RALLY三河湾2025 Supported by AICELLO

開催日時:2月28日(金)〜3月2日(日)
開催場所:愛知県蒲郡市、岡崎市、豊川市、額田郡幸田町周辺
スペシャルステージ本数:14本
スペシャルステージ総距離:76.32km
ラリー総距離:245.87km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.0

2025年シーズン全日本ラリー選手権開幕戦「RALLY 三河湾 2025 Supported by AICELLO」が、2月28日(金)~3月2日(日)にかけて、愛知県蒲郡市を拠点に開催された。トップカテゴリーのJN-1クラスは勝田範彦/保井隆宏が優勝。2位にヘイキ・コバライネン/北川紗衣、3位に奴田原文雄/東駿吾が入り、トヨタGRヤリス・ラリー2勢が、表彰台を独占することになった。

昨シーズンの最終戦高山から約5カ月のインターバルを経て、全日本ラリー選手権は、開催2年目のラリー三河湾で新たなシーズンの幕を上げた。トップカテゴリーのJN-1クラスは、鎌田卓麻/松本優一が、スバルWRX STIからシュコダ・ファビアR5に車両をスイッチ。鎌田待望のR5マシンは、日本のラリーファンにもおなじみのカストロールカラーをまとう。

昨シーズンの王者、新井大輝/立久井大輝(ファビアR5)は、新たに「R2R×YAHAGI Racing Team」を結成し、全日本ラリーへの参戦を継続。チーム運営はR2R、車両メンテナンスなどは愛知県豊田市に本拠地を置く矢作産業が担当する。福永修/齊田美早子は予告どおり、最新のシュコダ・ファビアRSラリー2を導入。新井敏弘/小坂典嵩は、軽量化とリヤサスペンションのアップデートを施したスバルWRX VBHを持ち込んでいる。

■レグ1

2025年のラリールートも、山間部を走る高低差のあるワインディングロードや、竹島埠頭を利用したフラットなコースなど、バリエーションに富んだステージで構成。ラリー初日は「SSS がまごおり竹島(0.87km)」、「SSS 西浦シーサイドロード(4.44km)」、「三河湾スカイライン(10.08km)」の3SSをサービスを挟んでリピートし、最後に多くのギャラリーが集まる「SSSキズナ1(0.70km)」で締めくくる7SS、31.48kmが設定された。

2月28日金曜日の夕方から、今年も蒲郡駅前で華やかなセレモニアルスタートを実施。本格的なステージが幕を上げた3月1日土曜日、オープニングのSS1からドラマが待っていた。スタート直後、先頭スタートの新井大輝のファビアR5にトラブルが発生。リヤデフのオイル漏れを起こしてしまう。新井大輝はこのステージを制した福永から1.6秒差の3番手タイムで走り切ったものの、悔しいレグ離脱を決めた。このステージでは、スタートでファビアR5での初戦に臨む鎌田がストール。エンジンを始動し直し、数秒をロスしてのスタートとなった。

SS2はコバライネンがコース上のドラムを破損したことで再設置が不可能となり、ドラムなしで以降の競技車を走行させたことにより、審査委員会は国内競技規則2-14 1) により、先に走行していた勝田、奴田原、福永、新井敏弘には、コバライネンの後に走行した鎌田のトップタイムを同率で与える裁定を行っている。

この日最長の10.08kmを走行するSS3は、鎌田がコバライネンに4.2秒差をつけるベストタイムをマークし、コバライネンに2.6秒差の首位にジャンプアップした。勝田は3.3秒差の3番手にポジションダウンし、5.9秒差の4番手には奴田原がつける。5番手の福永は思うようにペースが上げられず、首位鎌田との差は16.2秒差に拡大した。JP4規定マシンで孤軍奮闘する新井敏弘は、17.8秒差の6番手とこちらも優勝争いから遠のいている。

サービスを挟んだ午後のセクション。SSSがまごおり竹島の再走となるSS4は、午前中に続き福永が、同タイムで並んだ鎌田とコバライネンに0.7秒差のベストタイム。SS5はコバライネンが今回ラリー初となる一番時計をたたき出し、首位鎌田との差を一気に0.2秒差にまで縮めてみせた。するとコバライネンは、ロングステージのSS6でも鎌田に3.4秒、勝田に4.1秒差をつけるベストを刻むと、鎌田に3.2秒差をつけて首位に立った。

