RALLY HOKKAIDO
開催日時:9月14日(金)〜9月16日(日)
開催場所:北海道帯広市
スペシャルステージ本数:15本
スペシャルステージ総距離: 178.87km
ラリー総距離: 749.08km
SS路面:グラベル
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:2.0
2018年全日本ラリー選手権第8戦「RALLY HOKKAIDO」は、9月16日(日曜日)にすべての競技日程を終え、勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)が2位の新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)に3.4秒差をつけて、今季2勝目を飾った。また、3位に鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)が入り、スバル勢が表彰台を独占した。
ラリー前週に北海道胆振東部地震に見舞われたが、主催者は予定通りの開催を決定。開催期間中に「がんばろう! 北海道」義援金募金活動などを計画しており、復興を後押しする形でイベントを行った。
北海道旭川在住の鎌田卓麻は、「私は地元旭川で今回の地震を経験しました。震災直後ですし、開催に対して賛否両論はありますが、北海道民としては少しでも早く復興して、前に進んでいきたい。今回もラリー北海道は、地元の皆さんと一緒に盛り上げて、復興をバックアップできたらと思っています」と、今回のラリー開催の意義を語っている。
レグ1A
北愛国サービスパークで行われたセレモニアルスタートに続き、サービスに隣接する1.47kmのSS1「SSS Sammy サツナイ 1」で華々しくラリーの幕が上がった。ラリーウイークに入り帯広・十勝周辺は晴天が続き、路面が乾ききっていた上、この日は風がほとんどないコンディション。さらにスタート間隔が1分に設定されたことから、先頭の新井以外のクルーはダストに視界を奪われることとなった。
ところが、クリアな視界を享受できるはずだった新井もライトポッドにトラブルを抱えており、思うようなペースで走れない。首位に立ったものの、結果的にわずか1.9秒のリードに留まった。「走行中にライトポッドが安定しなくて、常にパッシングしている状態でした。最初の1コーナーの段階から視界がまったく安定しませんでした。明日はとにかくミスをしないように心がけます」と、新井は肩をすくめる。
2番手の鎌田はダストに視界を奪われてオーバーシュート、3番手の勝田もドライビングミスからタイムロス。両者ともに「本当の勝負は長く厳しいステージが用意された明日から」と、表情を引き締める。
併催イベントのアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)第4戦/日本スーパーラリーシリーズ(JSR)第4戦は、マイケル・ヤング(トヨタ・ヴィッツ)がトップ。最後尾スタートのため厳しいダストに見舞われた炭山裕矢/保井隆宏(シュコダ・ファビアR5)は2.2秒差の2番手につけている。
レグ1B
土曜日のオープニングとなるSS2「リクベツ・ロング」を制したのは、奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX)。本格的な林道ステージとなるSS3「ヤム・ワッカ」は、新井が2番手の勝田にこのステージだけで10.2秒差をつけてみせる。前日まで2番手につけていた鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)はサイドブレーキが戻らなくなるトラブルに見舞われ、10秒以上をロス。勝田にかわされて3位にポジションを落とした。また、5番手につけていた福永修/齊田美早子(三菱ランサーエボリューションX)もコースオフを喫して戦列を離れている。
SS3はサイドブレーキのトラブルが解消した鎌田がベストを記録し、2番手に浮上。「クンネイワは難しいと分かっていたから、ここは抑えて走った」と振り返った新井が0.5秒差で続く。この日2回目のリクベツ走行となるSS5では再び奴田原がベスト。午前中のセクションを終えて、首位の新井と2番手の鎌田が15.6秒差、3番手の勝田が18.3差で追う。以下、4番手に奴田原、5番手にSS2で右リヤのドライブシャフトを壊し、我慢の走りとなった柳澤宏至/加勢直毅(スバルWRX STI)がつけている。
陸別でのリモートサービスを経て、午後のセクションへ。SS6は勝田がベストを獲り、鎌田をかわして2番手に浮上。SS7はリクベツマイスターの奴田原が3度目のベストを獲得する。この時点で勝田との差を21.6秒に拡大し、順調にトップをキープしていた新井だが、SS8でまさかのトラブルが待っていた。SS8のスタートから約18km地点で左フロントタイヤをパンク。このステージだけでベストの勝田から37.6秒も遅れて、4番手まで順位を落としてしまったのだ。それでも新井は最終のSS9では先頭スタートの有利を活かして、ダストのない視界良好の状態でアタック。2番手タイムの勝田に5.7秒差のベストを刻み、2位に順位を戻してみせた。
