新城ラリー2019

開催日時:3月15日(木)〜17日(日)
開催場所:愛知県新城市
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離: 82.96km
ラリー総距離: 299.21km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.0

愛知県新城市で開催された全日本ラリー選手権第2戦「新城ラリー2019」は、2月3日(日)にすべての競技を終えて、SUBARU WRX STIの勝田範彦/石田裕一がシーズン初勝利を獲得した。2位には三菱ランサーエボリューションXの奴田原文雄/佐藤忠宜、3位はSUBARU WRX STIの新井敏弘/田中直哉という結果となった。

レグ1

会期を3月に移した今年の新城ラリーは、昨年11月の前回大会と同様、15日金曜日の夕方から新城市文化会館でセレモニアルスタートが開催され、実質的な競技は16日土曜日からのスタートとなる。ラリー初日は3SSを2度ずつ走行する計6SSが設定された。ラリーのメイン会場である県営新城総合公園、タイトでツイスティなコーナーが連続する雁峰北、ハイスピードな設定の鬼久保という3つのステージが戦いの舞台だ。なかでも雁峰北(SS2/5)は12.64kmと距離が長く、勝負の趨勢に影響を及ぼす可能性が高いといえる。金曜日の夜から土曜日の朝にかけて降雨の予報もあったが雨量は少なく、ドライ路面で今シーズン初のターマックラリーはその幕を開けた。

JN1クラスは、昨年の勝者である新井と地元の勝田、柳澤宏至/保井隆宏らスバルWRX STI勢と、今季初参戦となる奴田原、福永修/齊田美早子らの三菱ランサーエボリューション勢による戦いが期待された。なお、スバルの鎌田卓麻は全日本ダートトライアル選手権の日程が重なっているため、今回は参戦を見送っている。オープニングステージとなった県営新城総合公園は奴田原が制したが、続くSS2雁峰北では新井が逆転し、SS3では奴田原が再逆転するなど、トップは目まぐるしい入れ替わりを見せた。午後のSS5、雁峰北では総合3番手につけていた勝田が渾身のベストタイムで一気に首位を奪い、続くSS6でもトップの座を守り切った。

勝田は「路面もマシンも問題なく、いたって順調です。午後は頑張って攻めました。今朝の1本目からプッシュできていれば……という感じですが、精一杯走ったので仕方がないですね。かろうじてトップに立てていますが、まだ半分終わっただけですし、明日も長いですし、県営新城総合公園と鬼久保で負けないようにして、雁峰でもっと頑張らないといけないですね」と初日を振り返った。

レクサスRC F、フォルクスワーゲン・ポロGTI、トヨタGT86 CS-R3など様々な車種がエントリーし話題を集めたJN2クラスは、眞貝知志/安藤裕一のトヨタ・ヴィッツGRMNがリード。2番手には石井宏尚/寺田昌弘のRC F、3番手には山村孝之/奥村久継のシトロエンDS3 R3-MAXがつけている。首位の眞貝は「路面コンディションはとても良かったです。グリップもあり、しっかり攻められる状況です。クルマは良くなった部分と、それにともない課題も色々みつかり、良かったと思います」とコメント。すでに2番手の石井には50秒近い差をつけているが、最終日もペースを崩さず走ると語っている。

JN3クラスは7台の86/BRZがエントリー。クラス首位の山本悠太/山本磨美と2番手の山口清司/竹原静香が僅差での競り合いを展開しており、初日の競技を終えた段階で0.9秒差となっている。約30秒離れた3番手には昨年のJN2クラスチャンピオン長﨑雅志/秋田典昭がつけている。トップの山本は「タイヤはグリップも良くて、かなり感触がいいですね。大きなミスもなく、危なげなく走ることができました。明日は昨年11月に走っていないコースもありますが、いい路面を期待しています」と手応えを語っている。

JN4クラスには5台のスズキ・スイフトスポーツ(ZC33S)が集結。トップは高橋悟志/美野友紀、2番手に内藤学武/小藤桂一、3番手に西川真太郎/本橋貴司というオーダーになっている。高橋は2018年の新城ラリーでも勝利を収めており、2番手の内藤に対して30秒以上のリードを築いている。「道はグリップも高くて、滑ることも一切なく走れました。比較的早い段階でテストをしたことで、クルマが仕上がっていることも理由にあると思います。最初のループほどではありませんでしたが、午後もなんとかいいペースをキープできたので、明日もこのまま突き進みます」と、高橋は初日を振り返った。

トヨタ・ヴィッツGRの天野智之/井上裕紀子が大きくリードするJN5クラスは、2番手にマツダ・デミオの岡田孝一/廣田幸子、3番手にはトヨタ・ヴィッツ(NCP91)の佐藤光理/松井弘成という順位になっている。天野は「とりあえず無難に走ってきました。思った以上に天気が良かったようで、気温が上がり、後半はタイヤのライフ的に厳しかったです。攻めているわりには、思ったほどタイムが上がりませんでした。クラス内では十分にマージンを築くことができましたが、明日もデイポイントをしっかり狙いたいです」と初日全SSベストタイムを刻み、貫録を見せつけた。

