RALLY HOKKAIDO

開催日時:9月20日(金)〜22日(日)
開催場所:北海道帯広市
スペシャルステージ本数:14本
スペシャルステージ総距離:167.11km
ラリー総距離:661.09km
SS路面:グラベル
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.5

全日本ラリー選手権第8戦ラリー北海道は、新井大輝/小坂典嵩が今シーズン3勝目を挙げ、2位に新井敏弘/田中直哉、3位に鎌田卓麻/鈴木裕が入った。スバル勢としては4位の勝田範彦/石田裕一、5位の柳澤宏至/保井隆宏までの上位5台を独占する結果となった。

レグ1

9月20日(金)にスタートしたラリーは、初日に札内川河川敷でのSS1を行い、2日目の21日(土)から本格的な林道SSに挑むかたちとなる。いくつかのクラスでチャンピオンが決まるなか、タイトル争いの残るクラスにとってはシーズン終盤に向けて落とせないラリーと言えるだろう。

8SS中5SSを制した新井大輝がトップに立つJN1クラスは、上位5台までをスバル勢が占めている。新井大輝はオープニングステージとなるSS1を制し好スタート。SS2では鎌田が逆転するが、すぐさまSS3の一番時計で首位の座を取り返し、SS4でも連続ベストタイムをマークしてみせた。その後もSS6、SS7を制するスピードを見せてリードを築いていく。最後のSS8は奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューション)がベストタイムを刻んだものの、奴田原は途中のアクシデントで順位を落としており、新井大輝の首位は揺るがない。結果、2番手の新井敏弘に15.4秒、3番手の鎌田に25.7秒という差を築いている。
新井大輝は「SS4のジャンプで飛びすぎて、背中が痛かったです。2本目の陸別でミスがあった以外は、悪くない走りができました。明日もこのアドバンテージを維持できるように頑張りたいと思います」と翌日に向けての意気込みを語った。

JN2クラスは眞貝知志/箕作裕子(トヨタ・ヴィッツGRMN)がリードを拡大。2番手には中村英一/大矢啓太(トヨタ・ヴィッツGRMN)、3番手には鷹野健太郎/ウシニナ・ヤナ(トヨタGT86 CS-R3)がつけている。選手権で逆転を目指す上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)はSS1で首位を獲ったものの、序盤でマシントラブルに見舞われ大きく後退。眞貝は粛々としたペースでラリーをリードし、2番手の中村に対し3分以上の差を築いてみせた。
眞貝は「上原選手が残念な結果になってしまったので、僕らは僕らの与えられた仕事をやるということだと思います。とにかく完走することですね。明日は道の状況が変わりますが、気を抜かないようにしたいです。良い方向性はつかみ始めていますが、自分をしっかり抑える必要があると思います」と明日に向けての展望を語っている。

山本悠太/山本磨美(トヨタ86)がチャンピオンを決めたJN3クラスは、山本が曽根崇仁/木村裕介(トヨタ86)を2番手、鎌野賢志/蔭山恵(トヨタ86)を3番手に従えてリードを拡大。ロングSSのSS6、SS7では総合9番手タイムをたたき出すスピードをみせた。
山本は「リタイアする車両も多かったので、帰ってこられてホッとしています。曽根選手にトラブルがありましたが、僕たちのクルマにかなりダメージがきています。攻める場所と抑える場所のメリハリが本当に難しいです。そのあたり、まだ経験不足を感じています。明日はマージンを使って走る必要があります」と、ペース配分の難しさを語った。

JN4クラスでは古川寛/大久保叡(スズキ・スイフトスポーツ)がリード。2番手には小倉雅俊/平山真理、3番手に山口貴利/山田真記子のダイハツ・ブーンX4が2台続く展開となっている。シリーズチャンピオンを狙う地元関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)がコースアウトを喫し、続いてクラス2番手につけていた香川秀樹/古川智崇(ホンダ・シビック・タイプR)も脱落。古川をダイハツの2台が追う展開となった。
古川は「無事に戻ってこられて良かったです。安全と安定をモットーに走りました。今回は安定したペースの割に、タイムが出ています。明日も長いので、しっかり走り切るまで油断はできないと思っています。貯金を利用しつつ、しっかりマージンを取って走るつもりです」とコメントしている。

