MONTRE 2019

開催日時:6月6日(木)〜9日(日)
開催場所:群馬県嬬恋村、長野県長野市、上田市、須坂市
スペシャルステージ本数:18本
スペシャルステージ総距離:102.02km
ラリー総距離:486.20km
SS路面:グラベル(一部ターマック)
SS路面状況:ウエット/ドライ
ポイント係数:1.2(SS18キャンセルによりSS総距離100km未満)

全日本ラリー選手権第5戦MONTRE 2019は、6月9日の最終日を終えて、スバルWRX STIの新井敏弘/田中直哉がトップを守ったまま優勝、今シーズン2勝目を獲得した。2位は鎌田卓麻/鈴木裕、3位に新井大輝/小坂典嵩という順位となり、スバル勢が開幕戦以来となる今季2度目の1-2-3フィニッシュを飾った。

レグ1

ラリーは群馬県嬬恋村のパルコールつま恋リゾートを拠点に、全18SSで行われる。グラベルラリーではあるものの、全SS距離の3割近くがターマックであり、路面グリップの変化やタイヤマネージメントへの対応力も試される一戦だ。初のAPRC併催となった今大会では、従来使ってきた大前須坂グラベル、四阿、群馬坂、峰の原といったSSに加え、『松代(MATSUSHIRO)』を新たなステージとして導入している。岩と泥にまみれた新ステージは、レッキの時点から多くのドライバーから「最大の難所」という声が上がっていた。競技初日はSS1〜10までの10SS。昨晩まで降っていた雨は上がり、曇り空のもと各車SSへと出発していった。

JN1クラスは序盤のSS1、SS2を新井敏弘が連取し、主導権を握る展開に。新井敏弘は新ステージのSS4松代でベストタイムをマーク。ラフなコースで後続に大きな差をつけることに成功した。さらにSS6、SS9も制する強さを見せ、SS10までを終えて2番手の鎌田卓麻に21.6秒差をつけて初日を終えている。鎌田はSS4を攻めきれず一時総合5番手に後退するも、その後は安定した好タイムを重ねポジションアップし、レグ1を終えた時点で2番手にまで挽回。3番手は奴田原。タイヤ選択のミスによりSS10で遅れた新井大輝/小坂典嵩を逆転し、僅差ながら表彰台圏内に入った。

新井は、「トップで帰ってこられましたね。(SS7が全車スルー走行となり)松代をやるかやらないかで大きく変わってきますね。あのラフなステージでは、トップにいてもひとつのミスやバーストでまったく関係なくなりますから。午後の峰の原で少しミスしてしまいましたが、あとは良かったと思います」と手応えを感じている様子でコメントを残している。

JN2のトップは眞貝知志/安藤裕一(TGR Vitz GRMN Rally)。2番手にはグラベルラリーを得意とする上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプR)、3番手にはトヨタ・ヴィッツGRMNの中村英一/大矢啓太が入っている。ラリー序盤にリードを築いたのは上原。SS4松代では中村がベストタイムをマークして、一気にクラス首位に躍り出た。しかしターマックステージのSS5峰の原に入ると、眞貝が本領を発揮。このSS2番手タイムの上原に39.1秒差をつけるベストタイムでクラス首位の座を奪う。眞貝は2度目の峰の原(SS8)でもベストタイムをマーク、この日最後のSS10も制して、2番手の上原に55.0秒ものマージンを築くことに成功している。

眞貝は「松代の2回目(SS7)がスルーになってくれたので、クルマをセーブするという意味では良かったと思います。明日はこれまでの貯金を使いながら、しっかり走りたいです。ラフなステージもありますし、とにかくここを無事に切り抜けないと、どうにもならないので……。マシンは足まわりを変更しながら、少しずつ方向性が見えてきています」と語っている。

