MSCCラリー in いわき2018 Supported by Sammy

開催日時:8月24日(金)〜8月26日(日)
開催場所:福島県いわき市、鮫川村
スペシャルステージ本数:14本
スペシャルステージ総距離: 62.82km
ラリー総距離: 418.11km
SS路面:グラベル
SS路面状況:ドライ・ウエット
ポイント係数:1.2

2018年全日本ラリー選手権第7戦「MSCCラリー in いわき2018 Supported by Sammy」は、8月26日(日曜日)にすべての競技日程を終え、新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)が2位の勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)に11.0秒差をつけて、前戦カムイに続きシーズン4連勝を飾った。また、3位に鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)、4位に柳澤宏至/加勢直毅(スバルWRX STI)が入り、スバル勢が1〜4位を独占している。

福島を舞台とした全日本ラリー選手権は2年ぶりの開催となるが、今年はホストタウンをこれまでの棚倉町からいわき市へと移して行われた。小名浜港に面したサービスパークは開放的な雰囲気で、海風の吹き抜けるロケーションはあらたなラリーの顔となりそうだ。

レグ1

初日となるこの日は午前中は晴れ間が見えるものの、午後からは雷雲に覆われる不安定な天候。林道内のグラベルSSはウエット路面となり、グラベルタイヤで走る舗装路コースと相まって選手の対応力が試されるステージとなった。さらに折からの暑さも相まって、選手の体力と集中力も求められる1戦である。この日は4SSを2度走行する構成で、新設されたターマックSS、公園内のギャラリーSS(ターマック)、11.19kmおよび4.49kmのグラベルSSというバラエティに富んだサーフェイスとなった。

JN6クラスは、SS1から3連続ベストタイムをマークした新井がラリーをリード。ここまで3連勝を飾っており、第6戦からのインターバルでグラベルテストを行ってラリーに臨んだ新井は午後のSSでもふたつのベストタイムを獲得、最終的に2番手の勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)に9.8秒差をつけてこの日を終えた。「最初のターマックは本当に難しかった。グラベルはすべてウエットが残っていて、なかなかフロントが入ってくれない。マシンは問題ないはずだけど、路面にパワーを食われている感じ。SS7のロングステージは、ちょっと抑えたら詰められてしまったけど、次のSS8を全開で攻めて取り返すことができたので良かった。最終日も何事も起こらないよう気をつけて走る」と新井。2番手には勝田、3番手には鎌田、4番手に柳澤とスバル勢が上位を占めている。勝田と鎌田は1分10秒9離れており、実質的な優勝争いは新井と勝田のふたりに絞られたと言えそうだ。5番手にはWRCドイツ帰りの福永修/齊田美佐子、6番手には序盤2番手を走行しながらもSS7のパンクで大きく遅れた奴田原文雄/佐藤忠宜と、三菱ランサーエボリューション勢が続いている。

JN5クラスは、トヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/安藤裕一が首位、2番手に川名賢/保井隆宏、3番手に小濱勇希/馬場雄一のシトロエンDS3 R3-MAXが続いている。首位の眞貝は「午後のセクションは道が荒れてしまって、このコンディションで自信を持って走るには、もう少し経験が必要ですね。クルマはすごく調子がよく、いいバランスで走れています。首位ですがあまりライバルのタイムを気にしすぎず、明日もこのペースで走り切りたいです」とコメント。SS6は強い雨の影響でJN5クラス以下にノーショナルタイムが与えられたため、2番手で追い上げる川名は「舗装が1本ノーショナルタイムになってしまったので、それが響きました。そこで差を取り返すつもりでした。明日はひっくり返せればいんですが、やれるだけのことをやって挑みます」とコメント。ふたりの差は1.8秒というわずかなもの。最終日はふたりのバトルに注目したい。

シーソーゲームの末、関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)がリードするJN4クラス。2番手には連勝を挙げてきた上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)、3番手はトヨタ86の山本悠太/北川紗衣、4番手に高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)というオーダーとなっている。関根と上原は21.9秒差とやや開いているが、上原と山本は8.9秒差、山本と高橋は1.8秒差と、勝負の行方はまだまだ分からない。関根は「ミッションマウントにトラブルが出ています。部品がないので、明朝のサービスで変更する予定です。ドタバタの争いですが、首位にいるので、明日も頑張ります」と、今季初勝利に向けて意気込みを語っている。

JN3クラスは天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)が首位、2番手に藤田幸弘/藤田彩子(マツダ・デミオ)、3番手に岡田孝一/石田一輝(マツダ・デミオ)、4番手に大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)がそれぞれ10秒前後の差で並んでいる。天野は序盤、電装系のトラブルに見舞われて首位から4番手にまで順位を落とすが、午後には猛追を見せて首位に復帰している。「順調に走って、首位に返り咲けました。大倉選手がトラブルで落ちてしまったのは残念ですが、2位の藤田選手と10秒差くらいなので、着実に走って、もう少し差を広げてフィニッシュしたいです」と天野。CVTマシンの大倉はオーバーヒートに見舞われ、一時クラストップに立つも苦戦を強いられている。