石川昌平/竹藪英樹(トヨタ・ヴィッツGR)が首位を走るJN5クラス。2番手には小川剛/佐々木裕一(ホンダ・フィットRS)、3番手にはすでにJN5クラスのチャンピオンを決めている天野智之/塩田卓史(トヨタ・ヴィッツGR)がつけている。序盤リードを築いた天野はSS5でパンクに見舞われ大きくタイムロスを余儀なくされることとなった。
首位の石川もSS7で右リヤをパンクしたものの、その後のリエゾンで交換しことなきを得た。「首位にはいますが、それを意識せず淡々と走ろうと思います。明日も集中して、しっかりドライブします」と、気を引き締めた。

JN6クラスはチャンピオンを決めた大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が大きくリード。2番手には中西昌人/福井林賢(マツダRX8)、3番手に水原亜利沙/加勢直毅(トヨタ・ヴィッツCVT)という順位になっている。大倉が貫録をみせてラリーをリード、SS8以外のすべてでベストタイムをマークする快走。
大倉は「ラリー北海道はやっぱり難しいですね。車速が高いし、ウエットも絡んで、本当に走り応えがあります。完走第一で無理をしていませんが、今回のためにチームが入れてくれたものを確かめながら走るには、きちんとしたペースも必要です。明日は路面がスムーズですし、これからバネのセットを変えるので、それが当たるといいですね」と明日への展望を語っている。

レグ2

ラリー最終日に行われた全日本ラリー選手権のステージはSS9〜SS14の計6SS、SS距離50.43km。最終SSの前にサービスが設けられているが、それまでの48.96kmはサービスなしでこなさなければならない。大きなミスやアクシデントに見舞われれば順位も大きく変動する可能性をはらんでいる。

JN1クラスは、サスペンションやエンジンマッピングを調整した鎌田が序盤からスパートをかけ、オープニングのSS9でベストタイムをマーク。総合2番手につける新井敏弘を逆転してみせた。鎌田はさらにSS10も制し、SS11では総合首位の新井大輝を上まわるタイムでフィニッシュ。SS11を終えた段階で、鎌田と首位新井大輝の差は6.1秒にまで縮まっていた。新井大輝もSS12でベストタイムをたたき出し反撃、SS13でも鎌田のタイムを超えて、最終SSを残した段階で9.7秒にまで差を広げていた。一方、このSS13を制した総合3番手の新井敏弘は、一気に総合2番手鎌田に肉迫。0.9秒差で最終SSに臨むこととなった。そして最終SS、新井大輝は危なげなくフィニッシュ、堂々の戦いぶりで今シーズン3勝目をモノにしてみせた。熾烈な2位争いは鎌田に軍配。新井敏弘は渾身の走りで一番時計を刻んだものの、鎌田もピタリとSS2番手につけ、0.6秒差で2位を得ることに成功した。
新井大輝は「2日目にダンパーが壊れたり、今日はエンジンストールしたりと試練に見舞われたラリーでしたが、それでもラリーをコントロールして、フィニッシュまでマシンを運べるようになったのは、自分が成長した証だと思います。シーズン3勝ということはあまり気にはしていません。この後も一戦ずつ、大切に戦っていかなければならないと思っています」と、冷静にラリーを振り返った。

JN2クラスはトヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/箕作裕子が優勝。2位に中村英一/大矢啓太(トヨタ・ヴィッツGRMN)、3位に鷹野健太郎/ウシニナ・ヤナ(トヨタGT86 CS-R3)という順位となった。これで今シーズン6勝目を挙げた眞貝は2019年シーズンのチャンピオンを確定してみせた。レグ1を首位でまとめた眞貝は、この最終日に設定された6SSすべてでベストタイムをマークする快走を披露。これまであまり相性が良いとは言えなかった北海道で最高の結果を残した。
眞貝は「本当に去年のラリー北海道ではつらい思いをして、クルマ、そして自分の課題が明らかになりました。以来、今年のラリー北海道に向けて準備してきた1年でした。ノートラブルかつ、素晴らしいクルマを用意してくれたチーム、そしてピンチヒッターとして仕事をしてくれた箕作選手に感謝しています。みなさんに勝たせてもらったと思っています。チャンピオン獲得については、本当にホッとしています。残りの2戦もいいフィーリングで臨めると思います」と、笑顔を見せた。