JN6クラスは大倉聡/豊田耕司がリード、2番手に板倉麻美/蔭山恵、3番手にいとうりな/大西紗智というオーダーとなっており、トヨタ・ヴィッツCVT勢がスピードを見せている。4番手にはマツダRX-8のAT車を投入した中西昌人/福井林賢がつけた。午前中のセッティングを外してしまったという大倉は「午後にはセッティングをやり直してもらって、だいぶ走りやすくなりました。CVTは狙ったとおりに走ってくれますし、去年よりクルマはかなり進化しています」と語った。また、2番手の板倉は今回のラリーが競技初参戦。「ラリー自体の参戦が初めてで、緊張しましたが、楽しめました。午前中はラインを広く取ることができず、クルマのパワーを出し切れませんでした。明日に向けて、作戦会議して挑みたいです」とコメントしている。

レグ2

この日は前日にも行われた「県営新城総合公園」と「鬼久保」に、「雁峰西」を加えたステージ構成。それぞれを2回ずつ走行する計6SSで争われる。なかでも「雁峰西」は距離が14.84kmとラリーの中で最も長く、雁峰を得意とする勝田にとっては大きな勝負どころと言えた。天候は朝から晴れ時々曇り。ただし午後に向けて下り坂、場合によっては降雨の可能性もありという状況でラリーはスタートした。

JN1クラスは勝田、奴田原、新井による三つ巴のバトルに注目が集まった。前日のSS6までを終えた段階で、首位勝田と2番手奴田原の差は1.8秒、奴田原と3番手新井の差は3.7秒と、ひとつのミスで順位が入れ替わる状況だ。そして迎えたオープニングステージの「県営新城総合公園」では新井が渾身のベストタイム。奴田原が0.3秒差のSS2番手で続き、勝田は1.8秒差のSS5番手に甘んじた。総合順位に変化はないものの、これで勝田の奴田原に対するリードはわずか0.3秒に削られてしまうことに。続くSS8「雁峰西」ではこの林道を得意とする勝田が順当な一番時計。奴田原との差を4.3秒に拡大し、逃げ切りを図る。しかし奴田原もこのままでは終わらず、SS9「鬼久保」を制して勝田を逆転。勝田との総合タイム差1.4秒とし、今大会3度目の首位に返り咲いてみせた。

サービスを挟んだSS10「県営新城総合公園」では、タービンを交換した新井がベストタイムをマークするが、上位ふたりとの差は思うように縮まらない。一方の奴田原は勝田のタイムをしっかりと上まわり、リードを2.3秒に拡大した。ラリーは勝負どころと目されるSS11「雁峰西」へ。ここで勝田は爆発的なスピードを見せ、SS2番手の奴田原に17.4秒という大差をつけるベストタイムをたたき出した。総合順位でも奴田原に15.1秒の差をつけて首位を奪還。最終SSの「鬼久保」を前に大きなマージンを得ることとなった。その最終SSでは天候が崩れ、なんとフィニッシュ付近では雪が降り始めるコンディションに。勝田はこのSSを慎重に走り切って、地元ラリーでうれしい今シーズン初勝利を獲得。2位には奴田原、3位には新井という順位となった。4位には福永修/齊田美早子、5位は徳尾慶太郎/枝光展義と三菱ランサーエボリューション勢が続いている。

バラエティ豊かな車種が出場して注目を集めたJN2クラスは、トヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/安藤裕一が初日のリードをさらに拡げて今シーズン2勝目を獲得した。2位には大排気量エンジンを搭載するレクサスRC Fの石井宏尚/寺田昌弘が入り、3位は今シーズンからトヨタ・ヴィッツGRMNを駆る中村英一/大矢啓太という順位となった。4位はトヨタGT86 CS-R3の鷹野健太郎/ウシニナ・ヤナ、5位はフォルクスワーゲン・ポロGTIを初投入した竹岡圭/佐竹尚子となっている。眞貝は「マシンに課題が見つかり、全開というペースではない」と語るものの、クラストップを堅持して危なげなくフィニッシュまでマシンを運び、今季2勝目を獲得した。

「我慢のラリーになりましたが、それでも無事にフィニッシュまでクルマを持ち帰ることができて良かったです。JN2も今回から様々なエントラントが増えましたし、どんどん盛り上がってほしいですね」と眞貝。大柄なレクサスで2位に入った石井は「上出来で、皆さんに感謝という気持ちしかありません。こういった目立つクルマで出て、自分にプレッシャーをかけて走って、こうやって完走できて素直に良かったです」と、喜びを語った。