トヨタ86勢が上位を争うJN3クラスは、曽根崇仁/木村裕介が首位。2番手には山口清司/澤田耕一、3番手に山本悠太/山本磨美というトップ3となった。ラリー序盤は山本がリードするも、SS4松代で大きくペースダウン。パンクこそなかったものの、リタイアを警戒するあまりリズムをつかみ切れなかった。このSS4でベストタイムをマークした曽根が逆転してクラストップに立ち、その後も首位を守り続けることに成功。初日を終えて、曽根の16.3秒後方に2番手山口、その1.0秒後方に3番手山本がつけるという僅差の展開となった。

「松代の2本目がなくなったのは、クルマへのダメージを考えると良かったですね。あとは無理せず、マージンを取って走りました。明日に備えて、もう一度作戦を練って、トップでゴールできるように頑張ります」と曽根はここまでの戦いを振り返った。

スズキ・スイフトスポーツやホンダ・シビック勢が上位を占めるJN4クラス。トップは関根正人/草加浩平、2番手には須藤浩志/新井正和と、スイフトスポーツ勢がスピードを見せる。3番手は香川秀樹/松浦俊朗のシビック・タイプR。ラリー序盤は関根と、ここまで連勝を挙げている高橋悟史/古川智崇(スイフトスポーツ)が首位を争うが、SS4で高橋が前走車の影響によりコース上を現れた岩にヒットしてリタイア。この時点でスイフトスポーツの古川寛/大久保叡がトップに立つが、続くSS5でベストタイムを刻んだ関根が首位に返り咲いて、リードを拡大した。

関根は「SS3で余計なスピンをしましたが、午後からは順調にリードを広げることができました。明日は余裕をもってラリーを戦えるはずです。マシンは1日労って走ることができました」と笑顔でコメントしている。

JN5クラスは岡田孝一/小林剛(マツダ・デミオ)がトップ。2番手には小川剛/佐々木裕一(ホンダ・フィット)、3番手は石川昌平/竹藪英樹(トヨタ・ヴィッツ)という順位となっている。今季ここまで天野智之が連勝を重ねてきたが、今回ついにそれが途絶えることとなった。多くのドライバーが警戒していたSS4松代で岩にヒット、競技続行を諦めざるを得なくなってしまった。これでトップに立ったのは石川だが、続くSS5峰の原では、岡田がベストタイムで一気にクラス首位に浮上。岡田はSS8でもベストタイムをマークし、首位で初日を終えることに成功している。

岡田は「マシンにも問題なかったですし、トラブルもなく、悪くない走りができています。全体的にはいい1日になりました。天野選手がいないのは残念ですが、このまま1位が獲れるように頑張ります」とこの日の走りについて語った。

JN6クラスは大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が大きくリード。2番手にはいとうりな/大倉瞳(トヨタ・ヴィッツCVT)、3番手に伊藤隆晃/大高徹也(日産ノートe-POWER NISMO S)というオーダーとなっている。サミーSSやスポーツランド信州のようなショートステージではモーターの特性を活かした伊藤がベストタイムを獲るが、通常の林道では大倉がベストタイムを連発し、大きくリードを拡大した。

「全然乗れていないですね。やはりグラベルが今シーズン初なので、クルマの動かし方がまだ良く分かっていない状態です」と、午前中は慎重なコメントを残していた大倉。この日の走行を終えて、「ロングステージが2本走れなかったので、不完全燃焼です。もう少しグラベル走りたかったですね。マシンは良くなっているんですが、特に短いステージではe-POWERにやられてしまっているので、ローギヤが欲しいですね」と初日を振り返っている。

ラリー2日目はSS11〜SS18の計8SS。初日に多くのドライバーが警戒した松代のステージは逆走で使われるため、明日もドラマのような展開が起きる可能性があり、目の離せないラリーとなりそうだ。

レグ2

この日設定されたSSはSS11〜SS18の8SSだが、午後になって主催者は路面悪化のためSS18「AZUMAYA B」のキャンセルを発表。これにより計7SSで勝敗が決せられることとなった。

