳尾と横尾のベテランふたりを抑えて見せた。「新城からクルマのセッティングを変えたことで、トラクションが掛かるようになって、かなり乗りやすくなりました。それが厳しい路面でも効いた気がします。昨年、86で感じていたような、クルマとの一体感も得られるようになってきました」と、ドライビング面での成果を語る。

JN-3クラスは、前戦新城のウイナー、山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)がスタートから好走。最初のセクションを終えて、SS3でベストタイムをマークした長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)が9.2秒の2番手で続く。しかし、サービスを挟んだ午後のセクション、SS4で長﨑がスタート直後の左コーナーでコースオフを喫してリタイア。首位の山本は、その後も着実なペースで首位を走行し、2番手の鈴木尚/島津雅彦(スバルBRZ)に31.5秒差をつけて初日をトップで折り返した。鈴木から9.0秒差の3番手には、山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)がつけている。

最大のライバル長﨑が脱落したことで余裕の首位走行となった山本は「路面が思ったよりも滑って、完走するのも難しいコンディションでした。それでも20秒差のトップで折り返すことができたのは良かったですね。明日は路面が乾いてくると、滑る箇所とグリップする箇所がでてくるので、その辺りが心配です。無理はしないつもりですが、ペースを調整しても逆に危ないので、深く考えずに自分のペースで走ります」と、慎重なコメントを残した。

JN-4クラスは、は昨年王者の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が、この日行われたすべてのステージでベストタイムをマーク。2番手以下に44.1秒の大差をつけて、首位を独走している。熾烈を極めたのは、ともにスズキ・スイフトスポーツで参戦する鮫島大湖/船木佐知子と、黒原康仁/松葉謙介による2番手争い。西川からは大きく引き離されてしまったものの、6SSを走行してふたりの差はわずか0.4秒。その後方、黒川の14.4秒差には前田宣重/勝瀬知冬(スズキ・スイフトスポーツ)がつけている。

新城は内藤学武の前に完敗で終わった西川、「今日はタイヤ、ブレーキ、足まわりが完璧なマッチングを見せてくれました。前回、内藤選手を相手に何もできなかった反省点があるので、今回のラリーはしっかりと自分のスキルアップにつなげたいです。最近は、どうすれば内藤選手に勝てるか、そればかりを考えています」と、コメント。西川の独走を許してしまった鮫島は「西川選手が速いですね。自分はペースが上がりきっていないです。クルマがまだ調整しきれていない感じです……」と、首をひねる。

JN-5クラスは、SS1でタイヤと路面が完璧にマッチした松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス)が、2番手以下を15秒近くも引き離すベストタイムをたたき出す。しかし、午後のセクションでペースを上げた大倉聡/豊田耕司(トヨタ・GRヤリスRS)が、SS4で松倉をパス。松倉に10.5秒差をつけて初日首位に立った。松倉から4.8秒差の3番手は、霧が深くなったSS5とSS6で連続ベストを刻んだ吉原將大/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)。その4.9秒差後方には、ベテランの小川剛/梶山剛(トヨタ・ヤリス)が続いている。

首位の大倉は「フルウエットになったSANPOU 2では、ウエット寄りのセッティングがハマりました。僕らにとっては恵みの雨でしたね。ここでプッシュしないと追いつけないと思って、攻めたのが良かったです。残りの2本は霧がすごかったですし、あまりリスクを負えないので、タイヤを使わないように走りました」とコメント。午前中のセクションで首位を走行しながら、大倉の逆転を許した松倉は「2回目のSANPOUの方が気持ちよく走れたのですが、取りこぼしている箇所がいくつかありました。その差が結果となった感じです。路面がフルウエットだったので、大倉選手のタイヤの方が合っていました」と、悔しさをのぞかせた。3度のベストを刻みながら、3番手となった吉原は「霧もありましたが、SS4でインカムトラブルがあったのが痛かったです。それでも、気持ちを切らさなかったことで、その後の2SSを制することができました」と、振り返っている。

JN-6クラスは、開幕2連勝中の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、路面にタイヤがマッチしなかったSS4以外の全SSでベストを記録。午後のセクションで2度のスピンに見舞われた海老原孝敬/遠藤彰(ホンダ・フィット・ハイブリッドRS)は、29.6秒差の2番手。自分のペースを守って走行を続けたモータージャーナリストの清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス・ハイブリッド)が、3番手につけている。