JN3クラスは、曽根崇仁/木村裕介(トヨタ86)が優勝。ラリー前にチャンピオンを決めた山本悠太/山本磨美(トヨタ86)はマシントラブルに見舞われ2位、鎌野賢志/蔭山恵(トヨタ86)が3位に入った。レグ1でトップに立っていた山本はエンジントラブルでマージンを失い、曽根がSS13で逆転しクラス首位に立つことに成功、そのまま最終SSを走り切り、曽根にとっては今シーズン初勝利を獲得してみせた。
曽根は「やっとラリー北海道で勝てました。本当にうれしいです。いつも分かってはいますが、タフなラリーです。あらためて、何があっても諦めずに走り続けることが大切だと実感しています。諦めなければ、何かいいことがあると思いました。今シーズンは厳しい戦いが続いていたので、最後まで『止まらないで』と思いながら走りました」と、安堵の表情を浮かべラリーを振り返った。

ランキングトップの関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)が初日に戦線を去ったJN4クラスは、古川寛/大久保叡がシーズン初優勝。2位には小倉雅俊/平山真理、3位に山口貴利/山田真記子のダイハツ・ブーンX4勢が続く格好となった。レグ1を終えた段階で2番手の小倉に1分近いマージンを築いていた古川はそれを活かしてラリーをコントロール。2番手小倉のマシンにトラブルの兆候が出ていたこともあり、その差をキープしてフィニッシュした。
「勝てて良かったです。関根選手とどれくらい戦えるかな……と思っていましたが、関根選手がリタイアした後はしっかり首位をキープできて良かったです。このクルマで初優勝なのでうれしいですね。次の高山ですが、舗装でどうなるかですね」と古川はコメントしている。

JN5クラスはレグ1をトップでまとめた石川昌平/竹薮英樹(トヨタ・ヴィッツGR)が首位を守って今シーズン初優勝を達成。2位にはレグ1のタイヤ交換でタイムロスを喫していた天野智之/塩田卓史(トヨタ・ヴィッツGR)、3位に小川剛/佐々木裕一(ホンダ・フィットRS)という順位となった。この日は天野が全SSを制する怒濤のスピードを発揮。SS13では総合8番手タイムをマークしてみせた。しかしレグ1の段階で首位石川に対して2分半近くあったギャップを埋めることは叶わず、2位でラリーを終えている。首位の石川はマージンを活かして完走第一のペース。その甲斐あって今季初優勝を得ることとなった。
石川は「結果を残すことができて本当にうれしいです。ただ、タイム的には天野選手に負けていたので、反省する部分はあると思います。それでも、このラリーでは完走することも重要なポイントなので、それができてうれしいです」と、優勝の喜びを噛みしめラリーを振り返った。

JN6クラスは、すでにチャンピオンを決めた大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が貫録を見せて勝利。2位には中西昌人/福井林賢(マツダRX8)、3位に水原亜利沙/加勢直毅(トヨタ・ヴィッツCVT)という順位となった。大倉は14SS中12SSをベストタイムでまとめ、今季負けなしの8連勝を達成してみせた。
大倉は「8連勝ですね。今回は短く感じましたが、本当に難しくて、完走すると特別な想いを感じます。マシンは細かいトラブルこそありましたが、大きなものは何もなく、クルマの頑丈さに助けられました。チームがいろいろと投入してくれたアイテムが次戦のターマックで、どんな効果があるのか楽しみです」と語っている。

次戦は10月11日〜13日にかけて岐阜県高山市で開催される第9戦「第47回 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2019 supported by Sammy」。山間部を縫うように走る林道が舞台となるターマックラリーだ。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 新井大輝/小坂典嵩 ADVAN KYB AMS WRX 1:40:37.3
2 JN1-2 鎌田卓麻/市野諮 itzz DL SYSM WRX STI 1:40:46.2
3 JN1-3 新井敏弘/田中直哉 富士スバル AMS WRX STI 1:40:46.8
8 JN2-1 眞貝知志/箕作裕子 TGR Vitz GRMN Rally 1:55:49.4
9 JN4-1 古川 寛/大久保叡 スマッシュDL itzzインディゴスイフト 1:56:14.2
10 JN3-1 曽根崇仁/木村裕介 P.MU☆DL☆SPM☆INGING86 1:56:54.7
11 JN6-1 大倉 聡/豊田耕司 アイシンAW Vitz CVT 1:57:01.9
14 JN5-1 石川昌平/竹藪英樹 ARTAオートバックスGRヴィッツ 1:57:59.0

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2019年 全日本ラリー選手権 第8戦 北海道

イベントフォト

JN1クラス優勝 新井大輝/小坂典嵩

JN2クラス優勝 眞貝知志/箕作裕子

JN3クラス優勝 曽根崇仁/木村裕介

JN4クラス優勝 古川寛/大久保叡

JN5クラス優勝 石川昌平/竹藪英樹

JN6クラス優勝 大倉聡/豊田耕司