新井敏弘が初日に大きくリードを築いたJN1クラス。この日は2番手からスタートした鎌田が好走を見せた。SS12、SS13、SS14と3連続ベストタイムをたたき出して新井敏弘の背後10.0秒差にまで迫るが、続くSS15では新井敏弘のペースを上まわることができず、その差は14.5秒に拡大。鎌田はSS16で再びベストタイムを刻むものの、逆転はならず。SS1からトップを守り切った新井敏弘が今シーズン2勝目を挙げることに成功した。また、前日の競技を終えた段階で4番手だった新井大輝は、この日最初のSS11でベストタイムをマークして奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX)をかわして3番手に浮上。SS15を終えた段階で、2番手鎌田との差はわずかに1.6秒となった。ところが、勝負どころのはずのSS16で新井大輝はインカムが聞こえなくなるトラブルが発生。逆転はかなわず、結果3位でラリーを終えることとなった。

シーズン2勝目を挙げ、シリーズランキングトップに立った新井敏弘は、「パンクせずに帰ってこれた。それだけだよ。何秒先行したって、パンクしたら終わりだからさ。勝因は1日目にパンクしなかったことじゃないかな。経験値も必要だし、色々難しいラリーだったね。次戦のカムイも多分みんなで競るから、面白いラリーになると思うよ」と、笑顔でコメントを残した。

JN2クラスは、首位の眞貝知志/安藤裕一(TGR Vitz GRMN Rally)がリードを守り切ってシーズン負けなしの5連勝を達成。2位にはホンダ・シビック・タイプRの上原淳/漆戸あゆみ、3位は難しいコンディションのラリーを最後まで走り切ったフォルクスワーゲン・ポロGTIの竹岡圭/佐竹尚子が入っている。眞貝はこの日、SS16松代リバースでパンクを喫しながらも、計5度のベストタイムを刻む力走を見せて勝利を獲得した。眞貝を追う上原は荒れた路面でスピードを発揮し、一時は14.1秒まで差を縮めたが、最終SSとなったSS17『大前須坂グラベル2』で突き放されてしまい万事休す。また、トラブルを抱えながらも最後までキッチリ走り切った竹岡がポロGTI初のグラベルラリーで表彰台を獲得している。

これで今季5勝目を果たした眞貝は、ラリーを振り返って次のように語っている。
「結局、松代3回で3回バーストしてしまいました。ターマックSSの峰の原でタイムを稼がせてもらいましたが、バースト3回のうち2回は自覚症状ありなので、“要修行”です。KYBのサスペンションは、ぶっつけ本番に近い状態でしたが、感触が良く調整幅も広いので、ベースはこの仕様のまま熟成していく方向で大丈夫かなと思います。次戦カムイは上原選手も速いので、しっかり完走をしていいバトルが最後まで続けられればと思います」

曽根崇仁/木村裕介(トヨタ86)のリードで始まったJN3クラスの最終日は、初日3番手の山本悠太/山本磨美(トヨタ86)が奮起。オープニングのSS11、SS12を制して曽根をパスし、終わってみれば6連続ベストタイムという怒濤のスピードで今シーズン3勝目をもぎ獲り、シリーズランキングもトップに躍り出た。2位には曽根、3位にはスバルBRZの和氣嵩暁/久保田真生が入った。前日2番手につけていた山口清司/澤田耕一(トヨタ86)はSS16でリタイアを喫してしまっている。

山本は「トラブルがなかったのが良かったですね。運もあったと思いますが、無事に帰ってきているクルマは少ないと思うのですが、そのなかに入ることができました。前日、曽根選手のリードが大きかったので、今日はどうなるかなと思いましたが、行けるところはしっかりプッシュして、その分タイムも出すことができました。これでシーズン3勝目ですので、今後も優勝をなるべく重ねられるように頑張りたいと思います」と喜びを語った。

JN4クラスは、前日までの段階で十分なマージンをもっていた関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)が今シーズン初優勝を飾ってみせた。2位はホンダ・シビック・タイプRの香川秀樹/松浦俊朗、3位にはスズキ・スイフトスポーツの古川寛/大久保叡が入っている。関根は5SSでベストタイムをマーク、最終的に2WD車両のトップとなる総合9位に食い込む快走を披露した。関根は、「道が荒れていて、パンクしなくて良かったです。ライバルの高橋選手が早々にリタイアしてしまったので、集中力を切らさないようペースを維持して、デイポイントも獲得できたので、難しいラリーでしたが満点ですね」と笑顔で手応えについてコメント。関根も折り返し地点の第5戦を終えてシリーズランキングトップに浮上。次戦は地元の北海道で連勝を狙う。

