ツール・ド・九州2021 in 唐津

開催日時:4月9日(金)〜11日(日)
開催場所:佐賀県唐津市
スペシャルステージ本数:10本
スペシャルステージ総距離:66.94km
ラリー総距離:283.13km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.0

全日本ラリー選手権第3戦ツール・ド・九州2021 in 唐津は、競技最終日が4月11日(日)に行われ、シュコダ・ファビアR5の福永修/齊田美早子が今季初優勝、柳澤宏至/保井隆宏(シュコダ・ファビアR5)が2位、初日首位の奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)が3位という結果になった。

レグ1

第2戦「新城ラリー」から3週間のインターバルで開催されたツール・ド・九州 in 唐津。昨年実質的なシリーズ最終戦として11月末に開催されたため、約4カ月という短いスパンでの開催となる。初日に設定されたステージは、UCHIURA(4.37km)とSANPOU REVERSE(11.41km)をサービスなしで2回ずつ走る4SS。いずれも九州独特のタイトなロングコーナーが続くテクニカルステージだ。

奴田原、牟田周平/加勢直毅と、第2戦に出場した勝田、眞貝知志/安藤裕一、山本悠太/立久井和子を加えクラス最多台数の5台となったトヨタGRヤリス。牟田は前戦を欠場したが5年ぶりの全日本ラリー出場となった。一方のスバルWRX STI勢は、新井大輝がヨーロッパのラリーに遠征のため欠場、鎌田卓麻/松本優一が第2戦での負傷が癒えずに欠場したため、新井敏弘の1台が孤軍奮闘する。注目のSS1は、その新井が柳澤に1.8秒差をつけるベストタイムを奪う。だが、SS2ではその新井がSSフィニッシュ約1km手前で痛恨のスピンを喫し、クラス7番手に後退。ベストタイムはこのSSを得意とする勝田が奪い、一気にトップに躍り出る。SS1のリピートステージとなるSS3は福永がベストタイム。勝田が2.8秒差の4番手と遅れ、このSSで福永から1.4秒差の2番時計をマークした奴田原が、勝田に0.2秒差のトップに躍り出る。「クルマはまだ発展途上中。それでもできる範囲で全開で走っています。(GRヤリスは)速いとは思っていたけど、上出来です。ポテンシャルの高さを感じますね」と語る奴田原は、この日の最終SSとなるSS4で「サスペンションもまだまだセッティングを詰めている状態。少しクルマの動きが悪かったので、ダンパーの減衰を変えたらすごく良くなった」とこの日初のベストタイムをマーク。ステージ後半でスローパンクチャーに見舞われながらも2位に浮上した福永に1.4秒差をつけ、初日をトップで折り返した。
「クルマが軽い分、ランサーエボよりもかなり楽に走れています。明日はライバルたちもペースを上げてくると思うけど、このクルマを仕上げてくれたメカのためにも、明日も頑張らなくちゃね」と気持ちを引き締めた。

JN2クラスは、新たに石田裕一とコンビを組んだ中平勝也(トヨタGT86 CS-R3)と石井宏尚/竹下紀子(レクサスRC F)、上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が三つ巴の争いを展開するが、「セッティングを見直したのが当たった」という中平がトップで初日を終えている。石井と上原は「2日目は上りのSSで勝負する」という石井に対し、上原は「下りのSSで勝負」と、それぞれのマシンの特性を活かしたSSで勝負をかけ、中平を追いかける。

JN3クラスは、21歳の若手ドライバー大竹直生/藤田めぐみ(トヨタ86)が、この日4本のSSすべてでベストタイムをマーク。2位の鈴木尚/山岸典将に19.5秒の差をつけ、初日をトップで折り返した。
「(第2戦)新城ラリーの結果が全然ダメだったので、練習してきた甲斐がありました。特に注意したのはブレーキングですね。ジワっと踏むクセがついてブレーキングが甘くなっていたのを修正してきました。(チーム代表の)奴田原さんからも『1本目から集中して走れ』と助言してもらったのも大きいです。正直、このタイム差にはビックリしています。こんな展開になるとは思ってもいなかった。2日目も気負わずに自分の走りができるように頑張ります」と抱負を語った。