この日を締めくくるSS7は福永がこの日3度目となるベストタイム。午前中はタイヤと路面のマッチングを踏まえて慎重に走行していたコバライネンは、気温が上がった午後にプッシュ。合計タイムで2番手につける鎌田に4.1秒差をつけて、初日を折り返した。

「午前は、ミディアムタイヤのウォームアップに少し問題があった。でも、午後は気温が上がってきたことで、同じコンパウンドがしっかりと機能してくれた。あと、ラリージャパンでのクラッシュもあったから、午前中はすこし躊躇してしまったんだろうね。午後は自信が戻ってきて、アタックもできたよ。明日は接戦が続いているし、午前中どのタイヤを選ぶのか考えていると」と、コバライネンは慎重にコメント。

久々に優勝争いに絡むこととなった鎌田は「ヘイキが速かったですね。僕としては今日は上出来です。無理をせず淡々と走ってこのタイムとポジションは、100点満点。これまでやってきた経験が活きて、今のスピードがあります。スバルさんに鍛えてもらったことで、無駄ではなかったと実感しています」と、納得の表情をみせている。

ところが、暫定リザルトで首位に立っていたコバライネンに、SS7「SSS キズナ」でのミスコースにより1分のペナルティが科されることに。このステージはサービスパークに隣接されたダート路面のパイロンコースだったが、巻き上がったダストが落ち着かず、視界不良を訴えるドライバーが続出。パイロンが見えずにミスコースが相次ぎ、ここではコバライネンを含めた10名にペナルティが科されている。

これでコバライネンは6番手に後退。鎌田卓麻が首位に立ち、勝田範彦、奴田原文雄、福永修、新井敏弘がそれぞれひとつ順位を繰り上げた。

JN-2クラスは、創設から2シーズン目を迎えたMORIZO Challenge Cup(MCC)の9台を含めた、計20台がエントリー。昨年、JN-4を連覇した内藤学武/大高徹也(トヨタGRヤリス)、全日本タイトル獲得経験を持つ大倉聡/豊田耕司(GRヤリス)、MCCの初代王者山田啓介/藤井俊樹(GRヤリス)など有力クルーが数多く登場して大盛況となった。

初日は、2度のベストタイムを刻んだMCCの大竹直生/橋本美咲(GRヤリス)がトップ。0.1秒差の2番手に内藤、0.4秒差の3番手に山田、2.2秒差の3番手に小泉敏志/村山朋香(GRヤリス)、3.4秒差の4番手にMCCを卒業した貝原聖也/西﨑佳代子(GRヤリス)とトップ4が4秒差以内にひしめいている。一歩出遅れてしまったのは、昨年のJN-2チャンピオン、三枝聖弥/木村裕介(スバルWRX STI)。SS1ではストールを喫するなど思うようにペースを上げられず、14.8秒差の5番手で初日を終えた。

僅差ながらもクラストップの大竹は「とにかく安全第一で ペースをコントロールしながら走りました。それでもトップに立てて、すごく満足しています。 午後は全然ペースを上げずに、同じペースで走るという作戦で走りました。まだ余裕もありますし、とにかく淡々とステージをこなせた印象です」と、納得の表情。初のJN-2クラス参戦ながらもSS5ではクラスベストタイムをマークし2番手につけた内藤は「まだFF的に乗っていて、どこで4WDを活かせるのか考えながら走りました。午後は、午前中に気づいた反省点を修正できました。今日はハイスピード中心でしたが、明日はツイスティなセクションもあるので、上位と同じようなタイムが出せるのかが課題です」と、冷静に語る。

トヨタGR86/スバルBRZによって争われるJN-3クラスは、昨年連覇を飾った山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)がSS1からSS3まで連続ベストを刻み、長﨑雅志/大矢啓太(GR86)に7.7秒差をつけて初日を首位で折り返した。昨年まで山本がドライブしていたマシンを引き継いだ下口紘輝/小林一貴(GR86)が、17.6秒差の3番手。優勝候補の一角に数えられていた山口清司/澤田耕一(GR86)は、SS5でミッショントラブルによりラリー続行を諦めている。

