Rally of Tsumagoi

開催日時:1月31日(木)〜2月3日(日)
開催場所:群馬県嬬恋村
スペシャルステージ本数:18本
スペシャルステージ総距離: 83.69km
ラリー総距離: 427.77km
SS路面:スノー&アイス(ターマック)
SS路面状況:スノー/アイス/ウエット/ドライ
ポイント係数:1.0

群馬県嬬恋村で開催された全日本ラリー選手権開幕戦「Rally of Tsumagoi」は、2月3日(日)にすべての競技を終えて、SUBARU WRX STIの新井敏弘/田中直哉が優勝。2位には鎌田卓麻/鈴木裕、3位に勝田範彦/石田裕一という結果となった。

レグ1-2

ラリーは2月1日(金)、群馬県嬬恋村の嬬恋会館からスタート。各選手はそのままナイトステージ5SS、計19.80kmをこなすというスケジュールだ。今大会では国際格式ラリーである日本スーパーラリーシリーズ(JSR)、東日本ラリー選手権も併催され、全56台がエントリーリストに名を連ねた。

今シーズンから最高峰クラスとなるJN1クラスでオープニングステージのSS1を制したのは鎌田だ。鎌田は昨年のこの大会で勝利を収めており、今年も引き続き勝利を狙っていきたいところ。2番手にはスノーラリー2年ぶりの参戦となる勝田、3番手にはクスコ・レーシングの柳澤宏至/保井隆宏というオーダーでラリーは始まった。このSS1ではディフェンディングチャンピオンの新井が高速コーナーでスピン。コース復帰のために約200mのバック走行を強いられたため大きく遅れ、トップの鎌田から26.7秒差の7番手から追い上げる立場に。しかし新井は、その後のSS2、SS3でベストタイムをマーク、さらに競技2日目のSS6~SS8も制し、2番手の勝田にジワジワとプレッシャーをかけていく。勝田もSS5とSS8でベストタイムを奪いギリギリまで踏ん張るが、この日の最終SSとなるSS12で新井の逆転を許し、新井と1.0秒差で3番手となり競技2日目を終えている。

今回のラリーからコ・ドライバーに鈴木裕を迎え新たなコンビで挑んだ鎌田は、「予定どおりです。少しずつ勝田選手を引き離すことができました。新井選手も同じくらいのペースなので、このまま行きます。コンディションはひどくなってきて、スノーバンクを使わざるをえなくなっていますが、表面の柔らかい雪がなくなり固い面が出ていたためバンパーにダメージを負ってしまいました。タイム差がある程度開いたので、このペースであれば、このまま行けるかと思っています」と、最終日に向けての意気込みを語った。

JN2クラスはトヨタ・ヴィッツGRMNで参戦する眞貝知志/安藤裕一が、SS1〜SS12までの全SSでクラスベストタイムをマークする安定感を見せて、首位の座を固めている。ヴィッツGRMNでウインターラリー初参戦となる眞貝はラリー初日にチェーンが切れてしまうトラブルが発生。パワーのあるヴィッツGRMNでチェーンを装着しながら走る難しさを感じつつ無事に生還を果たした。眞貝はここまでの戦いを振り返って「コンディションの幅が広くて難しかったです。見た目で分かる時と、分からない時があります。マシンはまったく問題ありませんが、クルマが路面を捉える感じがなくなってしまう部分もありました。大きなミスをしないように走るしかありません」と慎重なコメント。

3シーズンぶりに全日本ラリーに復帰した筒井克彦/松本優一と、ラリー初挑戦となるジムカーナドライバーの牧野タイソン/北川紗衣によるトヨタ86の一騎打ちとなったJN3クラスは、筒井が序盤からリードを拡大。「初日はかなり滑るし、走るだけで精一杯でした。2日目も難しい路面で神経をつかいましたね。止まらないように頑張ります」と語っている。一方、牧野は「昨日はスタックしてタイムロスをしたので、今日はだいぶ堅実に走っています。午後に入って、コンディションはかなり変わりました。本来、チェーンを履いた方がいいところもあったんですが、2日目最後のナイトステージに向けてチェーンを温存しました」と、挽回を図る。

JN4クラスはダイハツ・ブーンX4の山口貴利/山田真記子がトップ。2番手の古川寛/大久保叡(スズキ・スイフトスポーツZC32S)に1分27秒、3番手の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツZC33S)に1分44秒2以上の差をつけて難コンディションのラリーをリードしている。「SS11は自分でコーションを入れていた場所でスピンしてしまいました。ちょっと調子良く走りすぎましたね。それで脱出に20秒くらいロスしましたが、フィニッシュ直前で良かったです。明日の路面状況が分からないので、セッティングは明日朝に判断します」と山口。2012年以来の勝利に向けて、3日目のステージに挑む。