タイヤがグリップしなかったSS4以外は、安定したペースを披露した天野、「2回目のSANPOUは雨が上がると考えていたのですが、逆のコンディションになりましたね。完全に裏目に出ました。僕はJN-6クラスだけでなく、上のクラスのタイムも見ています。海老原選手もかなり速いので、この2台が割って入っていけば、ハイブリッドも注目してもらえるはずです」と、首位だけでは飽き足らない様子。2番手の海老原は「天野選手と離れてしまいましたね。午後のSANPOUは上手くまとめられたのに、その後の2本でスピンしてしまいました」と、反省の弁。3番手につける清水は「最後にパンクがありましたが、だいたい天野選手からキロ2秒、海老原選手からキロ1秒差ですから、悪くないタイムです。ペースノートに対する信用が甘いので、霧が出てしまうと厳しいですね」と、こちらは納得の表情だ。

レグ2

ラリー2日目は「BIZAN(6.16km)」と、前日のSS1/SS4の逆走となる「SANPOU REVERSE(11.96km)」に、サービスパークが置かれたボートレースからつでのショートステージ「BOAT RACE(0.41km)」をリピートする6SS、37.06km。

前日から降り続いていた雨は朝の段階で上がり、サービスには日が射し始めている。初日の段階で2番手の新井大輝/金岡基成(プジョー208ラリー4)に1分近いアドバンテージを築いてスタートした首位のヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)は、予想以上にウエットが残った路面でもペースを緩めることなく、オープニングのSS7では勝田範彦/木村裕介(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)に7.9秒差をつけるベストタイムを刻む。

様々なセッティングを試しながら走行する勝田は、鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)をかわし、4番手にポジションアップ。3番手タイムの福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)は、新井大輝をとらえて2番手に順位を上げている。

この日最長の11.96kmを走るSS8もコバライネンが制し、勝田が11.8秒差の2番手タイムで続く。このステージ、福永はコバライネンから24.8秒差の7番手タイムと大きくペースダウン。その後方では新井大輝が再び福永を抜き返し、2番手に立った。ギャラリーが見守るSS9は福永がコバライネンの連続ベストを止め、今回初の一番時計をマークした。

午前中のセクションを終えて、首位のコバライネンと総合2番手につける新井大輝との差は1分26秒3に拡大。コバライネンが盤石の展開で首位を独走する一方、新井と3番手福永の差が1.6秒、勝田と4番手の福永の差が3.6秒、福永と5番手につける鎌田との差が9.5秒と、2番手以下の順位は最終セクションで大きく動く可能性がある。

サービスを挟み、同じステージをリピートする午後のセクション。コバライネンは乾きつつある路面をウエットタイヤで走りながら、SS10とSS11で余裕の連続ベスト。スタートから一度も首位を譲ることなく、シーズン2勝目を飾った。ライバルの4駆勢に対して、2輪駆動のプジョー208ラリー4で2番手を守っていた新井大輝だったが、ラリー終盤にかけて尻上がりにペースを上げた勝田が、SS11で新井大輝をパス。さらにSS11のスタート前、3番手につけていた福永が駆動系のトラブルによりマシンを止めており、勝田が2位表彰台を獲得。新井大輝がこちらもシーズン初となる3位表彰台を手にした。

2分10秒1差の4位は、最終のSS12でベストタイムをマークした鎌田。初日の遅れを取り戻すことができなかった新井敏弘/保井隆宏(スバルWRX STI)が2分20秒7差の5位、眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスDAT)は、3分2秒1差の6位で走りきっている。

完璧な展開で2連勝を飾ったコバライネンは「今回、マシンバランスの素晴らしさに助けられた。この2戦、僕らはかなり強力なパフォーマンスを見せることができたね。ただ、昨日は難しいコンディションで2度のパンクがあったし、今日も午後のセクションは、ドライ路面をウエットタイヤで走ったことで、タイヤのオーバーヒートに注意する必要があった。ここで勝てたことはうれしいし、とてもいいラリーになった」と、コバライネンはフィニッシュ後に笑顔を見せた。