JN4クラスは、新城ラリー優勝の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)がSS3までトップを死守するものの、SS4でフロントサスペンションを破損し、フィニッシュはするもののクラス2位に転落。初日のトップは、このラリーが始まる前日の木曜日にマシンが完成した岡田孝一/河本拓哉(スズキ・スイフトスポーツ)が奪った。
「このラリーが正真正銘のシェイクダウン。コ・ドライバーも今回が初めての全日本。ドライブのつもりで出場したんだけど、意外に競えることができました。2日目はもう少しこのクルマを理解していきたいですね」という岡田に対し、「SS4、残り2kmくらいのところでフロントサスペンションを傷めてしまいました。サービスでしっかり直してもらったので、2日目は逆転できるように頑張ります」と西川。1.7秒差で迎える2日目は、ベテランと次世代ドライバーの攻防が展開されそうな気配だ。

JN5クラスは、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)がSS1で2番時計の小川剛/梶山剛(ホンダ・フィット)に8.2秒差の大差をつけるベストタイムでラリーをリードする。SS3は小川に1.9秒ベストタイムを譲るが、SS4ではこの日3回目となるベストタイムでトップを快走。2位の小川に22.9秒差で初日を折り返した。一方、SS2まで3番手を走行していた大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)は、マシントラブルによりSS3で戦線離脱。今シーズンから大倉と同じくトヨタ・ヴィッツCVTを駆る渡部哲成/佐々木裕一が3位に浮上している。
「大倉選手とは新城でコンマ差で競っていたので、彼がいなくなったのは本当に残念。彼に勝ちたかったんですけどね。タイヤの摩耗を考えて2ループ目はペースを落としたら小川選手が追ってきたので、2日目はマージンを使いながらも気を抜かずにしっかり走ります」と、気持ちをひきしめた。

JN6クラスは、新城ラリーで全日本デビューウインを飾った吉原將大/佐野元秀(トヨタ・ヤリスCVT)がこのラリーでも快走。SS2は「タイヤの摩耗をコントロールしようとしたら、大幅に遅れてしまいました」と3番時計だったが、その他の3SSはすべてベストタイムをマーク。ラリー直前にトヨタ・ヤリスCVTからトヨタ・ヴィッツCVTにマシンチェンジした明治慎太郎/立久井大輝に8.8秒差のトップで初日を終えた。また、3位にはSS2でベストタイムをマークした水原亜利沙/美野友紀(トヨタ・ヤリスCVT)がつけている。

レグ2

初日はGRヤリスを投入した奴田原文雄/東駿吾がトップを奪い注目を集めたが、2日目はR5勢が奴田原に襲いかかった。まずオープニングとなるSS5は、1.4秒差で奴田原を追いかける福永修/斎田美早子がベストタイムをマーク。奴田原が5.4秒差の5番手タイムとなったため、ここで福永が4.0秒差のトップに立つこととなった。SS6は奴田原がベストを奪い福永との差を1.7秒に縮めるが、SS7で福永がこの日2回目のベストタイムをマークし、その差を3.8秒差に広げる。その後も福永はSS8でベストを重ね、後続を振り切りフィニッシュ。自身にとっては2017年の初優勝以来、4年ぶりの優勝を飾った。また、2位にはSS9と10でベストタイムを重ねた柳澤宏至/保井隆宏(シュコダ・ファビアR5)がトータルで奴田原を0.1秒かわし、福永に3.0秒差の2位でフィニッシュ。初日にGRヤリス旋風が吹き荒れた第3戦は、R5勢が1-2フィニッシュを飾る結果となった。
「今回はパンクがあったり、タイヤ的にも厳しいラリーでしたが、なんとか無事に戻って来ることができました。正直、今回のGRヤリスのスピードは、シリーズ後半には伸びて来るなと感じました。そういった意味でも、シーズンを考えると大きな1勝だったと思います」と福永。2位に入った柳澤も「頑張りましたが、惜しかったですね。やっとクルマのリズムが分かってきました。収穫のあるラリーだったと思います」とラリーを振り返った。

JN2クラスは、初日トップの石井宏尚/竹下紀子(レクサスRC F)が、SS5、6、7、8で4連続ベストタイムをマーク。SS8を終えた時点で2番手につける中平勝也/石田裕一(トヨタGT86 CS-R3)との差を一気に18.8秒差に広げた。残る2SSはマージンを保ちながら走った石井は、「最初のループでタイムを稼ぐことができたのが良かったです。最後はタイヤも厳しかったんですけど、逃げ切ることができました」とトップの座を守り切りフィニッシュ。待望の全日本初優勝を獲得した。また2位には「本当は最終SSで逆転しようと思っていたら、その前のSSで捉えることができた」とプッシュし続けた上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が入賞。「2日目はセッティングが合いませんでした」という中平が3位に入賞した。