天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR SPORT“GR”)がトップを快走するJN5クラスは、南野保/ポール・サントと権田哲也/Jackyのマツダ・デミオ勢が後を追うものの、2日目を終えた時点で2分近く天野がリード。2018年から続く連勝記録がさらに更新されそうだ。「パノラマは雪と舗装路が混在しているので、少し危険でした。チェーンを使うのか、判断が難しかったですね。また、タイヤ交換が多くけっこう体力的に疲れていたので、少しペースを落として走っています。明日も同じようなペースで走ろうと思っています」と天野。チェーンを使う2輪駆動の車両については、タイヤ交換の頻度も多く体力勝負になる部分もありそうだ。

CVT車両やハイブリッド車両などが出走するJN6クラスは、トヨタ・ヴィッツCVTの大倉聡/豊田耕司がラリーを大きくリード。2番手のクロエリ/加勢直毅(ホンダ・フィット)、3番手の清水和夫/高波陽二(トヨタ・ヴィッツCVT)に4分以上の大差をつけている。大倉にとっては初のスノーラリーながら、総合順位でも7位と、チェーンを使っての走行にも高い適応力を示した。しかし車両にトラブルも出ているようで、大倉は次のように語っている。
「僕にとっては初のスノーラリー。チェーンで走ったのも初めてで、すごく難しいです。集中力を切らさないように、クレバーに走りたいです。SS9フィニッシュ後に電気系トラブルが出て、リエゾン中にエンジンが止まってしまうトラブルが何度か出ました。原因が分かっていないので、サービスでチェックします」。一方、昨年のTGRラリーチャレンジでクラス優勝を果たし、全日本ラリー初挑戦となるクロエリもコンスタントに2番時計をマークし、全日本ラリー出場は実に34年ぶり、かつてはDCCSウインターラリーを制した大ベテランの清水和夫の追撃をかわしている。

レグ3

競技3日目のラリー最終日は、SS13〜SS18の計6SS。後半がハイスピードセクションで構成され、この日が初走行となるSS「Aisainooka」は、路面コンディション悪化のためSS距離が27.04kmに短縮された。前日に引き続き好天に恵まれ、気温も上昇したものの、雪の残るステージも多く、スノーラリーらしい光景も随所に見られた。

JN1クラスは、総合首位に鎌田、2番手に新井、3番手に勝田という順位でこの日をスタート。鎌田と新井の差は21.1秒とやや開いているが、新井と勝田の差はわずかに1.0秒。前日終盤に逆転して順位を上げた新井は、この日最初のSS13で渾身のベストタイムをマークし勝田との差を4.6秒に広げている。続くSS14〜SS16までは、鎌田が3連続で一番時計。特にSS15「Omae Suzaka」では、これまでのSSでは0.1秒を争う両者の攻防が続くなか、鎌田はこのSSだけで新井を5.3秒引き離すベストタイムをマーク。SS16を終えた段階で、鎌田は新井との差を26.7秒にまで拡大し、新井に「(逆転は)ちょっと難しいかな」と言わせるほど、勝利は目前に迫っていた。一方の勝田はSS14で雪壁からの脱出に手間取りタイムロス、首位の鎌田から遅れること1分2秒2、2番手新井との差も35.5秒となり、逆転は難しい状況に。

ところが、ラリーは終わるまで何が起こるか分からない。ラリーのフィニッシュまで残り2SSとなったSS17で、まさかの事態が起きる。鎌田は高速コーナーをインカットした際、ホイールハウスにシャーベット状の雪が詰まってしまい、ステアリングがロックした状態のままスピン。ステアリングを切り返してUターンしようにも、そのステアリングが効かずに大きくタイムロスを余儀なくされた。この鎌田のアクシデントにより、新井が首位に浮上。最終SSで鎌田はベストタイムをマークするものの、失ったタイムを取り戻すことは叶わず、新井がシーズン初戦を制することとなった。10.4秒差の2位に鎌田、35.9秒差の3位に勝田が入っている。

新井は「選手権を考えれば大きいけど、鎌田選手のミスがあったうえでの結果なので、ちょっと素直には喜べないですね。今回はとにかく難しいコンディションで、自分も含めてみんながスピンなどでタイムロスしています。そのおかげで勝ち残ったということでしょうね。次の新城も頑張りたいと思います」とラリーを振り返った。

JN2クラスはトヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/安藤裕一が首位の座をがっちりキープし、今シーズン初優勝を達成。眞貝はヴィッツGRMNについて、アクセルでのトルクコントロールがしやすく、低μ路でのドライバビリティの高さを評価。「本当にリスキーなラリーで完走できました。路面コンディションが目まぐるしく変わり、すごく経験値を貯めることができたと思います。特に最終日はシャーベット状の路面を走ることになって、無理せずに済むだけのタイム差をつけていて良かったです。秒差の勝負だったら、危なかったかもしれません」と、眞貝はラリーを振り返った。
また、シトロエンDS3 R3-MAXで初参戦となった山村孝之/井沢幹昌は、「SS17ではスピンでタイムロスしてしまいましたが、完走目指して、最後まで頑張りました。次の新城はひとつでも前に行けるように、しっかり練習したいと思います」と意気込みを語っている。

