2019 ARKラリー・カムイ

開催日時:7月5日(金)〜7日(日)
開催場所:北海道ニセコ町、倶知安町、蘭越町
スペシャルステージ本数:10本
スペシャルステージ総距離:117.78km
ラリー総距離:433.82km
SS路面:グラベル
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.5

全日本ラリー選手権第6戦ラリーカムイは7月7日(日)にすべての競技日程を終えて、スバルWRX STIの新井大輝/小坂典嵩が優勝、2位には同じくスバルWRX STIの鎌田卓麻/鈴木裕、3位には三菱ランサーエボリューションXの奴田原文雄/佐藤忠宜が入った。

レグ1

ラリーカムイは、開催エリアをニセコ拠点に移して2回目の開催となる。戦いの舞台はニセコ町のほか、近隣の倶知安町、蘭越町の林道コース。固く締まったグラベルロードは、走っていて楽しいと選手からも好評だ。

この日行われたのは、SS1〜SS6までの計6SS。3カ所のSSを2度走行する構成で、SS距離は57.34kmとなっている。天候は晴れ。ドライコンディションとなった路面は、走行順の早いドライバーにとっては砂利掻き役を担わされることとなる。

JN1クラスは、新井大輝がSS1からベストタイムをマークする展開でスタート。午前中の3SSすべてを制して、2番手の新井敏弘/田中直哉に20.8秒差をつけてみせた。2番手の新井敏弘も、先頭走者の不利をはね返し好タイムを並べる力走。3番手には鎌田がつける展開となった。午後に入り、砂利がはけたことで新井敏弘のペースアップが予想されたが、新井敏弘はタイヤ磨耗に苦しんで順位を落とすことに。サービスでフロントサスペンションを交換した鎌田がペースを上げて2番手、勝田も3番手に浮上した。首位の新井大輝は最終SSでスロットルのトラブルに見舞われるも首位を守り通し、2番手の鎌田に22.9秒という差をつけて初日を終えている。

新井大輝は「午前中はほぼ狙いどおりにいきましたが、午後のループでは道が荒れていて、最終SSでは大きな石が掘り返されたりしていたので、リスクを避けて走りました。SS6の下りでは、最後の1kmくらいでスロットルがおかしくなってしまい、リエゾンで配線を直してなんとかサービスまで戻ってくることができました。明日はこういうマイナートラブルがないよう、最終サービスでしっかり直して走りたいと思います」とコメント。20秒以上のリードを得た最終日の走りにも注目が集まる。

JN2クラスは、前戦好走を見せていた上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)がリード。2番手にはGT86-CS-R3を駆るヘイキ・コバライネン/北川紗衣、3番手にはTGR Vitz GRMN Rallyの眞貝知志/安藤裕一という順位となっている。序盤から上原がハイペースでラリーをひっぱり、6SS中5SSでベストタイムをマーク。2番手のコバライネンに36.5秒差をつけて初日を終えている。
上原は「マシンもドライバーも調子が良く、結構なペースでマージンを作れました。明日の一番長いところは後ろのふたりも速いでしょうから頑張らないと。クルマのセットアップは合っていますが、スピードを上げていくとちょっと動きが変わってくる部分もあるので、そこは走りながら調整していかなければと思っています」と笑顔でこの日の走りを振り返った。

トヨタ86同士のバトルとなっているJN3クラスは、山本悠太/山本磨美がリード。6.6秒という僅差で曽根崇仁/竹原静香が追いかけ、やや離れて3番手に山口清司/島津雅彦がつけるかたちとなっている。ラリーは山本が連続ベストをたたき出す展開でスタート。午後のSS5、SS6では曽根が連続ベストをマークし、一時は9.4秒まで開いた差を少しずつ詰め、6.6秒としている。
「トップで折り返せはしたのですが、SS5、SS6と曽根選手に獲られてしまい、なんとなくモヤモヤした終わり方になってしまいました。互角の戦いをしているのかなと捉えるしかないですね。明日のロングSSは勝負どころですね。なんとか差を保ってこらえたいなと思います」と山本。一方の曽根は「ちょっとずつ返して、最後に前に出られればと。とにかく1キロあたりコンマ1秒勝てばいいというつもりで、ほんの少し、コーナーひとつひとつ頑張ろうと思います」とコメントしている。

JN4クラスは関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)がリード、それを香川秀樹/松浦俊朗(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が追う展開となっている。3番手はスズキ・スイフトスポーツの高橋悟志/古川智崇。SS1、SS2と香川が連取し始まったラリーは、SS3で関根が逆転。午前中の3SSを終えた段階でふたりの差は0.7秒差という接戦となっていた。午後になるとセッティングを変更した関根がスピードアップ。3連続ベストタイムをたたき出して、香川との差を14.9秒に拡げている。3番手の高橋はエンジンが吹けなくなるトラブルに見舞われており、SS途中での再始動を余儀なくされるなど、我慢のラリーとなっている。
首位の関根は「セットアップを変えてだいぶ良くなりました。なるべく離せたらなと思っていたので、14秒差は御の字ですね。明日は23kmのロングSSさえうまくまとめられればと。頑張ります」と笑顔でこの日の走りを振り返った。