初日、連勝を重ねていた天野智之/塩田卓史(トヨタ・ヴィッツGR)が、昨年のラリー北海道以来となるリタイアという波乱が起きたJN5クラス。優勝は岡田孝一/小林剛(マツダ・デミオ)、2位には1分のペナルティを受けながらもポジションを守り切った石川昌平/竹藪英樹(トヨタ・ヴィッツGR)、3位にはショックアブソーバーが抜けたままの状態で最後まで走り切った小川剛/佐々木裕一(ホンダ・フィット)という結果となった。初日トップの岡田は、リードタイムをうまく使ってクラス首位の座を明け渡すことなく、マシンをフィニッシュまで運び、今シーズン初優勝を達成した。また、前日リタイアを喫した天野が3度のベストタイムをマークし、レグポイント3点を獲得している。

岡田は「今回はトラブルもなく、順調に走り続けることができました。自分自身でも悪くない走りだったと思います。石川昌平選手が1分ペナルティを受けていて差があったので、コンディションの悪いステージではしっかりペースダウンして岩をすべて避けるなど、最後まで集中力を切らさないで走ることができたと思います。優勝は2015年の新城ラリー以来なので、やはりうれしいですね」と笑顔。次戦のカムイでもアタックすると宣言した。

JN6クラスは大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が危なげなく今シーズン5勝目を獲得。2位にはいとうりな/大倉瞳(トヨタ・ヴィッツCVT)、3位は伊藤隆晃/大高徹也(日産ノートe-POWER NISMO S)が入っている。大倉は前日までのリードを活かし、リスクを避けながらも5つのSSで一番時計を刻み、2位のいとうに3分36秒6という大差をつけてフィニッシュ。盤石の勝利を飾っている。

大倉は「SS松代は路面がひどく荒れていたので、きちんと良い路面を選んで走らないといけません。スキルを求められるのでチャレンジングでしたね。それにしても、ドライバーがグラベルの走り方を忘れてしまっているので、そこは修正が必要かなと思っています。カムイに向けて練習が必要ですね。カムイは大好きなラリーなので、気持ちよく走りたいです」と、次戦についてもコメントを残している。

次戦は7月5日(金)〜7日(日)に北海道ニセコ町、倶知安町、蘭越町を拠点に行われる全日本ラリー選手権第6戦「2019 Sammy ARK ラリー・カムイ」。中高速コースの多いグラベル林道は、北海道らしいダイナミックな風景のなかでの戦いに注目だ。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 新井敏弘/田中直哉 スバル WRX-STI 1:27:43.0
2 JN1-2 鎌田卓麻/鈴木 裕 スバル WRX-STI 1:27:57.5
3 JN1-3 新井大輝/小坂典嵩 スバル WRX-STI 1:27:59.4
9 JN4-1 関根正人/草加浩平 スズキ スイフト 1:38:07.9
10 JN3-1 山本悠太/山本磨美 トヨタ 86 1:38:10.1
11 JN2-1 眞貝知志/安藤裕一 トヨタ ヴィッツ GRMN 1:38:15.3
16 JN6-1 大倉聡/豊田耕司 トヨタ ヴィッツ 1:41:17.6
17 JN5-1 岡田孝一/小林 剛 トヨタ ヴィッツ 1:41:41.8

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2019年 全日本ラリー選手権 第5戦 モントレー・群馬

イベントフォト

JN1クラス優勝 新井敏弘/田中直哉

JN2クラス優勝 眞貝知志/安藤裕一

JN3クラス優勝 山本悠太/山本磨美

JN4クラス優勝 関根正人/草加浩平

JN5クラス優勝 岡田孝一/小林剛

JN6クラス優勝 大倉聡/豊田耕司