ニューマシンのGRヤリス・ラリー2で初表彰台を獲得した勝田は「予想もしていなかった2位表彰台になりました。ただ、これは福永選手のリタイアがあっての結果です。とにかく『完走すれば、何かを持ち帰ることができる』と考えて走りました」と、喜びを語っている。前日の2番手から、最終的に3位へと順位を落とした新井大輝は「午後はウエットと読んでいたので、乾いた路面はかなり厳しかったんですが、とにかく表彰台に上がれて良かったです。ライバルのニューマシンたちのセットアップが決まる前に、シーズンの早い段階で表彰台に上がりたいと考えていました。今回、それが上手くいってすごくうれしいです」と、納得の表情を見せている。

JN-2クラスは、初日の段階で大差をつけた首位の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が、目まぐるしく変わるコンディションの中、全ステージでベストタイムを奪取。SS10、SS11では2連続で総合2番手タイムも刻み、JN-2クラス2連勝を飾った。この日も自身のペースを守って、ドライビングの習熟に努めた山田啓介/藤井俊樹(トヨタGRヤリス)が、こちらも2戦連続の2位表彰台。3番手に付けていた徳尾慶太郎/枝光展義(トヨタGRヤリス)を、SS8で横尾芳則/井手上達也がパス。その後もミスなく走り切り、うれしい3位表彰台を得ている。

2連勝を飾った奴田原は「唐津はチャレンジングで面白いステージが多いので、色々と試すことができました。これまでやってこなかった、ウエットとドライのクロスパターンも試しています。僕は常にヘイキ(コバライネン)のタイムを見ていて、キロ1.5秒で抑えたいと考えて走りました」と、JN-1クラスを見て走っていることを明かした。JN-2クラスにステップアップ後、着実に進化を続けている山田は「今日はウエットタイヤ4本で走りました。午後はドライになったことで、ウエットでは厳しかったんですが、今までの総復習のつもりでフルアタックしました。タイム的にも奴田原選手から大きくは離されなかったので、自信を持てる良い1日になりました」と、収穫を語っている。シーズン初表彰台となった横尾は「乾きつつあるコンディションに対して、徳尾選手はタイヤを外していたようで、タイムを落としていました。比較的、楽に逆転することができましたね」と、笑顔を見せている。

JN-3クラスは、初日首位の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が、コンディションが切り替わる難しい状況でも安定したペースで走行。前戦新城に続く2連勝を飾った。初日3番手からスタートした山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)は2.4リッターエンジンのアドバンテージを活かし、旧型スバルBRZをドライブする鈴木尚/島津雅彦との差を詰め、SS10で逆転。その後も鈴木を突き放し、最終的に17.1秒差をつけて2位でフィニッシュした。

ターマック2連勝を飾った山本は「結果としては独走になりましたね。後ろとはマージンがあったので、抑える方向で守りの走りになりました。コンディションの変化はありましたが、ウエットタイヤで無難に走りました」と、コメント。2位を得た山口は「なんとか逆転できました。2日目にコンディションが変わって、タイヤの選択がかなり難しかったです。ウエットのセットアップでずっと走りましたが、それが結果的に良かった気がします」と、笑顔を見せた。一方、3位に終わった鈴木は「最終ループで引き離されてしまいましたね。ドライ寄りのタイヤを履くべきだったと思います。400cc差はありますが、これでなんとか一泡吹かせたいです」と、挽回を誓っている。

JN-4クラスは、初日の段階で2番手以下に十分なアドバンテージを確保した西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が、無理のないペースで首位をキープ。スノーラリーの開幕戦嬬恋に続く、シーズン2勝目を手にした。いずれもスズキ・スイフトスポーツを駆る鮫島大湖/船木佐知子と、黒原康仁/松葉謙介による2番手争いは、この日最長の11.96kmを走る「SANPOU REVERSE 1」でベストタイムを奪った黒原が、鮫島を突き放し2番手に浮上。さらに、SS9では前田宣重/勝瀬知冬(スズキ・スイフトスポーツ)が鮫島をパスし、3番手に。最終ステージまで順位を入れ替えながら続いた前田と鮫島の3番手争いは、SS12をベストで走り切った前田が、わずか0.3秒鮫島を上回って決着。前田がシーズン初表彰台を獲得している。