首位で初日を終えた勝田は「首位ですが、かなりの僅差です。新井選手のパンクで面白い展開になりましたけど、上位にはほとんど差がありません。明日はもう一度新たな気持ちで頑張ります」と、慎重なコメントを残した。10.3秒差の2位につける新井の直後には、ドライブシャフトを破損しながらも我慢の走りとなった鎌田が11.5秒差の3位。「スバル勢の3人が本当に速かった」と肩をすくめた奴田原が4位で続く。上位4人は13.1秒差以内で競っており、最終日に大きく順位が変わる可能性もある。
JN5の首位はシトロエンDS3 R3T-MAXをドライブする川名賢/キャシー・デュロッソウ。同じくDS3を駆る小濱勇希/馬場雄一が43.7秒差の2番手につけている。SS4では優勝候補の一角に挙げられていた横嶋良/木村裕介(プジョー208 R2)と眞貝知志/箕作裕子(トヨタ・ヴィッツGRMN)が揃ってロールオーバー。どちらもマシンのダメージが大きくリタイアを決めた。ラリー序盤は「マシンの調子が悪く、思うように攻められない」と語っていた川名だったが、リモートサービスでマシンを修復すると、SS6でベスト刻む。さらにSS8では小濱を30秒以上も突き放すベストタイムを叩き出し、首位に躍り出た。「リモートサービスでクルマを直してもらって、気持ちよくドライブできるようになり、小濱選手を逆転できました。今回は久々に組んだコ・ドライバーだったので、ラリー中にコミュニケーションを取りながら、徐々にペースを上げていきました」と、川名は笑顔を見せている。
JN4、初日トップに立ったのはベテランの石田雅之/遠山裕美子(トヨタ86)、2番手には地元出身の関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)、3番手には山口貴利/山田真記子(ダイハツ・ブーン)がつける。サバイバルレースとなったこのクラス、SS3ではポイントリーダーの上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビックタイプR)と香川秀樹/松浦俊朗(ホンダ・シビックタイプR)がコースオフ。SS4では曽根崇仁/藤田めぐみ(トヨタ86)もラリー続行を諦めている。ラリー前半は「思うようなグリップを得られていない」と不満を表していた石田だったが、終わってみれば、ラリー北海道を得意とする関根に33.4秒差。シーズン初勝利をかけて最終日に臨む。
JN3はすでに早々に今季のタイトルを決めている天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)が圧倒的な強さでラリーをリードした。2速が使えなくなるトラブルに見舞われながらも、盤石の連勝記録をさらに伸ばしている。石川昌平/竹藪英樹(トヨタ・ヴィッツ)と大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)による2番手争いは、SS7まで大倉がリードしていたが、SS8で石川が逆転。それでもふたりの差は33.2秒と、明日も今日以上に白熱のバトルが繰り広げられそうだ。
今シーズン全日本デビューながらも、2勝を挙げている長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)がラリー北海道初参戦とは思えない安定した走行を披露。一方、前戦いわきで待望の全日本選手権初勝利を挙げた鎌野賢志/蔭山恵(トヨタ86)は、思うようにペースが上がらず、長﨑を追うことができない。「後半になるにつれて、北海道のスピードレンジにも慣れてきました。基本的にはマシンを労わりながら走っています。それでも首位で戻ってくることができて嬉しいです」と、長﨑は安堵の表情を見せた。
JN1はスタート前に「絶対完走」を掲げていた古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)が、首位を快走。2番手の三苫和義/遠藤彰(ホンダ・フィット)、3位の小川剛/佐々木裕一(ホンダ・フィット)をしっかりと抑えてみせた。「序盤は少しペースを落としすぎた」という古川は、SS4で三苫に首位の座を奪われるが、SS6で奪還。「北海道は完走できるか不安でしたが、無事ここまで走りきれて良かったです」と、ホッとした表情を見せている。
レグ2
JN6クラスの注目は僅差に固まった上位4台の勝負の行方。首位の勝田を10.3秒差の新井、11.5秒差の鎌田、13.1秒差の奴田原が追う展開が予想されたが、この日は勝田と新井がSSベストタイムを獲り合う展開となった。勝田は舗装路セクションを走るSS11のニュー・ホンベツを含む2SSでベストタイムをマーク。新井は6SSのうち4SSを制して追撃するが、最終的には3.4秒およばず、勝田に軍配が上がることとなった。第3戦丹後以来の勝利となった勝田は「タフなラリーでした。特に今日は気の抜けない展開でしたね。勝因は……ドライバーかな(笑)。タイトル争いで首の皮がつながりました」と安堵の表情。2位の新井は「あと3.4秒足りなかったですね。でも、全体を見れば悪くなかったです。今日は、SS11の舗装セクションがすべてでした」とラリーを振り返った。