僅差の展開ながら初日首位に立った山本は「ラリーをリードしていますが、クルマのセットアップがあまり上手くいっていない感じです。それもあっていくつかのステージで長﨑選手に先行されてしまいました。最終日からが三河湾の本番と思っています。天気が心配ですが、気をつけて走ります」と、振り返る。長﨑は「ハイスピードセクションではもう少しプッシュできた気がしますし、課題がいくつか残りました。明日はステージ内でスピード域が変わるなど切り替えが求められるので、しっかりと対応したいです」と、こちらも笑顔はない。GR86での初日を3番手で走り切った下口は「初めてのクルマだったのですが、SS3で調子をつかむことができました。明日は性格の異なるステージなので、気をつけながら最終的に表彰台に上がりたいです」と、コメントしている。

スズキ・スイフトスポーツによって争われるJN-4クラス。全日本ラリー初出場となった若手の藤原友貴/宮本大輝(スズキ・スイフトスポーツ)がSS3で初ベストを刻むと、SS6で首位に浮上。ベテランの須藤浩志/新井正和(スイフトスポーツ)に4.0秒差、高橋悟志/箕作裕子(スイフトスポーツ)に7.1秒差、筒井克彦/本橋貴司(スイフトスポーツ)に14.7秒差をつけて、初日を首位で折り返した。

初の全日本ラリーでトップを快走した藤原は「前半のセクションはクルマも初めてだったので、タイムが伸び悩みました。それでも、林道にしっかり合わせ込んだこともあって、SS3とSS6の『三河湾スカイライン』はしっかりハマって、ベストタイムを記録できました。明日はツイスティなステージとなるので、しっかりと今日の走りを確認して挑みます」と、冷静にコメント。2番手の須藤は「藤原選手は高速セクションがめちゃめちゃ速いですね。後半、頑張ったんですが、タイヤ選択のミスなどが重なって、思うようにタイムが伸びませんでした。明日は今日と違う道になるので、オジさんたちの経験を活かして、若いドライバーに対抗します(笑)」と、最終日に逆転を狙う。

JN-5クラスは、昨年チャンピオンの松倉拓郎がスキップし、シリーズ2位の大倉聡がJN-2クラスへと移ったため、戦況の予想が難しい展開に。混戦が期待されるなか、昨年はMCCに参戦していた中溝悠太/佐々木裕一(トヨタ・ヤリス)が、2番手の小川剛/山本祐也(ヤリス)に30秒近くの大差をつけてみせた。3番手に島根剛/粕川凌(ヤリス)、4番手にIto Rina/松浦俊朗(マツダ・デミオ)のオーダーで続く。

首位の中溝は「なんとか無事に帰ってこられて良かったです。今日は、新しいラリーカーとタイヤに慣れることに集中しましたが、まだタイヤの特性を掴みきれていません。それでも、道幅が広い今日のステージは得意なので、安心して攻めることができました」と振り返った。2番手につけたベテランの小川は「半年ぶりに修理が終わってこのクルマに乗ったので、ようやくリハビリが終わったところですね。スピンやミスコースなどもあったなかで、2番手で折り返すことができて良かったです」と、納得の表情を見せた。

これまでのJN-6に代わり、今シーズンから「駆動方式を問わず、気筒容積が2500cc以下のAE車両」という新たな環境対応クラスへと変更されたJN-Xクラス。昨シーズン、圧倒的な強さでJN-6を制した天野智之/井上裕紀子が、マシンをトヨタRAV4 PHEVにスイッチしてエントリーした。天野は序盤こそ、清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)の先行を許したものの、SS3で初ベストを刻んで首位に立つと、残りのSSをすべて制してみせた。初日を終えて首位天野と2番手清水の差は23.6秒。3番手にはベテランの中西昌人/山村浩三(ホンダCR-Z)がつける。

昨年までのマシンとはまったくサイズが異なるニューマシンに戸惑いながらも首位を快走した天野は「RAV4 PHEVは、速いところは速いのですが、車重があるのに小さいタイヤを履かなくてはならないので、ステージによっては出力ほどのタイムは出ないですね。ちょうどコンパクトカーと競うレベルにあります。もっと遅いクルマだと思われていたでしょうし、この大きなSUVが素早いコンパクトカーと同等レベルで競うなんて誰も想像していなかったはずです(笑)」と新しい試みに笑顔を見せる。今回も天野の先行を許した清水だったが、「ベストタイムが獲得できたのは、自分の走りがアップデートできたから。路面だったり、タイヤだったり、データをしっかり分析した上で走っています。昔は気合で有視界でしたからね(笑)」と、自身の成長を語る。