鎌野賢志/蔭山恵(トヨタ86)が首位に立つJN2クラスは、2番手に2連勝中の長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)、3番手に加納武彦/横手聡志(スバルBRZ)。明治慎太郎/古川智崇はやや差の開いた4番手となっている。「首位で戻ってこられたのは奇跡です。明日も何もないことを祈っています」と、この日最後のサービスに戻ってきた鎌野。ラリー最終日に向けては「サービスではクルマをしっかりチェックして、ペースノートを確認して、何事もなくラリーを終えたいです」とのこと。2番手長﨑と3番手加納の差は1.5秒という接戦。こちらの勝負の行方にも注目が集まる。

上位陣が相次いでトラブルに見舞われたJN1クラスで生き残り首位に立っているのは小川剛/藤田めぐみ(ホンダ・フィット)。2番手には三苫和義/小林剛(ホンダ・フィット)、3番手に高崎巧/馬場裕之というトップ3となっている。この日終盤のSS7では、クラス首位につけていた古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)がコースオフ、2番手の須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)はタイヤをパンクし大幅にタイムロスを喫する波乱。さらにSS7を終えて3番手だった伊藤隆晃/大高徹也(日産ノートNISMO S)もドライブシャフトを破損し戦線離脱する荒れた展開となった。首位の小川は、「気がつけば生き残りゲームになっているので、かなり気を使って走りました。マシンにも色々と問題が出ているので、明日もクルマが持ってくれることを祈っています」と慎重なコメントを残している。

レグ2

この日行われたのはSS9〜SS14の計6SS。レグ2のSS総距離は20.40kmと短めだが、途中にサービスがないため、マシントラブルやアクシデントは禁物だ。また、最初と最後にタイヤ選択が難しい6.52kmのNishine(SS9/14)が配された設定は、タイヤ戦略もひとつのポイントになる。

初日首位に立った新井と、それを追う勝田のバトルに注目が集まったJN6クラス。9.8秒差で迎えたこの日のオープニングステージでは勝田がベストタイムをマークし、その差を8.5秒に詰める。しかし新井もSS10とSS11で連続ベストタイムを刻み、勝田との差を10.4秒差に押し戻す。勝田はSS12、SS13で新井のタイムを上まわるものの、差を詰めるほどのタイムとはならず、最終SSを制した新井が今季4勝目を飾ることとなった。3位には初日のパンクが響いた鎌田卓麻/市野諮、4位には柳澤宏至/加勢直毅が入り、WRX STI勢が上位4位を独占する結果となった。新井は、「濡れていて難しい路面や、滑りやすいターマックもあった。そんな厳しい条件でも、クルマのコントロール性がすごく良かったので、危ない思いもせず勝てました。次戦のラリー北海道でも気を抜かず、優勝を狙って走る」とコメントしている。今季グラベルラリーで土つかずの強さを誇る新井。次戦のラリー北海道でもこの勢いを維持するのか、あるいは誰かが待ったをかけるのか、目の離せない展開となりそうだ。

JN5クラスは首位の眞貝知志/安藤裕一(トヨタ・ヴィッツGRMN)と2番手川名賢/保井隆宏(シトロエンDS3 R3-MAX)の争いになるかと思われたが、川名が電気系トラブルに見舞われ、朝のサービスを出発できずにリタイアを喫するという波乱のスタートとなった。これで3番手の小濱勇希/馬場雄一(シトロエンDS3 R3-MAX)が2番手に浮上したが、首位眞貝との差は30秒以上。眞貝にとってはこれでグッと勝利が近づいた格好だが、午後のSSではマシントラブルが発生し、2速ギヤが使えない状態となってしまう。だが、眞貝はペースを落としながらも無事にマシンをフィニッシュに導き、今季初勝利。チームにとっては2016年久万高原ラリー以来となるクラス優勝を飾った。2位は小濱、3位にはフォード・フィエスタR2を投入した鷹野健太郎/松本優一が入っている。「最後までクルマが持ちこたえてくれました。リグループのあと、マシンの調子がおかしかったので、だいぶペースを落としたんですが、なんとか帰ってこれました。いい結果が得られて、本当に良かったです。クルマは運転しやすくて、ラフな道でも安心して攻めることができました」と、眞貝は笑顔でラリーを振り返った。