筒井克彦/松本優一と牧野タイソン/北川紗衣によるトヨタ86の争いとなっているJN3クラスは、筒井克彦が初の全日本ラリー選手権クラス優勝を達成。難しいコンディションのなか完走を果たしてみせた。筒井は「前日までで20分近いリードを築き、とにかくステディに行こうと決めて、ひたすら飛び出さないように、気をつけました。止まりそうになったことも何度もありましたが、とにかく神経をつかいましたね。完走できて良かったです」とコメント。筒井は今シーズン、86で全戦に出場する予定だという。2位となった牧野は「色々な経験ができました。初日にスタックしてしまい、初めてのラリーで雪のなかを完走できるとは思ってもいませんでした。コ・ドライバーの力も大きく、スタッフ全員に感謝したいと思います」と、初ラリーを振り返った。

JN4クラスは、新旧スズキ・スイフトスポーツを相手に4WDのダイハツ・ブーンX4を駆る山口貴利/山田真記子がリード。追いかける古川寛/大久保叡(スズキ・スイフトスポーツZC32S)と西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツZC33S)だが、前日までの段階で1分30秒以上の差がついてしまっている。山口はSS14でスピンを喫し、ややタイムをロスするものの、マージンは十分。この日3度のベストタイムをマークしつつ、2012年以来の勝利を飾ってみせた。「タフなラリーでした。色々なトラブルもありましたが、楽しく走ることができました。自分にとってはプラスになりましたね。東日本選手権の御岳スノーランドラリーに出た時は、フロントの足まわりに違和感があったんですが、今回はスノーに合うようにバネを柔らかくしてショックを変えたことが良かったと思います」と山口。2位には古川、3位には西川が入っている。

JN5クラスは天野智之/井上裕紀子が初日からリードを拡大、後続を2分近く引き離すリードをもって最終日をスタートした。ところがこの日のオープニングとなるSS13と続くSS14で天野はスピン、アンダーガードを曲げた影響で雪がバンパー内に入り、SS15ではオーバーヒート症状が出てしまうことに。それでも後ろを追いかける権田哲也/Jacky(マツダ・デミオ)、南野保/ポール・サントとの差を拡大して今季初勝利を飾った。「スピンの回数が多すぎましたね。嬬恋は去年、一昨年と2輪駆動のトップを獲れていたんですが、総合で2輪駆動の3番手でした。優勝することはできましたが、去年までのクラス区分だったら、2位でしたからね。敗因は今日だけで3回もスピンしたことです」と、天野は自らの走りを厳しく分析した。2位は権田、3位は南野という順位になっている。

トヨタ・ヴィッツCVTで参戦する大倉聡/豊田耕司が首位を走るJN6クラスは、2番手にホンダ・フィットRSのクロエリ/加勢直毅、3番手にトヨタ・ヴィッツCVTの清水和夫/高波陽二というオーダーで最終日をスタート。すでに大倉は大量のマージンを築いており、様々なセットアップを試している段階だ。一方のクロエリと清水も45.9秒差と、こちらもややタイム差が開いている。大倉はこの日の6SS中5SSでベストタイムをマークし、危なげなくシーズン初勝利。総合順位でも6位と健闘を見せた。2位はSS14で全日本ラリー初のベストタイムをマークしたクロエリ、3位には途中でチェーンが切れる不運に見舞われてしまった清水が入っている。大倉は「ラリー全体で考えると、本当に勉強になったラリーでした。JN6は新設されたクラスですが、パフォーマンスは非常に高いと感じました。CVT以外にも、ハイブリッドやEVなど出られるクルマも多いですし、非常に可能性のあるカテゴリーで、今後盛り上がると思います。次戦の新城はホームイベントなので、アイシンAWの社員さんもきてくれると思いますし、いいところを見せたいですね」と笑顔でラリーを振り返った。
次戦は3月15日(金)〜17日(日)に愛知県新城市で開催される新城ラリー。シーズン初のフルターマックラリーだが、昨年の最終戦から4カ月を経ての開催となる。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 新井敏弘/田中直哉 SUBARU WRX STI 1:04:38.6
2 JN1-2 鎌田卓麻/鈴木裕 SUBARU WRX STI 1:04:49.0
3 JN1-3 勝田範彦/石田裕一 SUBARU WRX STI 1:05:19.6
5 JN2-1 眞貝知志/安藤裕一 TOYOTA Vitz GRMN 1:14:42.8
6 JN6-1 大倉聡/豊田耕司 トヨタ・ヴィッツCVT 1:16:37.0
7 JN5-1 天野智之/井上裕紀子 トヨタ・ヴィッツ 1:16:42.1
9 JN4-1 山口貴利/山田真記子 ダイハツ・ブーンX4 1:16:56.0
22 JN3-1 筒井克彦/松本優一 トヨタ86 1:32:34.2

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2019年 全日本ラリー選手権 第1戦 嬬恋・群馬

イベントフォト

JN1クラス優勝 新井敏弘/田中直哉

JN2クラス優勝 眞貝知志/安藤裕一

JN3クラス優勝 筒井克彦/松本優一

JN4クラス優勝 山口貴利/山田真紀子

JN5クラス優勝 天野智之/井上裕紀⼦

JN6クラス優勝 大倉聡/豊田耕司