■レグ2

ラリー2日目は「豊川宮路山(10.70km)」、「岡崎桑谷とぼね(6.57km)」、「深溝運動公園(4.80km)」の3ステージをサービスを挟んでリピートし、最後に前日も走行したギャラリーステージ「SSSキズナ2(0.70km)」で締めくくる7SS、44.84km。ハイスピードセクション中心の前日から一転、ツイスティな林道ステージが中心の1日となる。

JN-1クラスは、初日のSS1でデフトラブルによりレグ離脱していた新井大輝/立久井大輝(シュコダ・ファビアR5)が早朝までかけてマシンを修復し、再出走にこぎつけた。前日のSS7においてヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGRヤリス・ラリー2)がミスコースにより1分間のペナルティが科されたことを受けて、鎌田卓麻/松本優一(ファビアR5)が首位で最終日をスタートする。

4.8秒差の2番手に勝田範彦/保井隆宏(GRヤリス・ラリー2)、12.0秒差の3番手の奴田原文雄/東駿吾(GRヤリス・ラリー2)、31.2秒差の4番手に福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアRSラリー2)、45.3秒差の5番手に新井敏弘/小坂典嵩(スバルWRX VBH)、55.9秒差の6番手にコバライネンというオーダーで最終日をスタートした。

オープニングのSS8はマシントラブルを解消した新井大輝が、勝田に9.6秒差をつける圧巻のベストタイム。鎌田は16.5秒差の4番手タイムに沈み、勝田が鎌田に2.1秒差をつけて首位に立った。3番手タイムのコバライネンは福永をかわして総合4番手に浮上。このステージでは新井敏弘がコーナーでマシンをヒットし、右フロントの足まわりにダメージを負ったことでリタイアを決めている。

レグポイントを狙う新井大輝はSS9、SS10と連続ベストタイムをマーク。一方、SS9では鎌田が、イン側の側溝に引っかけてスピンし、道が狭いためにコース復帰まで20秒以上もタイムロスしてしまう。これで奴田原が首位の勝田に22.2秒差の2番手にポジションアップ。午前中のセクションを終えて、首位勝田と2番手奴田原との差は20.4秒。24.9秒差の3番手に鎌田、47.0秒差の4番手にコバライネン、1分14秒8差の5番手に福永というオーダーで続く。

サービスを挟んだ午後のセクション「昨日のペナルティで順位も下げたし、無理な走りはしない」と語っていたコバライネンが、SS11とSS12で連続ベスト。鎌田と奴田原をかわして一気に2番手にポジションアップを果たした。

首位の勝田は、多くの観客が集まったSS14「SSSキズナ2」をベストタイムでまとめ、三河湾2連覇を達成。2位は1分間のペナルティを科されながら、首位まで26.6秒差に迫ったコバライネン。30.7秒差の3位に奴田原が入り、トヨタGRヤリス・ラリー2勢が全日本ラリー選手権において初めてポディウム独占を達成した。58秒差の4位にはファビアR5での初ラリーを走り切った鎌田、1分45秒7差の5位には福永が入っている。

ライバルがトラブルやミスで脱落するなか、堅実な走行で開幕戦を制した勝田は「今回、16年ぶりに保井(隆宏)選手と組みましたが、コ・ドライバーとしての成長に驚きました。ラリー中は色々と助けてもらいましたし、彼からのアドバイスが気づきになりました。タカ(勝田貴元)からのドライビングに関するアドバイスも合わせて、これからもっと速くなれそうな予感がしています」と、喜びを語った。

コバライネンは「今日は特別なことはしていない。クルマをフィニッシュまで持ち帰っただけだよ。今日の午前中はとにかく慎重に走ったし、午後もハードプッシュしなかった。それでも、クルマのフィーリングは本当に良かった。次の唐津に向けてスピードは問題ないと実感した。でも、やっぱり優勝できなかったことが悔しいね。最後まで昨日のペナルティのことが頭にあったよ」と、2位にも悔しさを露わにしている。

3位で表彰台に上がった奴田原は「午後は頑張って走ったんですけど、最後ヘイキに逆転されてしまいましたね。それでも、舗装路において色々とクルマが上がってきたと実感しました。あとは、細かく見つめ直したいところもあって、もう少しですね。唐津に向けて頑張ります」と、コメントした。