前日に起きたミッションマウントのトラブルはサービスで解消したものの、マシンコンディションに不安を抱えた状態で2日目を迎えた関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)と、レグ1の中盤から関根を追い上げる上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)の熾烈な戦いとなったJN4クラス。上原はこの日最初のSS9からSS13まで、関根のタイムを上まわるペースで走行。じりじりと差を詰めながらプレッシャーをかけていく。この日のスタート時点で21.9秒あったふたりの差は、最終SSを前に8.8秒にまで縮まっていた。最終SSで関根は「レグ1と同じトラブルが出てしまったけど、最後は壊れてもいい覚悟で攻めました」と意地のベストタイムをマーク、最終的に9.6秒差で関根が今シーズン初優勝を飾った。2位には上原、3位には山本悠太/北川紗衣(トヨタ86)が入った。「優勝はうれしいですが、キツかったです。逃げ切れて良かった。勝因は、心配していた舗装のステージ(SS1)でベストを獲れたことが、最後に効いたと思っています。次のラリー北海道でも勝たないとシリーズが狙えないので、頑張ります」と、関根は地元ラウンドでもある次戦に向けての意気込みを語った。

首位に天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)、2番手に藤田幸弘/藤田彩子(マツダ・デミオ)、3番手に岡田孝一/石田一輝(マツダ・デミオ)、4番手に大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)と、それぞれ10秒前後の差で並んでいたJN3クラスだが、大倉は前日のエンジントラブルによりこの日の朝にリタイアを決める展開に。ラリーは天野が順調にリードを拡大して優勝、2位には追い上げた岡田が入り、3位に藤田という結果となった。天野/井上は大倉のリタイアで早々にJN3クラスチャンピオンを確定、その強さにはますます磨きがかかっている。「大変なラリーでしたが、大倉選手がリタイアしたことで、タイトルが決まってしまいました。今回は自分の思いどおにいかないことが多かったですが、そのなかで、全開で走ってなんとか大倉選手を逆転できました。Sammy賞を岡田選手に獲られてしまったんですが、ここはどうしても勝てない(笑)。そのあたりも課題かもしれませんね」と天野。天野にとっては5年連続10回目、井上にとっては9年連続11回目のチャンピオン獲得となる。

JN2クラスは、鎌野賢志/蔭山恵(トヨタ86)が全日本ラリー出場10年目にして初優勝を達成。2位には長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)、3位には明治慎太郎/古川智崇(トヨタ86)という結果となった。長崎とのバトルを制して2番手に浮上していた加納武彦/横手聡志(スバルBRZ)はSS12でコースオフを喫しリタイアを余儀なくされることに。これで2番手に長崎、3番手に明治が浮上し、フィニッシュとなった。念願の全日本初優勝を手にした鎌野は、「すごく疲れました(笑)。距離はそれほどではありませんが、妙に疲れました。勝因は、7~8月に地区戦に出たり練習会に出たりしてトレーニングを積み、初日の午前中からしっかり走れた点が良かったと思います。路面が悪くなる前にライバルに差をつけることができました。今後は、ラリー北海道に向けて、ジムに通って体力づくりに励みます」と笑顔でコメントした。

初日にトップ2が相次いで脱落するという波乱の展開となったJN1クラス。クラス首位に立つ小川剛/藤田めぐみ(ホンダ・フィット)と2番手三苫和義/小林剛(ホンダ・フィット)の間には1分近い差が付いている。この日最初のSSでは、3番手につけていた高崎巧/馬場裕之(日産ノートNISMO S)がマシントラブルで戦列を去り、代わって直井健/厚地保幸(スズキ・スイフトスポーツ)が3番手に浮上。その後は順位変動なく、このままの順位でのフィニッシュとなったが、この荒れたラリーを制した小川もまったくの無傷というわけではなかった。「ホイールは何本も割れましたし、ミッションはギヤ抜けするなか、ごまかしながらのフィニッシュです。なんとかクルマが持ってくれました。次のラリー北海道に向け、クルマをしっかり整備して挑みます」と、ラリーを振り返った。小川は第3戦の京都以来となる今季2勝目。

次戦は9月14日〜16日に開催される第8戦ラリー北海道。シーズン後半、チャンピオン争いの山場とも言える一戦だ。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN6-1 新井敏弘/田中直哉 富士スバル AMS WRX STI 1:03:07.2
2 JN6-2 勝田範彦/石田裕一 ラックSTI 名古屋スバル DL WRX 1:03:18.2
3 JN6-3 鎌田卓麻/市野諮 itzz DL SYMS WRX STI 1:04:53.4
9 JN4-1 関根正人/草加浩平 KYB DUNLOP スイフト 1:10:28.9
10 JN5-1 眞貝知志/安藤裕一 TGR Vitz GRMN Rally 1:10:32.9
14 JN3-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツ 1:12:08.9
18 JN2-1 鎌野賢志/蔭山恵 テイクスDLワコーズBRIG86 1:13:15.4
21 JN1-1 小川剛/藤田めぐみ itzz ADVAN AN Fit 1:14:47.0

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2018年 全日本ラリー選手権 第7戦 いわき

イベントフォト

JN6クラス優勝 新井敏弘/田中直哉

JN5クラス優勝 眞貝知志/安藤裕一

JN4クラス優勝 関根正人/草加浩平

JN3クラス優勝 天野智之/井上裕紀⼦

JN2クラス優勝 鎌野賢志/蔭山恵

JN1クラス優勝 小川剛/藤田めぐみ