天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR)が盤石のリードを築いているJN5クラス。2番手には岡田孝一/石田一輝(マツダ・デミオ)、3番手には藤田幸弘/藤田彩子(マツダ・デミオ)というオーダー。首位天野と2番手岡田はすでに1分20秒以上の差が開いている状況となっている。
天野は「岡田選手とは80秒以上差がついているので、クラス順位的には楽になっていますが、2輪駆動車全体で考えると北海道はハイスピードなのでなかなか厳しいですね。明日は勝負どころですから、その前にマージンが作れたので良かったです。あとはサミー賞とデイポイントをしっかり狙っていきたいと思います」とコメント、最終日に向けて油断なく臨む構えだ。

JN6クラスは大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が大きくリードを拡大し首位を独走。2番手には中西昌人/福井林賢(マツダRX-8)、3番手にいとうりな/大倉瞳(トヨタ・ヴィッツCVT)という順位になっている。大倉は全SSでベストタイムをマークする快走。最終日に向けて新たなサスペンションを投入すべく、サービスでサスペンションをすべて交換している。
「序盤はブレーキの前後バランスが少しおかしかったのですが、パッドなどを調整したところ良くなったので、アプローチは楽になりました。明日に向けて、サスペンションを全部交換しています。ラリー北海道用の対策品として作ってもらったエルスポーツの新しいサスペンションを、テストを兼ねて入れてもらいます。きっちりと走り切ってデータを残したいと思います」と大倉。

ラリー最終日はSS7〜SS10の4SSだが、SS走行距離は60.44kmと初日よりも長い距離で争われる。特にSS8/10は23.09kmと長く、多くのドライバーが警戒するステージ。各クラスの勝敗の行方に注目が集まる。

レグ2

この日行われたのはSS7〜SS10の4SS、60.44km。ラリー最長の23.09km『ORCHID』がSS8/10に設定され、多くのドライバーはここが勝負どころと目していた。天候は大きく崩れることなく、前日に引き続きドライ路面での戦いに。前日トップに立った新井大輝は砂利掻き役を担うこととなり、そのタイムにも注目が集まった。

JN1クラスはオープニングのSS7から波乱の幕開けとなった。2番手の鎌田がタイヤをパンクさせて大きくタイムロスを喫し、3番手に後退。代わって勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)が2番手に浮上した。また、4番手の新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)は、初日最後のサービスでタービンを交換し追撃体制を整えて臨んだが、ダストに視界を遮られてコースアウト。あえなくリタイアを喫している。これで前日5番手の柳澤宏至/保井隆宏(スバルWRX STI)が4番手に繰り上がった。続くSS8では奴田原が柳澤をかわして4番手に浮上。午後のセクション最初のSS9では、なんと勝田が新井と同じコーナーでコースアウト、ラリー続行を諦めることとなった。これで2番手には鎌田が再浮上、奴田原は3番手、柳澤は4番手と、順位をひとつずつ繰り上げた。後続の入れ替わりを尻目に、首位の新井大輝は安定したタイムでトップの座を堅守。細かな車両トラブルはあったものの、盤石と言っていいラリー運びで今シーズン2勝目を獲得してみせた。新井大輝はラリーを振り返って次のように語っている。
「先頭走者で大変だった部分もありますが、パンクや大きなミスもなく、走り切れて優勝できました。先週のポーランドの経験が活きていることと、自分のなかでレベルが上がったのが確認できたので、その点はとても良かったと思います」

JN2クラスは上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が今シーズン初優勝を達成した。2位はGT86 CS-R3で出場したヘイキ・コバライネン/北川紗衣、3位には今回からドグミッションを投入した眞貝知志/安藤裕一(TGR Vitz GRMN Rally)が入っている。前日トップの上原はこの日序盤からスパート。3SS連続でベストタイムをマーク、最終SSはペースを上げたコバライネンが制したが、48.6秒差で今季初勝利を飾ってみせた。
上原は、「コバライネン選手も眞貝選手も速いので、今日も真剣に走りました。勝因はクロスミッションをいれてクルマが速くなったことが一番ですかね。ここの林道にぴったり合っていて、いいタイムをマークすることができました。次戦は横手ですが、昨年地区戦に出た時、あまりの暑さにアタマがボーッとしちゃって。熱中症対策をしっかりやっていこうと思います」とコメント。次戦に向けての意気込みを語った。