JN-2クラスは、オープニングとなるSS8で2番手につけていた内藤学武/大高徹也(トヨタGRヤリス)がパンクに見舞われ、6番手までポジションダウン。その後、内藤はSS10ではペースノートのベンドを間違えて止まり切れず、スピンしてヒット。無念のリタイアに終わった。一方、初日首位の大竹直生/橋本美咲(GRヤリス)は「あくまでもMORIZO Challenge Cup(MCC)優勝が目標」と、2日目は慎重な走りに切り替え、SS8を終えてクラス4番手に順位を下げている。

混戦が続いた最終日、安定したスピードを披露したのが山田啓介/藤井俊樹(GRヤリス)。SS8でベストを刻むと一気に首位に浮上し、そのまま最終SSまでトップの座を守り切って昨年に続き開幕戦を制した。12.3秒差の2位には小泉敏志/村山朋香(GRヤリス)。3位には、ツイスティなセクションでペースを上げた三枝聖弥/木村裕介(スバルWRX STI)が入っている。一方、SS11まで3番手につけていた貝原聖也/西﨑佳代子(GRヤリス)は、SS12でコースオフを喫してリタイア。MCCは、初日クラストップの大竹が制している。

昨年ドライブしていたMCC仕様から、フルスペックのJN-2マシンを初めてドライブした山田は「JN-2のフルスペックマシンも含めて、色々と初体験の多いラリーでした。この僅差の展開では、何かトラブルがあったら逆転されていたと思います。いいクルマを用意してくれたチームに勝たせてもらいました」と、チームへの感謝を語った。小泉は最終日は連続ベストで勢いに乗りながらも、サイドブレーキのトラブルでペースを落とすことに。「SS11とSS12で連続ベストを獲ったところで、サイドブレーキが効かなくなりました。ツイスティなセクションで曲がり切れず、かなりタイムロスしてしまいました。今回の反省点を改善して、次の唐津は最初からプッシュできるようにしたいです」と、小泉は気を引き締めた。

JN-3クラスはこの日、波乱続きの展開となった。初日首位の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が、オープニングのSS8で右フロントタイヤをパンク。首位の座を長﨑雅志/大矢啓太(GR86)に明け渡した。その後、長﨑はSS12まで首位の座を守るが、SS13でダストに乗った際に左リヤを側溝に落とし、エンジンストール。再始動に時間がかかり、このステージでベストの山本から3分32秒遅れでのフィニッシュとなり、3番手まで順位を落としてしまった。フィニッシュを目前に再び首位に返り咲いた山本は、ショートステージのSS14を慎重に走り切って、開幕戦勝利を持ち帰った。2位は山本のチームメイトで全日本5戦目の下口紘輝/小林一貴(GR86)が、うれしい全日本初表彰台を獲得。3位は無念の表情を見せた長﨑が入っている。

地元ラリーを制した山本は「諦めずに最後まで走ったのが良かったですね。タイムで見れば午前中にパンクした分を巻き返せなかったんですが、結果的に長﨑選手のアクシデントがあって振り出しに戻りました。パンクしながらも2番手の位置に残れたことが、勝利につながりましたね」と、冷静にコメント。全日本初表彰台を手にした下口は「今回のラリーにおいて、自分ができる範囲で良い状態に持っていけたと考えています。ただ、上位との差が開いてしまったので、そこは次戦に向けての課題ですね。2位は上位選手の後退もありましたが、最高の結果になって良かったです。次は飛鳥に出る予定です」と、喜びを語っている。

JN-4クラスは、ツイスティなコースが中心となる最終日にベテラン勢が逆襲。昨年、チャンピオンと同ポイントのシリーズ2位となった高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)は、初日首位の藤原友貴/宮本大輝(スイフトスポーツ)から7.1秒差の3番手スタートから猛プッシュ。SS10と11で連続ベストを刻むと、一気に逆転。その後も2番手以降との差を広げ、総合でも11位に食い込む追い上げを見せて開幕戦優勝を果たした。逆転を許した藤原は最終盤まで2番手を死守していたが、わずか700mのパイロンコース、最終SS14で痛恨のミスコース。ウオータードラムへの接触もあり、計1分10秒のペナルティを科されたことで4位まで順位を下げることになった。これで、筒井克彦/本橋貴司(スイフトスポーツ)が2位、須藤浩志/新井正和(スイフトスポーツ)が3位に繰り上がった。