2勝目を飾った西川は「前回は不甲斐ないラリーだったのですが、今回はなんとか自分の走りができました。デイ1でタイムが稼げたので、雨が降っても大丈夫なように、ウエットセットとウエットタイヤの組み合わせで走りました。ただ、午後のセクションは自分の悪い癖が出てしまったので、次戦ではなんとかしたいです」と、優勝にも反省のコメント。前日の3番手から2位に順位を上げた黒原だったが「2位に入れたので、最低限の目標はクリアできたと思います。1位を狙っていましたが、最後に西川選手に引き離されてしまいましたね」と、悔しさをのぞかせている。SS11の段階で3.2秒差あった鮫島との差を最終のスラロームステージで逆転した前田は「ジムカーナの練習をしてきましたが、今回はできすぎです。コ・ドライバーのおかげですね」と、喜びを語っている。

JN-5クラスは、初日トップの大倉聡/豊田耕司(トヨタ・GRヤリスRS)が3本のベストを含み、大きなミスなくまとめ、待望のシーズン初勝利。2位には松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス)。SS9で吉原將大/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)を逆転した小川剛/梶山剛(トヨタ・ヤリス)が、3位を得た。

大倉は「結果ほど、簡単な展開ではなかったです。最後までプッシュしましたし、薄氷を踏むような厳しいラリーになりました」と、待望のシーズン初勝利にも厳しいコメント。2位の松倉は「ウエットが残った最初のループは、滑る路面で上手く走ることができました。ただ、ドライアップした午後は厳しかったです。SANPOU REVERSE 2では、タイヤが持たず、軽くコースオフしたんですが、なんとか戻ってこられて良かったです」と、安堵の表情を見せた。前日の4番手から3位に順位を上げた小川は「半年ぶりのラリー参戦だったので、なんとか表彰台に上がれて良かったです。次戦以降全戦に出る予定。ただ、トップとはちょっと差がありますね」と、今後に向けて語っている。

JN-6クラスは、初日首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、林道ステージで5連続ベストをマーク。2位の海老原孝敬/遠藤彰(ホンダ・フィット・ハイブリッドRS)との差を1分12秒6に拡大し、シーズン3連勝を飾った。モータージャーナリストの清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス・ハイブリッド)が、シーズン初となる3位表彰台を獲得している。

盤石の強さを見せた天野は「このクルマが苦手な路面がよく分かってきました。唐津で得たデータは今後に活かせると思っています。次戦以降はセットアップを煮詰めて、今回苦手だった場所もしっかり走れるようにしたいですね。クルマ的にはまだまだ進化しそうです」と、さらなるスピードアップを宣言。海老原は「天野選手に置いていかれてしまいました。次戦に向けてしっかり対策したいです」と、打倒天野を誓う。3位表彰台を得た清水は「同じ唐津のステージでも、色々と微妙に違っていました。経験がないと、どこまで攻めていいのか分からない。タイヤのマッチングも含めて、いい勉強になました」と、収穫を語っている。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 Heikki Kovalainen/北川 紗衣 AICELLOラックDL速心FABIA 1:06:45.1
2 JN1-2 勝田 範彦/木村 祐介 GR YARIS Rally2 1:08:40.6
3 JN1-3 新井 大輝/金岡 基成 Ahead プジョー208 ラリー4 1:08:46.3
5 JN2-1 奴田原 文雄/東 駿吾 ADVAN カヤバ KTMS GRヤリス 1:08:56.8
14 JN3-1 山本 悠太/立久井 和子 SammyK-oneルブロスYHGR86 1:12:58.7
16 JN4-1 西川 真太郎/本橋 貴司 スマッシュDLモンスターitzzスイフト 1:13:18.6
19 JN5-1 大倉 聡/豊田 耕司 AISIN GR Yaris CVT 1:13:56.7
32 JN6-1 天野 智之/井上 裕紀子 豊田自動織機・DLアクアGR SPORT 1:15:31.1

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN-1クラス優勝 Heikki Kovalainen/北川紗衣

JN-2クラス優勝 奴田原文雄/東駿吾

JN-3クラス優勝 山本悠太/立久井和子

JN4クラス優勝 西川真太郎/本橋貴司

JN-5クラス優勝 大倉聡/豊田耕司

JN-6クラス優勝 天野智之/井上裕紀子