JN3クラスは山本悠太/山本磨美(トヨタ86)が今季4勝目。2位には大竹直生/竹下紀子(トヨタ86)、3位に山口清司/島津雅彦(トヨタ86)が入っている。初日を終えた段階で、首位山本と、2番手につける曽根崇仁/竹原静香の差はわずかに6.6秒。この日午前中の2SSではベストを分け合う接近戦を展開していたが、SS9では山本がベストタイムをマークして突き放しにかかる。そして迎えた最終SS、曽根はなんとドライブシャフトを破損しリタイアを余儀なくされ、最終SSも一番時計でまとめた山本が勝利を飾ることとなった。これで3番手の大竹、4番手の山口はそれぞれ繰り上がって2位、3位フィニッシュとなっている。
山本は開口一番「疲れました(笑)」とひと言。「接近戦が続いていて、最終的には曽根さんがリタイアしてしまったのですが、破綻することなく順調に走れた点は良かったです。今年これで4勝目と順調に進められているので、この調子を崩さないように続けていきたいと思います」とラリーを振り返った。

首位の関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)を2番手の香川秀樹/松浦俊朗(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が13.9秒差で追う展開となっていたJN3クラス。オープニングのSS7ではエンジンにトラブルを抱えた関根を尻目に香川がベストタイムをたたき出し、その差を8.6秒に縮める。しかし香川は続くSS8でリタイアの憂き目に遭うことに。これで2番手に古川寛/大久保叡(スズキ・スイフトスポーツ)、3番手に高橋悟志/古川智崇(スズキ・スイフトスポーツ)が繰り上がる。さらにSS9では高橋が渾身の一番時計で古川を逆転。高橋は最終SSでも古川のタイムを上まわり、2位の座を確実なものとした。関根はこれでグラベル2連勝。
「エンジンが少しトラブってしまったのでヤバいなと思ったんですが、香川選手がいなくなってしまいましたね。トラブルは完治とはいきませんが、だいぶ改善はしたので、2ループ目はタイムを出すことができました。次戦も勝ってようやく予定どおりというくらいです。落とせないラリーが続くので、この後も頑張ります」

天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR)の横綱相撲ともいうべき展開となったJN5クラス。天野はすべてのSSでベストタイムをマークする盤石の強さで今季5勝目を達成してみせた。2位は岡田孝一/石田一輝(マツダ・デミオ)、3位には松原久/和田善明(マツダ・デミオ)が入っている。
天野は「最終日のセクション3でセッティングをミスってしまい、今ひとつ乗り切れずに総合順位を下げてしまったのですが、JN5クラスのなかでは全部のSSでベストを獲れたので、前回の雪辱にはなったかなと思います」とラリーを振り返った。いよいよチャンピオン争いも見えてくる次戦については、「次のラリーは新しいので非常に楽しみです。できればドライで、いい天気のもと走りたいですね。大倉選手と眞貝選手、ヴィッツ勢が全員次で王座を決めたら、めでたい日になりますね」とコメントしている。

JN6クラスは大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が破竹の6連勝を達成。有効戦数は6戦だが、ポイント係数の関係もあり、チャンピオン決定は次戦以降に持ち越しとなった。2位は中西昌人/福井林賢(マツダRX-8)、3位にいとうりな/大倉瞳(トヨタ・ヴィッツCVT)が入っている。中西は初日、リヤサスペンションのダンパーにダメージを受けていたものの、最終日朝のサービスで交換。完調ではないものの、いとうりなの追撃を振り切って2位フィニッシュを果たした。大倉は危なげなくリードを拡大、途中からはラリー北海道を見据えた新ダンパーを投入するなど、大きな収穫のある1戦となった。
「非常に面白いラリーでした。例年このカムイはいい道で、攻めがいがあります。特にペースのコントロールはせず、最後まで踏み切ろうと決めて走りました。次戦の横手は初めてなのですごく楽しみです。道もいいという話を聞いているので、今回と同じように気持ちよく走れればと思っています」と、大倉は次戦に向けての意気込みを語っている。

次戦は今年からカレンダー入りした「横手ラリー2019」。7月25日(木)〜28日(日)にかけて、秋田県横手市を中心に開催されるグラベルラリーだ。計12SS、総SS距離は114.60kmとなっている。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 新井大輝/小坂典嵩 ADVAN KYB AMS WRX 1:27:19.9
2 JN1-2 鎌田卓麻/鈴木 裕 itzz DL SYMS WRX STI 1:28:12.7
3 JN1-3 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 1:28:29.8
10 JN2-1 上原 淳/漆戸あゆみ DL・ラカリテ・シャフト・シビックユーロ 1:34:31.6
13 JN4-1 関根正人/草加浩平 KYB DUNLOP スイフト 1:36:12.1
14 JN3-1 山本悠太/山本磨美 Sammy☆K-one☆ルブロスYH86 1:37:03.0
15 JN6-1 大倉 聡/豊田耕司 アイシンAW Vitz CVT 1:37:27.4
16 JN5-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツ 1:37:32.2

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2019年 全日本ラリー選手権 第6戦 カムイ・北海道

イベントフォト

JN1クラス優勝 新井大輝/小坂典嵩

JN2クラス優勝 上原淳/漆戸あゆみ

JN3クラス優勝 山本悠太/山本磨美

JN4クラス優勝 関根正人/草加浩平

JN5クラス優勝 天野智之/井上裕紀⼦

JN6クラス優勝 大倉聡/豊田耕司