テクニカルなステージ中心の最終日に強さを見せた高橋は「このラリーで勝つことができて、本当に良かったです。午前中はかなりタイヤに負荷をかけていたので、午後は無理をしないように走りました。逆転できたのは経験の差ですかね(笑)。タイヤの状況を見ながら走ったことが勝因です」と、笑顔を見せた。予想外の2位表彰台を手にした筒井は「接戦となった初日は本当に楽しかったです。最終日は高橋選手に離されてしまいましたが、須藤選手からのプレッシャーも激しい中、2位が獲得できて良かったです」と、肩をすくめている。

JN-5クラスは、快調に首位を走行していた中溝悠太/佐々木裕一(トヨタ・ヤリス)が、SS11で痛恨のコースアウト。ここで戦線離脱となった。中溝のリタイアにより、2番手を走行していた小川剛/山本祐也(ヤリス)が首位に浮上し、そのままフィニッシュ。ホンダ・フィットで参戦した2021年の第4戦久万高原以来、4年ぶりの全日本勝利を手にした。初日を終えて7番手まで順位を落としていた河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)は、最終日の追い上げで2位表彰台を獲得。3位は今回が全日本参戦11戦目の阪口知洋/野口智恵美(日産マーチ)が、自身初となる3位表彰台を掴んでいる。

久々の全日本勝利を手にした小川は「まずは、フィニッシュに戻ってこられただけで良かったです。リハビリがてらでしたが、勝てたのは本当にラッキーでしたね。テストをせずに、ぶっつけ本番で挑んだラリー。今日のテクニカルなステージではなかなかギヤ比が合わなくて上れなかったのですが、ようやく最後に慣れてきました」と、安堵の表情。前日から大きく順位を上げた河本は「総合的に見ると、思った以上の結果が出せました。準備やクルマのメンテナンスなどラリー前にやってきたことが、いい方向につながりました。すごく大変でしたが、その苦労も報われました。手伝って頂いた人にも喜んでもらえそうです」と、周囲への感謝を語っている。

JN-Xクラスは、初日首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタRAV4 PHEV)が、この日のオープニングのSS8こそ清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)に一番時計を譲ったが、それ以外の全SSをベストタイムを並べ、トップフィニッシュ。マシンを変えても、その強さを見せつけた。ステージによっては天野をしのぐスピードを披露した清水が2位。3位は前日と変わらず、中西昌人/山村浩三(ホンダCR-Z)が入った。

ニューマシンでの初陣を勝利で飾った天野は「狭いSSではだいぶタイムを落としましたね。ツイスティな林道は、道の上にいるのが精一杯でした。もう少し踏めそうでしたが、ちょっとでもラインを外れてしまうと脱輪してしまうので……。マージンもありましたし、無駄なことをしてクルマを壊さないように安全第一で走りました。あとは、ウエットでこのマシンの挙動がどうなるかですね」と、余裕のコメント。2位の清水は「今回、JN-5クラスに割って入るタイムを記録できるようになりましたし、自分自身のドライビングは成長していることを実感しました。天野選手と比べると、物差しが分からなくなってしまいますからね(笑)」と、成果を語っている。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN-1 勝田 範彦/保井 隆宏 GR YARIS Rally2 54:42.1
2 JN-1 Heikki Kovalainen/北川 紗衣 AICELLO速心DLヤリスRally2 55:08.7
3 JN-1 奴田原 文雄/東 駿吾 ADVAN KTMS GRヤリスRally2 55:12.8
6 JN-2 山田 啓介/藤井 俊樹 FIT-EASYソミック石川DLGRヤリス 58:14.9
10 JN-3 山本 悠太/立久井 和子 SammyK-oneルブロスYHGR86 1:00:49.5
11 JN-4 高橋 悟志/箕作 裕子 ミツバWMDLマジカル冷機スイフト 1:01:02.9
27 JN-X 天野 智之/井上 裕紀子 TRT・DL・RAV4 PHEV 1:03:57.1
28 JN-5 小川 剛/山本 祐也 itzzノアBRIDE DL ANヤリス 1:03:59.0

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:本レポートおよび結果表はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材・入手したもので、JAFの公式発表ではありません。内容に誤りや他の発表と異なる場合がありますので、参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN-1クラス優勝 勝田 範彦/保井 隆宏

JN-2クラス優勝 山田 啓介/藤井 俊樹

JN-3クラス優勝 山本 悠太/立久井 和子

JN-4クラス優勝 高橋 悟志/箕作 裕子

JN-5クラス優勝 小川 剛/山本 祐也

JN-Xクラス優勝 天野 智之/井上 裕紀子