86勢のバトルとなったJN3クラスは、山本悠太/山本磨美が競り勝ってシーズン初勝利。2位には山口清司/竹原静香、3位には長﨑雅志/秋田典昭が入った。山本と山口は0.9秒という僅差でこの日をスタート。ほぼすべてのSSで1秒以内での接戦が繰り広げられたが、SS11の雁峰西で山本は渾身のベストタイムをたたき出し、バトルに決着をつけた。山本は「初日は今までにないくらいグリップのあるコンディションで走れて楽しかったんですが、最終日は雨が降ったり、雪もあって、誰も予想できなかった難しいラリーでした。それでも、シーズン初参戦のラリーで幸先良く勝つことができました。去年は非常に悔しい思いをしているので、今後もこの調子でいきたいです。タイヤが良く合っていたので、唐津も勝てるように頑張ります」と、ラリーを振り返り笑顔を見せた。また4位には曽根崇仁/木村裕介、5位には川名賢/梅本まどかが入賞した。

高橋悟志/美野友紀が大きくリードを築いていたJN4クラスは、スズキ・スイフトスポーツ勢の争いとなった。2日目は、初日首位の高橋がそのままリードをさらに拡げて逃げ切り優勝。2位には内藤学武/小藤桂一、3位には西川真太郎/本橋貴司が入っている。高橋は「すべてがうまくいったラリーで、何も言うことはありません。最初に逃げ切ったのが大きかったです」と、序盤のリードが勝ちにつながったと振り返った。2位の内藤は「マシンを乗り換えて臨んだラリーで走り切ることができ、しかも成績を残せたので良かったと思います。今後に向けて手応えを感じました。次に来る時は、もうひとまわりマシンを速くして戻ってきたいですね」とコメントしている。

JN5クラスは、初日首位に立っていた天野智之/井上裕紀子が危なげなくシーズン2勝目を獲得。2位にはマツダ・デミオの岡田孝一/廣田幸子、3位はトヨタ・ヴィッツ(NCP91)の佐藤光理/松井弘成が入っている。天野は「2本目の雁峰西でようやくペースを上げられて、良かったです。ターマックラリーの初戦ということもあって、初日はなかなか調子が上がらなかったんですが、2日目でペースを上げることができました。次に向けて、いいトレーニングになったと思います」とコメント。また全日本ラリー選手権初表彰台となった佐藤は「最後までブレーキが持たず危なかったんですが、後ろと差があったので、抑えつつなんとか走り切れました。この旧型で全日本を追うのはパフォーマンス的に厳しいので、次は新しいクルマを購入してからですね(笑)」とラリーを振り返った。

JN6クラスは、ヴィッツCVTを駆る大倉聡/豊田耕司が初日からのリードを活かして2勝目を挙げた。2位は、ポジションアップを果たした いとうりな/大西紗智、3位は板倉麻美/蔭山恵と、バラエティ豊かな車種のなかでヴィッツCVTが表彰台を占める結果となった。4位はATのマツダRX8で挑戦する中西昌人/福井林賢、5位はフィットRSのクロエリ/加勢直毅、6位は日産ノートe-POWER NISMO Sの水原亜利沙/中村理紗となっている。連勝を飾った大倉は「今回のラリーも何事もなく走り切れて良かったです。終始路面も安定していましたし、ギャラリーもいっぱい入っていて、イベントとしては大成功だったと思います。最終SSは雪が降ってノーショナルタイムとなりましたが、賢明な判断だと思います。次戦の唐津は昨年スキップしているので2年ぶりです。大好きなラリーですし、ステージもチャレンジングなので、この1年で一番楽しみにしています」とコメントしている。

次戦は第3戦ツール・ド・九州2019 in 唐津。佐賀県唐津市のワインディングを舞台とするターマックラリーは、4月12日~14日にかけて開催される。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 勝田範彦/石田裕一 ラック STI 名古屋スバル DL WRX 1:03:46.9
2 JN1-2 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 1:03:52.6
3 JN1-3 新井敏弘/田中直哉 富士スバル AMS WRX STI 1:04:18.4
5 JN3-1 山本悠太/山本磨美 Sammy☆K-one☆ルブロスYH86 1:07:10.4
7 JN4-1 高橋悟志/美野友紀 ミツバitzzDLマジカル冷機スイフト 1:08:12.8
8 JN2-1 眞貝知志/安藤裕一 TOYOTA Vitz GRMN Rally 1:08:21.0
9 JN5-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツ 1:08:49.3
17 JN6-1 大倉聡/豊田耕司 アイシンAW Vitz CVT 1:10:15.9

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2019年 全日本ラリー選手権 第2戦 新城・愛知

イベントフォト

JN1クラス優勝 勝田範彦/石田裕一

JN2クラス優勝 眞貝知志/安藤裕一

JN3クラス優勝 山本悠太/山本磨美

JN4クラス優勝 高橋悟志/美野有紀

JN5クラス優勝 天野智之/井上裕紀⼦

JN6クラス優勝 大倉聡/豊田耕司