シトロエンDS3 R3-MAXを駆る川名賢/キャシー・デュロッソウと小濱勇希/馬場雄一の2台だけが生き残ったJN5クラス。前日の勢いそのままに川名はすべてのSSでベストタイムを刻み、今シーズン2勝目を獲得した。一方の小濱は無理せず完走狙いで2位フィニッシュ。川名は「勝てて良かったです。目標のポディウムも確保できましたし、今年2勝目で本当にうれしいです。コ・ドライバーとは久々に組みましたが、完璧な仕事をこなしてくれました。ばっちりでした」と笑顔でコメント。小濱は「今回、デイ1の午前中は気持ち良く走れたのですが、トラブルもあり、マシンを労って走りました。“上がってナンボ”のラリーだと実感しました。とにかく、しっかり完走して、チームにポイントを持ち帰れて良かったです」とコメント。
同じくサバイバルラリーとなったJN4クラスは、石田雅之/遠山裕美子(トヨタ86)が今季初優勝、2位には初表彰台の中村英一/大矢啓太(トヨタ86)、3位には山口貴利/山田真記子(ダイハツ・ブーン)が入った。石田は「去年のクルマと同じ86ですが、クラスも変えて、足も変えています。今回使っているダンパーが、ハイスピードで荒れた路面ですごく走りやすかった」と、手応えを語った。2位はTGRラリーチャレンジからのステップアップを果たしフル参戦する中村。「初表彰台です。前半は排気系のトラブルがありましたが、その後は自分のペースで走ることができました。このラリーは生き残ることが大切だと痛感しました」とコメント。3位の山口はマシントラブルで満身創痍。「ステアリングとギヤボックスにトラブルを抱え、ほとんどステアリングが切れない状態でなんとか戻ってきました」
JN3クラスは優勝候補筆頭の天野智之/井上由紀子(トヨタ・ヴィッツ)が姿を消すという波乱の展開。代わってトップに立った大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が今シーズン初勝利を獲得した。2位には岡田孝一/多比羅二三男(マツダ・デミオ)、3位には石川昌平/竹藪英樹(トヨタ・ヴィッツ)が入っている。大倉は「CVTにとっても、チームにとっても初勝利です。今シーズン勝てるとは思っていなかったですし、しかもラリー北海道は特別なラリーですから、不思議な気分です。頑張って走れば、いいこともありますね」と語っている。
レグ1でトップに立っていた長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)が最終SSのひとつ手前、SS14でリタイアを喫し、完走1台となったJN2クラス。トヨタ86の鎌野賢志/蔭山恵が生き残って前戦に引き続き2連勝を飾った。「最後までラリーは分かりませんね。北海道は生き残らないと、というのが第一なので、それができて良かったです。2連勝なんてしてしまって、怖いです(笑)」と、鎌野は笑顔でコメント。
古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)が圧倒的な速さを見せていたJN1クラスは、そのまま古川が走り切って今シーズン4勝目を飾った。2位には小川剛/佐々木裕一、3位には三苫和義/遠藤彰とホンダ・フィット勢が入っている。古川は「我慢のラリーでした。キツイですね。なんとか次戦の高山でも結果を残したいと思います。リタイアだけは絶対にダメです」と、次戦に向けての意気込みをコメントしている。
(RALLY PLUS)
総合結果
順位 | クラス | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | JN6-1 | 勝田範彦/石田裕一 | ラックSTI 名古屋スバル DL WRX | 1:50:58.6 |
2 | JN6-2 | 新井敏弘/田中直哉 | 富士スバル AMS WRX STI | 1:51:02.0 |
3 | JN6-3 | 鎌田卓麻/市野諮 | itzz DL SYMS WRX STI | 1:51:21.4 |
8 | JN5-1 | 川名賢/キャシー・デュロッソウ | CUSCO ADVAN DS3MAX | 2:01:11.1 |
9 | JN4-1 | 石田雅之/遠山裕美子 | TRD プロスペックダンパー86 | 2:04:50.7 |
12 | JN3-1 | 大倉聡/豊田耕司 | アイシンAW Vitz CVT | 2:09:50.8 |
15 | JN1-1 | 古川寛/廣田幸子 | スマッシュDL itzzインディゴスイフト | 2:10:59.1 |
16 | JN2-1 | 鎌野賢志/蔭山恵 | テイクスDLワコーズBRIG86 | 2:11:03.0 |
注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。
参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。