20歳の大竹直生が初日に快走したJN3クラスは、その大竹がこの日オープニングとなるSS5で総合6番手に食い込むクラスベストタイムをマーク。2番手の鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ)との差を20.3秒差に広げた。その後の大竹は後続とのタイム差を見ながらペースをコントロール。マージンをしっかりと使い、20歳9カ月という若さで全日本初優勝を飾った。
「今日は無理をしないで最後まで走り切ろうということが目標だったんですけど、最後はペースを落としすぎてしまいました。ペースコントロールは難しいですね。20歳になってから初優勝なので、本当にうれしいです」と笑顔をみせる大竹。全日本ラリー選手権での最年少クラス優勝記録を更新した。2位にはスバルBRZの鈴木尚/山岸典将、3位に曽根崇仁/竹原静香(トヨタ86)が入った。

JN4クラスは、初日の最終SSでサスペンショントラブルに見舞われ、トップの座を明け渡した西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が快走。SS5でトップの座を取り戻すと、その後は一度もトップの座を譲ることなく最後まで走り切り、今季2勝目を飾った。
「初日にサスペンションが折れた時にはどうなるかと思いましたが、しっかりと修復してくれたサービスの皆さんのおかげです。今シーズンはこのまま突っ走りたいですね」と、タイトル獲りにも意欲をみせた。2位には、「初日が悪すぎました。今日はガンガン攻めてます。まだまだ行けます」とペースを上げた鮫島大湖/船木佐知子(スズキ・スイフトスポーツ)が最終SSで「クルマのセッティングができていないので、2日目はクルマが耐え切れない状態になってきた」という岡田孝一/河本拓哉(スズキ・スイフトスポーツ)を捉え入賞している。

初日に天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)が独走態勢となったJN5クラスは、「完全なドライ路面のターマックを走るのは久々。いつもであれば僕たちが走る時は路面に泥とかが乗っていることが多いんですが、今回はタイヤに攻撃性の強い路面コンディションとなっているので、タイヤを温存させながらペース配分して走っています」と、しっかりとペース配分しながら走り切った天野が今季初優勝を獲得。2位には「トップ(天野)と3位(渡部哲成)との差が大きいので、無理をしないでポジションキープに徹しました。個人的には昨年リタイアが多かったので、やっと梅雨が明けたような気持ちですね」という小川剛/梶山剛(ホンダ・フィット)が入賞した。

JN6クラスは、「今年はしっかりと成績を残すことを目標に戦っています。2ループ目はペースコントロールしたつもりでしたが、かなり追い上げられました」という初日のトップを奪った吉原將大/佐野元秀(トヨタ・ヤリスCVT)が逃げ切り2連勝。2位には「自分的には一生懸命走ったつもりでしたが、タイムが出ないのはクルマの問題なのかもしれません。タイム的には昨年と遜色ないタイムが出ているので、ヤリスが速いということなんでしょうね……」という明治慎太郎/立久井大輝(トヨタ・ヴィッツCVT)が入賞。3位には2日間合わせて2本のSSでベストタイムを奪った水原亜利沙/美野友紀(トヨタ・ヤリスCVT)が入賞した。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 福永 修/齊田美早子 アサヒ☆カナックOSAMU555ファビア 54:12.4
2 JN1-2 柳澤宏至/保井隆宏 ADVAN CUSCO FABIA R5 54:15.4
3 JN1-3 奴田原文雄/東 駿吾 ADVAN KTMS GRヤリス 54:15.5
6 JN2-1 石井宏尚/竹下紀子 CUSCO DL LEXUS F 56:31.1
9 JN3-1 大竹直生/藤田めぐみ ADVAN KTMS ヌタハラRS86 56:49.9
14 JN4-1 西川真太郎/本橋貴司 スマッシュDLモンスターitzzスイフト 58:07.4
16 JN5-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツ 58:11.3
31 JN6-1 吉原將大/佐野元秀 KYB DL アップガレージ Yaris 1:02:04.6

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN1クラス優勝 福永修/齊田美早子

JN2クラス優勝 石井宏尚/竹下紀子

JN3クラス優勝 大竹直生/藤田めぐみ

JN4クラス優勝 西川真太郎/本橋貴司

JN5クラス優勝 天野智之/井上裕紀⼦

JN6クラス優勝 吉原將大/佐野元秀